再投稿。
これ何が残念って、今まで基本欠かさずに書いてきた前書きや後書きは再現しきれないって事なんですよね。
なんて書いたか憶えてない……。
※
「おい、ゼロ。クリスとパーティーを組んだというのは本当か?」
「何で知ってんだよ。クリスから聞いたのか?」
「ん。クリスがとても嬉しそうに話してきてな」
ダクネスは嬉しいような、淋しいような、複雑な表情をしている。
今、俺とカズマ一行は街から外れた丘の上にある共同墓地に来ている。辺りはそろそろ夕日が沈んで暗くなる頃合いだ。
なんでこんなところにいるのかというと別に墓荒らしをしようというわけではなく、クエスト『ゾンビメーカーの討伐』を受けたからだ。
なんでも、プリーストであるアクアは後衛であるが故に直接攻撃の機会が少なくレベルが上がりにくい。そこで、回復魔法で倒せるアンデッド系モンスターを倒してレベルアップ、知力を含めたステータスを上げて戦力にしよう。とはカズマ談だ。
アンデッドが動き始めるのは真夜中だ。しかし、万一を考えて早めに現場に来た、というわけだ。
俺たちは焚き火をたいてその周りにたむろしているわけだが、その中でダクネスが急に近づいて話しかけて来たのだ。向こうではアクア、カズマ、めぐみんで騒いでいる……アクアがひっくり返った。何しとん、あいつ。
「それがどうかしたのか?前の相棒としては俺は認められんってか」
茶化しながら続きを促すと、ダクネスはいつになく真剣な表情で、
「いいや。逆だ。お前なら信用できる。…クリスをよろしく頼む」
と言ってきた。
「……そんなに心配ならなんでパーティー解散なんかした?クリスが寂しそうにしてたのはお前だって知ってるだろ」
少し言葉が強くなってしまったかもだが、実際理由が知りたい。
俺の疑問に少し恥ずかしそうに、躊躇いながらもダクネスは答える。
「クリスは私の初めての親友なんだ。貴族の私は心から笑い合える友人というものがいなくてな……、エリス教の教会に入り浸って『仲間が出来ますように』と祈っていた。」
……それは初耳だな。
「そんなある日、いつものように祈っていた私に声をかけてくれたのがクリスなのだ。クリスは私を連れ出して、外の世界を見せてくれた」
なるほどねえ。敬虔な教徒はちゃんと見てくれる神様もいるって事か。優しいのは知ってたが、サービスしすぎだろエリス。だから下界にいたのか。
「だからかもしれん。私はクリスに頼り過ぎるきらいがある。このままズルズルとクリスの迷惑になるのは耐えられん。だから一度距離をとって、一人前になったらまたパーティーを申請するつもりだったんだが………」
「お前、それはクリス本人に言ってやれよ。言わなくても伝わるなんて甘っちょろいこと考えんなよ。クリスだって完璧じゃない。言わなきゃ分からん事だってある」
「うう……、だ、だって恥ずかしいじゃないか」
顔を赤くしてモジモジしながら言う。乙女か。いや一応乙女だったわ。
「それにもういいのだ。クリスがあんなに嬉しそうにするのは久しぶりに見た。お前にならクリスを任せられる。……クリスを泣かせたら許さんぞ?」
「………任された。どんな敵からもクリスを守ると誓おう」
相手が真剣ならこちらも真剣にならざるを得ない。この覚悟は誰にも譲らない。
張り詰めた空気が流れてしばらく。唐突にダクネスが顔を寄せてくる。近えっつってんだろ。貴族のお嬢様は人との距離が分からないんですかねえ?
「と、ところでお前、クリスがその、すすすす、好きなのか⁉︎」
こいつは今の良い空気をどうやって弁償してくれるんだ。
恋バナ大好きお嬢様がドキドキした目で見てくる。
ふむ、俺が好きなのはエリスだ。しかし同一人物である以上クリスが好きだと言っても間違いではあるまい。
「……ああ、まあな。そうじゃなきゃ声掛けてパーティー組んだりしねえよ」
「や、やはりそうか!参考までにど、どんなところが好きなのか教えてもらってもいいだろうか⁉︎」
こいつ目がやべえ。ギラギラし過ぎだろ。
と、いつの間にか離れていた三人も近くに来て俺の話を今か今かと待ち構えていた。
「ふむふむ、ゼロの好きな人とはクリスのことでしたか。一体どこで知り合ったんです?」
「ダクネスったらエリス教徒だったの?ダメよ、あんな上げ底女神崇めたら。今からでもアクシズ教に変えて女神アクアを崇めるといいわ!」
「アクア、今いいところだから。小遣いやるから黙っててくれ。出来たら永遠に」
なんか女神(笑)とクズが喧嘩し始めたし。
初めて会った時のこと……女神関連だけ隠せばどってこた無いか。
「あー、どこで知り合ったか、だったかーー」
俺が渋々ながら話そうとした時だった。
「……ん?待て、敵感知に反応がある。多分ゾンビメーカーだ?」
カズマが鋭い声を出す。お出ましのようだが……、カズマの反応が煮え切らないな?
「……数が多い。取り巻きは二、三体って聞いてたけど、五、六体はいる。こっちにはアクアとゼロがいるから大丈夫だとは思うけど一応注意してーー」
「あーーーーーっ!」
「ちょっ⁉︎バカ‼︎止まれ!」
いきなり叫んだアクアがカズマが止めるのも聞かずに猛ダッシュしていく。……あいつある意味スゲえな。
「止めるか?」
「……はぁ、頼む」
了解。
すでにゾンビメーカーの目の前で魔法を放とうとしていたアクアに一息に追いつき、頭を掴んで後ろに放り投げた。背後から鈍い音とともに「ふぎゃ‼︎」と悲鳴が聞こえるが無視。いい気味だ。すかさずゾンビメーカーに剣を構えて………。
「……何やってんのお前」
「ぜ、ゼロさん⁉︎あああの人なんなんですか!」
周りをゾンビ…というかアンデッドが蠢く中心で何らかの術を使っていたのは俺が時々利用する魔道具店の店主、魔王軍の幹部にして『
※
「要するにこの街のプリースト連中が拝金主義でこの共同墓地に寄り付かないから代わりに迷える魂を浄化してたってことか」
ウィズの話をカズマが簡潔に纏める。この場のウィズ以外の視線はアークプリーストであるアクアに注がれている。
「うう…、な、何よ。言っとくけど私は知らないわよ。この街の連中がどんな主義してたって分かるわけないじゃない!むしろアンタ、なんで私のところに来なかったのよ!」
「ええ⁉︎そ、そんなこと言われましても…」
こいつ無茶苦茶言ってやがるな。さっきまで滅ぼそうとしてたくせに、わざわざ自分の前にでてきて自殺しろとでもいうのか。
今度はウィズ含めた全員の視線でアクアを滅多刺しにしてやると…。
「わーかったわよ!時々ここに来て浄化すればいいんでしょ!じゃあ早速目の前の迷えるリッチーを浄化してあげるわね!」
「お前こんな良い人を浄化だと?まずはお前の性根の方をどっかで浄化してきたらどうだ?」
「………うふふ、やだカズマさんったら、こんなに心の綺麗な美少女を捕まえてこれ以上どこを綺麗にしろって言うのかしら?」
「全部」
「なんですってーー!」
こいつらほんとに喧嘩好きだな。
「ウィズ、行け行け、もう良いぞ。こいつがお前の後を継いでくれるってさ」
「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」
カズマに砂をぶっかけられて地面を転がる駄女神にお礼を言って足早に立ち去っていく。……今度カズマを連れて店に遊びに行ってみよう。カズマに何かスキルを教えてくれるかもしれない。
「正気ですか、ゼロ!相手は人間の敵ですよ⁉︎逃すなんて……」
ウィズの人となりを知らないめぐみんが尤もな事を言ってくる。
「安心しろ。ウィズは人間を傷付けたことはないし、もしそんなことがあれば俺が斬る。それでいいだろ?」
「……そういえばあなたはそんな考え方でしたね。で、でもリッチーだと言っていましたが、リッチーなら魔法のかかった武器しか通じませんよ?」
あれ?言ってなかったっけ。デュランダルは神器なのだ。例えリッチーだろうと大悪魔だろうと斬れる……と思う。 うむん、ちょっと自信無くなってきた。
「おい、その辺どうなんだ、女神」
涙目のアクアが言うには。
「えー?多分大丈夫なんじゃない?特典の武器ってだいたいの物は斬れるし、通じるわよ。あ、でも物理だからスライムとかの軟体には効かないかもね」
だ、そうだ。いやあ安心安心。この世界だってそうそうスライムなんざいないだろうし実質最強の剣やな。
俺が密かに安堵していると、アクアのことを知らなかったらしいダクネスとめぐみんが首を傾げる。
「「女神?特典?」」
「……そうね。あなた達には言っておくわ。…私はアクア。そう、アクシズ教団が崇拝している水の女神とはこの私のことなのよ……!」
「「そうなんだ、すごいね!」」
「なんでよーーー!」
アクアが必死に二人に信じてもらおうとしているが、効果は無いようだ。
あいつは女神として二人に敬われたいのか?仲間としては見られなくなると思うんだが。
………あ、そうだ。
「カズマ。今日の報酬は要らねえから、俺はこれで帰るわ」
「うん?何でだよ。タダより怖いものは無いって言うし、ちゃんと払うぞ?」
「……その金はどっから引っ張ってくるんだ?」
「そりゃ今回の報酬金か、ら……?……あっ」
今回のクエストは『ゾンビメーカー』の討伐。ゾンビメーカーが存在しなかったというならそもそもクエストが存在しないということだ。当然、報酬なぞ無い。
頭を抱えるカズマをよそにダクネスが聞いてくる。
「そういえば今日はクリスは良かったのか?せっかく組んだのに一日放置なんて……、私は大歓迎だが」
「てめえと一緒にすんな。クリスは今日実家に帰ってんだよ。明日明後日くらいには戻るってさ」
「まだ組んで一週間も経って無いのにもう愛想を尽かされたのですか。これはゼロもウチのパーティーに入るしかないのでは?」
めぐみんが無茶振りしてきた。
お前どんだけ俺のこと好きなんだよ。入らねえよ。
いや、多分普通に
ーーいや?まてよ、閃いたぞ。
※
翌日。早速昨日の閃きを試そうと適当なクエストを受けようとしたが……。
「……なんか難度高いのばっかりじゃないですか?」
俺なら問題無いものばかりだが、他の冒険者からすると受けるのを躊躇うようなクエストしか掲示板にはなかった。その理由をルナに聞くと。
「それがですね、どうやらアクセルの近くにある廃城に魔王軍の幹部が来ているようでして、その影響で弱いモンスターが隠れてしまったんですよ。あ、この話、ゼロさんとはそういう約束してたからしたのであって、まだ他の方には広めないでくださいね?」
ほう!魔王軍の幹部!で、俺はそれを今から倒してくればいいんだな?
「ええ⁉︎えっと、その………、…やれるんですか?」
愚問だな。やれるやれないじゃなくて
………おお?
「…いや、やっぱりやめておきます。この街に攻めて来るようなら迎撃はしますがね。また何か分かったら教えてください。あ、それと今日はこれ、行ってきます」
「あ、そうですか……。いえ、お気になさらず。では行ってらっしゃい」
ルナはすこぶる残念そうな顔をしたが、そこはプロ。滞りなくクエストを受注させてくれた。
別に日和ったとかそういう話じゃない。今は幹部には居てくれた方が都合がいいから泳がせてるだけだ。なあに、そのうち顔でも見に行ってやるさ。