この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。







44話

 

 

 

 ※

 

 

 さっきまで白一色の世界にいたわけだが、今は白と黒の景色しかない。どっちがどっち、というわけではないが殺風景なものである。ここに来るのも久しぶりだな。これが実家のような安心感というやつか。

 

 目の前にはいつかと変わらずエリスが居てくれている。これは良かった。他の天使やら女神だとどう対応していいか困るからね。

 

 

「ーー冒険者、ゼロさん。ようこそ死後の世界へ」

 

「え?あぁ、どうも」

 

 

 エリスにさん付けされるとこそばゆいな。

 普段地上じゃあんだけくだけた態度取ってるんだからこっちでもタメ語でいいのに。

 

 

「この世界でのあなたの人生は終わりました。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなったのです……」

 

 

 エリスが目を伏せて悲しそうに言ってくる。

 

 

 ……まだ俺を侮っているとみえるな。俺のシステム外スキル『以心伝心(エリス・クリス共用)』を甘く見てもらっては困る。こいつ、笑いを堪えてやがるぞ。

 

 おそらく俺が死に掛けるのも久しぶりだからか、からかっているのだろう。不謹慎かもしれないが、エリスは意外とそういうのは気にしないからな。

 

 とはいえ折角なのでノってみることにした。

 

 

「そうか。まあ自分の無茶が祟ったんだから諦めも付くってもんだ。次の人生ではもうちょい上手くやりてえもんだなぁ。

 ……それで、俺はどうやって生まれ変われば良いんだ?」

 

「え⁉︎」

 

 

 まさか通じるとは思わなかったのか狼狽するエリス。うむ、やはりこっちのバージョンも趣深いな。

 

 

「あの後、カズマ達はどうなった?冬将軍に殺されたとか、雪崩に巻き込まれたとかは無いか?」

 

 

「え⁉︎あ……、えっと、はい、冬将軍は力を使い果たしたのかゼロさんが雪崩に飲み込まれた後、雪崩と一緒にすぐに消えてしまったので大丈夫です、けど………」

 

 

 どうやら上手く撃退できたらしい。

 あんだけ苦労して報酬まで先払いしてもらったんだ、依頼主を死なせるとかシャレにもならない。

 

 

「そいつは何よりだ。………どったの?もうこれで心残りは無いし、早いとこ天国なり地獄なり好きに送ってくれよ」

 

「ちょっ⁉︎あの、良いんですか⁉︎本当に何の心残りも無いんですか⁉︎」

 

「良いんですかも何も死んじまったらしょうがないだろう。いや、あー、そういえば心残りはあるか」

 

「いえ、あの………」

 

「エリス、約束を守れなくてごめん。俺は所詮この程度の男だったと思って忘れてくれて構わない。お前と過ごした日々、楽しかったぞ」

 

「う、うう………」

 

「最期に一言だけ。……愛して」

 

「嘘ですごめんなさいぃっ‼︎」

 

 

 この空気が居た堪れなくなったのか白状して頭を下げるエリス。うむ、素直でよろしい。

 

 

「……なんでえ。もう終わりか?最後まで言っても良かったんだが」

 

「‼︎や、やっぱりわかってたんですね⁉︎どうりで途中からおかしいなって思いましたよ!」

 

「そりゃお前……今さら俺が雪崩程度で死ぬかよ」

 

「ぐぬぬ……‼︎」

 

 

 フハハハハ‼︎我にそっち方面で勝とうなどとは思い上がったな、雑種!

 せいぜい励め、そうすれば我自ら褒美をやらんこともないぞ?

 ………絵に描いたようなぐぬぬ顔もいただいたし、意趣返しもこの辺にしておこうかね。

 

 

「ほんじゃ改めて、こっちでは久しぶりだなエリス。今回の俺の死因は分かりきってるけど一応どんな状況かだけ教えてくれるか?」

 

 

「死因……死んではいないって……はぁ。……はい、お久しぶりですゼロさん。

 ゼロさんは今雪の中で凍死寸前になってますが……あ、いえ、今ダクネスに発見されましたね。もうすぐ先輩が回復魔法をかけますので向こうに戻れますよ」

 

 

 

 今サラッと凍死寸前とか言ったね?……と思ったけどその程度、驚くほどでもないか。

 もう少しエリスで遊んでても良かったんだがこっちじゃなくても会えるし、帰れるならその方が良いよな。

 

 それにしてもまだ敬語は外さないのか?散々向こうでもケンカとかした仲だし、今さらなんだが。

 

 

「うーん、この姿だとどうしても敬語がしっくり来るんですよね。

 あ、どっちがいいとかあれば合わせますけど?」

 

「いやぁ、いいよ。一粒で二度美味しい、みたいでお得感もあるしな」

 

「そんな人をお菓子みたいに。……あ、もう戻れますよ。皆さん、特にめぐみんさんが心配されてますので早く戻った方が良いと思います」

 

「俺も人に心配されるようになったのか、感慨深いな」

 

「何老けたこと言ってるんです。あなたを心配する人なんか幾らでもいるじゃないですか」

 

 

 呆れたように言ってくるエリス。それはエリスも含めての話だろうか。

 ……だと嬉しいが。

 

 

 

 

 ※

 

 

「あ!ゼロ、起きたわよー!」

 

 

 ………起きてすぐ駄女神の声聞くと気い抜けるな。

 一応アクアに礼を言って起き上がると、めぐみんが腕を広げて迫って来るのが見えた。

 

 …………んん?

 

 

「はい、ストップー」

 

「ぶわっ⁉︎な、何ですか急に!」

 

 

 何か勢いよく体当たりしてこようとしてたので顔面にアイアンクローをかまして止める。

 

 何ですかじゃないよ。何の恨みがあって俺に威力35……いや、最近は50か。命中も上がって使いやすくなったよなあ。の攻撃をしてくるんだ。

 なんだ?もしや今のは抱きつこうとでもしてたのか?兄貴が心配だったのはわかるが、いくら妹でも抱きつくのは好きな男だけにしとけよ。まだお兄ちゃんそんなの許しませんけどね!

 

 

「美少女のハグをこんな風に拒否する男初めて見ましたよ⁉︎」

 

「なんだ、本当にハグだったのか」

 

 

 今の勢いだとハグはハグでもベアハッグくらいの威力はあったぞ。完全に攻撃手段の一つだ。

 

 それと美少女って言うんじゃないよ。

 確かにそうなんだがどこの界隈でも言われてるように本人が言ったら全部台無しだっての。それで許されるのは神に愛されてる照橋さんくらいなもんだ。

 

 

「誰ですか照橋さん」

 

「まあいいだろ、なんでも。それより、だ」

 

 

 周囲を見回す。

 めぐみん、アクア、カズマにダクネス。なんか生暖かい目でこっちを見てきやがるが、全員無事だな?

 ……めぐみんの目尻が少し赤いのはスルーしておこう。

 

 

「お前の依頼はこれで完了ってことでいいだろ?さっさと帰ろうぜ」

 

「はい、ありがとうございました。まさか自分が死にかけてまで助けてくれるとは、思いませんでしたけど」

 

「ああ、ゼロが来なければ今頃カズマなどは死んでいたかもしれん。私からも礼を言おう」

 

「いやあれは死んでたよ。完全に首チョンパだったよ俺が来なかったら」

 

 

 そもそもダクネスが俺の予定通りにこっちに飛んで来てくれればあんな事にならずに済んだかもしれないんだけど。

 むしろこいつ俺より身体丈夫だし雪崩に呑まれても喜んだかもしれない。けど依頼された護衛対象を放置して結果的に大丈夫でした、では胸を張って依頼達成とは言えないし、悩ましいね。

 

 大体だな、そんなに礼を言われても困るだけだぞ。俺は依頼として金を受け取っているのであって、代金分の働きをするのは既に義務が発生している。契約を守るのは当然だろう。

 それで死んでは元も子もないのはまあその通りなんだけども。

 

 

「まあ死んでもこの私がいれば一回くらいなら生き返らせられるわよ!回復魔法や蘇生魔法は私の専売特許みたいなところがあるわよね!」

 

「えっ?お前マジで?死んだ人間も生き返らせられるってすごいな」

 

 

 カズマが驚いているが、残念ながら俺やカズマ、ミツルギなんかはもう二度と蘇生は出来ない。

 クリスから聞いた話だと天界規定とやらで転生した人間や、もう過去に蘇生されたことのある人間は生き返れないと定められているからだ。

 

 あんまり脅かしてもしょうがないし、これは伏せておいた方が良さそうだが。死んだらそれまでなのは俺もこいつも変わんないんだから。

 

 

 

 

 ※

 

 

 翌日、ギルドで掲示板を見ていたらカズマが話したい事があるとか抜かしやがるから酒場のテーブルで話を聞いてやる。

 最近はこいつらに関わると碌な事がないから警戒しておこう。

 

 

「というわけでさ、改めて思ったんだよ。ウチのパーティーってバランス悪いなって。

 だってそうだろ?防御特化のダクネス、攻撃特化だけど一点集中のめぐみんに、宴会芸特化のこのアホだぞ?」

 

「ちょっとあんた表に出なさいな。この私に向かってアホとか言った意味を思い知らせてあげるから」

 

「せめて宴会芸特化を否定してくれ。

 ……で、さ。なんか俺が覚えられる強力なスキルとか無いか?

 ゼロなら王都で色んなスキルを覚えてるだろ。冒険者の数少ない長所の一つがどんなスキルも覚えられる事なんだから、それを活かしたいんだよ」

 

「……なあ、俺ってお前らからどう見られてるの?相談役かなんかと勘違いしてない?」

 

 

 期待した目でこっちを見てくるカズマには悪いが、それを俺に聞くのは激しく人選ミスだと言わざるを得ない。

 習得スキルはゼロ、魔力もゼロ、知力もゼロのこのゼロさんにスキルについて聞かないでほしい。

 あ、いや、魔力も知力も実際には一桁なだけでゼロではないよ?うん。

 

 

「まあね?確かにカズマが色んなスキルを覚えるのは賛成だ。

 しかしこのゼロさんには教えられるようなスキルは無い。ので、代理人を紹介しようと思うがよろしいか?」

 

「代理人……誰だ?」

 

 

 俺がチラリとアクアに視線を向けるとカズマも釣られてそちらを見る。

 

 

「………?なあに?」

 

 

 出来ればっつーかアクアは連れて行きたくない。ジャイアントトードに虫を与えるようなもん……いや、虫はあちらさんに失礼か。

 

 

「あ!あーあー!その物言いで何となくわかったぞ!」

 

 

 さすが、頭の回転が早いだけはある。今ので俺が誰を紹介しようとしたのか理解してくれたらしい。

 

 

「つー訳だ、アクア。今から行くところは特段面白いことも無いからお前はどっかで遊んでてくれないか?」

 

「?何言ってるのよ。何が面白いかなんて私が決める事なの。それに、もし面白く無かったとしても宴会芸でその場を盛り上げるのがいいんじゃない」

 

 

 なんでこいつはこんなに付いて来る気満々なんだ?遠回しに邪魔だから来んなって言ってんのに。やっぱりそういう察する能力とかが欠如しているのだろうか。仕方ないね、アクアだからね。

 

 

 

 

 

 


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