この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。


作者:「さあ!あと三日で全話修復!頑張るぞい!」

ゼロ:「頑張れ♡頑張れ♡年末で仕事も休みだろうし余裕だな!」

作者:「いや?作者は大晦日まで仕事入ってるけど?」

ゼロ:「は?」

作者:「まあ流石に大晦日は早めに上がらせてもらうし、何とかなるでしょ」

ゼロ:「………………」


三日間で46話まで復元。残と致しまして50話以上。しかもそれ全部見直して改稿して消したり付け足したりして更に仕事………?

………これ無理じゃね?

ゼロは訝しんだ。







46話

 

 

 

 ※

 

 

「ーーというわけでカズマになんか使えそうなスキルを適当に教えてやってくれないか?」

 

 

 王都の話が思いの外長くなってしまったもののやっと本題に入れた。

 カズマとウィズは俺の上手くもない話をどうにか理解してくれたみたいだが、あんだけ聞きたいとか言ってたアクアはもう寝てるし。

 ごめんね、俺長話する時だけ学校の校長先生と同じ催眠機能付きウィスパーボイス使えるからさあ。

 

 

「はい、いいですよ……と言っても私のスキルって誰か相手がいないと使えないスキルばかりなのですが、……あの、ゼロさんお願いできますか?」

 

「お願いできるも何も消去法で俺しかいねえだろ」

 

 

 チラリとアクアを見る。

 

 

「すかー……」

 

 

 幸せそうな顔で熟睡してやがるなあ。無理矢理起こしてお前がやれ!とかはさすがに言えねえか。

 

 

「………即死級のシロモノじゃなければいいぞ。

 カズマ、なんかあったらさすがにアクアを起こしてくれよ」

 

「お、おう。なんか悪いな、ウィズを紹介してくれたり、何から何まで世話になっちまって」

 

 

 気にする必要は無いさ、誰も無料だなんて言ってないんだから。

 

 それともこいつは俺がタダでこんな面倒臭いことをしてやる男だとでも思っているのだろうか。だとしたらとんだお笑い種だ。ただの案☆山☆子ですな!

 

 

「ああ……、そういえばお前はそういうやつだったよ」

 

 

 金が無いと嘆いていたカズマが死んだ魚の目で虚空を見つめる。そのうち間違った青春ラブコメが始まりそうだ。

 

 しかし俺だって別に金に余裕があるわけでは無いのは理解してほしいね。

 確かに傭兵業でそれなりに稼いではいるが、そんなものはウィズのポーションやら宿屋の支払いやら食費などで結構ギリギリなのだ。

 クエスト中に人を助けたりする時は報酬だって貰ってないワケだし、そもそも今日みたいに頼まれ事を聞いてクエストを受けない日もある。

 いくら友人といえども世知辛いこの世界ではあまり期待すんな。

 

 

「せめてベルディアの懸賞金が残ってりゃ俺だってこのくらいの親切は通してやるかも知れなかったのに。

 衣食足りて礼節を知るじゃないがやっぱり世の中ってのは金なんだよどいつもこいつも金金金……」

 

「わかった、わかったよ!お前も色々大変だってことはわかったから!」

 

 

 俺が決して裕福ではないことを熱弁すると、若干引かれたが分かってはもらえたようだ。

 そうなんだよ、大変なんだよ?

 

 

「わかります!わかりますよゼロさん……!そうなんですよ、最近はゼロさんのおかげで何とか固形物を口に出来ていますが以前は砂糖水で湿らせた綿で一ヶ月」

 

「すまなかった!さあ、始めようじゃないか!」

 

 

 そうだった。ここには貧乏話のレパートリーに事欠かない幹部様がいたんだった。

 俺程度が大変だの何だの言うのは本物に失礼だな。ウィズの苦労話は闇が深過ぎる。

 

 ただし半分以上は見境なく変な品を仕入れて金を天下に回しまくるウィズの自業自得であることは言わぬが花。

 

 

「……?はあ、では早速いきますよ?」

 

「イキますよぉ、イクイク……」

 

「ゼロ、汚ねえ。黙ってろ」

 

「ごめんなさい」

 

 

 ウィズのひんやりとした手が俺の手を包む。

 

 おお、リッチーの手って冷たいんだな。これは熱が出た時なんかは頭に乗せると気持ちいいだろう。

 そんな小学生並みの感想を思い浮かべていると。

 

 

「……ッ⁉︎う、おっ……!」

 

 

 凄まじい勢いで力が抜けていく。驚いて声が漏れ出てしまった。

 ヤッバ、これ結構キツイぞ⁉︎

 

 自然と息が荒くなってしまう俺を見てカズマが一言。

 

 

「……なんか美人と手を繋いで興奮してるみたいに見えるな」

 

「ぶっ殺すぞてめえ‼︎」

 

 

 誰のためにこんな目に遭ってると思ってんだ。

 その話をクリスにしたらお前のパーティーからお前の存在が消えることになるから覚悟しとけよ。

 

 しばらく歯を食い縛って耐えていると力を吸われる感覚が薄くなる。ぜ、全然大した事なかったね。あと五分吸われてたら死んでたかもしんない。

 

 

「ーーーとまあこんな感じですね。それにしてもゼロさんすごいですよ、こんなに長い間生命力を吸ったのにまだ半分も残ってるだなんて」

 

「何を半分吸ったって?生命力?」

 

 

 今の俺はどういう状態なんだ。いわゆる半殺しという状態なのだろうか。

 その吸ったモノは返してもらえないのか?フラつくんですけど。

 

 

「ああ!す、すみません、今お返しします……!」

 

 

 再び俺の手とウィズの手が触れ、今度は力が俺に流れ込んで来る感覚がした。

 毎回思うんだがこの世界のスキルはどんな仕組みになってんだかさっぱり分かんねえな。

 

 

「はい、えっと、これが『ドレインタッチ』というスキルです。

 見ての通り触れた相手から体力や魔力を奪って自分に付与したり、逆に自分の力を分け与えたり出来るスキルですね。……あの、いかがですか?」

 

「いや、見ての通りって…、ゼロがウィズと手を繋いで鼻息を荒くしたり気持ち良さそうにしてただけなんだけど。ゼロの変態性しかわからなかった」

 

「お前は今度から夜道に気を付けろよ」

 

 

 月夜の晩ばかりだと思うな。マジで。

 

 

 

 

 ※

 

 

 さて、スキルの実験台が終われば俺は手持ち無沙汰になってしまうな。

 カズマにああだこうだと冒険者の先輩としての威厳を発揮するウィズに話しかける。

 

 

「なあ、ちょっと店の奥に入れてもらっていいか?」

 

「え?でも今奥にはバニルさんしか居ませんよ?」

 

「ああ、あいつに用があるんだよ」

 

 

 一応の許可を得たと判断して奥に入らせてもらう。他の奴はいない方が都合がいい。

 

 店の奥を覗くと、バニルが木箱をガサゴソやりながら背を向けてしゃがんでいた。

 どうやら物品整理の途中だったようだ。邪魔して悪いとは思うが俺の用事を優先させてもらおうか。

 

 

「む?なんだ小僧。ここは関係者以外立ち入り禁止だ」

 

「まあそう言うなって。お得意様を邪険にすると売り上げが落ちるぞ?」

 

「ふん、我輩に聞きたい事があるといった面構えであるな」

 

 

 おっ、さすがは見通す悪魔だ。話が早いじゃねえか。

 

 

「この程度は見通す力を使うまでもないわ。大体、貴様は現世の我輩でははっきりと見通せん。これも王城で言った筈だが?」

 

 

「ああ聞いた。ついでにあの時お前言ったよな、俺が『寄りやすい』って。ありゃどういう意味かをもうちょっと詳しく聞かせてくれないかね」

 

「その前にお得意様、こちらの商品をご覧下さい。

 こちら、お得意様のような魔力のカケラも無い方でも気軽に魔法が使えるマジックスクロールとなっております!効果は『指定した対象の防御力を大幅に下げる』という優れもの!

 あのポンコツ店主が仕入れたは良いが売れそうも無いので処分に困っているのだ。……我輩が言いたい事が分かるか小僧」

 

 

「買わなきゃ答えねえってか?売れそうにないって事は、なんかデメリットがありそうだな。言ってみ」

 

「このスクロールを使用して防御力を下げた相手は攻撃力が大幅に上がる。それこそ天井知らずにな」

 

 

 こいつなんて物売ろうとしやがる。そんなロマン兵器はゲームの中だけにしとけよ。いや、ウィズが仕入れたにしてはマシな方か。使い道は色々ありそうだ。

 

 マジックスクロールとは魔法が封じ込まれた巻物のような物で、本当に丸ごと魔法が入っているので発動させれば魔力を消費せずに魔法が扱えるという便利な道具だ。

 ただし使い捨てなのと、入っている魔法の威力がそのスクロールを作った術者依存なので性能がピンキリなのに対して割合高額なのは如何ともしがたい。

 

 

「一つ幾らだ」

 

「五十万エリスになります。今ならなんと!五個セットで百万エリスのお得価格!お一ついかがか?」

 

 

 高っ。紙切れ一枚が五十万とか小切手かなんかかよ。

 

 

「………支払いは後ほどでお願いしたい」

 

「お買い上げありがとうございます!今後ともご贔屓下さいお客様!

 ……さて、貴様の話だったな……ふむ」

 

 

 商談が成立すると目を光らせてバニルが俺を見てくる。今まさに見通す力を使ってるってところか。

 

 ……んん?でも、俺ははっきり見通せないとか言ってなかったかこいつ。

 

 

「それも王都で言ったはずだぞ。貴様の場合は現在から未来にかけては見通せんが過去は別だとな。

 ……一つ聞こうか。貴様の母親の容姿は赤髪赤目、間違い無いな?」

 

「あ?なんだ急に」

 

 

 目を光らせたまま聞いてくるバニル。

 そうだけどさ。俺の赤い髪はお袋譲りだ。

 

 

「では貴様のその黒い瞳は誰譲りだ」

 

「………?」

 

 

 いや、そりゃ普通に考えたら親父だろ。

 

 

「本当にそうか?貴様の父は茶色の瞳をしていたようだがな」

 

「何が言いたいんだお前は」

 

 

 親父が茶色だろうとそういうこともあるんだろうよ。なんだよ、遺伝じゃないとでも言いたいのか?

 

 

「……まあそれはいい。さて小僧、貴様は別の世界の魂がこの世界で生まれるはずだった胎児に宿った存在である。そう思っているな?」

 

「そんなことまで分かるのか」

 

 

 最強じゃないですか、ヤダー。

 

 と、バニルがなぜか首を振る。

 ………違うってのか?

 

 女神であるエリスが言ったことだから無条件に信じてたけど、あいつも意外と抜けてるところがあるからなあ。

 

 

「ああ、違うな。女神の言うことなどアテにはならないといういい証拠ではないか。

 正確には貴様は知識だけが胎児に宿った存在なのだ。つまり、貴様の魂はこの世界で産まれる筈だった胎児そのものであり、向こうの世界の『貴様』とも言うべき存在と貴様はあくまで別人。貴様の知識に経験というか、記憶が不足しているのはそのためだろうな。

 ………今の貴様から読み取れるのはこんな所か」

 

「はあ?俺の質問に答えてねえだろうが」

 

 

 俺が何にどう寄りやすいとか全然明らかになってねえじゃんよ。

 

 

「喧しいわ。我輩にも確証が持てないことだってある。

 ただ、感覚的な話になるが貴様の気配……考え方などはどうも我々悪魔に近しい物を感じるのだ。あくまで人間の範疇ではあるがな」

 

「……悪魔だけに、あくまで?」

 

「下らん事を抜かすな!……さあ、もう良いだろう。我輩の邪魔をするでない」

 

 

 手の動きだけで追い払われてしまった。俺としては金を払った以上その分は答えて欲しかったのだが、こいつにもわからないってんじゃ仕方ない。

 

 言われるがままに奥から店内に戻ろうとした時、ふと思い付いたこともついでに聞いてみることにした。

 

 

「……なあ、もう一つサービスで教えてくれたりしないか?」

 

「ほう?聞くだけは聞いてやる。答えるのは我輩の自由だがな」

 

「魔王軍や悪魔と戦う度に、俺には赤黒い影が見えるんだよ。アレが何か分からないか?それ以外の時には出てこないんだけど」

 

 

 特に知ったところでどうこうなる話ではないが、正体不明の物が見えるってのは案外不安になるもんだ。

 こいつならもしかして、と思った俺に返ってきたのは期待外れというか、肩透かしを食らったような答えだった。

 

 

「ふむ?そんな物は我輩には見えんがな。貴様の幻覚ではないのか?」

 

 

 ……そう言われたら俺には否定する材料が無いな。友達が居ないのが寂しくて作っちゃったエアフレンズ。わお、悲しくて涙がちょちょ切れるぜ。

 

 

「いや、悪かったな。結局よく分からんままだけど、まあ後はなるようになるさ」

 

「待て小僧。その影とやらは見るたびに近づいてはいないか?」

 

「…………?」

 

 

 近づいているかと聞かれたら、そりゃ近くはなっているさ。何せ俺が『アイツ』を追いかけているんだから。

 

 

「それがどうかしたのか?」

 

 

 なぜそんな事を気にするのか分からずに聞き返してもバニルは言い澱むだけだった。

 

「いや………、後は貴様の言う通りなるようになるだろう。とにかくさっさとあの光り物と小僧二号を連れて帰れ。

 我輩はここに何故か増えているガラクタについてあのポンコツ店主に話がある。

 それともこの中から何か買っていくか?そうであれば大歓迎である」

 

 

 まーた錬成したのか、壊れるなぁ……。等価交換の法則はどこへ行ったのだろう。

 そしてまだ俺から毟るつもりかよ。スクロール買って素寒貧だよ。これ以上はポーションだって買えやしない。ポーションの補充はまた今度だな。

 

 

「……案外その影が『貴様』なのかもしれんな」

 

「あ?今何か言ったか?」

 

 

 店の奥から出ようとした俺にボソリと何かが聞こえる。

 

 俺に発した言葉というより独り言みたいな感じだな。現にバニルは聞き返した俺を無視し、ガラクタを箱にしまう作業を続けている。

 

 ……まあいいか。言う必要がある事ならそのうち改めて言ってくるだろ。

 

 

 

 

 

 


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