この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。







47話

 

 

 

 ※

 

 

 バニルと別れた俺が店の奥から店内に戻ると、何やら知らないおっさん二人が透けているウィズと会話していた。

 

 ……うん、ウィズが透けてる。なんでこんな消え入りそうになってんだこいつ。会話してるおっさん達も不思議に思わないんだろうか。

 

 カズマと、いつの間に起きたらしいアクアもいるにはいるが、カズマの方はウィズに対して申し訳なさそうな顔をしている。アクアはいつも通りだが。何かあったのだろうか。

 

 

「いや、それがお前が奥に引っ込んだ後、もう一つウィズにスキルを教えてもらうことになってさ、それも相手がいないと使えないって言うからアクアを起こして使ってもらおうとしたんだよ。

 そしたらこのバカがウィズのスキルに抵抗しやがって、ウィズが何とか成功させようとずっと触ってたら、こいつの神聖な気とやらに当てられちゃったんだと。で、あんな感じに」

 

「だってしょうがないじゃない!リッチーのスキルにかかるなんて女神の沽券に関わることだわ!

 それに私の発する神聖で清浄なオーラは抑えられるものじゃないの!」

 

「バッ、お前……⁉︎」

 

「「……リッチー?女神?」」

 

 

 カズマが慌ててアホの口を塞ぐが少々遅かった。

 

 ウィズと話していたおっさんらが訝しげにウィズとアクアを交互に見始める。ウィズは汗をダラダラ流して震えているな。いや、誤魔化すなり何なり出来るだろ。

 

 テンパって挙動不審になるウィズ。……仕方ないな。

 

 

「カズマ、アクアの冒険者カードを貸してくれ」

 

「?あ、おう」

 

「ちょっと、私の大切なカードに何すんのーーー」

 

「『スティール』。ほい、ゼロ」

 

 

 泣きながらカズマに摑みかかるアクアを無視してカードを受け取り、おっさん二人にアクアの極めて低い知力の項目を見せる。ついでにこめかみを人差し指で指してクルクル回すのも忘れない。

 

 

「「ああ、なるほど……」」

 

 

 どうやら納得してもらえたようだ。

 

 カズマに頰を引っ張られて大泣きするアクアを可哀想な目で見て頷いてくれた。

 

 

「それではウィズさん、よろしくお願いします」

 

 

 二人がウィズに頭を下げて出て行く。何か頼み事をされていたような雰囲気だったが?

 

 

「あ、はい。実はーーー」

 

 

 ウィズによるとさっきの二人はとある屋敷の持ち主で、その屋敷に最近幽霊が頻出するようになってしまった為に凄腕のアークウィザードであるウィズに浄霊を依頼しに来たのだとか。

 俺も門外漢だけど頼む相手間違えてない?幽霊ならウィザードよりプリーストってのは常識である。ウィズがそれ関係に強いのはリッチーだからだろうに。

 

 

「なあ、それ、俺達がやろうか?」

 

 

 カズマが唐突にそんな事を言い出した。

 

 

「大丈夫か、お前!熱でもあるのか⁉︎ウィズ悪い、ポーションを飲ませてやってくれないか!代金はもちろんこいつ持ちで!」

 

「どういう意味だよ‼︎」

 

「カズマ、どうしちゃったの?そんな他人のためになるような事を言い出すなんてカズマらしくないわよ。

 ………『ヒール』」

 

「おいやめろ、頭に回復魔法かけるな。お前の魔法で頭が悪くなったらどうするんだよ。

 大体、こんな消えそうなウィズを見て原因であるお前は何とも思わないの?」

 

 

 要するに罪悪感というか、ペットの不始末の責任を取る飼い主の心境のようだ。良かった、カズマが良い奴になったら世界の法則が乱れるところだった。

 

 内心で失礼なことを思い浮かべていると、アクアに消されかけた凄腕アークウィザードが申し訳なさそうに頭を下げる。

 

 

「えっと、それではお願いしてもよろしいでしょうか?霊たちも私なんかより女神であるアクア様の方が安心できるでしょうし……。

 先ほどの方には私から伝えておきますが、今日はその屋敷に泊まり込んで、ということになると思います」

 

 

 どうやら話は自然に纏まりそうだ。

 

 俺の心配はアクアが嫌がって駄々をこねることだったが、大きな屋敷に泊まれて自分の得意な浄霊が出来るからか、満更でもない様子だ。

 

 敵さんが幽霊じゃ俺がいても何も出来ないし今日はここら辺で別れるのが良いだろう。

 

 

「じゃあカズマ、俺は帰るぞ。自分で引き受けたことは投げ出すなよ」

 

「分かってるよ。……ほら、行くぞアクア。めぐみんとダクネスにもこの事を言わないといけないし、泊まる準備もしないといけないからな」

 

「あ、待って。ゼロもバイバイ」

 

 

 俺と一緒に店を出る二人。手を振るアクアにこちらも手を振り返して宿へ歩き出す。

 

 アクアのああいうところは俺はわりと嫌いじゃない。子供とかの仕草は見ていてほっこりするからな。

 それをしているのがあの図体の年齢不詳で、極め付けに女神ってのはこの際置いておいて。

 

 

 

 ※

 

 

 翌日。

 

 よく考えたら昨日はカズマから報酬を貰っていなかったため、バニルからボられた分の持ち金を補充できていなかった事に気づいた俺は、今日こそは、と難易度が高めのクエストを受けようと掲示板を見てーーー。

 

 

「あ!ゼロさん!今日も稽古つけてもらって良いですか良いですよね、お願いします!」

 

 

 横から出てきたイケメンをノータイムでぶん殴ってやった。

 

 

「痛い⁉︎な、何するんです⁉︎……あ、もしかしてもう始まってるって事ですか!

 さすがはゼロさんですね……!「常に気を引き締めていろ」。こんな気持ちが痛いほど伝わって来ます!

 ……というか本当に痛い……」

 

 

 違う、そうじゃない。

 

 込めてもいない思いを勝手に汲み取られても困惑するだけだ。一体お前には何が見えているというのだ。

 

 俺に殴られた頰を押さえながら立ち上がる男。

 青っぽい鎧を身に付け、本日も勇者然とした装いのミツルギは俺の反射的に突き出した拳にすら何かを感じ取れたらしい。

 凄い感性ですね?危ないモノでもやってるんじゃないですかぁ?(煽り)

 

 

「………なあミツルギよ、俺とお前が知り合ってどのくらいになる?」

 

「やだなゼロさん、忘れちゃったんですか?二ヶ月と半分になりますよ」

 

「……その間、お前が俺のところに来た回数も言ってみろ」

 

「今回で二十二回目ですね!」

 

 

 もう一回ぶん殴った。今度はさっきとは逆側の頰だ。

 

 そう、こいつはボコボコにしてやったあの日からあろうことか三日から四日おきに俺の元を訪れるようになってしまったのだ。

 絶対におかしいと思う。普通あんな別れ方をしたら、何ヶ月、あるいは何年と修行を重ねて自分が満足いくまで強くなった後に、「僕ともう一度闘ってください、今度は負けません!」的なことを言って再戦するものじゃないのか?少年漫画な王道展開だと。

 

 当然ながらこいつに関わっている間はクエストを連続で受ける事も出来ないし、金が減る一方だ。

 最初はそれこそ元気があって大変よろしいとプラス思考で相手をしてやっていたが、俺にも我慢の限界というものがある。

 俺に負けたくせに何回も登場して恥ずかしくないんですか?出てくるならせめてハロウィンにチェイテ城という限定的な時と場所にしてもらわないと。

 

 

「ゼロさんがいつでも稽古してくれるって言ったんじゃないですか!」

 

「俺はお前がこんなに図々しいとは思いもよらなかったんだよ!

 俺を超えたいだの何だの偉っらそうな口聞いといてなんだその体たらくは⁉︎恥を知れ!」

 

 

 こいつ本当に俺の迷惑とかを考えないらしい。そういうところを直せと言ったのにちっとも直りゃしねえ。

 学習出来ない人間は霊長類辞めろ。猿の方がまだマシだぞクソッタレが。

 

 

「えっ、僕って迷惑だったんですか?」

 

「今まさに迷惑してるところだよ!」

 

 

 気付いてもいなかった。鈍感にも程があるだろ。そんなだから取り巻き二人の好意にも気付かないんだよ。

 

 難聴かつ鈍感な主人公。俺は嫌いじゃないがそれは創作物の中の話であって現実で存在が許されるかどうかはまた別なのである。

 

 

「とにかく、今日は無理だ。俺にも生活ってもんがあらぁな。

 特に最近は金が入って来ないわりに減るのが早すぎるんだよ。一文の得にもならんお前の相手はしてられんから日を改めてくれないか」

 

 

 こんだけ分かりやすく言ってやったんだ、さすがにそろそろ遠慮という物を覚えてもらわないと俺が困るしーー

 

 

「………?お金がなら僕が払いますよ?僕もタダで訓練してもらってると罪悪感くらいは感じますから」

 

「さて、今日はどこへ行く?何をどう伸ばしたい?時間は有限だ、適当なクエストを受けてさっさと行くぞ」

 

 

 金を戴けるとなれば話は別である。

 

 手のひらクルックルだ。まあ俺の手首はドリルで出来てるからね。

 俺のドリルは天を創る……あ、ダメだ。このセリフは熱過ぎるわ。こんなところじゃ使えん。これは来るべきアンチスパイラルとの決戦用にしておこう。

 

 

「というかゼロさんの実力でお金に困ってるってどういう事ですか。

 僕が知る限りでも相当な数のクエストこなしてますよね。何に使ってるんですか?」

 

 

 何に使ってるのか、と聞かれたら大半はウィズの店に消えているわけで。その金をウィズが有効利用してくれるならまだしも仕入れるのはゴミやガラクタの山である。

 つまりその質問に対しては『金をドブに捨てる』の表現が最も正確だと思われる。……あれ、なんだろう、目から汗が。

 

 

「そ、そんなことはどうでも良いんだよ。それより何か受けたいクエストとかはあるか?」

 

「いえ、ゼロさんに任せます。あ、お金はこのくらいで良いですか?」

 

 

 そう言ってミツルギが取り出すのはずっしり重そうな袋。百万は入っていそうだ。マジかよ、百万エリスPON☆とくれたぜ。

 ……なんでこんな大金をパッと払えるのだろう。そんなに稼いでいるのか。

 

 

「僕くらいになるとこれが普通ですよ。だからゼロさんがおかしいんですって。レベルがこんなに高いのに金欠の人なんてゼロさんしか知りませんよ」

 

「………………」

 

 

 また流れそうな涙をぐっと堪える。

 

 泣いて良いのは……、トイレか……パパの胸の中だけだもん……!

 

 あ、俺親父居なかったわ。普通にトイレ行ってくる。

 

 

 

 


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