この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。



ゼロ:「なあもう無理だって。諦めて今年最後の投稿話で読者さんに一言謝ってさ」

作者:「ウルセェ‼︎てめえ仮にも主人公が簡単に諦めてとか言ってんじゃねえぞ!俺の分身なら当たり前だよなぁ⁉︎」

ゼロ:「んーな事言ったってこのペースじゃよお」

作者:「……そうだ、いい事思い付いた。まず今夜から明日にかけて徹夜するだろ?そんで仕上げた話を一時間に一話、予約投稿使って放出するだろ?」

ゼロ:「ん、おう」

作者:「さらに明日から明後日にかけても徹夜するだろ?そんで同じことすればほおら、ジャストで元に戻るまで持ってける!そして新年明けましておめでとうで投稿する予定だった最新話をブチ上げれば!完璧じゃね?」

ゼロ:「……明日と明後日の仕事は?」

作者:「バカ、出るに決まってんだろ。その為に予約投稿使うんだ。
なあに、作者なんか年越しは毎年三重県に行ってオールナイトフィーバーしてんだから二徹ぐれえ余裕余裕。今年は行けなくて残念だけどなあ」

ゼロ:「俺知ってるぞ。あんた、オールナイトとか言っても耐え切れなくて毎回台に座りながら寝てるだろ。手はちゃんと捻ってるみたいだが」

作者:「……あ、この話題やめやめ。作者がカス野郎だってバレちゃう」

ゼロ:「(もう遅いんだよなぁ……)」






51話

 

 

 

 ※

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー、ご飯出来てるよー」

 

 

自分を慕ってくれる弟子を置き去りにした事はこの際すっぱり忘れる事にした俺が自室のドアを開けながら帰宅を告げると、普段着である『盗賊っぽい服(クリス談)』ではなく、寝る時に着用するような薄いピンク色をしたパジャマみたいな服装をしたクリスが出迎えてくれた。

 もう見慣れた姿だが、実に良い。

 

 クリスは最近は女神として死んだ人間の魂を導く仕事には出ていない。

 というのも、クリスの担当するのは『モンスターによって死んだ人間』であり、冬場はクエストを受ける人間が少ないからだ。そしてその『少ない』に含まれる奴らも俺が全力でサポートすることによって、なんとアクセル始まって以来の犠牲者ゼロを実現している。要するにとても暇なんだとか。

 もちろん分身出来るわけではない俺ではアクセル近辺をカバーするのがやっとだが、そもそもモンスターに殺されるようなヘマをする冒険者は基本的に駆け出しと相場が決まっている。

 冬は魔王軍すらも動きが鈍くなるのでそちらの被害はこの時期は考えなくともいいしな。

 故に、駆け出しの街アクセルで犠牲ゼロになればそれだけでクリスの仕事は激減、俺と一緒にいられる時間が増えるのだ。

 

 それでは、そのとても暇なクリスさんが普段何をして過ごしているかというと。

 

 

「今日はね、ゴミ捨て場にカラスが出るっていうからそれを追い払いに行ったんだよ。ついでにその周辺だけだけど掃除したりね。明日は他の場所に行こうかな」

 

「カラスねえ。目とか突かれないようにしろよ?」

 

「分かってるよ!あたしだって冒険者なんだから、カラスなんかに遅れは取らないっての!」

 

 

 ボランティアなどアクセルに住む人を手伝ったりしている。それだけではなくエリス教の教会や、ギルドの雑用などを引き受けて陰ながらに他の冒険者をサポートしているようだ。

 それでなのか、ギルドにクエストを受けに行くと「クリスのおかげで助かっている」、「今度お礼を言っておいてくれ」などの感謝の言葉が俺に届く。いやー、できた嫁を持つと誇らしいわー。

 

 いつも通りに箸を動かしながら相槌を打っているとーーー

 

 

「あ、それとね、そのゴミ捨て場でバニルさんって人と仲良くなったよ!」

 

「ブバッ⁉︎」

 

「うわっ⁉︎ちょっと、何さ!汚いよ!」

 

 

 口に含んだ食い物を噴き出してしまった。

 

 ちょっと待ってくれ。あれだけ苦労してきて今まで一度も止まったことが無かった俺の心臓がガチで止まりかけたぞ。

 

 咳き込む俺にクリスが心配そうにしてくる。

 

 

「大丈夫?背中さすろうか……?」

 

「い、いや、悪い。続けてくれ。その、バニルさんがなんだって?」

 

「うん?そのバニルさんはウィズさんっていう元凄腕冒険者の人が経営してる店にここ最近バイトで入ったんだけどね」

 

 

 どうやら近所やギルドにはそれで通してるらしい。そう言えば店に行った時にそんな事を言おうとしてたような気もする。

その解釈でも間違いではないから特に問題にはならないのだが……。

 

 

「カラスってすばしっこいじゃん?だから一羽ずつ追い払うのに苦労してたんだけどバニルさんが、

『フハハハハ!ご近所付き合いも大事にせねばならぬな!どれ、お嬢さん、お手伝いいたしましょう‼︎』

 って言ってあっという間に追っ払っちゃったんだよ!いい人だよねー」

 

 

 あいつ何やってんだよ。いや、文句言うようなことはやってないんだけど。

 

 

「その後はウィズさんのお店でお茶をご馳走になっちゃった。あのお店って面白い物売ってるんだよ。

 あたしは最高品質のマナタイトを勧められたけど、値段聞いて心臓止まりかけちゃったよ。元々大した魔力を消耗するスキルなんて覚えてないし使わないから買っても困るだけだしね」

 

 

 あそこで俺が買ったものは今のところクリスに全否定されているのだが、それを面白いで済ませるならあんなに俺に怒らなくても良かったんじゃないかなあ。

 

 というか、だ。

 

 

「その、クリス?バニル……さんとかウィズさんを見て何か感じなかったのか?」

 

「へ?だからいい人だよねーって」

 

「………………」

 

 

 どうやらクリスは悪魔がどうとかアンデッドがどうとかはよく分からないらしい。節穴かフラウロス‼︎

 

 しかし、同じ女神だというのにアクアの方はあんなに悪魔の気配に敏感だったではないか。姿を見る前から汚らわしいとか腐臭がするとか言ってたし。

 

 

「……なあ、お前もアクアも同じ地上に降りてるわけじゃん?」

 

「……?何、急に」

 

「お前がクリスとしてここにいるのとアクアがアクアのままでここにいるのってやっぱどっかしら違いがあるわけ?」

 

「そりゃ大違いだよ。あたしはここにいる時は女神としての力なんてほとんど封印してるからね。ここにいる『クリス』はあくまで人間としての器ってこと。

 でも先輩は本当にあのまま引っ張ってこられちゃったから、地上では女神の力が弱まるとは言え本物の女神として顕現してるわけだよ」

 

「………なるほどね」

 

 

 把握した。

 

 要するにここにいるクリスは女神ではない。アクアは女神である。

この違いなのだろう。それで悪魔の存在を感知できるかできないかが決まってしまうとはなんとも曖昧だな、女神ってのは。

多分それの影響もあってあの鋭いとかそういうのを超越したトコにいる見通す悪魔もクリスを認識出来ないんだ。

 

 ………あれ。こいつが悪魔を察知できる訳じゃないんなら、じゃあ俺もサキュバスサービスでワンチャンあったんじゃね?

 ……ちょっと確かめてみるか。

 

 

「なあ、俺からなんか変な匂いがする、とか変な気配がする、とか無いか?」

 

「ええ?何それ。そんなの分かんないよ」

 

「もっと寄ってみろって」

 

「んんー……」

 

 

 これで悪魔の匂いがするって言われたらバッドエンドだ。もう一度セーブポイントからやり直す羽目になる。ちなみに俺の冒険の書はバグってるのでどれだけ上書きしてもセーブなんて出来ない仕様です。

 

 鼻をすんすん鳴らしながらこちらに近づいてくるクリス。それでもまだ分からないのかどんどん顔が近くなる。おっとこれは?

 

 ………オーライ、オーライ、オーライ、キャッチ。

 

 最接近したタイミングで抱き締めてみた。

 

 

「どうだ?なんかわかったか?」

 

「この匂いは……、銭湯の石鹸の香り。帰ってくる前に行って来たでしょ?」

 

「お、よくわかったな。……その他は?」

 

「別に何も感じ…な…い……?

……………っ⁉︎」

 

 

 サキュバスの方はセーフだったようだが今度は俺の行動がアウトだったようだ。

 みるみるうちに顔が真っ赤になっていくクリス。いやー、もう少し楽しみたかったけどなー。

 

 と、ガツンと顎に衝撃が来て視界が揺れる。どうも人体の急所である三日月にヘッドバットをくらったらしい。

 

 

「にゃっ、なななななにしてんのさキミ⁉︎」

 

 

「何って……、近寄ってきたから抱き締めて欲しいのかなって思って」

 

「そんなわけ無いじゃん‼︎バカ、エッチ!変態!何もしないって言ったのに‼︎」

 

「ありがとうございます‼︎ありがとうございます‼︎」

 

 

 クリスが手当たり次第に色んな物を投げてくるが、残念ながら痛くも痒くも無い。といってもかなり本気で投げているようなので常人には当たれば相応のダメージが行くだろう。

 

 しかし俺の特典は『鍛えれば鍛えるほど強くなる体』であり、その強くなるには肉体の強度も含まれる。つまり痛い思いをすればするだけ堅くなっていくのだ。おっと、蒲郡先輩の話はそこまでだ。俺はMではない。

 

 この世界に生を受けてから潜ってきた死線の数だけ堅くなっている俺には生半可な打撃では意味を為さないーー

 

 

「ってうおおおい‼︎刀身丸出しのダガー投げんのは止めろよ!刺さったらどうすんだ!」

 

 

 乱れ飛ぶ雑貨の中に光り物を見つけて指で挟み止めながら叫ぶ。

 お前刃物投げるのはナシだろ。目に当たったら失明するかもしれないんだ、気を付けろ。

 

 

「どうせ避けるか止めるかするじゃん!あたしの攻撃なんかほとんど効いてないくせに!」

 

「バカ、それは本当にシャレにならねえって‼︎」

 

 

 そう言いながらまたもクリスが投擲しようとするのは爆発ポーションの瓶(中身入り)だった。

 

 おいなんだよ、使い切ったと思ったらこんなところに一個余ってたのか。

 ……爆発物を家に保管してるって日本だったら免許いるよなあ。この世界色々ユルくね?

 

 

 

 ※

 

 

 クリスは不貞腐れて早々に寝てしまった。今さら抱き付くくらい良いじゃんねえ。

 ま、確かめたかったことは確認出来たから良いけど。

 

 俺はサキュバスサービスはいらねえ。理想そのものがそこにあるんだからな。わざわざ夢を使う必要が無い。

 エロいことがしたくないと言えば嘘になるが、そんなもんは本人との合意がなきゃ意味がねえんだ。それを再確認できた。

 

 そういうことがしたいならゆっくりと心を許してもらっていけばいい。そのための時間ならいくらでもあるのだから。

 

 俺もクリスとの今後を楽しみにしながらいつも通り浅すぎる眠りについた。

 

 

 

 ※

 

 

「今日も一日がんばるぞい‼︎」

 

「……ぞいって何?」

 

 

 ぞい君さあ、ぞいぞい言ってないでさあ!

 

 翌日、起床した俺とクリスが部屋を出ながら戸締りをする。

 今日はウィズの店に行って爆発ポーションを補充してからクエストに出掛けようと思っている。ついでにバニルに先日の借金を返さねば。

 

 

「それにしてもゼロ君がウィズさんのお店の常連さんだったとはねー。……世間っていつからこんなに狭くなったんだっけ?」

 

「狭いのは世間じゃなくてアクセルだろ。ほら、クリスは今日も町内清掃だろ?途中まで一緒に行こうぜ」

 

「あ、うん」

 

 

 朝日が昇り始め、段々と明るくなる街を二人並んで歩く。

 そう、こんな日常はずっと続くのだから、焦る必要など無いさ。

 俺が昨日の続きを考えながらクリスと気温の話をしていると。

 

 

『緊急‼︎緊急‼︎』

 

 

 久しぶりに流れた警鐘と放送によって会話が断たれてしまった。

 

 ……?なんだこの警鐘?聞いたことない音だな。

 

 クリスも初めて聞く音らしく、近くにあったスピーカーに揃って目を向けて放送の続きを待つ。程なくして聞こえてきた内容は、

 

 

『デストロイヤー警報‼︎デストロイヤー警報‼︎機動要塞デストロイヤーが、現在アクセルに向かって侵攻中!全冒険者は速やかに装備を整えてギルドに!一般の住民の方々は直ちに避難してくださいっ‼︎』

 

 

 俺が望む全てをぶち壊す物だった。

 

 

 ーーー日常壊れんの早くね?

 

 

 

 

 


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