この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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54話

 

 

 

 ※

 

 

 アクセルから少々離れた平原でカズマとダクネスは何か話しているようだ。

 

 雰囲気的に真面目な話のようだが、こちらも生きるか死ぬかの真面目な話だ。優先させてもらおう。

 

 

「おーい、ダクネーー」

 

「ララティーナって呼ぶなあ‼︎」

 

 

 ええええ⁉︎俺今ちゃんとダクネスって呼ぼうとしたよね⁉︎

 

 そもそもダクネスをララティーナ呼びしたことなんざ一回も無いぞ。王都でもダスティネスって呼んでただろうが。

 俺が理不尽に対して言い返そうとすると、ダクネスとカズマが何やら言い争っている事に気づいた。どうやら俺に言った訳では無いみたいだ。

 

 ……あいつは確か自分が貴族だって事を隠していたはずだが、カズマには明かしたらしい。なんでこのタイミングなのかは知らん。きっと大人の事情でもあるのだろう。

 

 カズマがこちらに歩いてくる。もうアクセルの正門前で待機しに行くようだ。

 

 

「カズマ。もし俺達が失敗したら後は頼んだぞ」

 

「……ふぅ、こっちも不安だらけなんだからなるべく失敗しないように頼むぞ。あの爆裂狂一人に任せる事になるんだからな」

 

「ああ。それと、これ渡しとくわ」

 

 

 俺が小さな懐中時計の様な物をカズマに渡す。これはルナから預かった物で、送受信一体の無線だそうだ。カズマ達とは距離がかなり空いてしまうからな。こっちが作戦決行中に独断で爆裂キメられても困る。これで連絡を取り合おう、という訳だ。

 

 

「もう一度確認するぞ。爆裂魔法は最後の手段だ。動力に何使ってるかも分からんエンシェントウェポンに爆発系とか本当は正気の沙汰じゃねえんだからな。狙うとしても本体には絶対に当てるなよ。脚だけだ」

 

「分かってるよ。……これがアクアだったらそのセリフはフリだ!とか何とか言うんだろうけどな」

 

 

 冗談でもマジで止めてくれ。本体吹っ飛ばしたけど一緒に街も吹っ飛びました、とかネタにもならん。

 

 カズマと別れてダクネスに歩み寄る。

 

 いよっし、こっから先は失敗する事を考えてもしょうがねえ。切り替えが大切だ。成功する事だけイメージしてりゃいい。

 アレだ、『イメージするのは常に最強の自分』ってな。

 

 

「ダクネス」

 

「……ゼロか。そう言えばお前の作戦の詳細を聞いていなかったな」

 

「まず詳細も聞かずによくこんなとこまで来たなお前」

 

 

 こちらに向き直りながら話を聞く態勢を整えるダクネス。

 あと一時間くらいで到着予想時刻になる。せっかくだからこいつにも言いたい事は言っておくか。最後になるかも分からんしね。

 

 

「………俺は正直お前があんま好きじゃねえ。バカだし、空気読めないし、ド変態だし」

 

 

 指を一つずつ折りながら気に入らないところを述べていく。こいつに関してはまあこんなもんかね。意外と少ない事に俺が驚いちゃうわ。

 なお自分で言っといてなんだが特大ブーメランが返って来ている模様。

 

 

「んっ、くっ、ぬあっ……!お、お前はこんな時に私をどうするつもりだ!」

 

 

 どうもしませんけど。

 

 無視して先を言わせてもらおう。せっかく人がカッコつけて最後になるかもしれない挨拶してんだからさあ。もうちょいこう……無いのかな、こいつは。無いんだろうなあ。

 

 

「ああ。お前のそういう雰囲気とかガン無視するところが俺は嫌いだ。

 けどな、お前のその体の堅さと、仲間を思う気持ち、何よりこの街を守りたいっていう貴族としての心構えは信用……いや、信頼している」

 

 

 折った指をまた一つずつ伸ばしながらこいつの良いところを必死に探して言葉にする。

 ……あれっ、帳消しになっちゃった……まあいいか。

 

 今度はダクネスもさっきの名残か、頰を赤らめながらも俺の続きを待っている。普段からそうしてりゃもうちょっとマシなのによ。

 

 

「……そのお前に今から作戦の説明をするぞ。

 お前が嫌なら、癪だがめぐみんの爆裂魔法に頼る事になる。それは説明を聞いて判断してほしい」

 

「いや、大丈夫だ。任せてくれ」

 

「………そう言うとは思ってたけどな。いや、まずは聞いてくれ。到着まであと一時間はあるが、予想がズレる可能性もある。手早く行くぞ。

 ……我ながら馬鹿げた作戦だと思うが、質問があれば答える」

 

「ああ。わかった」

 

 

 いい返事だ。

 

 了承するダクネスに頷き返してから、俺は特大の爆弾を落とした。

 

 

「今からお前には機動要塞デストロイヤーを受け止めてもらう」

 

 

 

 

 ※

 

 

 ダクネスが無言でいるのを意外に思いながら説明を続ける。てっきりここら辺でツッコミが入ると思ったんだがな。

 

 

「いいか?まずアクアに、デストロイヤーが解除魔法の射程ギリギリに到達した瞬間に結界を破ってもらう」

 

 

 これが一つ目の仮定。

 

 ここで結界を解除出来ないかもしれない。

 

 その場合はもうどうしようもない。それこそアクセルが滅びるのを棒立ちで眺める羽目になる。

 

 

「次に俺が手持ちの道具を使ってデストロイヤーの脚を最低でも二本、停止させてみせる。

 ……俺の予想が正しければその二本を完全に破壊できれば全ての脚を停止させることができるはずだ」

 

 

 ここでダクネスが手を上げる。はい、ダクネスさん。

 

 

「なぜそんなことが分かる?二本壊せれば全ての脚が止まるなど、都合が良すぎないか?」

 

「良い質問だ。……お前、ゴーレムの構造は知ってるか?なにで動くか、とかだ」

 

「……?それは魔力で動いているのではないか?」

 

「その通りだ。じゃあその魔力がどう流れて手足を動かしているか、とかはどうだ?」

 

 

 今度は首を振るダクネス。まあそうだろうな。俺だって王都にいた頃知り合いから聞きかじっただけの知識だ。まさかこんなところで役に立つとは思わなかったが。

 

 

「ゴーレムってのは基本的に術者が操るもんだ。人型のゴーレムであればそれぞれの四肢に魔力を通して、自由自在とまではいかないが、ある程度は自分が動くように動かすことができる。

 でもデストロイヤーには八本も脚がある。これを術者が完璧に操るのはかなり難しい。なにせ人間には手足合わせて四本しか付いてないからな。

 自分に付いてない機関を自分で無理矢理動かすよりは半自動にした方が楽だし、便利だ。と言うわけでそれはまず間違いないと思う」

 

 

 つーかそうしないとその乗っ取った開発者とやらは何百年も休まずに動き続けてる事になる。逆に怖いわ。

 寿命に関しても俺は突っ込みたいが、魔法も度を越した科学も存在したこの世界、気にするだけ損だ。

 

 

「その半自動でも脚一本一本に魔力を流して動かすこともできる……が、そんなめんどくさい事しなくてももっと楽に動かす方法がある。

 ある一本が動けば次は自動的にこの一本が動くって感じに最初にプログラミングしておくんだ。

 これを正確にはシーケンス制御っつーんだが……詳しい説明は省くぞ。必要も無い。

 要するにあの脚は魔力の流れが繋がってるんじゃねえかって俺は思うんだ。これに関しては仮定に過ぎないが可能性はかなり高いと考えてる」

 

 

 

 これが二つ目の仮定&推測。

 

 繋がってないかもしれない。

 

 だが今言った通り可能性は低いだろう。なぜかって、その方が楽だからだ。わざわざ動きを複雑化させる必要が皆無に等しい。魔導技術大国ともあろう国が簡略化を図っていないとは思えないのだ。

 

 技術が優れているから動きを難しくするんじゃない。優れているからこそ動作は複雑にしてもそれに必要な動きは簡単にするもんだ。

 

 

「そこで俺が脚……前脚だな。前脚を二本とも破壊してみせる。動きの起点でもあるし、何より最初に体重がかかる脚だ。そこで魔力の流れが途切れてくれれば残りの脚も正常には動かなくなるはずだ。

 そうでなくとも確実にバランスは取りにくくなるし、スピードなんかは絶対に落ちる。

 んで、その後。俺の策が上手くいって脚が全停止したとしよう。前脚を破壊すれば踏ん張りも効かないだろうし、頭からつんのめると思う。

 ……それだけだろう、相当の勢いがついているデストロイヤーは簡単には止まっちゃくれねえ。そこでお前の出番だ。

 お前にはここから立ち退かずにデストロイヤーを街に到達しないように堰き止めてほしい」

 

 

 ここでまたダクネスが手を上げる。さすがにそろそろ来るだろうとは思ってたよ。はい、ダクネスさん。

 

 

「お前が私を信頼してくれるのは嬉しいし、そんなことができればすごく気持ち良さそ……んんっ……。

 ……そんな大役を任されるのも嬉しいがーーー」

 

「お前今気持ち良さそうって言ったな?」

 

「言ってない。ーーーだがさすがに無理がないか?いくら私の耐久が高くとも、相手はあのデストロイヤーだぞ?」

 

「そこでこのポーションだ。これをお前に預けておく」

 

 

 俺は懐から黄色の液体が入った瓶を取り出してダクネスに手渡す。高かったんだからな、このポーション。

 

 物珍しそうに瓶を眺めるダクネス。

 

 

「……なんだこのポーションは?初めて見るが」

 

「そのポーションの効果は『使用者の筋力と耐久のステータスを一時的に数十倍に上昇させる』だ」

 

「数十⁉︎」

 

 

 驚いたダクネスが瓶を落としてしまうが、落下直前に俺がキャッチする。危ねえな。これが無いと詰みなんだから気を付けろよ。

 

 

「あ、ああ、すまん。……しかしそんな凄いポーションは聞いたことがない、一体どこで売っているんだ?」

 

「非売品です」

 

 

 

 コーヒー一杯につき一回モフモフさせてやろう。

 

 じゃあ三杯‼︎(幻聴)

 

 

「それにそんな便利なもんじゃねえんだそれは。致命的な欠点がある」

 

「欠点?しかしそれほどの効果があるのだ、多少の欠点など関係無さそうなものだが」

 

「そいつはな、飲んだら麻痺して動けなくなっちまうんだ。本当に、一歩もな」

 

「……………。し、しかしだな、私は状態異常の耐性も上げてある。これなら」

 

「関係ない。どれだけ耐性を上げようが絶対に麻痺する」

 

「…………………」

 

 

 理解してくれたようだな。そいつがいかに高価なゴミなのかを。

 

 最初こそ俺の攻撃されればされるほど強くなる身体を利用した鍛錬をしようとウィズの店で買ったのだが、麻痺が思った以上に厄介だったために断念せざるを得なかった。

 どれだけ耐久と筋力が上がろうとも動けないのでは何の役にも立たない。ジワジワとモンスターに嬲り殺されるだけだ。

 

 かと言って五個セットで八十万エリスもしたポーションを捨てる訳にもいかず封印してあったのだが、日の目を見ることができて良かった。

 しかもその麻痺する性質もこの状況なら利点にすらなり得る。アホ耐久のダクネスがこのポーションを飲めば俺のデュランダルでさえ斬れないのではないかね。

 

 ルナから聞いた話だとデストロイヤーの主材は鉄よりも軽い魔法金属でできているという。これなら止められる可能性は高いはずだ。

 

 

「ーーー以上が俺の作戦の全容だ。これぐらいしか勝算のある策が思いつかなかった。ま、要約するといつも通り壁をやれって話だな。

 俺が知る中で最も優秀なタンクがお前だ。これはお前にしか出来ない。どうよ、やってくれるか?」

 

 

 聞きながらもこいつなら間違いないだろうな、と諦観にも似た気持ちで答えを待つーーーまでもなく即答してくれた。

 

 

「無論だ!アクセルを守るために私の体を使えるだけでなく私の欲望までも満たせるなど願ってもない!」

 

「ついに欲望とか言っちゃったよ」

 

 

 もっと恥じらいを持っていただけないかなあ。

 

 だが前半はいい事言ったぜお嬢様。

 

 

「ではこれを以って

 オペレーション:『アクセルの盾と矛(ウルド)』を開始する!ついてこい、ララティーナ‼︎」

 

「ラッ⁉︎ララティーナ言うな‼︎」

 

「では助手よ!俺が矛となりヤツを貫こう!貴様は盾となりアクセルを守るがいい!フゥーッハハハハハ‼︎」

 

「お、お前急にどうしたんだ⁉︎そんな喋り方をする奴だったか⁉︎」

 

「何を言うか!これは『運命石の扉(シュタインズゲート)』の選択というものだ!機関に遅れを取るわけにはいかんぞ‼︎」

 

「しゅた……、何?機関とは何だ?」

 

 

 いや、俺も知らないけどね。

 

 ダクネスをからかいながら内心で意思疎通が出来たことに安堵していると、遠くからガシャガシャ音が聞こえる気がした。

 

 もうお出ましか。予定よりも随分早いじゃねえか。

 

 無線でカズマにもうすぐデストロイヤーが来ることを伝えてから音の響いてくる方向を睨む。

 ダクネスも気付いたようで、険しい表情で俺と同じ方向を見ていた。

 

 そのまま数分、俺とダクネスの視線が地平線の彼方から黒い物体が近づいてくるのを捉えた。まだ相当先なのに音が聞こえるとは、思ったよりも重量があるのかもしれない。

 

 

「……俺とお前でアクセルを守るぞ。つっても失敗してもカズマ達がいる。あんま気負うなよ」

 

「……フッ、お前とこうしていると王都で初めて会った時のことを思い出すな」

 

「いや、思い出さねえよ。こうして並んで戦ったことなんざねえだろうが。記憶を捏造すんな」

 

 

 こうしてる間にもどんどん黒い影は大きくなってくる。またさっきの足の震えが復活しそうだったのでクリスの言葉を思い出してみた。

 まあ本来はとある小四の女の子の言葉なんだけどもね。

 

 

「………絶対大丈夫だよ、か。いい言葉だよなあ。クリアカード編もお楽しみにね!」

 

「……?何だそれは?」

 

「何でもねえよ。ーーーさて」

 

 

 そろそろデストロイヤーがアクアの解除魔法の射程に入るはずだ。

 遠目に脚の動きを確認する。

 

 よし……よし!パターン化はされてる!

 

 自身の読みが正しいことに勇気付けられ、もはや手の一部にも感じる愛剣を引き抜きながらダクネスに努めて声を張り上げた。

 

 

「行くぞクリスティーナ‼︎せいぜい死ぬなよ‼︎」

 

「誰だそれは‼︎ええい、お前に任せたぞ!しっかり脚をへし折って来い‼︎」

 

 

 

 

 

 


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