この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。







58話

 

 

 

 ※

 

 

「おいこれどうなってんだ、なんかどんどん熱くなってないか⁉︎」

 

 

 ゼロがコロナタイトを持って走っていった平原の先。その上空で極大の、それこそ爆裂魔法を超える爆発が発生したことをデストロイヤー内部に設置されていた窓から視認していた俺達はある事に気づいた。

 

 ……なんか蒸し暑くね?

 

 最初は気のせいかとも思ったのだが、時間が経つにつれ、気のせいでは済まされない程に熱くなってきたのだ。まるでサウナの中にいるような感じがする。

 デストロイヤーの中にいた他の冒険者も同様だったようで、急いで外に出た俺達が見たものは。

 

 

「動力は止めたはずだろうが!何でこんなに熱くなってんだよこいつ!」

 

 

 真っ赤に染まりつつあるデストロイヤーの機体だった。まだ内部にいたらしい冒険者達がこれは堪らん、と頭部に開いた入り口からまるでアリか何かのようにわらわらと出てきてはそれなりの高さがある地上まで飛び降りている。

 

 コロナタイトを取り除いた時から止んでいたデストロイヤーの振動が最初よりも強く地面を揺らし、部品の繋ぎ目から蒸気と思しき白い煙が勢い良く噴き出し始めた。これはもしかして………。

 

 

「溜まってた熱と蒸気が……、噴き出ようとしてる、のか?」

 

 

 そう考えてみれば腑に落ちる。動力を止めたって事は当然、排熱機関やそういった溜まった物を排除する装置も止まるって事だ。熱というものは手を加えてやらないとそう簡単には冷めないものである。しかも今回は蒸気のオマケ付きだ。蒸気は水と違って温度が百度を超えてまだ上昇する。そんな蒸気が圧縮から解放されたら街はエラい事になるだろう。

 

 

「『セイクリッド』ーーー」

 

「ん?ちょっと待てアクア、お前何するつもりだ」

 

「へ?何って、熱いから冷ませばいいんでしょ?水かければいいじゃない」

 

「バカか⁉︎水蒸気爆発を知らないのかよ‼︎」

 

「なんですって⁉︎粉塵爆発なら知ってるわよ!」

 

 

 ダメだこいつは。結界の件で見直したと思ったらこれである。駄女神が頼りにならないとなると残る手段はーー

 

 その時、俺の後ろで今日は爆裂魔法を撃っていない元気いっぱいめぐみんちゃんがマントを翻しながら呟く。

 

 

「真打ち、登じょ」

 

「却下」

 

「んな⁉︎何故ですかカズマ‼︎ダクネスやゼロばかりずるいですよ!二人に良いところを取られっぱなしでは紅魔族随一の爆裂魔法の使い手として……」

 

「そんな称号捨てちまえ‼︎しかも紅魔族で爆裂魔法使えるのはお前しかいないんだろ⁉︎とにかく、こんな街に近いところで爆裂魔法なんか使えるかよ!」

 

「むうう…………」

 

 

 だが、爆裂魔法に頼りたいのも事実だ。なんだかんだで一番強力で頼りになる。被害さえ出なければ……。

 

 

「…………めぐみん、お前爆裂魔法の範囲と威力の調整は出来るって言ってたよな?限界まで抑えて撃ち込めば止められると思うか?」

 

「ええ?ど、どうでしょう。その場合どこを狙えばいいのですか?」

 

 

 そうだ、その問題が残る。

 

 どこを中心に熱が放出されるかわからないと範囲を絞り込んだ爆裂魔法だと余計に拡散を早めてしまうだけだ。中心に正確に撃ち込めれば熱と蒸気を爆裂魔法で空けた穴から逃すことができるかもしれないってのに。

 

 

「場所……、場所さえ分かれば……‼︎」

 

 

 しかしこのままではジリ貧だ。せっかくゼロが命懸けでコロナタイトを処理してくれたってのに、顔向けできない。まああいつ、殺しても死ななそうだし、そこは心配してないけど。

 とにかく待っていても仕方ない。一か八かの勝負に出ようとめぐみんに指示を出すーーー直前。どこからか尊大な笑い声が響いてきた。

 

 

「フハハハハハハ‼︎お困りのようだな、横にいる紅魔の娘が成人したら色々してやろうと次の誕生日を今か今かと待ち続ける邪な男よ‼︎」

 

「お⁉︎思ってねーし⁉︎待ってもねーし‼︎……おい、やめろお前ら!そんな目で見るんじゃねえ!思ってないって!」

 

 

 めぐみんやアクアだけでなく、他の冒険者にすら白い目で見られてしまった。

 

 ちくしょう、誰だよ!根も葉も無い事を言いやがって!

 

 声の聞こえた方向を睨む。

 かなり高いはずのアクセルの外壁。その上から何事もないかのように地面に飛び降りた人影は、つい最近見た事がある人物だった。

 

 

「あ、あんた……」

 

「真打ち登場‼︎」

 

 

 さっきのめぐみんの真似をしているのか、着けてもいないのにマントを翻す仕草をする男。

 

 

「……は?」

 

 

 めぐみんが額に青筋を立て、その目を紅く輝かせながら今にも飛びかかりそうな姿勢になる。

 

 

「ちょっ、ちょっと落ち着けってめぐみん!あんたも挑発するなよ!」

 

「フハハハハ‼︎大変な悪感情、美味である美味である!流石は魔力だけは高いネタ種族であるな、中々上質な悪感情を発するではないか‼︎」

 

 

 この男はゼロの知り合いで、地獄の公爵だとかいう大悪魔だ。最近はウィズの店でバイトをしているが、何でそんな大物が………いや、そんな事よりも確かこいつの名前はーー

 

 

「どうもご機嫌麗しゅう!このアクセルの危機とあっては我輩も黙っておれぬな!おっと小僧、みなまで言うな。我輩の力が必要なのだろう?全てを見通すこの我輩の力が!」

 

 

『見通す悪魔』、バニル‼︎

 

 

「頼む、熱と蒸気が一番集中してる所を探してくれ!あんたならできるだろ⁉︎」

 

「フハハハハお安い御用である!

 しばし待っておれ。本来ならば代金をいただくのだが……、ふん?貴様にはまだ(・・)支払能力が無いようだな。

 ならば仕方あるまい。我輩としても心が痛むがこの貸しは『死神』の奴にツケておいてやろう!今から奴の泣きっ面が目に浮かぶようであるわ、フワーッハハハハハ‼︎」

 

 

 笑いながらも目を紅く光らせてデストロイヤーを凝視するバニル。これならイケる!

 

 俺が内心でガッツポーズを取っていると、バニルの天敵であるチンピラ女神が、何が気に入らないのかバニルにガンを飛ばし始めた。

 

 

「はーん?アンタ、何が『真打ち登場』よ。ちょっと目が良いだけで汚らわしい悪魔がヒーロー気取りとか片腹痛いわね。ここにいるみんなに本性晒してあげるからこっちに来なさいな」

 

「…………小僧。我輩は今珍しく集中している。こんな夜にピカピカ光る虫のような奴がいては見えるものも見えないので、さっさと飼い主らしく犬小屋へ連れて行くが良い」

 

「アクア、ハウス」

 

「カズマ、あんたどっちの味方なのよ?この水の女神であるアクア様をペット扱いなんて…」

 

「『スティール』」

 

 「……ちょっと、返しなさいよ。その羽衣は私の大切な……やめてえええええ‼︎破ろうとしないで!お願いだから、私が悪かったから!もう邪魔しないからああああああ‼︎」

 

 

 羽衣を奪い取って泣かせてやると、アクアは俺やバニルの暴言を吐きながらダクネスの様子を見に行った。うん、あいつ後で殴ろう。

 

 アクアをどうやってまた泣かせてやろうか考え始めた時、ちょうど見通し終わったのかバニルがめぐみんに声をかける。

 

 

「さあ!威力と範囲を絞った魔法など撃っても面白くないと密かに最大威力で撃ってやろうと企む紅魔の娘よ!

 汝のその威力しか見るところの無い、使ったら倒れてしまうというネタ魔法中のネタ魔法の数少ない出番であるぞ‼︎しっかり狙え!あそこである‼︎」

 

「おい、我が必殺の魔法をネタ魔法とは良い度胸じゃないか!そのたった一つの取り柄である威力をその身で味わいたいようですね?いいでしょういいでしょう!

 ーーーとくと味わうがいい!『エクスプロー』いだいっ⁉︎」

 

 

 そんなシャレにならない事を言い出した頭のおかしい爆裂狂の脳天に拳骨を落とす。

 

 こいつホントやべえな。この状況でそんな考えが浮かぶとか常人じゃありえねえ。大物と言えば大物だがマジで自重しろ。

 

 俺達が仲間内で喧嘩してるうちにデストロイヤーの限界が来たらしい。地面に生えている草が触れてもいないのに自然発火し始めたのを見て冒険者達が悲鳴をあげた。

 

 

「あんたら、何でも良いけど早くしてくれ‼︎もう熱すぎて近寄ることもできねえぞ‼︎」

 

「……くそっ!おいめぐみん!お前、下手なことしたら部屋にあるパンツ全部奪い取ってギルドの掲示板に貼り出してやるからな、覚悟しとけよ‼︎」

 

「やめてくださいよ⁉︎それは本当にシャレになりませんって!

 そ、それにそんなことをしたら私の兄を名乗るあの男が黙ってませんからね⁉︎良いんですか⁉︎」

 

「そのゼロの今までの努力を無駄にするつもりかお前は‼︎良いからはよ撃て!

 ……さてはお前、一発で決める自信が無いな?あーそうだよなぁ!お前肝心なところでチキンだもんなぁ⁉︎いいよ無理しなくても!いくらお前の最強魔法(笑)でも威力と範囲極限まで抑えたら大したこと無いもんな‼︎」

 

 

 こんなことをしてる場合では無いが、こいつならこう言えば………!

 

 そんな思惑を知ってか知らずか、めぐみんはガーン、と衝撃を受けたような顔でフラフラと後ずさり…。

 

 

「ふ、ふふふふふふ…………!

 わ、我が爆裂魔法をここまでコケにされたのは初めてですよ……!いいでしょう………、見せてあげますとも‼︎

 私が憧れ続けた最強の魔法は!どれだけ威力を抑えたところでその輝きに翳りなど無い事を‼︎」

 

 

 目を今まで見た事が無いくらいに輝かせながら詠唱を開始した。

 

 これでいい。これでこいつは威力を限界まで抑えて魔法を使うしかない。プライドが許さないだろうからな。

 

 やがて詠唱が完了したのか、バニルが指差す先へ持っていた杖の先端を向けるめぐみん。その先に宿る光はいつもよりは小さいものの、なるほど、輝きはいつもと変わらずに頼もしく周囲を赤く照らしている。

 

 

「見ていてくださいよ、カズマ‼︎あなたが馬鹿にした私の魔法が、人類を苦しめてきた最悪の兵器を穿つところを‼︎」

 

 

 どうやら俺が本気で言っていると思ったらしい。

 

 そんなことをしなくてもウチの頼れるアークウィザードの爆裂魔法が世界最強だってことはとっくにわかっているというのに、全く。

 

 

「『エクスプロージョン』ーーーッッッ‼︎」

 

 

 聞き慣れた声で紡がれる聞き慣れた詠唱と共に放たれた真紅の爆焔。

 俺達のパーティーが誇る最大火力が見通す悪魔の力を借り、デストロイヤーの一点を正確に貫いていった。

 

 

 

 

 


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