この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。







59話

 

 

 

 ※

 

 

「そういやあ、ウィズはデストロイヤーん時どこ行ってたんだ?ああいう緊急時に黙って見てられる性格はしてないだろ」

 

「あ、はい。大変な時にお力になれなくてすみません。

 実はあの時の事はよく覚えていないんですよね。確か、この新しく仕入れた消臭ポーションを整理していたら急に意識が遠のいて…………」

 

「……そのポーションの効果を詳しく」

 

「興味ありますか?さすがゼロさん、お目が高いですね!

 このポーションは『鼻曲り草』という希少な薬草から採取したエキスの発する強烈な匂いで自分の匂いを消してくれる、とても画期的な商品なんですよ!

 使う薬草が高価で珍しい物ばかりなのでちょっとだけお値段が張るのと、使ってから三日間はポーションの匂いがどうやっても落ちないことが欠点と言えば欠点ですが……いかがです?」

 

 

 それは消臭ポーションでは無く、ただの匂いがキツい草の汁だと思うんですがね。

 

 むしろどの部分を売れると判断して仕入れたのか俺みたいな馬鹿にも解るように教えて欲しいものだ。天才の思考は凡人には読み取れないというお手本のような存在だな。

 

 そしてウィズが意識不明になったという謎も解けた。じっちゃんの名にかけて、犯人はこの店の中にいる‼︎

 

 じっちゃんの顔も知らない俺が心の中だけで『死神』と呼ばれる名探偵のフリをしていると、この事件の容疑者どころか間違いなく犯人であろう悪魔が店の奥にある暖簾をかき分けて姿を見せた。

 

 

「……む?なんだ、小僧一号ではないか。貴様は見通しづらいせいでいつ店に来たのかわからんな。

 ポンコツ店主がついに腹の空きすぎで居もしない客と会話し始めたのかと心配になったぞ」

 

 

 最近のバニル、きついや……。

 

 バニルのウィズに対する塩対応に同情の眼差しを向けると、当の本人は目をキラキラさせながら感極まった表情でバニルを見ていた。

 

 

「バニルさんが私を心配してくれたんですか⁉︎

 いつも当て付けかのように私の目の前で豪勢な食事をしては高笑いをしてくるので、てっきり嫌われてしまったものとばかり………!」

 

「……お前さ、友達にはなるべく優しくしてやれよ。話聞いてるだけの俺ですら辛くなってきちゃうだろ」

 

「待て、今の発言には語弊がある。我輩は豪勢な食事を見て羨ましがる此奴の悪感情を食しているのであって、決して当て付けなどではないのだ」

 

 

 いや、それのどこに語弊があったんだよ。

 嫌ってはいないってことを言いたかったのか?このツンデレさんめ。

 

 

 

 

 ※

 

 

 一週間前。

 

 俺が平原で気絶から目覚めてアクセルに戻ると、全てが終わっていた。

 

 どうもコロナタイトを取り除いた後にも一悶着あったようだが、最後はめぐみんが決めたと聞いている。

 その際に意外にもバニルが力を貸してくれたとも。

 

 その翌日にはデストロイヤーの懸賞金が全冒険者に支払われた。カズマのパーティーは全員が多大な貢献をしたとかで、全体の半分。俺も作戦立案と、成功させた功績が認められて全体の四分の一貰い、残りは他の冒険者に均等に分配されたそうだ。

 カズマがこれでしばらく働かなくてもよくなったと喜んでいたが、どうせそのうち金なんか無くなるんだから余裕のある内に稼いでおけと苦言を呈したいね。

 

 デストロイヤーの残骸は、めぐみんの爆裂魔法で空けた大穴と俺が破壊した脚以外の目立った傷は無いということで、色々調べたり、その主材である魔法金属を再利用したりするために王都に運ばれた。

 向こうに顔が利くという理由でパイプ役に選ばれた俺は、一週間近く王都とアクセルを全力で往復し続ける羽目になり、今朝方ようやくひと段落ついたのでアクセルに帰って来た次第だ。足が速いのも考えものである。

 

 今回はベルディアの時のように報酬が消し飛んだりはしなかったので、バニルにツケを払うのと、ついでに礼を言うためにこの『ウィズ魔道具店』を訪れたのだが。

 

 

「………なあ、バニルさんや?この請求書の零の数はなんだい?あのマジックスクロールは五十万って言ってたよね?」

 

 

 なんで桁が増えてんだよ。もしかして書き間違えたのか?こういう書類は間違えたら取り返しのつかない事が多いんだから、ちゃんと確認してもらわなきゃ困るんですけど。

 

 

「何を言う、その請求書は正式な物だぞ。最後に我輩の力を貸さなければアクセルの外壁は軒並み倒壊、貴様らが受け取るはずだった報酬金も全てその補填に充てられていたのだ。その程度の値段で済むなら安い物であろう?」

 

「ストップ。その話はまあお前の事だ、信じるとしてもだ。……それを俺に請求するのはなんかおかしくね?」

 

「では誰が払うのだ。あの頭のおかしいと悪名高い爆裂娘に払わせるか?

 まあ、貴様が望むならそれでも構わんがな。我輩は貰える物だけ貰えればそれでいい」

 

「……………チッ、ほらよ。これでいいか?」

 

「うむ、ついでに滅多に見られん貴様の悪感情、ご馳走様です!」

 

「お粗末‼︎」

 

 

 ……さすがに妹に金払わせるわけにはいかんしなあ。

 

 それにこの程度で済めば安いと言うのも事実だ。本来の十倍の金額を失ったが、俺が貰ったデストロイヤーの賞金は更にその十倍あるのだ。ようやく俺の金欠も解決しそうで何よりですわ。

 

 

「つーか、さっき友達には親切にしろって言ったばっかだろ。サービスぐれえしてくれたって良さそうなもんだ」

 

「………おい、今の発言はまるで我輩と貴様が友人関係にあるように聞こえたが?」

 

「あれ、違ったか?」

 

 

 友達関連で個人的に一番傷つくのがこっちが友達と思ってても向こうがそう思ってないパターンだと思うんだよね。

 

 

「フハハハハ!我輩と貴様がか!全てを見通すこの我輩ですらいつ、どこのタイミングでそうなったのか見抜けなんだ、これは不覚!

 その辺り、我輩よりも詳しそうな貴様に是非ともご教授願いたいものだな?」

 

 

 何が面白いのか、急に笑い出すバニル。いやそれはいつものことだったわ。

 相変わらず琴線がどこにあるのか分かりにくいと言うべきか。

 

 

「……じゃあ、お前とウィズはいつどこで友達になったんだよ。まさか『お友達になりましょう』、なんてはっきり口に出したわけじゃねえだろ?」

 

「あ、それは言いましたよ。私が魔王城へ攻め込んだ時でしたっけ」

 

「………まあ、あれだ。そういう関係ってのは気付いた時にはそうなってるものじゃないか?普通は口に出して言うのは恥ずかしいしな。

 お前だってこれから長くアクセルに滞在する予定なら、人間との友達だって作っていけばいいんじゃないの?ご近所さんには親切にしてるみたいだし、それの延長って考えりゃ特に気を付ける事もないだろ」

 

 

 バニルがよければ知り合いに友達を常に欲しがってる女の子もいることだし、紹介しても良いんだけどな。

 

 要らない世話を焼く事を考えていると、バニルがニヤリと笑いながら俺を挑発してきた。

 

 

「フハハ!流石は故郷の村でほとんど全ての時間を文字通り棒に振ってきた男の言うことは違うな!含蓄のある忠告、痛み入るばかりである‼︎」

 

「……………………」

 

「おおっと、これまた珍しく大量の悪感情!貴様のは美味とは程遠いが、我輩好き嫌いはしない性格でな!ありがたくいただきます‼︎」

 

「上等だ変態仮面、外に出な。そのイカす仮面カチ割ってやるぜ」

 

 

 人から勝手に悪感情搾り取っておいてその味に文句付けるとは何事だ。

 

 ルシファーお前さぁ!絶対に許さないからな‼︎お前さえ居なければ‼︎僕は幸せに放送出来たんだヨ!お前さえ居なければぁ‼︎

 

 

「ほう?我輩とやる気か。貴様相手とあらば手加減無用であるな。お得意様だからといって容赦は期待するなよ、この馬鹿の一つ覚えが」

 

「馬鹿の一つ覚え‼︎」

 

 

 それは俺の戦闘スタイルについてか?絶対☆許サンバ‼︎

 

 険悪を通り越して今にも店の中で暴れ出しそうな俺とバニルの間にウィズが入り込む。

 

 

「ま、まあまあ。良いじゃないですか、バニルさんのお友達が増えるのは良いことですよ」

 

「………フン」

 

 

 へえ?バニルならウィズがいても何ら躊躇うこと無く攻撃してくるかとも思ったが、意外にあっさりと引き下がったな。いや、俺も別に本気で戦おうとは思ってなかったけどさ。

 

 少し拍子抜けする俺だが、店の奥に入ろうとするバニルがこちらを見ないままに話しかけてきた。

 

 

「………まあ、我輩は心が広いとご近所でも有名である。貴様の忠告も頭の片隅にでも置いておくことにしよう。

 ーーー『友人として』な」

 

「ツンデレか‼︎」

 

 

 思わずツッコミを入れてしまった。

 

 やだ、ちょっとキュンと来たわ。普段のキツい言動からのこのデレは中々凶悪なコンボだな。ウィズがこいつと友達やってる理由が何と無くわかった。これはズルい。

 

 

 そんなやり取りをしていると、誰かが店の前に来たようだ。ドアの窓に人影が映った。その輪郭はとても良く見慣れたもので。

 

 

 

「……おい、バニル。この街での友達、もう一人くらい増やしたいと思わないか?」

 

 

 どうやらアイツも時々ウィズの所へ遊びに来てるようだな、良いところに来た。ベストタイミングである。

 

 ドアが開きながら聞き慣れた、最近はご無沙汰だった声が聞こえてくる。

 

 

「こんちはー‼︎ウィズさん、バニルさん、遊びに来たよー……ってあれ?ゼロ君じゃん。いつ帰って来たの?何かお話し中だった?」

 

 

 店に入ってきたクリスが俺とバニル、ウィズを順番に見て首を傾げる。

 

 やっぱクリスがナンバーワンだな。こんな何気無い仕草がさっきのバニルとは比べ物にならないくらいにキュンとする。

 

 

「差し当たっては俺の嫁さんでも友達にどうだ?」

 

「なんかよくわかんないけど嫁じゃないから‼︎」

 

 

 そんないつもの会話にようやく自分が守った物を実感する。分かってはいたが、クリスがいないと俺は始まらないらしい。

 

 俺がクリスやウィズ、バニルをぼんやり眺めていると、クリスが何を思ったか俺に聞いてきた。

 

 

「……?ゼロ君、何かあった?」

 

「……うん?何って?」

 

「いや、なんかいつもより楽しそうだなって」

 

 

 おや、自分ではそんなつもりは無かったのだがね。

 

 

「あー、あれだ。俺が守りたかったのはこんな日常なんだなって噛み締めてたんだよ」

 

「あ、こういう時になんて言えば良いか知ってるよ。『恥ずかしいセリフ禁止』‼︎でしょ。どう?」

 

 

 

 うん、台無し‼︎

 

 

 

 

 

 

 


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