この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。







63話

 

 

 

 ※

 

 

 適当に昼飯を摂ってからカズマが手に入れたという屋敷に連れ立って向かう。

 思えば、あいつの屋敷を訪ねたことは無かったな。場所はウィズから教えてもらったけども。

 

 その道中で同行者であるシンフォニア家当主様が会話が無いことに耐えられなくなったのか話しかけてきた。

 

 

「なあ、ゼロ。今回もそうだが、そういえばお前、王都にいた頃から私の依頼を断ったことは一度も無かったな。なぜだ?」

 

「あん?いきなりなんじゃいお前。なぜだって、やんなきゃ困ることだったんだろ?押し付けといて何勝手な事言ってんだ。

 ……どうしても言えってんなら言うけど、多分お前が期待してるような英雄的な理由なんざ無いぞ?

 むしろ俺くらい俗っぽい理由で動くやつはそこらへんの冒険者にもゴロゴロいらあな」

 

「そんな事は分かっている。お前にそういった英雄願望など無いだろうことはな。

 ぜひ教えてくれ。私が持ち出すのは王都のギルドでもかなり難しいとされる物ばかりだったはずだ。自分でも面倒だという自覚はある。

 それをお前は文句を言いながらもその日のうちには片付けてくれたではないか。その理由が知りたい」

 

 

 変わった奴だな、そんな事聞いてきた奴は初めてだ。

 

 …………ふーむ。これは俺が冒険者になるのを目指したきっかけから話した方が良いか。

 話す機会も無かった訳だし、気まぐれにこういうのもいいだろう。クリスにも言ったこと無いんだから光栄に思えよ。

 

 

「………俺の親父もさ、冒険者だったんだよ。お前は知らないかもしれないけど、王都にもいたことがあるみたいだな」

 

「うむ、それは知っている。王城に滞在させるにあたってお前の身辺調査は徹底したからな。

 確か王都を中心に活躍した『エレメンタルマスター』で………そういえばお前のお父上も変わった名前を持っていたな?」

 

 

 あ、そういうの一応してたのね。

 

 まあ当然なんだがな。怪しみもせずにいきなり王城に逗留しろ、とかバカほざく連中は絶対におかしい。一度脳内の検査でも勧めるか。なんかそういう腫瘍とかありそう。

 

 

「ああ、そうだな。つってもこの件には関係ねえから安心しな。

 ………それでな、俺はお袋から親父がどんな事をして、どんな風に人に感謝されたかを結構詳しめに聞いて育ったんだ。基本惚気話だったけど、親父が王都で活動してた時の話も聞いた」

 

「ほう、それはいつか聞いてみたい物だ……。いやしかし、今知りたいのはお前の動機でだな」

 

「焦んなよ、話はこれからだろうが。

 ………俺は親父が依頼主に感謝の言葉を掛けられた時のことを聞いてさ、すっげえ羨ましかったんだよ。

 それで思うようになった。俺も冒険者になれば皆から必要とされるんじゃないか、感謝してもらえるんじゃねえかってな。それが俺が冒険者になった理由だ。

 最初は適当に魔王倒すか、他にやりたい事があればそっちに移れば良いだろう、くらいの軽い気持ちだったんだけどな。そう思ったらそれが俺の夢になってた」

 

 

 思いがけず真面目な話になった事に困惑したのか、歩きながら黙り込むクレア。

 

 おっと、お前から振ってきた話だ。一度動き出した猪はもう止まれないのである。逃がさねえぞ、俺も話に興が乗ってきた所なんでな。

 

 

「お前からの依頼を断ったことねえのはそれが理由だな。

 どんな形でも誰かから頼られる、必要とされるのは嬉しいんだよ。その期待には応えたいと思う。相手がお前でもだ。

 他に頼める人間がいるのにわざわざ俺に頼みに来る人がいてくれる。冒険者冥利に尽きるじゃねえか。

 だから俺は基本的に依頼は断らねえし、達成して感謝されるために全力で取り組むんだよ」

 

 

 この理屈で行くとミツルギから頼られるのも悪い気はしない事になるんだが、あいつのはなんていうか違うんだよなあ。

 あいつには本来俺なんか必要無いんだ。そもそも自分で粗方のクエストをこなせるんだから。

 必要も無いのに付きまとうから鬱陶しく感じるのかもしれん。あいつに構っているだけで他の人から感謝される回数が減るしなあ。

 

 

「それがお前が動く理由か?」

 

「その通りだ。俗っぽいだろ?俺は人からの感謝が欲しくて努力して冒険者になったんだよ。

 まあ今魔王討伐を目指してんのは違う理由だけどな。

 悪いな。お前がどんな想像してたか知らんが、俺なんざこんなもんだ。

 自分でも王都の英雄が聞いて呆れるとは思うが、まあ呼ばれることを否定しないうちはそれに相応しくありたいとは考えてる。英雄呼びも気分良いしな。……幻滅したか?」

 

 

 期待外れの返答にさぞかし何とも言えない表情をしてるんだろう、とその面を拝んでやろうと振り返ると、生暖かく微笑んで俺を見るクレアと目が合った。

 

 おい、何だその目は。馬鹿にしてんのか。

 

 確かに褒められた動機じゃねえだろうが、俺にとっちゃ大事なことだ。喧嘩なら買ってやるぞ。

 

 

「ふふ、馬鹿を言え。お前は女に暴力を振るった事は一度も無いだろう?アイリス様との手合わせの時も狙うのは体勢を崩して勝敗をうやむやにする事だけだったはずだ。

 出来もしないことは口にする物じゃない」

 

「……流石はアイリスにぞっこんなだけはあるな。よく見てやがる」

 

 

 マジか。まさか気付かれてるとは思わなんだ。アイリス本人にもバレてないと思ってたんだが。

 

 だがそんなフェミニストだと勘違いされては困るな。カズマと同じで俺だってやるときゃやる。

 不可抗力とはいえ、冬将軍の時もダクネスに爆発ポーション投げたしな。無駄だったけど。あとはそう、フィオとクレメアを乱暴に引っ張ったこともあったな。これを聞いて同じことが言えるかな?

 

 

「そうして憶えているというのはそれを気に病んでるということでもあるぞ。お前の人の良さが窺える。

 それに喧嘩などとんでもない。むしろ感心していたところだ」

 

「……感心?お前がそんな嫌味を言うような陰湿な奴だとは思わなかったな。

 いや、よく考えたら死角からサーベルぶん投げてくる暗殺者みたいな奴だし、陰湿なのは元からか」

 

「ほ、本当に失礼な奴だなお前……。私だって素直に褒めることはある。

 人からの感謝が欲しくて冒険者になる。結構なことじゃないか。十二分に立派な動機だとも。

 しかしそんな理由で動く連中がゴロゴロしている、は無いな。少なくとも私はそれを理由に努力してきた者など見たことがない。

 大半はただの憧れ、生活の為、富や名声……。変わった物だと義務感だと言う者もいた。

 ………別にそういった動機を否定はしない。どれもその者の動く理由だ。だが、私にはお前の物はその中で一際輝いて見えるぞ」

 

 

 微笑を浮かべながらそう持ち上げてくる。

 

 

「………お前どうしたんだ、体調でも悪いのか?煽てたって報酬はまけないぞ」

 

 

 陰湿とか言ったから怒鳴ってくるんだろうと予想してたこっちが驚いたわ。

 

 そうか、ついにお淑やかさを身に付けたのか。俺とこいつがこんなに穏やかに会話を続けられる日が来るとは、王都にいた頃は夢にも思わなかったな。良きかな良きかな。

 

 

「…………いや、私もどうかしているな。まだ何も解決していないというのにお前が味方に付いてくれただけで安心してしまっている。恥ずかしい限りだ」

 

 

 緩んでいた頰を張り、気を引き締めるクレア。

 

 

「…………………そうかい。それはどうかしてんな」

 

 

 あれっ。何だよ、なんか照れるな。

 

 なんだかんだでこうして頼られるってのはやっぱり悪くない。

 そうだ、よく考えたら俺凄くね?国から頼られてんだぞ。これは後世まで自慢しても良いんじゃないかな。

 

 少しだけ調子に乗る俺に、クレアがしばらく逡巡した後、何か覚悟を決めたような顔を向けて来た。

 

 

「ゼロ、この依頼を達成したら話がある。今後を左右する話なのだが、聞いてくれるか?」

 

「えっ、ちょっと待って、何でここで死亡フラグ建てた⁉︎」

 

「なっ、何だ?急に大声を出すな、驚くだろう」

 

 

 お前この流れで行くと死ぬの実際に戦うことになる俺だからな?頼むぜほんと。

 

 

 

 

 

 


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