カラサワの運び手   作:早起き三文

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第10話「命」

  

――イレギュラー、大きすぎる――

――排除が必要だ――

 

 そのH6ユニットからの問いには、思考するまでもなく私は答えが出ている。

 

――イレギュラー、アナイアレイターをこの末端ネストにおびき寄せる――

――了解――

――そして、複数の端末を使い、確実に抹殺する――

――了解――

 

 そう思考を転送し、私はH6ユニットとの接続を終了した。

 

 

 

――――――

 

 

 

――お前が、父さんと母さんを!!――

――数字にして、十年前の事か――

 

 私は偶然の探索、己のデータバンクから奇遇にも約十年前の記憶を吸い上げる。

 

「確か、私の脚にと瓦礫をぶつけていた少年……」

 

 その少年が、今はイレギュラーとなり、我々レイヴンズ・ネストの驚異となっている様子だ。

 

「……」

 

 人としてイレギュラーとなった私が、秩序を破壊するイレギュラーを造り出した矛盾、しかし。

 

「このような哲学、我には無用だ」

 

 だが、人の「親」というものを無くして互いにイレギュラーとなった私とあのアナイアレイターの操縦士、その事に妙な「運命」を感じてしまう。しかし私がすることは。

 

「H6」

「なんだ、H10?」

 

 ナインボール端末群、それらの接続はマザー・Hユニットが存在する限り瞬時に行われる。

 

「意見を述べよ」

「我、H10ユニットをナインボール端末と同化したい」

「本気か?」

「確実性の上昇だ」

「端末が無くなれば、お前は消える事になる」

「覚悟の上だ」

「いいだろう」

 

 

 

――――――

 

 

 

「なるほど、ナインボールが二機か……」

 

 二層となっている空洞に我々がおびき寄せたイレギュラー、アナイアレイターが「私達」を見て、そう呟く。

 

「こい、ナインボール」

「排除、開始」

 

 ナインボール、H6ユニットが操作する端末が奴の注意を引くと共に、私のカラサワ搭載機が奴に打撃を与える。それがあらかじめ決めた作戦である。

 

 バゥ!!

 

 H6ユニット、ナインボールからのグレネードランチャー、しかしどうやらそれは相手、アナイアレイターにはすでに馴染みの攻撃となっているようだ。命中するスレスレでその砲弾をかわし、前と同じく爆風を隠れ蓑とし。

 

「対象、上方の第二階層へと移動」

 

 そのまま対象を上方階層、第二層面へと追撃しようとしたH6は、しかし。

 

 ドゥ!!

 

 凄まじい勢いでその上方階から再来したアナイアレイターのカラサワにより、早くもその左腕を失う。私はそのH6を助けようとカラサワを構えたが。

 

 スゥ……

 

 そのH6ユニット、その身体が邪魔となり、カラサワが撃てずにいる。

 

「連携機能、データ不足」

 

 もともとナインボール端末は他機との連携戦闘を考えられていない作りの戦闘端末だ。AIである程度はカバーは出来るのだが。

 

――戦力の損失を、防ぐべし――

 

 マザー・Hユニットからの根本プログラム、それにより僚機を犠牲にする戦闘時の選択は排除される。

 

「H6、機能五十パーセント低下」

 

 その、H6ユニットの声を聞く前に私、H10はカラサワで相手アナイアレイターを狙い撃つ。

 

 ビュア……!!

 

 だが、やはりそのイレギュラーの腕は並みではない、そのカラサワの連射はこちらの火器管制ユニットの特性を見切っているのか、微かにかすったのみだ。

 

「終わりだ、ナインボールの片割れ!!」

 

 その声と共に降り下ろされる刺突ブレード「突っつき」により、H6の胴体部が深く陥没をする。

 

「我、独断により端末もろとも、イレギュラーを排除する」

 

 その通信が終わるか終わらないかの内に、私はカラサワを最大出力にと上げ、その敵機アナイアレイターへと撃ちはなった。

 

 ボァウ!!

 

 だが、そのカラサワはアナイアレイターがとっさに反応して放った、同じく最大出力と思われるカラサワの大出力レーザーと干渉し、犠牲となったH6端末と共に互いのカラサワにと直撃をする。

 

「機体能力、低下……」

 

 自機、ナインボール端末の出力の安定が崩され、追撃として放とうとしたグレネードの照準が定まらない。その隙を見破られたのか、アナイアレイターは。

 

「お前も、ここで!!」

「完全回避、不能」

 

 突っつき、それが機体制御が困難となった私にと迫り来る。

 

――死――

 

 その文字が私にと迫り来る瞬間、しかし。

 

――父さん、私は任務を遂行したよ――

 

 イレギュラーを排除し、第二の大破壊を食い止めるという使命、それは。

 

「生き甲斐のある、目的であった……」

 

 グゥア!!

 

 突っつきによりコクピットが粉砕される感覚を、どこか他人事のように感じながら、私は。

 

「機能、停止……」

 

 端末としての、使命を終了した。

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