「しばらくぶりだったわね、バウンティ」
「ああ……」
闇の世界ではある程度の名が知れている、整備士である彼女が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、バウンティは娘が描いてくれた似顔絵を実と眺めている。
「アイツの見舞いと、アンバークラウンで良い仕事があってね」
「アンバークラウン、あんな辺鄙な所で?」
「人探しの依頼だったよ」
「人探し、ねぇ……」
「依頼主そのものが同業者、レイヴンだった」
「変な仕事ね」
「まぁな……」
そう言いながら、バウンティは娘が描いてくれた自身の似顔絵を、あまり上手くは無いが心がこもっているその絵を飽きずに見つめ。
「アイツの将来、画家なんてどうかな?」
「将来、ね」
「ああ……」
不治に近い病、それに侵させた娘の未来を、彼は思い描く。
「もうじき、施設で手術が始まるようだ」
「そうなの?」
「街の襲撃と護衛、そしてアンバークラウンでの仕事で金が貯まった」
そういいながら、彼バウンティはその顔に笑みとも、苦痛とも受け取れない表情を浮かべ始めた。
「成功率は、五分五分だそうだ」
「クローム社の高級医療設備だと言うのに?」
「それでも、だ」
そして、そのバウンティの表情には苦悩の色も混じり始める。
「上手くいってくれるといいが……」
そういいながら、バウンティはコーヒーを一気に飲み終え、苛立つ自分の神経を抑えるかのように、タバコにと火を付け始めた。
「ああ、そうだ……」
「何、バウンティ?」
「カラサワ、アンバークラウンでも少し使う機会があったが、調子はどうだ?」
「不思議な銃ねぇ……」
「不思議?」
「何か、使えば使うほど、最適化されていくみたいなの」
そう言う彼女もタバコにとその唇を付けてみながら、微かに首をひねり始める。
「普通なら、疲弊していくはずなのに」
「まるで、生き物のようだな」
「生体パーツを使っている形跡はないんだけど、ね」
「ふむ……」
少し、その話題は興味がそそられる話ではあるのだが、今のバウンティにとっては。
「まあ、別にいいとしよう……」
一人娘、彼女の手術経過の方が重要だ。
――――――
「もしもし……」
バウンティの携帯端末が、愛人の好きだった歌、それの合成音と共に鳴り響く。
「クローム社の者です」
「はい」
「娘様の、手術に失敗しました」
「……」
「かねてからのご契約通り、手術代の半額はお返し致します」
「……はい」
「娘様の余命は、約三ヶ月と予測されます」
「はい」
「その間、わが社の社長は好意を見せ、こちらの静養室で彼女が過ごされる事を許可されました」
「俺に出来ることは?」
「契約書のサインを頂きに、一度わが社へおいで頂けないでしょうか?」
「解りました」
「では、これで……」
ピッ……
「……」
携帯端末の電源を切った後、しばしの間、バウンティはタバコを吹かす。
「レイニー、アンド、サニー、スマイルガール……」
不思議なことに、彼の目からは涙は出てこない、その代わり。
「……」
彼は、娘が描いた絵を実と、飽きずに見つめ続けた。