カラサワの運び手   作:早起き三文

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第5話「命(前編)」

  

「しばらくぶりだったわね、バウンティ」

「ああ……」

 

 闇の世界ではある程度の名が知れている、整備士である彼女が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、バウンティは娘が描いてくれた似顔絵を実と眺めている。

 

「アイツの見舞いと、アンバークラウンで良い仕事があってね」

「アンバークラウン、あんな辺鄙な所で?」

「人探しの依頼だったよ」

「人探し、ねぇ……」

「依頼主そのものが同業者、レイヴンだった」

「変な仕事ね」

「まぁな……」

 

 そう言いながら、バウンティは娘が描いてくれた自身の似顔絵を、あまり上手くは無いが心がこもっているその絵を飽きずに見つめ。

 

「アイツの将来、画家なんてどうかな?」

「将来、ね」

「ああ……」

 

 不治に近い病、それに侵させた娘の未来を、彼は思い描く。

 

「もうじき、施設で手術が始まるようだ」

「そうなの?」

「街の襲撃と護衛、そしてアンバークラウンでの仕事で金が貯まった」

 

 そういいながら、彼バウンティはその顔に笑みとも、苦痛とも受け取れない表情を浮かべ始めた。

 

「成功率は、五分五分だそうだ」

「クローム社の高級医療設備だと言うのに?」

「それでも、だ」

 

 そして、そのバウンティの表情には苦悩の色も混じり始める。

 

「上手くいってくれるといいが……」

 

 そういいながら、バウンティはコーヒーを一気に飲み終え、苛立つ自分の神経を抑えるかのように、タバコにと火を付け始めた。

 

「ああ、そうだ……」

「何、バウンティ?」

「カラサワ、アンバークラウンでも少し使う機会があったが、調子はどうだ?」

「不思議な銃ねぇ……」

「不思議?」

「何か、使えば使うほど、最適化されていくみたいなの」

 

 そう言う彼女もタバコにとその唇を付けてみながら、微かに首をひねり始める。

 

「普通なら、疲弊していくはずなのに」

「まるで、生き物のようだな」

「生体パーツを使っている形跡はないんだけど、ね」

「ふむ……」

 

 少し、その話題は興味がそそられる話ではあるのだが、今のバウンティにとっては。

 

「まあ、別にいいとしよう……」

 

 一人娘、彼女の手術経過の方が重要だ。

 

 

 

――――――

 

 

 

「もしもし……」

 

 バウンティの携帯端末が、愛人の好きだった歌、それの合成音と共に鳴り響く。

 

「クローム社の者です」

「はい」

「娘様の、手術に失敗しました」

「……」

「かねてからのご契約通り、手術代の半額はお返し致します」

「……はい」

「娘様の余命は、約三ヶ月と予測されます」

「はい」

「その間、わが社の社長は好意を見せ、こちらの静養室で彼女が過ごされる事を許可されました」

「俺に出来ることは?」

「契約書のサインを頂きに、一度わが社へおいで頂けないでしょうか?」

「解りました」

「では、これで……」

 

 ピッ……

 

「……」

 

 携帯端末の電源を切った後、しばしの間、バウンティはタバコを吹かす。

 

「レイニー、アンド、サニー、スマイルガール……」

 

 不思議なことに、彼の目からは涙は出てこない、その代わり。

 

「……」

 

 彼は、娘が描いた絵を実と、飽きずに見つめ続けた。

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