カラサワの運び手   作:早起き三文

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第8話「紅い鴉」

  

――H10、プログラム遂行能力が不安定である――

――調整を頼む、マザー・Hユニット――

――システム根本に、問題あり――

――ならば、私自身を排除すべき――

――コスト面を参考、却下である――

 

 

 

――――――

 

 

 

――最近、私は調整中の間、謎の画像と音声を感じる――

 

 つい今現在に排除したAC。砂塵に吹かれているその残骸からイレギュラーパーツを奪取しながら、私は自身の不安定さを疑う。

 

「H6、任務完了」

「帰還せよ、H10」

「了解」

 

 私の名はナインボール、AIとしてH10ユニットを搭載したイレギュラー排除端末。

 

「そして、イレギュラーに対抗するにはイレギュラーしかない」

 

 そう、今回の任務にあたって装備されているイレギュラーパーツ「ペガサス」のようにだ。

 

「帰還する」

 

 ボゥフ……

 

 以前、フリーバードと言うACから奪取したペガサス、両肩用追加ブースターを噴かしながら、私は「巣」にと帰還する。

 

「H10、ペガサスの性能はどうだ?」

「こちらH10、該当イレギュラー・パーツは想定よりも高性能」

「セラフ・プロジェクトの是非は?」

「可能」

「ならば、良し」

 

 セラフ。イレギュラー排除端末であるナインボール・シリーズの中でも、驚異度が高き対象を想定して製作されている大型端末。その端末完成の為のデータ収集、それが今の私の主任務である。

 

 スゥ……

 

 大型のその「翼」が息を吸い込むと共に、私の身体も宙にと広く浮揚し。

 

「データ採取、データ採取……」

 

 機体の各部チェックを行いながら、私は機体コントロールやジェネレーター調整、そして排熱機能の状態などのデータを自身のデータバンクへと納めていく。H6への無線通信は行わない。

 

「……」

 

 無論、それは私の巣「レイヴンズ・ネスト」の深層部分を、他者に知らせない為だ。もちろんナインボールの収集データもだが。

 

「……巡航飛行、異常無し」

 

 砂塵の舞う「地上世界」で、私は赤き鴉となる。有害物質を含んだ強風が吹き荒れる、人が見捨てた世界。

 

「大破壊……」

 

 大破壊、ささいな事から人類が地上を追いやられた現象。私ことナインボールの存在意義の一つに。

 

「秩序を破壊する者は、排除する……」

 

 その、大破壊の再来を防ぐという役割がある。

 

 ヒュオウ……

 

 再び吹き荒れる強風、ふと私が見下ろした眼下には。

 

「……」

 

 おそらく地上に取り残されたのであろう、みすぼらしい格好をした人間が、私を見上げている。

 

「任務に、影響無し」

 

 何か、何かが私の「心」を動かした気がしたが、それも一瞬の事。

 

「帰還、帰還……」

 

 レイヴンズ・ネストに戻り、調製をしてもらえば済む事だ。

 

 

 

――――――

 

 

 

――H6ユニット、新型AIであるH10は――

――不安定なり、マザー・Hユニット――

――観察を続行する――

――許可する、H6――

 

 

 

――――――

 

 

 

――私は、過ちを繰り返さない為の存在に、志願をします――

 

 またしても、調整中に見る不思議な「夢」、しかしその映像と音声は。

 

「私は、どこかで視たことがある……?」

 

 自身の身体を装甲板にと覆わせながら、私は暫しの間思考をする。

 

「私は」

 

 しかし、いずれにしても私のする事は。

 

「私は、ナインボール」

 

 秩序、それを護る為の存在であり続ける事だ。

 

「イレギュラーは、排除する……」

 

 そして、その秩序を脅かすイレギュラー、力を持ちすぎた者を。

 

 ブォフ……!!

 

 今日もナインボール端末を行使し、デリートする。

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