――H10、プログラム遂行能力が不安定である――
――調整を頼む、マザー・Hユニット――
――システム根本に、問題あり――
――ならば、私自身を排除すべき――
――コスト面を参考、却下である――
――――――
――最近、私は調整中の間、謎の画像と音声を感じる――
つい今現在に排除したAC。砂塵に吹かれているその残骸からイレギュラーパーツを奪取しながら、私は自身の不安定さを疑う。
「H6、任務完了」
「帰還せよ、H10」
「了解」
私の名はナインボール、AIとしてH10ユニットを搭載したイレギュラー排除端末。
「そして、イレギュラーに対抗するにはイレギュラーしかない」
そう、今回の任務にあたって装備されているイレギュラーパーツ「ペガサス」のようにだ。
「帰還する」
ボゥフ……
以前、フリーバードと言うACから奪取したペガサス、両肩用追加ブースターを噴かしながら、私は「巣」にと帰還する。
「H10、ペガサスの性能はどうだ?」
「こちらH10、該当イレギュラー・パーツは想定よりも高性能」
「セラフ・プロジェクトの是非は?」
「可能」
「ならば、良し」
セラフ。イレギュラー排除端末であるナインボール・シリーズの中でも、驚異度が高き対象を想定して製作されている大型端末。その端末完成の為のデータ収集、それが今の私の主任務である。
スゥ……
大型のその「翼」が息を吸い込むと共に、私の身体も宙にと広く浮揚し。
「データ採取、データ採取……」
機体の各部チェックを行いながら、私は機体コントロールやジェネレーター調整、そして排熱機能の状態などのデータを自身のデータバンクへと納めていく。H6への無線通信は行わない。
「……」
無論、それは私の巣「レイヴンズ・ネスト」の深層部分を、他者に知らせない為だ。もちろんナインボールの収集データもだが。
「……巡航飛行、異常無し」
砂塵の舞う「地上世界」で、私は赤き鴉となる。有害物質を含んだ強風が吹き荒れる、人が見捨てた世界。
「大破壊……」
大破壊、ささいな事から人類が地上を追いやられた現象。私ことナインボールの存在意義の一つに。
「秩序を破壊する者は、排除する……」
その、大破壊の再来を防ぐという役割がある。
ヒュオウ……
再び吹き荒れる強風、ふと私が見下ろした眼下には。
「……」
おそらく地上に取り残されたのであろう、みすぼらしい格好をした人間が、私を見上げている。
「任務に、影響無し」
何か、何かが私の「心」を動かした気がしたが、それも一瞬の事。
「帰還、帰還……」
レイヴンズ・ネストに戻り、調製をしてもらえば済む事だ。
――――――
――H6ユニット、新型AIであるH10は――
――不安定なり、マザー・Hユニット――
――観察を続行する――
――許可する、H6――
――――――
――私は、過ちを繰り返さない為の存在に、志願をします――
またしても、調整中に見る不思議な「夢」、しかしその映像と音声は。
「私は、どこかで視たことがある……?」
自身の身体を装甲板にと覆わせながら、私は暫しの間思考をする。
「私は」
しかし、いずれにしても私のする事は。
「私は、ナインボール」
秩序、それを護る為の存在であり続ける事だ。
「イレギュラーは、排除する……」
そして、その秩序を脅かすイレギュラー、力を持ちすぎた者を。
ブォフ……!!
今日もナインボール端末を行使し、デリートする。