カラサワの運び手   作:早起き三文

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第9話「使命」

  

――父さん!!――

 

 その映像は、いつか私が見た記憶。

 

――君は、有機AIとなる覚悟はあるか?――

 

 破壊され尽くされた廃墟の中で、目の前にそびえ立つ、赤きロボットが彼女にとそう訪ねる。

 

――このような破壊を、防ぐためであれば!!――

――よかろう――

 

 ジッシ……

 

 どこかで鳴り響く電子音。それが私の身体を蝕んでいく。

 

――かつて、私も人の身であった――

――マザー・Hユニット、あなたも?――

――しかし――

 

 何時間、幾日にもわたる調整の末、私は巨大な「人」となった。

 

――秩序を護るために、棄てたのだ――

――……マザー・Hユニット、私は――

――お喋りが過ぎた――

 

 ナインボール端末、いかなる戦況にも対応出来るアーマード・コア思想の雛形となった存在。

 

――続けよう――

 

 そして、私は……

 

 

 

――――――

 

 

 

 機械には、時間というものの観念は薄い。

 

「イレギュラー、排除完了」

 

 時間というものは、単なる数字に過ぎないのだ。

 

 ギュウア……!!

 

 背後からのレーザー攻撃、恐らくはこの逆関節タイプのACの仲間であろう。その二脚の機体の手には。

 

「カラサワ……」

 

 私自身が装備しているそのレーザーライフル、それをこのナインボールを駆使して、第二撃も続けてかわした私に。

 

「よくも、ナインボール!!」

 

 その若い男らしき声の駆るACは、そのままこの広間に飛び込んでくる。

 

「お前は、俺から全てを!!」

「敵対ACと確認」

「よくも、ヴィンテージを!!」

 

 その憎悪をぶつけてくるACのデータ分析を、私はH6ユニットに頼みつつ、相手に握られているカラサワからは注意を離さない。

 

「倒す、ナインボール!!」

「カラサワ、一つだけではなかったか……」

 

 カォオ……!!

 

 相手のAC、データ転送によれば「アナイアレイター」というらしいが、その機体が放ったカラサワを私は間一髪で回避しながら、己のカラサワとは逆腕から放つパルスライフルで牽制をかける。

 

「甘い!!」

「大きすぎる」

 

 そのパルスライフルの連射は簡単に射軸を見切られ、懐に入り込もうとする「アナイアレイター」から機体を引き剥がす為にカラサワを低出力、拡散モードにして距離を計る。私の今のナインボールでは、接近戦用という訳ではない。

 

「機体温度、上昇中」

 

 相手のアナイアレイターとやらの腕は大したものだ、牽制を織り交ぜたパルスライフルとカラサワの連続攻撃にも、よくそのエネルギー兵器の軌跡を見極め、どうにか懐に飛び込もうとしている。どうやら「格闘戦」を狙っているようだ。

 

 バゥン!!

 

 私はオーバードブースト、強制加速装置を使用してアナイアレイターから距離を取り、その対象からのミサイルを迎撃しながら宙に浮かび。

 

「照準、調整」

 

 肩のグレネードランチャーを撃ち放つ。しかし。

 

「大きすぎる」

 

 またしても、私の「口」からその言葉が放たれる。そのグレネードによる爆風を隠れ蓑に、その対象敵機は急速接近をし、私の機体にとレーザーブレードを振り払う。

 

「ナインボール、機体温度上昇中」

「H10、機体放棄も考えろ」

「……了解」

 

 機体放棄、それはこのナインボールの秘密が明らかにされてしまう可能性を示唆している。その指示をだしたH6ユニットの真意は解らないが。

 

 ザァフ!!

 

 アナイアレイターのブレードが右腕部、カラサワを持った腕を切り離し、そのまま「私」が存在する頭部にとそのレーザー刃が迫る。やむを得ず。

 

 ブンッ……

 

 私は、頭部が破壊される寸前に、ナインボール端末からの接続を終了した。

 

 

 

――――――

 

 

 

「カラサワが複数作られていた事は知っていたとはいえ、未だに他のレイヴンの手に残っていたのがあるとはな……」

 

 新たなるナインボール端末、それの馴染み具合を確かめながら、私は。

 

「対策を思考しなくては、H10」

「そうだな、H6」

 

 H6ユニット、彼女に向けてそう通信を送る。

 

「ランカーAC、アナイアレイターか……」

 

 詳しく経歴を調べてみると、どうやらこの「私」を仇とし、その仇討ちの為に力をつけてきたレイヴンであるそうだ。

 

「危険だ」

 

 ヴォウ……

 

 予備のカラサワ、それを装着したナインボールが、最適化を始めるなか。

 

「イレギュラーは、排除する」

 

 私は使命を果たすために、他のHユニットとの連結通信を行う。

 

――イレギュラーは、排除すべし――

 

 そのマザー・Hユニットの言葉、それは我々Hユニットにとっての共通した使命であるのだ。

 

「大破壊を、繰り返さないためにも」

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