――父さん!!――
その映像は、いつか私が見た記憶。
――君は、有機AIとなる覚悟はあるか?――
破壊され尽くされた廃墟の中で、目の前にそびえ立つ、赤きロボットが彼女にとそう訪ねる。
――このような破壊を、防ぐためであれば!!――
――よかろう――
ジッシ……
どこかで鳴り響く電子音。それが私の身体を蝕んでいく。
――かつて、私も人の身であった――
――マザー・Hユニット、あなたも?――
――しかし――
何時間、幾日にもわたる調整の末、私は巨大な「人」となった。
――秩序を護るために、棄てたのだ――
――……マザー・Hユニット、私は――
――お喋りが過ぎた――
ナインボール端末、いかなる戦況にも対応出来るアーマード・コア思想の雛形となった存在。
――続けよう――
そして、私は……
――――――
機械には、時間というものの観念は薄い。
「イレギュラー、排除完了」
時間というものは、単なる数字に過ぎないのだ。
ギュウア……!!
背後からのレーザー攻撃、恐らくはこの逆関節タイプのACの仲間であろう。その二脚の機体の手には。
「カラサワ……」
私自身が装備しているそのレーザーライフル、それをこのナインボールを駆使して、第二撃も続けてかわした私に。
「よくも、ナインボール!!」
その若い男らしき声の駆るACは、そのままこの広間に飛び込んでくる。
「お前は、俺から全てを!!」
「敵対ACと確認」
「よくも、ヴィンテージを!!」
その憎悪をぶつけてくるACのデータ分析を、私はH6ユニットに頼みつつ、相手に握られているカラサワからは注意を離さない。
「倒す、ナインボール!!」
「カラサワ、一つだけではなかったか……」
カォオ……!!
相手のAC、データ転送によれば「アナイアレイター」というらしいが、その機体が放ったカラサワを私は間一髪で回避しながら、己のカラサワとは逆腕から放つパルスライフルで牽制をかける。
「甘い!!」
「大きすぎる」
そのパルスライフルの連射は簡単に射軸を見切られ、懐に入り込もうとする「アナイアレイター」から機体を引き剥がす為にカラサワを低出力、拡散モードにして距離を計る。私の今のナインボールでは、接近戦用という訳ではない。
「機体温度、上昇中」
相手のアナイアレイターとやらの腕は大したものだ、牽制を織り交ぜたパルスライフルとカラサワの連続攻撃にも、よくそのエネルギー兵器の軌跡を見極め、どうにか懐に飛び込もうとしている。どうやら「格闘戦」を狙っているようだ。
バゥン!!
私はオーバードブースト、強制加速装置を使用してアナイアレイターから距離を取り、その対象からのミサイルを迎撃しながら宙に浮かび。
「照準、調整」
肩のグレネードランチャーを撃ち放つ。しかし。
「大きすぎる」
またしても、私の「口」からその言葉が放たれる。そのグレネードによる爆風を隠れ蓑に、その対象敵機は急速接近をし、私の機体にとレーザーブレードを振り払う。
「ナインボール、機体温度上昇中」
「H10、機体放棄も考えろ」
「……了解」
機体放棄、それはこのナインボールの秘密が明らかにされてしまう可能性を示唆している。その指示をだしたH6ユニットの真意は解らないが。
ザァフ!!
アナイアレイターのブレードが右腕部、カラサワを持った腕を切り離し、そのまま「私」が存在する頭部にとそのレーザー刃が迫る。やむを得ず。
ブンッ……
私は、頭部が破壊される寸前に、ナインボール端末からの接続を終了した。
――――――
「カラサワが複数作られていた事は知っていたとはいえ、未だに他のレイヴンの手に残っていたのがあるとはな……」
新たなるナインボール端末、それの馴染み具合を確かめながら、私は。
「対策を思考しなくては、H10」
「そうだな、H6」
H6ユニット、彼女に向けてそう通信を送る。
「ランカーAC、アナイアレイターか……」
詳しく経歴を調べてみると、どうやらこの「私」を仇とし、その仇討ちの為に力をつけてきたレイヴンであるそうだ。
「危険だ」
ヴォウ……
予備のカラサワ、それを装着したナインボールが、最適化を始めるなか。
「イレギュラーは、排除する」
私は使命を果たすために、他のHユニットとの連結通信を行う。
――イレギュラーは、排除すべし――
そのマザー・Hユニットの言葉、それは我々Hユニットにとっての共通した使命であるのだ。
「大破壊を、繰り返さないためにも」