ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》 作:黒雲あるる
9月1日 桐ヶ谷和人の部屋
「へぇ~、コラボイベントか…」
薄暗い部屋の中でヘッドホンを身に付けたまだどこか幼さが残る青年、桐ヶ谷和人がPCのモニタに映し出された文章に注目し呟いた。その文章にはこう書かれてある。
プレイヤーの皆様、いつもアルヴヘイムオンライン(以下ALO)をプレイしていただき誠に有難う御座います。
この度、私共"ユーミル"が運営しておりますALOと、パラダイム社が運営されておりますVRMMOの先駆けとなった伝説のVRMMO《ユグドラシル》とのコラボイベントを開催する事が正式に決定した事を此処に御報告させて頂きます。
コラボ期間
・10月1日0:00~10月31日23:59
コラボ内容
・アルヴヘイムに侵攻を開始したヘルヘイムの軍勢を打ち破れ!
《ユグドラシル》屈指と悪名高い伝説のギルド《アインズ・ウール・ゴウン》。彼らがアルヴヘイムを支配下に置くべく侵攻を開始した。拠点である《ナザリック地下大墳墓》をアルヴヘイムに転移させ、既にその周囲は彼らの支配下に置かれている。このままではアルヴヘイムは死が蔓延するヘルヘイムのような世界となってしまうだろう。アルヴヘイムの美しい世界を守る為に彼らを撃退しなければならない!
・高難易度巨大ダンジョン《ナザリック地下大墳墓》の出現
―《アインズ・ウール・ゴウン》の本拠地である《ナザリック地下大墳墓》を攻略し貴重なアイテムを入手せよ!
入手出来る武器防具の一覧(極一部)
・スポイトランス(槍)
・女教師怒りの鉄拳(格闘)
・ゲイ・ボウ(弓)
・純白の鎧(胴)
※これらのアイテム群は《ナザリック地下大墳墓》の支配者達やその配下のNPC達を倒した際にドロップします。
・コラボイベント中に限りアルヴヘイムの種族間の対立は一時休戦状態となります。種族の壁を越えて一致団結しこの危機を乗り越えましょう。
・イベント期間中、《ナザリック地下大墳墓》内で死亡状態となった場合に限り、デスペナルティが発生しないように変更されます。1分間の待機状態の後に《ナザリック地下大墳墓》の地表部に強制転移されます。
※ただし《ナザリック地下大墳墓》内で入手したアイテム類は、死亡状態となればその場でロストしてしまいます。入手する為には自力で《ナザリック地下大墳墓》から脱出する必要がありますのでご注意下さい。PTを組んでいた場合はPTメンバーの内誰か一人でも脱出する事が出来ればそのアイテムの入手が可能となります。
・《ナザリック地下大墳墓》の支配者41人と固有名詞を持つNPCは一度倒されてしまうと二度と復活しません。ですが復活しない代わりに途轍もない強力な存在となっております。例え自身の腕に多大な自信をお持ちであったとしても、ソロでの挑戦は自殺行為に等しい行為ですので御注意ください。
・コラボイベント貢献度ランキングの実装
―《ナザリック地下大墳墓》内には無数の敵が存在しています。それらの敵を倒せば倒すほど貢献PTが加算され、一定の貢献PTを越えるたびに報酬を入手する事が出来ます。更にランキング上位入賞者にはコラボイベント終了時に豪華な報酬をプレゼント!報酬一覧は下記をご覧下さい。
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「アインズ・ウール・ゴウンって確か…」
今回のコラボイベントのボスである"アインズ・ウール・ゴウン"。その名に聞き覚えのあった和人は、はて何処で聞いたかと頭を捻って思い出そうと記憶を辿ってゆく。しかし自身の記憶を辿る旅は、鳴り響いた電子機器によって強制的にシャットアウトされてしまうのであった。
ディスプレイには見慣れた名前が表示されており、和人は湧き上がる喜色を抑えることなく素早い動きで応答ボタンをタップし、耳に押し当てた。
「もしもし、明日奈?」
『キリト君、おはよう!ね、ね、告知見たかな?』
「おはよう明日奈、ああ今確認したよ」
電話の相手は和人の恋人である結城明日奈からであった。成程、愛しい愛しい恋人からの電話であれば、先程の和人のにやけ顔にも納得出来る。話の内容はどうやらコラボイベントに関してのもののようだ、和人と同じタイミングでイベントの告知を見たのだろう。その声色から本当に楽しみにしているのが伝わってくる。この話題を一刻も早く和人と共有したかったに違いない。
『…ここ最近になってALOのプレイヤーどんどん減ってたもんね、その対策なのかな?』
「多分そうだと思う、両者ともサービス開始してからプレイヤー数は減少していたからな…あぁ、そうか…ARに流れてったプレイヤーを呼び戻す為にこのコラボを開催したんだな」
ARとは
その言葉通り、この技術は覚醒状態の人間に視覚・聴覚・触覚情報を送り込み仮想アイテム、情報と言った様々なものを投影する事が可能となる。
そしてこのAR技術を採用して発売されたのが、通称《オーグマー》と呼ばれるAR型情報端末だ。
目的地までのルート検索やゲーム、TV等様々な情報を投影する事が可能で、普段の生活に便利な機能が多数備わっている《オーグマー》。
初のAR型情報端末と言う事もあってか発売されるや否や絶大な人気を誇り、今も尚その勢いは留まる事を知らない。
そしてこの《オーグマー》を用いた最新ゲーム《オーディナル・スケール》もその人気拡大に貢献している。
更につい最近、《オーディナル・スケール》のイメージキャラクターであるユナのライブが行われたのは記憶に新しいだろう。その際に何かしらのトラブルが発生したという噂が流れているが主催社はこれを否定、ただの余興であったと公表している。
『勿論参加するよねキリト君!』
「そうだな…かなり大掛かりなイベントみたいだし皆を誘ってこのイベントに参加しようか、まだ開催まで一ヶ月もあるしこの間に色々準備しといた方が良いかもな」
『うん!皆も告知見たと思うから後で話してみるよ。じゃあキリト君、後でね!』
「ああ、また後でな」
電話を切り時刻を確認する和人、明日奈との待ち合わせ時刻までまだ十分な時間があり身支度を整えるにしても尚余る程だろう。
ならばコラボイベントについて調べておくのも悪くは無いと、和人はPCに座りなおし電子の海へと飛び込んでゆく。
───検索キーワードは、《アインズ・ウール・ゴウン》。
◇◆◇
8月25日 ナザリック地下大墳墓 円卓の間
「ようこそナザリック地下大墳墓へ!歓迎しますよ佐藤さん、金本さん」
円卓の間に備えられていた四十一の席に着席している異形の者達、その内の一人が代表して歓迎の言葉を、招かれた来賓の二人に送る。
「ありがとうございます、モモンガさん。未だ嘗て誰も到達した事の無い第十階層に御招き頂いて本当に光栄に思いますよ」
二人の内の片方、佐藤という人間が感謝の言葉を述べると、続いて金本という人間も同調する。
「素晴らしい内装の数々を見せられてもうお腹一杯になってしまいましたよ」
円卓の間に行くまでに見た数々の凝りに凝った装飾やNPCの数々、本当にこの場所を愛しているのだと感じずにはいられない程であった二人は自分達の考えが間違っていなかった事を再認識する。彼等にこの企画を持ちかけて本当に良かったと。
「今回の話を持ち掛けられた時は正直驚きましたよ、まさか我々にボスをやってもらいたいとはね」
骸骨の顔を晒している魔術師風の格好をした異形の存在、この者こそがこのナザリック地下大墳墓を支配する四十一人のまとめ役であるギルドマスター、モモンガだ。
「ついこの間この場所で起こった伝説的な事件、この事件を聞いた時あなた方しかいないと確信しましてね…ふふ、年甲斐も無く興奮してしまいましたよ」
「《ユグドラシル》を運営している身としては無知を晒す事になりますが…まさかあのような方法で第八階層のあれらを創り上げるとは…本当に度肝を抜かれましたよ」
佐藤と金本が興奮の余り椅子から立ち上がり捲くし立てる、その様子に周囲の支配者達から喜びのエモーションが次々と飛び出していく。
「ふふふ、そうだろうそうだろう」
「いやーアレを作ったのはホントーに苦労したんだよねー」
「こうも褒められると照れちゃうねぇ」
和やかな雰囲気になり暫しの雑談を講じる四十三人、時刻は日付が変わろうとしていたが金曜の夜と言う事もあり全員が翌日は休日だ。
お陰で時間を気にする必要は無い。大人の姿をした四十三人の子供達の話は更に盛り上がり、日付が変わっても尚暫くの間続いたのであった。
◇◆◇
「さて、そろそろ本題に入りましょうか?」
代表であるモモンガが話題が出尽くしたタイミングを計っていたのか、絶妙なタイミングで話を切り出す。こういった気遣いが個性の強いギルドメンバーを纏め上げるコツなのかもしれない。
「おっと、そうですね。時間を忘れてついつい盛り上がっちゃいましたね」
既に時刻は深夜一時を回ろうとしている、全員が休日な為時間を気にする必要は無いが、そろそろ眠気を覚える者も出始める時間帯だ。手早く済ませるに越した事は無いだろう。
「ごほん、では最終企画案(仮)を配布致します」
「最終的にはアインズ・ウール・ゴウンの皆さんの意見を取り入れてこの企画案は完成となります。ただしゲーム内容的にどうしても採用が難しい点もいくつか御座いますので予め御了承くださいね」
「「「キタ――(゚∀゚)――!!」」」
佐藤と金本が企画案を配っていき全員に手渡されていく。受け取った者達が興奮のあまり叫んだりエモーションを連打する等、凡そ大人とは思えない行為に若干の苦笑いを浮かべる二人。彼等の中身が実は社会人ではなく子供なのではないか?と疑ってしまうのも無理はない。
「では、まず一頁目を御覧ください」
佐藤が手元の資料を確認しながら説明に入る。各々が書かれている文字に注目し、中には自分の気になった頁を勝手に読み進める者も居るようだ。
1.コラボイベントを開催するにあたって
・ALOでは《ユグドラシル》のLv制は採用されておらず、Skill制を採用しています。
その為、現状のままではイベントの開催は不可能となってしまいますので、どちらかの制度に統一する必要があります。
今回はALO側での開催となりますので、Skill制の採用となります。よってアインズ・ウール・ゴウンの皆さんのキャラデータをALO用に複製し、そのキャラデータのLv構成やステータスを元にSkill制に新たに落とし込んでいく作業が必要となります。その為皆さんの要望や希望を叶える為に、皆さんの御協力が必須となります。
「はいはーい!質問!」
「どうぞ、ぶくぶく茶釜さん」
話し掛けるのも途惑われる程の凄まじい外装のぶくぶく茶釜と呼ばれたプレイヤーが、手と思われる箇所を頭上に掲げて甲高い声を挙げる。
「つまり、私の場合で言うと防御全振りだからALOでも防御特化になるって事かな?」
「ええ、その通りです。修得されているスキルもALOで同じ効果を持ったスキルに、無ければ新たに作成するか最も近い効果を持つスキルに変換されます。あっそれとぶくぶく茶釜さん」
「はい?」
「ぶくぶく茶釜さんもそうですが特に刺激の強い外見の方やNPC、それらに付随する存在の外装の変更、反則級の強さを持つNPCの仕様変更を御願いまたは禁止する事になりそうです」
「「「え"っ"」」」
心当たりがあったのか複数の人物が同時に声を上げて視線を佐藤に集中させた。その彼等に共通している点は、極めて外見が凄まじいまでにあらぬ方向に振り切っている点である。加えて彼等の作成したNPC達にも、性癖や趣味が反映されている。
「な、なんでよ!?《ユグドラシル》じゃ問題ないのに!!」
ぶくぶく茶釜がその体をゆらゆら動かしながら、慌てふためいて抗議のエモーションを連発する。
「えーっ、言いにくいのですがぶくぶく茶釜さんの見た目は、完全に男の"アレ"を連想させるので…」
「此処だけの話ですがウチでもかなり揉めましたよ、ぶくぶく茶釜さんの外装は…。ウチがOKなのは《ユグドラシル》が圧倒的自由度を謳っているからです」
「「「wwwwwwwwwwwwwww」」」
完全に無関係な者達が草を生やしまくり、笑い声が円卓の間を包み込む。
「姉ちゃんプギャ━━━━━━m9(^Д^)━━━━━━!!!!!!」
「黙れ、弟」
姉ちゃんと呼び煽ってきた人物の名はペロロンチーノと言う、先程までの甲高い声とは正反対に低い声で睨みを利かせるように発言するぶくぶく茶釜の実の弟にあたる人物だ。
「佐藤さん金本さん一つ宜しいかな?」
姉弟の喧嘩を尻目に質問したのは水死体にタコの頭が付いた様な醜悪な異形の者。正しくホラー映画に出てくるモンスターそのものである。間違いなく見た者は
「はい、タブラ・スマラグディナさん」
そのプレイヤーの名はタブラ・スマラグディナと言う。
ギルドメンバーの中で最も設定に拘る男であり、ナザリックのギミックの設定を担当した男でもある。
「具体的に何がダメなのか教えてもらえると嬉しいのだが」
「分かりました」
ぶくぶく茶釜、タブラ・スマラグディナ、ニグレド、ルベド、五大最悪の内の恐怖公を除く四体、第八階層のあれら等、完全にアウトな存在を佐藤と金本が挙げ連ねていく、自分が関わったNPCの名前が挙がると阿鼻叫喚の叫び声を挙げていく四十一人。
「モモンガさんは!?骸骨じゃん!刺激強いでしょ!!」
「えっ、俺ですか?」
思わぬトバッチリに困惑のエモーションを表示させるモモンガ。
「
「( ⁰▱⁰ )」
「ま、まぁキャラデータを複製するにあたり外装をマイルドにしたものに変更すればそれでOKですので…」
「( ⁰▱⁰ )」
「諦めろ姉ち「俺の自信作の五大最悪も対象だと!?断固として抗議する!!」
…この会議は暫く時間が掛かりそうだ、と佐藤と金本は今日は徹夜になりそうだと覚悟を決めるのだった。