ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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第14話

10月14日23時11分 ナザリック地下大墳墓第九階層 ロイヤルスイート

 

「お、おい!押すなアルベド!!行けばいいんだろ行けば!?」

 

「御急ぎ下さい!至高の御方々を御守りするのが我等の使命!妖精(ハエ)共の相手は私達シモベ達にお任せを!──お前達っ!ぬーぼー様と音改様を円卓の間へ!」

 

「「「かしこまりましたアルベド様!!」」」

 

「も、持ち上げるな!!ぬおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

「なんやねんお前等ああああああああぁぁぁっぁああぁぁぁ!?」

 

 ロイヤルスイートに用意されていたビリヤードで遊んでいた二人が一般メイド数人に持ち上げられあっという間に連れて行かれてしまった、今やアルベド達と接触したNPC全てが原因不明の行動を起こすようになってしまっており至高の支配者は見付かり次第円卓の間へと集められているのであった。

 

 タブラ・スマラグディナの部屋を飛び出したアルベドが次に起こした行動は彼の予想通り至高の支配者全員を守る為に侵入してきた妖精達をナザリックの全戦力を持って殲滅する事、そして最も安全な第九階層円卓の間に支配者達を集めて安全を確保する事であった。

 

──何故円卓の間なのか?それより第十階層にある玉座の間のほうが安全なのでは?そう思うだろう、しかしアルベドは知っていたのだ、至高の御方々が円卓の間から〝りある〟へとお出掛けして、そしてこの円卓の間へ帰還している事を。

 

 しかしその〝りある〟という場所がどのような場所なのかまでは把握出来ていないらしい、しかし妖精達の侵攻を受けているナザリックより安全な場所であると至高の御方々の会話からアルベドは推測していたのだ。

 そして円卓の間で待機させていればいずれ安全な〝りある〟へとお出掛けになるのでは?とのアルベドの推測は確かに正しい。

 

──だがアルベドは知らない、その〝りある〟という場所こそ彼等の帰るべき世界だと言う事を。

 

「アルベド様っ!!」

 

「ナーベラル!弐式炎雷様と武人建御雷様は見付かったの!?」

 

「そ、それが…弐式炎雷様は既に第五階層へ妖精(みじんこ)共の迎撃に向かわれております!」

 

「くっ!流石はナザリック一暗殺と隠密に特化された御方…見付からないと思ったら既に迎撃に向かわれた後でしたか…」

 

「アルベド様っ!!」

 

「どうしたの!?」

 

 親指を噛み締め整った美しい顔を苦々しげに歪めるアルベドの元へソリュシャンが慌てた様子で駆けつけてくる。

 

「ぶ、武人建御雷様とコキュートス様が第五階層へ向かわれました!」

 

「な、なんですって!?どうして引き止めなかったの!?」

 

「も、申し訳ありません!引き止めたのですが…」

 

『戦場で朽ち果てる事こそ武士の本懐、邪魔をするな!往くぞコキュートス!』

 

『ハッ!オ供致シマス!』

 

「…と仰られて…コキュートス様と共に…」

 

「コキュウウウゥウウウトスウゥゥゥゥ…!!!」

 

「「ひぃっ!」」

 

 ナーベラルとソリュシャンがお互いの体を抱き合いガタガタと震える、彼女達の前に佇むアルベドが苛立ちを抑え切れずに全身から黒い瘴気を撒き散らしているせいだ。

 

──そこへ落ち着いた様子でルプスレギナに先導されつつも興味津々な様子で様々な質問をしている死獣天朱雀が通り過ぎる。

 

「ふむ…実に興味深い。ルプスレギナよ、お前達の目的は何だ?」

 

「そりゃあ勿論至高の御方々を御守りする事っすよ!!」

 

「なぜそう思うのか、その事に疑問を抱いた事はないのか?」

 

「─?至高の御方々が私達を〝そうあれ〟と御創りになられたんすよね?なら私達はそれに従うのみっすよ!」

 

「…ふむ、会話の内容を理解している、とはまだ言い切れんか?…まだまだトップダウン型AIで実現可能なレベルではある。…しかし会話が余りにも自然すぎる、凄まじい速度で学習しているのか?それとも…いやもう一つの可能性は未だ思考実験の域を出ていない、重村君や茅場君でも終ぞ実現は出来なかったんだ、有り得ないか…?」

 

「急ぐっすよ死獣天朱雀様!」

 

 2人が通り過ぎた直後に次々と支配者達が連行されていく、全力で抵抗すれば容易く抜け出せる事は可能ではあるのだが我が子のように思っているNPC達に抵抗する気はなかなか沸きあがってこないようだ。しかも彼女達の行動は我が身を思っての行動だ、ならば尚更それを止められる筈が無い。中にはこの状況を面白がっている者もいるようだ。

 

「ちょっとどしたのよ二人共!おーろーしーてー!」

 

「申し訳ありませんぶくぶく茶釜様!あたし達が安全を確保するまで円卓の間で待機していて下さい!」

 

「そ、そうです。ボク達が妖精達を追い返しますから!」

 

 アウラとマーレにピンク色の体を持ち上げられ四肢をジタバタさせてもがいているぶくぶく茶釜がアルベド達の前を通り過ぎていく。

 

「あははっ、SS撮っちゃった、掲示板に張ってもいい?かぜっち」

 

「ダメに決まってるでしょ!?」

 

「いや~ホント可愛らしい外見になったよね茶釜ちゃん」

 

「笑ってないでアウラとマーレを説得してよあんちゃん!」

 

「って言ってるけど?」

 

 餡ころもっちもちがぶくぶく茶釜を持ち上げている2人に問い掛けるも彼女の予想していたとおりの返答が帰ってくる。

 

「申し訳ありません餡ころもっちもち様、安全を確保する為なんです!御理解ください!」

 

 程なくして全ての支配者達が円卓の間へ集められた、今この場に居ないのはログアウトしている者と前線へと出向いている弐式炎雷と武人建御雷のみである。

 

「セバス!円卓の間から御方々を誰も出さないように!守りは任せるわ!」

 

「かしこまりました」

 

 セバスと戦闘メイドプレアデスの姉妹達が扉の前に整列し守りを固めるのを見届けたアルベドが全ての階層守護者とその配下達全てを伴い弐式炎雷と武人建御雷を連れ戻すべく第五階層へと歩を進める。その戦力は妖精達には決して太刀打ち出来ない程に膨れ上がっており、まさに天災と呼ぶに相応しい。

 

「弐式炎雷様と武人建御雷様を連れ戻しにいくわよ!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

10月14日23時58分第四階層 地底湖

 

 アルベド率いるナザリックの一大勢力が第五階層へ向かっている頃、妖精達は何をしていたかと言うと…

 

「「「じゃんけん!ぽん!!!」」」

 

「ウ、ウソ…私の…ま、負け…?」

 

──じゃんけん大会をしていた。

 

 攻略を中断しなければならない程の重要さを持つこのじゃんけん大会の目的とは、第五階層で待ち構えている弐式炎雷と彼が率いる八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)の攻略に必須なとある伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を持つ者を誰にするかを決める為の大会だった、何をふざけた事を言っているのかと思うかもしれないが彼等は至って真面目である。

 

 そしてじゃんけん大会をしてまでその伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を持ちたいのか?と思うだろうがそれはまったくの逆だ、彼等はその伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を持ちたくないが為に必死の形相でじゃんけん大会に臨んでいたのだ。

 

──その気になる伝説級武器(レジェンダリーウェポン)の名は《恐怖公の髭》。

 

「な、なして私が…うぅ…久しぶりにログイン出来たんに、いきなりこんなん酷いわぁ…」

 

 じゃんけんに負けた水妖精族(ウンディーネ)の女性が涙目になりながらブツブツと泣き言を連ねる、その様子を見ていた女性達が憐れみと自分じゃなくて良かったと心底安堵した感情を混ぜ合わせた表情で遠巻きに見つめていた。

 

「……ト、トレード拒否しても良か?」

 

 余りの動揺ぷりに方言が出ている事すら気が付いていない水妖精族(ウンディーネ)の女性がトレード申請をしてきた火妖精族(サラマンダー)の男性に涙目で訴える、しかし火妖精族(サラマンダー)の男性は満面の笑みでそれを拒否、残酷にもトレードが成立し女性のストレージに《恐怖公の髭》が加わってしまった。

 

「よし、早速で悪いが急いで装備してくれ、すぐに第五階層へ攻め込むぞ」

 

 水妖精族(ウンディーネ)の女性にとって死刑宣告ともとれる発言をユージーンが遠慮なく口にする、心の準備も何も終えていない女性はユージーンの言葉に顔面蒼白となっていた、あまりの悪逆非道ぶりに周囲の女性の妖精達から非難の嵐が巻き起こる。

 

「……では、お前達の誰かが代わりに──」

 

 ユージーンが何を言おうとしているのか瞬時に理解した女性達が一目散にその場を離れていく。ユージーンの言葉に一縷の望みを抱きかけた女性だが、その言葉が紡がれるより早く退散した女性達を見てまたも絶望の淵に沈む水妖精族(ウンディーネ)の女性。

 

──完全に目が死んでいる。

 

「……これはただの鞭これはただの鞭これはただの鞭これはただの鞭これはただの鞭これはただの鞭」

 

 目を瞑り両手でがっしりと《恐怖公の髭》を握り持っている女性がぶつぶつと呟く、手に持っている鞭はただの鞭だと自己暗示を促すが時折ピクピク動く《恐怖公の髭》がそれを阻んでしまう。

 

 女性の精神状態を考慮してユージーン達は急いで第五階層への転移装置を使い第五階層へと進軍する。しかしじゃんけん大会をしている間に既に弐式炎雷はアルベド達の手により強制的に連れ戻されていた。

 

 猛吹雪の中に残っているのは15体の八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)のみ。そして猛吹雪が吹き荒れる地帯を取り囲む様にナザリックの軍勢が展開しておりこれ以上の侵攻は許さないと言わんばかりに全員が殺気立っていた。

 

──包囲網の一角を担当しているのは第七階層守護者デミウルゴスと彼の親衛隊を務める三魔将の3人、加えて数万にも及ぶ悪魔の軍勢。

 

「良いかお前達、アルベド達が武人建御雷様を安全な場所に退避させるまで我々で妖精達を食い止めますよ」

 

「「「ハッ!!」」」

 

「情けを掛ける必要はありません、彼等は愚かにもこのナザリックに土足で踏み入り栄光あるナザリックを汚したのです、踏み躙ってやりなさい」

 

──第六階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ、マーレ・ベロ・フィオーレ。姉であるアウラの可愛い魔獣(ペット)達を率いて同じ様に包囲網の一角を担っている、その数は凡そ数千。数こそデミウルゴスの軍勢には劣るがそれを補って有り余る程の力をこの姉弟は秘めているのだ、特にマーレの行使する魔法の数々は驚異的でありその破壊力は容易く地形を変貌させる程である。

 

「良い皆!?ぶくぶく茶釜様に良いところを見てもらうんだから気合入れるのよ!!マーレ!アンタもしっかりしなさいよ!」

 

「わ、わかってるよお姉ちゃん…で、でも魔法使ったら皆巻き込んじゃうんじゃ…?」

 

「あ~確かにそうね…じゃ、あたしが援護するから敵を殴り殺してきなさい!」

 

「う、うん分かった!」

 

──そして最後の包囲網の一角を担うは第一~第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールンと彼女の眷属達。

 

「良いでありんすかお前達、デミウルゴスはともかくチビ共に遅れを取らない様にするでありんすよ」

 

「「「心得ております、シャルティア様」」」

 

 数体の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を筆頭に下位吸血鬼(レッサーヴァンパイア)が数千、そして吸血鬼の狼(ヴァンパイア・ウルフ)も同じく数千ほど、そしてシャルティアの周囲を吸血蝙蝠の群れ(ヴァンパイア・バット・スウォーム)が飛び交っている。強さはそれほどでもないがその数が問題だ、この包囲網の中で最も多いのはこの吸血蝙蝠の群れ(ヴァンパイア・バット・スウォーム)でありその数は測る事は出来ない。

 

 これまでは支配者達の命令に従っていただけの存在だった守護者達が、己の存在理由に従い自ら支配者達を守ろうと行動する、その結果コラボイベントの難易度が格段に上昇してしまうのであった。

 

 確かに長い時間を掛ければ何時かは妖精達が勝利する事は可能だ、しかし期限は残り17日。それまでにこの包囲網を突破し支配者達を倒せるかと言われれば、それは不可能に近いだろう。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

10月15日0時11分 ナザリック地下大墳墓第九階層 円卓の間

 

「どうしたんでしょうね、あの子達は」

 

 モモンガが呟いたのを機に円卓の間に集められた支配者達が様々な憶測を語っていく。

 

「何らかのプログラムが作動して異常行動を起こしているとか?ウイルスに感染した可能性も捨てきれないか?」

 

「もしそうだとしたら佐藤さんから何か連絡が来ている筈だ、それが無いという事は不具合でもウイルスでも無いという事じゃないか?」

 

「だがあの行動は可笑しいぞ、あんな活発に自分から動き回るか普通?」

 

「「「……うーむ」」」

 

 腕を組んでうんうんと頭を捻る支配者達、そんな中じっと黙って彼等の会話を聞いていたタブラ・スマラグディナが口を開く。

 

「…皆さんはどう思いますか?以前のNPC達と今のNPC達を見てどちらがより活き活きとしているか」

 

「そりゃ…勿論〝今〟のNPC達だろう」

 

「だな、正直あの姿こそ思い描いていたNPC達の姿だ」

 

 タブラ・スマラグディナの問いに全員が今の方が良いと口を揃えて言う。

 

「彼女達は…恐れているんでしょう、私達を失うことを。彼女達にとってこのナザリック地下大墳墓と私達こそ彼女達の全て、他に世界がある事も知らないのですから当然っちゃ当然の話ですけどね」

 

 確かにタブラの言うとおりである、この世界(ナザリック)しか知らない彼女達は己の存在理由である世界(ナザリック)を、至高の41人を失うことを極端に恐れているのだろう。

 

「あの子達にナザリック以外の、新しい世界を見せてやる事は出来ないでしょうか?このまま私達の都合で彼女達の残り少ない命を散らすのは…」

 

「…危険だと思うけどな。どうにかしてやりたいのはやまやまだが…俺達に帰るべき現実世界があるって事実を知ったら自壊しかねんぞ?」

 

「それに、これはもう俺達だけの問題じゃなくなってきている、彼女達を救う場合佐藤さんや金本さんにどう説明するんだ?」

 

 次第に声を出す者達が数を増やしていき円卓の間は喧騒に包まれる。彼女達を救うべきと言う者、それに異を唱える者、ヒートアップしていく話し合いはやがて罵声も混じるようになる。

 

「お、落ち着いてよ皆!ボク達が言い争ってどうするの!!」

 

「……モモンガさん、どうするの?──モモンガさん?」

 

 隣に座っていたぶくぶく茶釜が未だ沈黙を保ったままのモモンガに問い掛ける。 

 

(良かった…!あいつをイベントに連れて来ないでホンッッットーに良かった!!あいつが動き出したら俺、耐えられない!!!恥ずかしさで死ぬ自信があるぞっ!!!)

 

 

 

 

 

 

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