ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》 作:黒雲あるる
10月16日18時21分 ナザリック地下大墳墓第五階層 氷河上空
眼下で繰り広げられる妖精達と守護者達による大戦争を遥か上空から眺めている妖精が1人。
「なーんか守護者達の様子がおかしいと思ってたらそんな事になってたのねー」
つい先程ログインする前に届いたモモンガからのメール、その内容はNPC達を救うのに必要な指輪の在り処を教えろというものであった。しかしこの男るし★ふぁーがそう簡単に首を縦に振る事は無い。
「ふっふっふっ、甘いぜモモンガさん!そんな面白そうな事になってるのに俺がほいほいと差し出すと思うのかい?」
るし★ふぁーの返信はたった一言、『だが断る★』のみ。その返信を見たモモンガは怒り狂い『必ずお前に超位魔法をぶち込んでやるからな』と返信を送るのであった。
他のギルドメンバーにとってはNPC達を救う事が第一なのだがこの男にとっては違う、るし★ふぁーがまず何よりも優先しているのは如何に自分が楽しめるか、ただそれだけに集約される。その為ならばどんな労力も厭わず手段も選ばないのだ。
「目的を達成するには立ちはだかる壁を越える必要があるんだぜ、モモンガさん★」
脱落した後もイベントを楽しめるように独断で指輪のデータを作成し佐藤にデータを渡していたるし★ふぁー、勿論他のギルドメンバーはおろかモモンガにも話していない行為である。
そして妖精達に様々な情報を喋ったのも全ては指輪を手に入れる為だ、指輪のあるエリアまで攻略を進めて貰わないと自分が指輪を手に入れる事すら出来ないからである。
しかもそれだけではない、指輪の入った宝箱が万が一他の者に見付かった場合に備えて宝箱を守る門番を設置していたのだ、しかもその門番は特定のキーワードを最初に唱えた者に無条件で従うという巧妙に隠されたバックドアが仕掛けられている。この事は佐藤達にすら秘密にされており現状この事を知っているのはるし★ふぁー本人とデータを精査した《カーディナル》のみだ。
──そしてその問題の指輪が配置されているエリアこそ此処、第五階層にあるのだ。
しかし目的の場所に行くには守護者達を越える必要がある、何度か隠密魔法を駆使して越えようとしたのだがニグレドの探知魔法に捕捉され即座に掛け付けたNPC達により抵抗する暇も無くやられてしまい未だに目的の場所まで辿り着く事が出来ないでいた。
「うーん、こればっかりは待つしかないかなー、待ってろよー指輪ちゃん!」
るし★ふぁーに指輪が渡れば更なる混沌が両陣営に齎されるだろう、それだけは何としても避けなくてはならない事態だ、そしてそれを阻止する事に加え指輪を手に入れる為にモモンガは黒の剣士、キリトに依頼する。
──どうか、NPC達を救う為に力を貸してほしい、と。
◇◆◇
10月16日18時29分 ダイシーカフェ
「ぁのゃろぅ………」
今し方送信したメールに対して即座に返信されたメールに書かれていた内容に青筋を浮かべる鈴木悟、そんな鈴木悟を諌めるようにやまいこが声を掛ける。
「お、落ち着いてよモモンガさん、今に始まったことじゃないんだから…」
過去幾度と無くるし★ふぁーの迷惑極まりない行為に胃を痛めつけられている鈴木悟、彼の胃に穴が開くのも時間の問題かもしれない。
しかし皮肉な事に彼の行いが結果的にNPC達を救う道を照らしたのは紛れもない事実だ、それに免じてギルド除名だけは無しにしてやろうと決めるモモンガ、しかし超位魔法をぶち込むのは確定事項である。
「……ふーーーっ。…桐ケ谷君、本来ならば我々がやらなければならない事なのは重々承知している、…しかし頼れるのは君達しかいないんだ。どうか頼まれてくれないか?」
こうやって面と向かって会ってみて分かる事がある、彼は信頼に足る人物であると鈴木悟は率直な感想を抱いた。彼は指輪を手に入れたとしてもNPC達を救う事以外に利用するような事は決してしないだろうと何処か確信めいたものを抱かせるのだ。
「はい、勿論です。必ず指輪を手に入れてNPC達を救って見せます!」
「…ありがとう。恐らく奴はナザリック内の何処かで指輪を手に入れる為に潜伏している筈だ、我々も円卓の間から奴が隠れそうな場所を探してみる」
「分かりました、では俺達は一先ず最前線に向かって目撃情報が無いか聞き込みをしてみます」
目下の目的は指輪が隠されている場所を唯一知っている、るし★ふぁーを探し出す事だ。彼の姿自体はユイが記憶している為見つける事さえ出来ればALO随一の実力を持つキリト達により容易く捕まえる事が出来るだろう、問題は彼が指輪の在り処を口にするかどうかである。
「しっかし、奴さんが素直に指輪の在り処を吐くとは思えねぇが…」
和人と鈴木悟の話を黙って聞いていたエギルが尤もな疑問を口にする。
「大丈夫ですよ、あいつの事だからワザと焚き付けてやれば必ずノッてくる筈です。…勝負事には人一倍の拘りがあるからなあいつは…」
やはり長年の付き合いがあるからだろうか、ギルドメンバー全員がどのような性格をしているのか、どのような行動理念を持っているのか全て把握しているらしい。流石は癖の強いギルドメンバー達を束ねるギルドマスターである。
「じゃあ鈴木さん、俺達はこれで失礼します」
「ああ、本当にありがとう…桐ケ谷君、結城さん、ユイちゃん。君達がいなければ俺達は…」
「はははっ、よして下さい鈴木さん、──誰かが困っていたら助けるのは当たり前ですよ」
「──っ!!………そうだな、──桐ケ谷君、君達も何か困った事があれば遠慮なく言ってくれ、大した力にはなれないかもしれないがすぐに助けに向かう事を誓うよ。─あ、これ俺の名刺ね」
何か分かったらこの番号に連絡してくれと言いつつ名刺を和人に渡す鈴木悟、その名刺に目を通すと誰もが聞いた事のある大企業の社名がデカデカと印字されていた。
「モモンガさん、ボクは2人を送っていくよ」
「ええ、よろしくお願いしますやまいこさん、今夜ナザリックで会いましょう」
ダイシーカフェを後にする3人を見送りつつ鈴木悟もログインする為に帰り支度を始める。
「よし、こうなったら店開いてる場合じゃねえな、今日はもう店仕舞いだ!」
「ええっ!?今からが一番稼げる時間帯でしょう?大丈夫なんですか?」
「問題ねぇよ!それに今日は月曜で客もあんまり来ねぇだろうしな」
「まぁ、マスターが問題ないって言うのなら大丈夫なんでしょうけど……、マスター、…いえ──エギルさん、重ねてお礼を言わせてください、本当に…本当にありがとうございます」
「その言葉はまだ早いぜモモンガさんよ、全ての問題を片付けてから改めて言ってくれ」
いかつい顔に似合わない最高の笑顔とウインクをプレゼントするエギル、その似合わない仕草に思わず笑みが零れる鈴木悟。
「…ふふっ、そうですね。では全てが終わったらここで打ち上げをやらせて頂けますか?」
「おっ、団体の予約だな?任せとけ!とびっきりの料理と酒を用意しておいてやるよ!その時はNPCも全員連れて来な!」
「はいっ!!」
円満に打ち上げを迎える為にもやらなければならない事は山積みであり前途多難ではある、しかしそれでも全員が力を合わせれば必ずやこの困難を乗り越える事が出来るだろうと鈴木悟は確信めいたものを胸中に感じながら、るし★ふぁーの行方を探る為に自宅へと帰路を急ぐのであった。
◇★◇
10月16日20時54分 ナザリック地下大墳墓第五階層 氷河上空
「邪魔邪魔邪魔邪魔ァッ!!!邪魔でありんす!!」
倒しても倒しても無限に湧き出てくる妖精達に業を煮やしたのか、真紅の鎧を纏ったシャルティアの動きが更に激しくなる、スポイトランスを一閃、また一閃と振るう度に数十人の妖精達が蹴散らされ命を散らせていく、更にシャルティアの持つスキル《エインヘリヤル》の効果によって本体と寸分違わぬ実力を持つ分身が出現し同時に暴れ回る事によって戦場は更に混沌を極めていく。
ただでさえ一騎当千の実力を持つ守護者達、その中でも最強の実力を誇るシャルティアが2人も暴れ回っているのだ、更にダメージを与えてもそれを上回る回復量を見せ付けられては手の施しようが無いと言える。
普段はその頭の出来の悪さから同じ階層守護者からバカ扱いされているシャルティアだが戦闘に関しては話は別だ、創造主であるペロロンチーノが一切妥協する事無くガチのスキル構成で育て上げたからだ。
「シャルティアのお陰で
「そうだね、アウラとマーレにもそう伝えておこう、では私も前線に出てくるとするよ」
「ええ、くれぐれも気をつけてちょうだいデミウルゴス。あの2人にもそう伝えておいて」
「了解だ」
シャルティアの活躍を見たアルベドは即座に作戦の変更を決定する、前線を暴れ回るシャルティアと分身に任せ、散り散りとなった妖精達を各個撃破していく作戦に移行したのだ。これにより戦線を引っ掻き回された妖精達がデミウルゴス達の軍勢に各個撃破されていき次々とその姿をリメインライトへと変えていく。
──しかし動いたのはアルベド達だけではない。
戦線が広範囲に広がり散り散りになって戦っている現状を好機と見たるし★ふぁーがついに動き出したのだ。敵味方入り乱れている今ならニグレドの探知魔法に捕捉される事なく目的地まで行く事が出来るだろう、いや例え探知されていたとしてもこの混乱の中、如何にニグレドが情報収集のスペシャリストだとしても把握しきれないのだ、そんな彼の目指す先には氷結牢獄と言う名のメルヘンチックな屋敷が聳え立っていた。
「今がチャーンス!」
「待ってくれ!るし★ふぁーさん!!」
「んー?」
一直線に氷結牢獄まで向かおうとする、るし★ふぁーを制止する声が彼の耳に届く。自分の名前を呼ばれて思わず急ブレーキを掛けたるし★ふぁー。しかし彼の今の姿は妖精であり『ふぁ★しる』と名乗っている筈、その名を知っているのはアインズ・ウール・ゴウンの仲間達のみの筈だと怪訝な表情で彼は背後を振り返った。
「捕まえろーーーーーっ!!!」
「な、なんだぁ!?」
呼び掛けたのはるし★ふぁーの姿を探していたキリト達一行であった。敵味方入り乱れて戦う中を切り裂くように急降下するるし★ふぁーの姿を発見したユイが即座にキリトに居場所を伝えたのだ、そしてるし★ふぁーを止めるべくキリトが叫ぶ。そして動きを止めたるし★ふぁーをキリトから事情を聞いた仲間達が瞬く間に包囲しエギルがその巨体を活かして拘束するのであった。
「な、何だお前!?HA!NA!SE!!!」
「誰が離すかぁ!!」
「キリト!此処は不味い!一旦離れた方がいいわ!!」
「ああ!皆一旦引くぞ!!」
──シノンの警告に同意して引こうとするも…一足遅かったらしい。
「おやおや、見掛けないと思ったらこんなところにいらっしゃいましたか」
要注意人物としてマークされていたキリト達、その姿をデミウルゴスに発見されてしまったのだ。
「至高の御方々から君達は見つけ次第殲滅するようにと言われておりますので…ここで死んで頂きましょうか!」
「やっべぇ!!デミウルゴス!俺だー!るし★ふぁーだ!助けてくれー!」
「貴様…至高の御方の名を騙るとは……万死に値するぞ
ただの命乞いだったならまだしも、あろうことか至高の御方の名を騙って命乞いをするその妖精に激昂するデミウルゴス、当然の如くその正体に気付く事は無い。拘束されているその妖精もついでにターゲットに加えて背後に控えていた部下に殲滅せよと命令を下した。
「あっ\(^o^)/オワタ」
「お、お前!余計な事言うなよ!!」
「うっさいわ!!」
「どうすんだキリの字!?」
デミウルゴスの数万の軍勢が一斉にキリト達に襲い掛かろうと迫り来る、邪魔な妖精達を蹴散らしつつ一直線に向かって来ており最早一刻の猶予も無いだろう。しかしここで思い掛けない助けが入る。
「あいつを倒せば
エギルに羽交い絞めにされているるし★ふぁーが叫ぶ。目的地である氷結牢獄まであと少し、指輪を手に入れるチャンスは恐らく今を逃せば今後訪れないだろうという予感がしたるし★ふぁーがありったけの声を籠めて叫ぶ。
「マジか!?皆!ボスが出てきてるぞおおおおお!!!囲め囲めえぇぇぇぇ!!」
るし★ふぁーの声を受けて散り散りとなっていた周辺の妖精達が一斉にデミウルゴスの軍勢に殺到していく。
「ちっ!!邪魔をするな
「お前等!今の内にあの屋敷に逃げ込めっ!!」
こうなっては致し方ない、思わぬ
(…安全な後方に行けというなら分かるが…この状況で敵の拠点に突っ込めだと?)
るし★ふぁーがあの屋敷へ行けと言った意味を考えるキリト、敵味方入り乱れる危険な戦場を突っ切って敵の拠点の中に突っ込めと言う事は十中八九指輪はあの屋敷の中にあると言っているようなものだ。
──そして同時に罠でもある事は間違いない、この男は何かを企んでいる。
「……皆!あの屋敷に入るぞ!!」
しかし例え罠であったとしても指輪があるのなら行かねばならない、モモンガ達のNPC達を救いたいという想いに応える為にもここで退く訳にはいかないのだ。
──そしてキリト達は足を踏み入れる。
──アインズ・ウール・ゴウンに反逆したとされる者達が投獄しているという極寒の氷結牢獄へ…。