ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》 作:黒雲あるる
10月16日21時19分 ナザリック地下大墳墓第九階層 円卓の間
「…無事に氷結牢獄に入れたようですね」
中央に浮かび上がる映像にはキリト達と問題児の姿がある、どうやら指輪が収められた宝箱は氷結牢獄の何処かに設置されているらしい。
「しっかしあの野郎…無断で指輪を作っていたとはな…本当に抜け目の無い奴だ」
「せやけどまぁあいつのお陰でNPC救う手段見つけれたんは事実やけどな」
「まあな…しかし奴の事だ、このまま素直に指輪の元まで案内するとは思えないが…」
支配者達が問題児についてあれこれ話している間にキリト達が慎重に進み始める、程なくして氷結牢獄の住人である死霊系モンスター《レイス》の大群と遭遇する一行、アスナが顔面蒼白になっているのが見て取れる。
「…バーサクヒーラーちゃん大丈夫なのか?顔真っ青だぞ…」
「幽霊苦手なのかね?というかるし★ふぁーが大人しいのが不自然すぎる、絶対何か企んでるぞあいつ」
言われてみればそうだ、と全員が未だにエギルに抱えられたままのるし★ふぁーを見る、その顔には如何にも何か企んでますとばかりに邪悪な笑顔となっていた。
「しかし、我々が助太刀に行く訳には…行けばアルベドがすっ飛んで来て状況は間違いなく悪化しますからね…」
「そうだね…けどあの2人なら…ううん彼等ならきっとやり遂げてくれる」
「そういえば、やまいこさんの教え子のパーティだっけか?」
「うん、皆とっても良い子だよ。……ボクの自慢の生徒達だからきっと大丈夫」
支配者達が見守る中、ついにキリト達と《レイス》の大群の戦闘が始まる。苦手なモンスターである為アスナは前衛に加わらず後方支援に徹するようだ、同様にるし★ふぁーを抱えているエギルも後方で待機している。万が一にもるし★ふぁーを逃がしてしまう事態を引き起こさない為に。
「ふむ…見事な連携だ、余程の信頼が無ければこうも上手くはいかんよな」
「……良いパーティですね」
モモンガが嘘偽りの無い感想を述べる、惚れ惚れする程の洗練された動きに加えお互いの行動の邪魔とならないように波長を合わせるキリトとクライン、並み居る敵を次々と斬り伏せていくその姿はまさに一騎当千と言う言葉が相応しいだろう。
そんな2人を邪魔しないように一歩離れた位置でヒットアンドアウェイに徹しているのがリズとリーファだ。ソードスキルを放った直後の2人をカバーして万が一にも脱落者が出ないように細心の注意を払っている。そしてシノンはその4人が撃ち漏らした敵を熟練された遠距離射撃で撃ち落していく。
「──ッ!撃ち漏らした!!」
しかし5人が如何に尽力しようとも《レイス》の大群の前ではどうしても撃ち漏らしが発生してしまうのだ、支援や回復を担当しているアスナを狙って数体の《レイス》が迫る。
「アスナさんはやらせないっ!!」
「シリカちゃん!」
──白銀の一閃がアスナに迫った《レイス》達を一刀の元に葬り去る。
シリカが戦えないアスナの護衛として彼女を守るべく迫り来る《レイス》達を迎え撃つ、その手にはリズベットの手により新たな命を吹き込まれたヒヒイロカネとスターシルバーの形を変えた姿が存在していた。
──その
本来ならばプレイヤーメイドではどう足掻いても
だがナザリックのNPC達が落としたアイテムを材料とした場合その限界は撤廃されるらしい。その材料を元に
「レイスが一撃で消し飛んだぞ、何だあの短剣」
「流石は俺が見込んだょぅι゛ょだ「黙れ弟」…ア、ハイ」
「あれ、神聖属性ついてません?うわっこわっ」
「黒の剣士が持っている《聖剣エクスキャリバー》も神聖属性ついてるよね、アンデッドのモモンガさんには天敵じゃないか」
モモンガだけでなく他にもアンデッド系の種族を取得している支配者達は多い、そんなアンデッド達に大ダメージを与える神聖属性、それがシリカの持つ《カルンウェナン》にも発現していたのだ。その追加効果は驚く事なかれアンデッド族限定で500%の追加ダメージを与えるというものであった。最早追加ダメージではないと思うだろうが突っ込んではいけない。
──まさにアンデッド絶対殺すマン、ならぬアンデッド絶対殺すウーマンである。
「お、恐ろしい…あの子には近付かない様にしよう…」
◇◆◇
10月16日21時42分 ナザリック地下大墳墓第五階層 氷結牢獄
るし★ふぁーの案内で順調に氷結牢獄の広い通路を進むキリト達、トラップのある部屋へ導いたり強い敵のいる部屋に案内するのでは?と警戒していたキリト達だったが現れるのは《レイス》の大群のみだ、その大群もキリト達の洗練された連携の前にそれ程の障害とはなっていない。
(この人絶対何か企んでるよな…)
ペラペラと宝箱のある場所までの道を喋り続けるるし★ふぁー、モモンガから聞いていた通り人の困っている姿が大好物なのは先程の《レイス》に怯えるアスナを満面の笑みで見ていた事から分かっている、だがここまで特に妨害してきている様子は無い事に訝しがるキリト。
──そんな当の本人はと言うと…。
(ふんふーん♪ニグレドの部屋に案内しても良かったんだけど…ま、今回は俺の目的を優先させちゃおうかな!)
キリトの警戒通り良からぬ事を企てていた。いやキリト達に捕まる以前からこの男の目的は一つだ、宝箱を守る門番に襲わせて遊んでやろうと画策し、その上で指輪を手に入れる、この屋敷に足を踏み入れた時点でその目的はほぼ達成されており後はキリト達が目的の場所まで勝手に運んでくれるのだから余計な事をする必要は無いのだろう。
──しかし後にこの余裕綽々な男に思い掛けない災厄が降り注ぐ事になる。
「もう少しだぜ君達~、あの扉の先に指輪があるぜ!」
るし★ふぁーの言葉通り、通路の先には重苦しい雰囲気を醸し出している重厚な鉄の扉が鎮座していた。扉の前に到着する一行、ここまで来ても罠らしい罠は何も無い。強いて言うならば《レイス》の大群が出てきた事ぐらいだ、しかしその大群も目的地が近くなるにつれて姿を見せなくなっている。
「おいツルッパゲちゃん、いい加減降ろしてくんない?」
「だれがツルッパゲだ!?」
エギルが降ろして良いかどうかの判断を委ねる視線をキリトに送りその視線に口で応えず頷く事によって返答するキリト、拘束から解放されたるし★ふぁーが下手な行動を取らないように厳しい眼つきで監視する一行だが、その視線を一身に受けながらも動揺する素振りすら見せないこの男の神経の図太さは筋金入りだと言わざるを得ないだろう。
「ふぃ~~~、んじゃ早速行っちゃうかい?俺は何時でも準備OKだぜ★」
拘束から解放されたるし★ふぁーが逃げ出す素振りも見せずに言い放つ、やはりこの余裕綽々の態度には絶対に指輪を奪われないという自信があるように見え、このままこの男の指示に従って良いものかどうか判断に詰まってしまう、しかしこのまま手を拱いている訳にもいかない。
「……絶対に罠なのは間違いないな…皆、気をつけろよ」
キリトの言葉に頷く一同、自ら扉を開ける役目を買って出たキリトが慎重に扉に触れると押してもいないのに勝手に動き出し始めてしまう、思わず背中に背負っている2つの剣を引き抜き警戒を露にするキリト、後方の仲間達も同様に何が飛び出してきても対応出来るようにとそれぞれの武器を構えて警戒する。
「……何も出てこない…?」
しかし予想に反して何かが飛び出してくるといった事は起きず…部屋の中には奥の壁際に設置された宝箱があるのみで他には何も無い殺風景なものであった。
「あれだよ~★あの中に君達の目当ての指輪がある、ま、俺にとっても同じ事が言えるんだけどね」
部屋の中に入っても扉が閉まって閉じ込められるような事は無かった、だとすれば考えられる事は宝箱に触れた瞬間か開けた瞬間に罠が発動すると言う事だ。そして目の前に問題の宝箱があるというのに未だに余裕綽々の態度を崩そうとしないるし★ふぁーの姿がその考えが間違っていないと言う事を物語っている。
「ユイ…何か分かるか?」
「今のところ何も感知出来ませんパパ…ですが罠があるのは明白です!」
「…だよな」
罠の類は感知出来ないとユイは言う、しかしるし★ふぁーの態度から考えて罠があるのは明白だとキリトとユイは推測する、そしてその推測は──当たっていた。ユイが感知出来なかったのはバックドアが巧妙に隠されていた為である。
罠を警戒して念の為に仲間達を部屋の外に避難させてるし★ふぁーとキリトだけが部屋の中に残るという策を講じる、これにより不測の事態に陥ったとしても対応はしやすいだろう。
「…俺が開けよう」
「ん、オッケー!じゃあどうぞどうぞ」
るし★ふぁーの反応を窺いながら宝箱を開ける宣言をするキリト、しかしそれでも尚目の前の男は焦りを微塵も見せていない、余程自分が指輪を手に入れるという自信があるらしい。
(こうなったら…宝箱持った瞬間にダッシュで逃げるか…うん、そうしよう)
──そしてついにキリトの指先が宝箱に触れる。その瞬間天井に穴が開き其処から落ちてきたのは10体の巨大なゴーレム達。
美しく鍛え上げられた筋肉美とブーメランパンツ一丁という姿を惜し気もなく晒しながら様々なポージングを決めているムキムキマッチョマン達であった。
──そして今まで不気味なほどに沈黙を保っていたるし★ふぁーがついに動き始めた。
「キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!『偉大なるるし★ふぁー様が命じる!!俺に従え!!』」
「そんな事だろうと思ったよ!くそっ!」
宝箱に触れた瞬間に降りてきた巨大ゴーレム達、降り立ったと同時にるし★ふぁーがなにやら呪文めいた言葉を口にする、恐らくあのゴーレム達を従える為のキーワードなのだろう。その言葉を聞いたムキムキマッチョマン達がポージングを辞めて部屋の入口付近にいたるし★ふぁーに一斉に近付いていく。
「よーし!良い子達だ!手始めにこいつらをやるぞ!」
──しかし、ムキムキマッチョマン達は微動だにしない。
「あ、あれ?おい!おーい!言う事を聞け!俺のゴーレム達!」
るし★ふぁーを取り囲むように集まりるし★ふぁーを見下ろすムキムキマッチョマン達、言う事を聞かない彼等の姿に初めて焦りの表情がるし★ふぁーの顔に広がっていく。
──そして、取り囲んだ内の1体がおもむろに足を上げ、るし★ふぁー目掛けてその足を勢い良く振り下ろした。
「なんでだあああああああああああああ!?」
◇◆◇
10月16日21時48分 ナザリック地下大墳墓第九階層 円卓の間
「「「笑い殺す気かあいつはwwwwwwwwww」」」
「ざまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!いよっしゃああああああああああああ!!!」
円卓の間に笑いとモモンガの心の底からの雄叫びが木霊する。どうやら組み込んだプログラム通りに動かなかったようでるし★ふぁーは自分が創ったゴーレムにより踏み潰されてしまった。
「さ、流石にこれは予想してなかったね…ふふっ」
「お、お腹痛い…ひーっひーっ」
「ふっふっははははははっwwwww」
若干俯き加減になりながらやまいこが笑い、餡ころもっちもちはお腹を抱えて笑い転げ、ぶくぶく茶釜はテーブルをバンバン叩きながら豪快な笑い声を上げる。
「しっかし、何で言う事聞かないんだ?バグか?」
実のところ、るし★ふぁーの組んだプログラムに不備は無く彼自身も何度も何度も正常に動作している事を確認している、にも関わらず何故このような事態になったのか?佐藤達すら欺いたこのバックドアだったが1人だけこのバックドアを見逃さなかった
──ALOの全てを統括する《カーディナル》だ。
データを精査した《カーディナル》はこのバックドアが作動した場合、妖精側に過剰な戦力が揃ってしまうのを察知しバランス調整の為にプログラムの一部を書き換えたようだ、そして指輪の効果も変更するかどうかも《カーディナル》は検討したようだがこれについては保留となっている。そうなった原因としては指輪の効果範囲が1PTに限定されているからだろう、もしこの効果範囲が更に大きくなっていれば指輪自体のデータが削除されていた可能性が高い。
──なんにせよモモンガ達の計画は今にも崩れ落ちそうな橋を渡るという危険な状況に変わりは無い。そして今も尚、危険な状況は続いている。
「不味いぞ皆!あのマッチョ達が動き始めた!」
宝箱を抱えたキリトに一斉に群がるムキムキマッチョマン達、どうやら指示が無い状態では自動的に宝箱に触っているプレイヤーに襲い掛かるというプログラムが組み込まれているらしい、現に部屋の外にいるアスナ達には一切見向きもしていない。
「……不味いですね、助けに行くべきか否か」
「しかし、我々が行けば氷結牢獄の外にいる守護者達が全員押し掛けてくるぞ、そうなったら氷結牢獄から脱出する事すら難しくなる」
「……タイミングを測って突入しますよ皆さん、最も良いタイミングは彼等が氷結牢獄の外に出た時…ですね」
手に入れた指輪を使用して転移すれば良いと思うかもしれないが、そうもいかないのだ。この時点ではまだ自分の物ではなく、完全に自分の物とする為には1度ナザリックから脱出する必要がある。助けに行こうにも行けば必ず今以上の混乱を招いてしまう恐れがある、今のモモンガ達には見守る事しか出来ないのだ。
「頼む…キリト君、どうか逃げ切ってくれ…!!」
部屋の奥でムキムキマッチョマン達に取り囲まれたキリトが幻惑範囲魔法を唱える、この魔法は周囲に黒い煙と雲を作り出しそれらを爆発させ敵の視覚を奪う効果がある。
それを使い何とか窮地を逃れ即座に筋肉の塊の間を潜り抜け仲間達のもとへ間一髪逃げ延びる事に成功するキリト、しかしムキムキマッチョマン達がこのまま見逃す筈も無い。
──そしてキリト達の絶対に死んではならない逃走劇が幕を開ける。