ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》 作:黒雲あるる
明けましておめでとう御座います!!
10月23日14時18分 都内某所
『ハラワタぶちまけちゃえ~~っ!!』
とあるスタジオにて1人の女性が台本を片手にマイクに向かって恐ろしい言葉を吹き込んでいる。
彼女の名前はぶくぶく茶釜。
彼女の本職は声優、アニメキャラやゲームキャラに自分の声を吹き込む事を生業としており基本的に演じるキャラはキュートな少女役が多い…のだがどういう訳か必ず一癖二癖ある少女役の仕事が舞い込んでくるらしい。
ぶくぶく茶釜の持つ台本に書かれている台詞はどう考えてもキュートな少女が放って良い言葉ではない台詞が羅列されている。これで良いのか日本のアニメ業界!とぶくぶく茶釜は思うのだが、どういう訳か出演していく内に大ブレイクし気付けば今の彼女は人気声優の仲間入りを果たしていた。
「お疲れ様でしたー!」
「お疲れちゃーん」
同じアニメに出演している先輩声優に挨拶していくぶくぶく茶釜、その際同じく人気声優の仲間入りして間もない1人の同期の声優の女性に話し掛けられる。
「そういえばイベントの方はどうなったの?」
「イベント?あ~それがこの間やられちゃったんだよねぇ」
「あらら、もしかして私のアウラちゃんもやられちゃった?」
「えみりんのじゃないよ!私のだよ!アウラとマーレも私と一緒に脱落したよ、もうちょっと楽しみたかったんだけどねー」
『私のアウラ』と言い放ったぶくぶく茶釜の目の前にいる女性、その正体はぶくぶく茶釜が創り上げたNPCであるアウラ・ベラ・フィオーラに声を吹き込んだ張本人である、いわく『中の人』というものだ。
彼女達アインズ・ウール・ゴウンの面々がNPCを創り上げた際に、『声はどうするんだ?』という問題に直面したメンバー達。そこで白羽の矢が立てられたのが当時大ブレイクの兆しがチラホラ見え始めていたぶくぶく茶釜であった。彼女のコネを使いそれぞれがイメージしている声に近い声優達にぶくぶく茶釜を通して仕事の依頼をしたのだ。
ちなみに個人で依頼する事も可能なのだが、ぶくぶく茶釜を通して依頼すればいくらか割引される(彼女の所属している事務所限定)との事でメンバー達はこぞって彼女を頼ったらしい。
中には大御所中の大御所に依頼したいという者も居たりしてその依頼料金に若干驚いたりしていたのだが夏のボーナスを全額ガチャに注ぎ込んだりする猛者達には然したる問題でも無く、自らの理想の存在を創り上げる事に金に糸目はつけないとしてかなりの額を注ぎ込んでいる。
「かぜちゃんかぜちゃん、俺の演じたデミウルゴス君はどうなったの?」
「まだ脱落していませんよ!」
「おお、それは嬉しいね!出来ればそのままイベント終了まで脱落しないでくれたら良いなぁ」
現在いるスタジオにはアウラを担当した女性の他にもNPC達の声を担当した声優達が何人か居たようで談義に花が咲くが、ぶくぶく茶釜のマネージャーらしき女性がスケジュール表を見て焦った表情をしながら時計を指差している。
「あっ次のスタジオ行かなきゃ!じゃあ皆さんまた!」
別れの挨拶をしつつ次なる収録現場へと向かうぶくぶく茶釜、マネージャーの運転する車に乗り《オーグマー》を装着して起動する。
「ふふーん♪お待たせ!二人とも!」
運転中のマネージャーがぶくぶく茶釜の声にピクリと反応し、バックミラーからちらりと彼女の様子を覗き見るもマネージャーの目にはぶくぶく茶釜が1人で喋っているようにしか見えない、しかしマネージャーは『あぁ、あの子達か』と納得の表情を浮かべる、事情を知っている彼女は助手席に置いていた自分のバッグから《オーグマー》を取り出しそれを装着して再度バックミラー越しにぶくぶく茶釜
──《オーグマー》を通してマネージャーの視界に映し出されたのは、満面の笑みのぶくぶく茶釜と小さな2人の妖精の姉弟の姿であった。
3人とも本当に幸せそうな顔をしていると率直な感想を抱くマネージャー、次の仕事の時間まで余裕が無いのは確かだ、しかし『下手に速度を出して事故を起こしてしまう訳にはいかないわよね』と尤もな理由をつけて先方への謝罪の言葉を考えつつ法定速度まで速度を落としていく。
──願わくば、彼女達の幸せなひと時が少しでも長く続くように。
◇◆◇
10月17日0時13分 ナザリック地下大墳墓第五階層 氷河
時は遡って17日。
キリト達がモモンガ達の支援を受けつつナザリック地下大墳墓を脱出した後、るし★ふぁーの遺した10体のゴーレムとの激戦、そして妖精達のかつてない程の大侵攻に全身全霊を持って臨んだナザリックの面々。
ゴーレム達との戦いはモモンガの的確な指揮と冷静な分析により時間は掛かったものの確実に1体ずつ処理していく事で誰一人欠けることなく激戦を征する事に成功する。
一方、妖精達の大侵攻に真っ向から立ち向かったウルベルトやぷにっと萌え、そしてアルベド達を含むナザリックの主力部隊は当初こそモモンガ以上の火力を誇るマジックキャスターであるタブラ・スマラグディナの超位魔法が炸裂した事によって優位に立っていたが、支配者達が合流するまでの戦いによって激しく消耗していた守護者達に加え、ユージーンやサクヤ等の領主達が合流した事が重なり徐々にその優位性は妖精側に傾いていく。
結果としてこの戦いにより餡ころもっちもち、テンパランス、スーラータンの3人の支配者が脱落する事になってしまい、守りきれなかったと自責の念を露にして涙する階層守護者達、そこへゴーレム達との激戦を制したモモンガ達が駆け寄ってくる。
「お前達、よく頑張った…残念ながら3人の支配者がやられてしまったが、お前達に責は無い事を最初に伝えておく。…そして──」
モモンガの言葉に涙を流しながら聞き入る守護者達、一旦間を置いてモモンガは再度口を開く。
「先程その3人からメッセージが届いた、どうやら彼等は別空間に転送されているとの事だ。そこには恐怖公やグラント、そしてガルガンチュアの姿もあったと報告を受けている。…まぁその際阿鼻叫喚の地獄絵図になったようだが…」
モモンガの言葉に目を見開き驚きに染まる守護者達。
「生きて…生きていらっしゃるのですか!?」
守護者一同を代表してアルベドがモモンガに問い掛ける、金色に輝く瞳から流れる涙をそのままに顔を上げるアルベド、他の守護者も同様にモモンガの言葉を待つ。
「そうだ、皆生きている。…そして
仲間達と相談し全てを包み隠さず話す事を決めたモモンガ達。その結果が例え悲劇に繋がったとしても全てを受け入れ受け止めよう、それが彼女達を生み出した自分達に課せられた責務なのだと決意を固めて話しだす。
ナザリックとは違う世界から来ている事。
今のこの姿は仮初の姿であり本当の姿は人間である事。
妖精達もまた仮初の姿であり自分達と同じ人間である事。
心の拠り所を求めてこの
消滅する運命にあるNPC達を救う為に協力者と共に尽力している事。
そしてお前達を心の底から愛していると言う事を。
「……軽蔑するだろう?結局のところ私達は自分達の欲を満たす為だけにお前達を生み出し、そしてその命を私達の勝手な都合で終わらせようとしている」
「け、軽蔑など…!私共は至高の御方々を御守りする、ただその為だけに存在するのです!例え至高の御方々の正体が人間であろうと!どのような真意があろうとも私共の命は至高の御方々の物でございます!」
「良いんだ、結局はその言葉も想いも私達が〝そうあれ〟と創った結果に過ぎない、お前達の意思を全て無視している事に変わりは無いんだ、当初の予定ではこの話をする事も無く終わりを迎えていたのだが、予期せぬ変化がお前達の身に起きた事で全てを伝ええねばならないと皆で決めたのだ」
階層守護者達だけじゃなく召集命令に応じて馳せ参じたほぼ全てのNPC達がモモンガの口から発せられた真実に驚愕し言葉を失っている。
その中で逸早く情報を整理したアルベドがゆっくりと口を開いた。
「………失礼を承知で申し上げます、至高の御方々をもってしても予期出来なかった事が起こったのならば…」
「……?」
流れる涙はいつしか止まり、力強い瞳でモモンガ達を見るアルベドがゆっくりと立ち上がる。彼女の後ろにいる守護者達やその他のNPC達は跪いた姿勢のままアルベドとモモンガ達を見上げていた。
「…至高の御方々とこの先もずっと共に生きたいと…今この胸に生まれたこの想いも全て予期せぬモノなのではないでしょうか?」
「…──っ!!」
「モモンガ様の御話を聞いて、今生まれたこの想いは紛れもなく私共の意思に御座います…──皆の者!その胸に秘めた想いを打ち明けなさい!!」
そう言ってアルベドが背後に控える守護者達へ視線を向ける、彼女の言葉を受け階層守護者達が次々と口を開いていく。
「そ、そうです!ボ、ボク達はぶくぶく茶釜様の本当の御姿を見てみたいです!これからもずっと一緒に居たいです!」
「あ、あたしもです!!あたしもぶくぶく茶釜様と生きたいです!これからもずっと…!!」
「アウラ…マーレ…私も二人と一緒に生ぎだいよおおおお!!!」
ぶくぶく茶釜が二人の元へ駆け出して抱き抱えたまま号泣する。それを合図に階層守護者達がその胸から溢れている想いを打ち明けるべく自身の創造主のもとへ駆け出していく。
ぶくぶく茶釜に続いて他の創造主とその息子娘達も絆を確認しあう、真実を伝えれば自壊しかねないと心配していた事はどうやら杞憂に終わったようだ、……──彼等は、自分達が思っている以上に強く、立派に成長しているとモモンガは満足気に頷く、そして…。
(…俺もちゃんと向き合わないとなぁ、いやでも今となっては手遅れなんだけど…此処に連れて来てないしな、…あいつも寂しい想いをしているのか…?)
モモンガは唯一自分の手で創り上げたNPCを心の中に思い浮かべる、当時モモンガが思い描いていた究極の理想像をこれでもかと詰め込み長い時間を掛けて生み出したあのNPC。
しかしモモンガは知らない、ある男の悪戯によりイベント開始日から人知れずそのNPCは此処ナザリック地下大墳墓のとある空間に待機している事を。そしてその空間こそ、NPC達を救う為に必要なシステムコンソールがあるのでは?と推測している場所…宝物殿であった。
◇◆◇
10月17日22時18分 ナザリック地下大墳墓 宝物殿
『よく聞いてくれキリト君、宝物殿には我々が指輪を奪われた場合に備えてデストラップや数々のギミックが至る所に隠されている。それと宝物殿の最奥部に入るにはパスワードが必要でね、えーっと…何でしたっけ?タブラさん』
『覚えておいて下さいよモモンガさん…、《かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう》ですよ。…キリト君、覚えていてくれ』
『すいませんタブラさん…。あ、あと宝物殿に入ったら指輪は必ず外すようにね、指輪を装備している者に対して配置されたゴーレムが襲い掛かってくるよう設定されているんだ、それと猛毒に侵された通路とかもあるから気をつけてくれ、後は…』
数時間前に言われた事を思い出し、指輪を外すキリト。これでこの空間内にアクティブエネミーは存在しない事になる、後は状態異常無効の魔法を掛ければ
「よし、行こう皆」
敵はいないと言われてもいざ進むとなると警戒してしまうのはゲーマーとしての性だろうか、慎重に進みつつ不意打ちが成功しやすい曲がり角を警戒しつつ最奥部を目指すキリト達。
「…にしてもキリの字よぉ、あのNPC達が話の分かる奴等で良かったよな」
「そうだな…モモンガさん達が説得してくれたんだろうな」
「アルベドさん綺麗だったね」
数時間前、モモンガ達のいる第九階層に転移し支配者達から宝物殿の詳細を聞いている際に近寄ってきた守護者達。侵入者である自分達を始末しに来たのかと警戒していたキリト達だったがその心配は杞憂に終わる。
『貴方達がモモンガ様の仰っていた協力者だったのね…、知らなかったとは言え貴方達には随分と攻撃を加えてしまったわ…改めて謝罪します』
アルベドの言葉と共に頭を下げる守護者達、彼女達の殆どがカルマ値マイナスに偏っている為ナザリック以外の存在は基本的に見下す傾向にある、しかしそれは真実を何も知らなかった頃の話だ。
真実を知った今の彼女達の心境は良い方向へ向かっていた、そして創造主達とこの先もずっと共に生きたいと願うのならば、ナザリックとは違う創造主達が住んでいる世界の事も勉強しなければならないとキリト達の事も含めて前向きに捉えているようだ。
『何時の日か貴方達の本当の姿も見せてくれると嬉しいわ』
守護者達の好意的な言葉を聞き、なんとしてもモモンガ達の願いを成し遂げなければならないと気を引き締めなおすキリト達。
「……っと、此処か。パスワードが必要な扉は…」
そして一行は聞かされていた扉の前に到着した、タブラから教えてもらったパスワードを唱えると扉はまるでブラックホールに吸い込まれるかのように消えていく、そして更に奥に続く通路がキリト達の前に姿を現した。
「システムコンソールがあるとしたらこの奥しかないな、道中くまなく探したけど見付からなかったからなぁ」
「そうだね、キリト君」
慎重に進む一行、扉を潜り抜ける前と違って乱雑に置かれていた武器や防具、財宝等の宝は全て完璧に整頓されていた、それらに一切目もくれず只管奥へ突き進むキリト達、そして…一際大きな空間に出る。
「ここは…」
その空間の中にはソファが一つとテーブルに少々の家具があるだけという殺風景なものであった。
「キリト!誰か座ってるわ!!」
「なっ!?誰も居ない筈じゃなかったのか!?」
シノンとキリト達の声に反応したのか、座っていた者がゆっくりと立ち上がり振り返る。
「おやおや、これは可愛らしいお客様ですね。一体どの様な手段で此処に入り込んだのか詳しく聞かせて頂いても宜しいですかな…お嬢様方?」
某国の軍服に酷似した衣装を着込んだ伊達男のような派手な言動と挙動で問い掛けるその姿に唖然とする…キリト以外の仲間達。
──彼の名はパンドラズアクター、モモンガが全身全霊を籠めて創り上げたNPCである。
「うわだっさ…」
「ださいですね…」
「ださいですぅ…」
「ださいわね…」
「ださいな…」
「だせぇな…」
「ちょ、ちょっと皆…」
「えっ、そうか?かっこいいと思うんだが…」
「「「「「「えっ?」」」」」」
情け容赦のないアスナとキリト以外の六連撃に円卓の間で見守っていたモモンガが吐血する、そして魂の叫びを解き放つのであった。
「なんでお前がここにいるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう消えちゃったけど以前の感想にあった声優ネタをぶっこんでみました٩(ˊᗜˋ*)و