ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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第24話

10月31日21時13分 ナザリック地下大墳墓第十階層 玉座の間

 

 たっち・みーとキリトが互角の鍔迫り合いを演じている、言葉だけで聞けば特に疑問に思う事は無いかもしれない、しかし実際に二人の鍔迫り合いを見ればそれがどれだけ有り得ない事かすぐに分かるだろう。

 

 自分の体格の何倍もある相手である事に加えて、ラスボスに相応しい能力に強化されているたっち・みー、そんな彼と互角の鍔迫り合いを演じているキリトと言う男がどれだけ非常識な行動をしているのか分かって貰えるだろうか。

 

 しかしアスナやクライン、彼の仲間達はそんな人外染みた行動をさも当然であるかのように普段から行っているキリトを見ても驚いた様子は無い、そして妖精達やアインズ・ウール・ゴウンの面々もまたキリトの起こす非常識な行動を幾度と無く目撃してきた為──

 

「あぁ、なんだブラッキー先生か」

 

「まぁキリト君ならこのぐらい朝飯前だよね」

 

──と、奇妙な信頼感を抱いていた。しかし、それでもやはり限界はあるらしい。

 

「このまま押し込ませてもらうぞキリト君ッ!!」

 

「くっ!?」

 

 徐々に均衡が崩れ、好機と見たたっち・みーが全力で剣を振り下ろしキリトを壁際まで吹き飛ばす、このまま追撃しようと後を追おうとするたっち・みーだがそれを邪魔するように複数の影がたっち・みーの前に躍り出る。

 

「行かせねぇよッ!!」

 

 カバーに入ったのはクラインやエギル、アスナ達であった。周囲で他のラスボス達と戦う妖精達の援護に回っていた彼等がすぐにカバーに入ったのだ、そしてスグが回復魔法をキリトに唱えていく。

 

「…深追いは禁物か」

 

 これ以上の深追いは危険、そう判断したたっち・みーはモモンガの指示を仰ぐ為に一度後方へと下がっていく、そこへ次は俺達の番だとばかりにキリト達に代わり追撃に出る妖精達。

 

──しかし突撃した妖精達を頭上から狙い撃とうとする者が居た、ヘロヘロである。

 

「おっとそれ以上踏み込むと危ないよ!酸性雨(アシッドレイン)!」

 

「「「やっべ!!」」」

 

 ヘロヘロがたっち・みーの前に躍り出てスキルを発動させる、ヘロヘロが発動したそのスキルにかなりのトラウマを植え付けられていた妖精達はすぐに反転し退避していく。

 

「そのスキル卑怯だぞ!!」

 

「下がれ下がれっ!!」

 

 古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)という種族のヘロヘロが放った極悪なスキル酸性雨(アシッドレイン)、その効果は装備品の耐久度を軒並みゼロ付近にまで減少させるというものである、このスキルを受けてもう一度何かしらの攻撃を食らえばその装備品は破壊されてしまい二度と戻らなくなってしまうのだ。

 

「いやー、そんなに褒めても何も出ませんよ?」

 

「「「褒めてないっ!!」」」

 

 すぐさま退避したお陰で酸性雨(アシッドレイン)の餌食となった者は少ないようで傷付いた武器をすぐにストレージ内に引っ込ませ新しい武器を取り出す妖精達。本来ならばその隙だらけの状態を逃す程アインズ・ウール・ゴウンの面々は甘くは無いのだが、大切な武器を破壊された苦々しい経験を持つ面々はわざと見逃していたようだ。

 

──戦いは尚も続く。

 

「ほいほいほいほいっ!!」

 

「来るぞっ!!」

 

 武器を交換している最中の妖精達とはまた別の場所で戦っていたユージーン達が率いる妖精達、次々とまるで嵐のように襲い掛かる矢を防御魔法を唱えてやりすごしていたがそれも長くは続かないだろう。

 

「本当に厄介だな…どうにかして近付かないとこのままではやられるだけだ」

 

 ペロロンチーノのスタミナ切れを期待するも一向にその気配は訪れない、しかもそれだけではなくタブラ・スマラグディナが動けない妖精達に対して魔法を発動させようとしている。

 

「時間が無いな…!俺が囮になる!防御魔法が解除されたと同時に一旦退避してキリト達と合流しろ!」

 

 そう言い放ち魔剣グラムを構えるユージーン。

 

「お、おい!指揮はどうする!?」

 

 ユージーンの背後からサクヤが問い掛けるとその言葉に振り返る事なくユージーンが答えた。

 

「サクヤ!お前が指揮を取れ!お前なら簡単だろう!」

 

「簡単に言ってくれるなまったく!!退くぞ皆!」

 

 防御魔法が破壊されると同時に前に飛び出すユージーンと後方へ退くサクヤ達、間髪入れずに彼等がいた場所にタブラ・スマラグディナの魔法とペロロンチーノの矢の嵐が降り注ぐ。

 

「ぬおおおおおおっ!!」

 

「むっ!?」

 

 詠唱直後の隙を狙いユージーンがタブラ・スマラグディナに迫る、しかし決死の突撃は突如ユージーンの前に躍り出たアルベドによって叩き落とされてしまう。

 

「お父様はやらせないわ!」

 

 アルベドの持つバルディッシュによって地面に叩き落されてしまったユージーン、しかしその間にサクヤ達は体勢を立て直す事に成功する。

 

──戦いは更に激化の一途を辿り混迷を極めていく、そんな最中異変は静かに始まっていた。

 

 それに最初に気付いたのは激しい戦いに身を投じている妖精達やアインズ・ウール・ゴウンの面々ではなく、脱落して待機部屋で戦いの行方を眺めていた者達であった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

10月31日21時35分 ナザリック地下大墳墓??? 待機部屋

 

「ふぃーやられたやられた!」

 

「源次郎様ぁ~」

 

「おぉエントマ!大丈夫か?どこにも異常は無いか?」

 

「はいぃ~大丈夫ですぅ~」

 

 最後の戦いが始まってから暫く経過し次に脱落したのは源次郎であった、待機部屋に転送された彼にトコトコと小さな異形の少女が近寄っていく、その少女の名はエントマ、──エントマ・ヴァシリッサ・ゼータだ。

 

(はぁ…エントマちゃんかわゆ…)

 

「おい誰だ今の声は!?俺の娘は誰にもやらんぞ!」

 

 誰かが呟いた言葉に激情を露にする源次郎、愛娘に近寄る不穏な影を威嚇するかの如く大声を上げる。

 

「これで残りはアルベドとシャルティアを含めて12人か…」

 

「シャルティアは最後まで残りそうだよな、あの武器のせいで」

 

 脱落した者達が思い思いに寛ぎながら映像を見つつ駄弁っていると、次なる脱落者の叫びが待機部屋に木霊した。

 

『あ、あかーーーーーーん!!!』

 

「「「あっ、音改やられた」」」

 

「最後の断末魔もうちょっと考えられなかったのかな?」

 

「ぶはははははっwwww」

 

 

 

──脱落した音改を加え映像を観ながら和気藹々とする面々。

 

 暫くして異変に最初に気付いたのは純粋な探知系ビルドには一歩劣るものの鋭い観察眼を持つ至高の忍者、弐式炎雷であった。

 

 

 

「……何だあれ?」

 

 

 

 指揮を取るモモンガやぷにっと萌えの更に後ろ、玉座がある場所の上空に現れたソレを弐式炎雷が発見する。

 

「ヒビ…?」

 

「どうした?」

 

「見ろ皆、玉座の真上だ…空間にヒビが入っている」

 

 弐式炎雷の言葉に反応して駄弁っていた者達が映像に注目した、玉座がある場所の上空が拡大される、確かにそこには弐式炎雷の言うとおり、何も無い空間にヒビが入っている。

 

──そして、それは小さな音を立てつつ徐々に広がり続けていた。

 

「……気味悪いな」

 

 一体何が起きているのか皆目見当もつかない面々は黙ってその広がり続けるヒビを眺める事しか出来なかった、いつしか待機部屋の空気は言い知れぬ不安が充満し沈黙に包まれていく。

 

「……──っ!」

 

 その時、ぶくぶく茶釜の隣に居たアウラが何者かの気配を察知する、この部屋にはナザリックに所属する者達しか来れないと聞かされていたアウラ、しかし用心深い彼女は念の為にスキルによってこの待機部屋全体を監視していたのだ、にも関わらずアウラの監視の目を掻い潜りその気配は突如としてこの部屋に現れたのである。

 

──これが何を意味するのか、それが分からないほどアウラは愚かではない、瞬時に最大警戒に入る。

 

「誰っ!?」

 

 突然のアウラの警戒の声に驚くギルドメンバー達、そして最も聡いデミウルゴスがアウラが叫んだ真意を汲み取って同様に最大警戒に入る。そしてコキュートスとマーレ、セバスやプレアデスもそれぞれが至高の御方を守る為に動き始めた。

 

──そんな警戒を露にする守護者達の前に姿を現したのは白衣を纏った一人の人間。

 

「…君は」

 

 その姿に見覚えのあった死獣天朱雀が驚きながらもその男の名前を口にする。

 

「………茅場君か」

 

「御久しぶりですね、教授」

 

 

 

 

──待機部屋にいる者達が予期せぬ訪問者と対面している頃、最初に異変に気付いたのは玉座に最も近い場所に居たモモンガであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

10月31日21時48分 ナザリック地下大墳墓第十階層 玉座の間

 

「ペロロンチーノさん!ヘロヘロさん!右翼から近付く一団に牽制お願いします!」

 

「「合点承知!!」」

 

「ホワイトブリムさん!ぬーぼーさん!そのまま左翼を引き付けて置いてください、タブラさんは援護を!」

 

「「おうよ!」」

 

「了解」

 

「モモンガさん、たっち・みーさんとフラットフットさん達では少々抑えきれなくなってきていますので中央にアルベドとシャルティアを援護に向かわせます」

 

「はい!」

 

 モモンガとぷにっと萌えの的確な指揮の下、敗色濃厚となってきた現在でもしぶとく抵抗を続ける、そんな折ふと背後から聞こえてきた謎の音に振り返るモモンガ。

 

「………?」

 

 振り返る、しかし彼の目に映るのは誰も座っていない玉座のみ、しかし尚も音は聞こえてくる。キョロキョロと辺りを見渡すも音源らしきものは見当たらず…

 

「…上か?」

 

 ならば残された可能性は上、玉座の上空にしかない。そうして視線を上空に投げ掛けたモモンガが見た光景は何も無い空間にヒビが入っている光景であった。

 

「なんだあれは…」

 

──その時だ、一際大きな音と共に頭上の空間が粉々に……砕け散った。

 

 玉座の間全体に響き渡ったその音は妖精達、そしてアインズ・ウール・ゴウンの面々の動きを止めさせて無理矢理に注目を集めさせていく。

 

「なんだぁ?」

 

 皆一様に見上げるその視線の先にあったのは粉々に砕け散った空間の先に広がっている漆黒の闇であった。

 

「何が起きてる…?」

 

 唖然とするキリトの胸ポケットから慌てた様子でユイが顔を出してくる。

 

「パパッ!サブクエストのプロテクトが解除されました!!…─こ、これはっ!」

 

「何か分かったのか!?」

 

 逸早く何が起きているのかを掴んだユイにキリトが問い掛ける。ユイの様子から察して良い事が起きているとは到底思えない、そしてユイが説明しようと口を開きかけた正にその時である、サブクエストの更新が妖精側とアインズ・ウール・ゴウン側双方にアナウンスされたのだ。

 

 アインズ・ウール・ゴウンに対してアナウンスされた内容は──

 

-System Messages-

 

 サブクエスト《生贄》の達成を確認、グランドクエスト《Queen of Helheim》が開始されます。

 

 

 対して妖精側には…

 

-System Messages-

 

 サブクエスト《世界の終焉》の失敗を確認、グランドクエスト《Queen of Helheim》が開始されます。

 

 

「あの時と…パパが聖剣エクスキャリバーを取得したあの時と一緒です!クエスト自動生成機能で生み出されたクエストだと推測されます!」

 

「あの時と…まさか!?」

 

──《カーディナル》が持つ機能の一つに《クエスト自動生成機能》というものがある。

 

 ネットワークを介して様々な伝説や伝承を収集分析し、それらの物語などを独自に解釈してクエストを無限に生成する機能である。

 

 ユイによれば今回のクエストもキリト達が《聖剣エクスキャリバー》を取得するに至ったクエストと同様にこの機能が働いた事によって生み出されたのだという。

 

──それが事実であるならば今回のクエストの行き着く先には世界が、アルヴヘイムが破壊される可能性が高い、妖精側に発生していた《世界の終焉》が失敗に終わっている事もその説が有力な事に拍車を掛けている。

 

「Queen of Helheim……ヘルか」

 

 様々な伝説や伝承に詳しいタブラ・スマラグディナが罅割れた空間から覗く漆黒の闇を見据えながら呟く。グランドクエストの題名にあるヘルヘイムの女王、この言葉が差す人物は北欧神話のある女神の事を指していると言う答えに彼は辿り着いたのだ。

 

 そしてユイもまたプロテクトが解除された事により出来なかった解析を試みた結果、同様の答えに辿り着いたようである。

 

──全貌はこうだ。

 

 妖精側に発生したサブクエスト《世界の終焉》の〝世界〟が指しているのはアルヴヘイムではなく最早一つの世界と言っても過言ではないナザリック地下大墳墓の事を指している。そしてこのサブクエストを達成する為にはアインズ・ウール・ゴウン側に発生したサブクエスト《生贄》の達成条件である一定数の戦闘不能者を出す事無くナザリックを攻略しなければならなかったのだ。だが結果として一定数の戦闘不能者を出した事により《世界の終焉》は失敗に終わってしまった、そして《生贄》が達成された事により今回のグランドクエストへ繋がったのである。

 

 

──そして世界に終焉を齎す為に、死の女王ヘルが降臨する。

 

 

 漆黒の闇から伸びてきた無数の骨の腕が空間を掴み更に押し広げる、まず最初に玉座の間にいる者達の目に触れたのは漆黒の闇をそのまま内包したかのような長い黒い髪、顔は長い前髪に隠れておりその表情を窺う事は出来ない。やがて青白い上半身が完全に姿を現し…次いで下半身が現れるかと思いきや現れたのは白い帆船であった。どうやら下半身は船首と一体化しているようである。

 

──そして巨大な帆船が空間を破壊しながら現れその全貌を明らかにする、玉座の間の灯りに照らされたその巨体が〝何〟で作られているのかを妖精達、そしてアインズ・ウール・ゴウンの面々は強制的に理解させられた。

 

──骨だ、それも少量ではない夥しい程の数の骨で形作られていたのだ。恐らくは脱落したアインズ・ウール・ゴウンの面々とナザリックで散っていった妖精達の骨で創られているのだろう。

 

──無数の死者の骨で創られたその帆船の名はナグルファルと言う。

 

神々の黄昏(ラグナロク)が……始まりますっ!!」

 

 

 

 

 

 





もちっとだけ続くんじゃ!!
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