ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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お待たせーーーー!とりあえずいくつかのショートエピソードを後日談として投稿していくぞー!




後日談その①

11月4日18時21分 ダイシーカフェ

 

 アインズ・ウール・ゴウン一同、そしてキリト達やサクヤ、ユージーンといった者達も招待されての大規模な打ち上げがエギルの店を貸し切って盛大に開かれようとしていた。

 

 未成年組はジュースを手に持ち、社会人組も今回は未成年も同席している為お酒は控えられており同様のジュースが並々と注がれたグラスを片手にしていた、そして壇上に上がったモモンガとキリトに注目する。

 

「えー皆様、本日はお集まり頂きまして誠に有難う御座います、ギルド《アインズ・ウール・ゴウン》のギルド長を務めておりますモモンガと申します」

 

「え、えーっと…キ、キリトです、よろしくお願いします…」

 

 グラスを片手にマイクに向かって打ち上げの始まりを告げるスピーチを始めるモモンガとキリト、まるで結婚式でスピーチする時のような非常に堅苦しい挨拶を始めたモモンガをペロロンチーノが、片や自信なさ気に挨拶するキリトをクラインが盛大に茶化しダイシーカフェに笑い声が木霊し、モモンガとキリトも親友と言っても差し支えない仲間の野次を苦笑いしながら受け止めつつ挨拶を続行する。

 

「はははっ、まぁ見知った顔馴染みばかりなんで堅苦しい挨拶は抜きにしてとっとと始めちゃいましょうか!では!1ヵ月に及ぶコラボイベントを無事に終えた事を祝して!乾杯!」

 

「「「「かんぱーい!!」」」」

 

 

 

 かくして盛大に宴は開かれた、仲の良いグループで固まっていた者達はいつしか普段交流する事が余り無かった者達と談笑して楽しい一時を満喫している、──勿論その中にはアインズ・ウール・ゴウンの子供達であるNPC達も含まれていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《結城明日奈とやまちゃん先生》

 

「えっ!?結城さんそれ本当!?」

 

「は、はい。少し前から勉強も始めてて…大学はもう決めてあるんです」

 

 そう言って持ってきていたバッグの中から複数のパンフレットを差し出すアスナ、そこに書かれている文字に注目するのはアスナ達の通っている学校の教師を務めているやまいこと、そして彼女と仲の良いぶくぶく茶釜、餡ころもっちもちの二人だ。

 

「ボクの卒業した大学…結城さんも教師を…?」

 

「はい、私、やまちゃん先生のように明るくて誰にでも真摯に相談に乗ってくれる教師になりたいと思うようになったんです、だから………先生のような立派な教師を目指します!」

 

 そう力強く宣言したアスナの瞳には心を深く閉ざしたままの子供達に対して決して怯む事なく、臆する事なく真摯に向き合ってくれた、今や憧れの存在となったやまいこの姿をハッキリと捉えていた。

 

「それに…母との関係に悩んでいた私に…親友が、こう言ってくれました…『ぶつからなきゃ伝わらないことだってあるよ。例えば自分がどれだけ真剣なのか、とかね』って…私は自分が傷付く事を恐れずに立ち向かう先生を尊敬しています」

 

「……~~っ」

 

 入学した直後から積極的に生徒達と関わりを持とうとするやまいこを時々見掛けていたアスナ、時に生徒から激しく拒絶されては誰も居ない場所で泣いていた事も、それでも諦める事無く向き合って接するやまいこを何時しかアスナは目で追うようになっていたのだ、この時から教師という職業に興味を持っていたのかもしれない。

 

 そしてアスナに影響を与えたのはやまいこだけではなく、数ヶ月前に出会った一人の親友との別れと受け継がれた想いもまたアスナに大きな影響を与えている。

 

 やまいこと仲良くなりやまちゃん先生と呼ぶようになってからは特に、自分に対しても他の生徒達に対しても分け隔てなく接するやまいこを見て、そして親友との永遠の別れと受け継がれた大切な想いと共にアスナは大きく成長し一つの道を歩む決意を固めたのだ。

 

「…──うん、うんっ!ボクで良かったらいつでも相談に乗るからっ!!」

 

 アスナの言葉に目尻に涙が溢れる、我武者羅に走り続けてきたこの数年間は決して無駄な時間ではなかったのだと、やまいこはこの時始めて実感するに至ったのだ。

 

「良かったね、やーちゃん!」

 

「ほらほら!笑顔笑顔!」

 

「ううぅぅ…うわあああああん!!ユリーーー!!」

 

「や、やまいこ様!?」

 

 やまいこ達の話をすぐ傍で聞いていたユリも思わず貰い泣きしていたらしい、目尻に浮かぶ涙を拭いながらやまいこと共に嬉し涙を流す、その様子はまるで姉妹のようだと周囲で見守っていた者達は同じ感想を抱いていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《桐ヶ谷和人と鈴木悟》

 

「キリト君、少し聞きたい事があるんだが良いかい?」

 

「あ、はい。なんでしょう?」

 

「進路の事で悩んでいるんだって?さっきキリト君の妹さん…直葉ちゃんに聞いてね」

 

 モモンガがキリトへ問い掛ける内容はキリトの進路についてだった、何でも此処数ヶ月毎晩様々な大学の情報を調べては寝不足になってしまい朝はギリギリに起きるという生活を繰り返しているとの事らしい、心配した直葉がモモンガにどうにかならないかと相談したようだ。

 

「あ~…そうですね、なかなかやりたい事を落ち着いて出来る環境が整っている大学が無くって…」

 

「ふむ、そのやりたい事とは?」

 

 そう聞かれたキリトがやまいこ達とガールズトークに花を咲かせているアスナとユイに視線を向ける、釣られてモモンガもその視線の先にいるアスナ達を見てキリトが何をやりたいのかをこれまでの人生経験と鋭い勘で答えを導き出した、尤もその答えが真実に辿り着いているのかどうかはまた別問題だが。

 

「……なるほど。…キリト君、君のやりたい事はなかなか前途多難な険しい道となるかもしれないな」

 

「えっ?モモンガさんわかるんですか?」

 

「ああ、勿論だよ。まぁ俺も経験が無いし大した助言は言えないけど…そうだ!死獣天朱雀さんに相談してみよう!あの人なら助けになってくれるかもしれない!」

 

「…うん?」

 

「お礼はいらないよキリト君!君には返しきれない程の恩があるからね、少しでも君の助けをしたいんだ。死獣天朱雀さんを呼んでくるから少し待っていてくれ!」

 

「あっ、モモンガさっ」

 

 そう言ってキリトの返事を聞かずに死獣天朱雀のもとへ歩き始めるモモンガ、その胸中には大恩あるキリトに早くも恩返し出来る機会が巡ってきたと喜びに満ち溢れていた。

 

(ふっふっふっ、キリト君もなかなか隅に置けないな…──結城さんと学生結婚をしたいとは…最近の若い人は進んでいるとは聞いていたが…まさか先を越されるとは思っていなかったなぁ、まぁでも大学に事情を知っている人間がいればキリト君達も安心出来るだろうし、やはり死獣天朱雀さんに相談した方が良いだろう)

 

(死獣天朱雀さん…確か大学教授をしてるって言っていたな…ユイのボディを作る環境を用意してくれたりするんだろうか…?いや頼る訳にはいかないか、俺の個人的な問題だし…)

 

 盛大に擦れ違うモモンガとキリト、いや正確にはモモンガが一人暴走しているだけだろう。後にこの擦れ違いによってちょっとした騒ぎとなり、その原因となったモモンガとキリト、二人に加え何故か相談に乗っていた死獣天朱雀の三人がやまいこによって床に正座させられ説教されるという事態へ発展するのはまた別の話だ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《朝田詩乃とペロロンチーノ》

 

「ねぇ、貴方がペロロンチーノ?」

 

「うん?そうだけど?君は…確かシノンちゃんだったか」

 

「貴様!ペロロンチーノ様になんて口の聞き方を!!」

 

 シャルティアと共にデザートを頬張っていたペロロンチーノにシノンが近付き声を掛ける、その際の無礼な物言いに憤慨するシャルティア。

 

「まぁまぁ落ち着けシャルティア、この程度どうって事はないさ…少し背伸びしたいお年頃なんだよ」

 

「む、むう…ペロロンチーノ様がそう仰るのなら…」

 

「な、なんかムカつく…」

 

 大人の余裕を魅せて対応するペロロンチーノにしかめっ面になりながら率直な思いを口にするシノン、過去の事件を乗り越え精神的に大きく成長したものの、弱い内面を隠して強気に出る自分を演じていた過去の癖は未だに抜け切っていないようだ。

 

「…貴方を倒した際にドロップした弓、使いやすくて威力も高いし重宝してるわ」

 

「ふっそうだろうそうだろう?長い時間を掛けて苦労して作ったからね!良い武器だろ!」

 

「ええ、おかげで誰にも負ける気がしなくなったわ、たとえ元の持ち主であろうとも、ね」

 

「へぇ…随分と吼えるでありんすねぇ、小娘」

 

 一歩引いてペロロンチーノとシノンのやり取りを見守っていたシャルティアが我慢の限界が来たのか突如会話に入り込んでいく。

 

「爆撃の翼王と称えられ恐れられたペロロンチーノ様に勝つつもりとは…身の程を弁えなさいな、小娘」

 

「空を飛べるからといって有利になるとは限らないわ、寧ろ良い的になると思うけど?真の狙撃手は如何に相手に悟られずに仕留められるか、これに尽きるのよ」

 

 自信満々に創造主の素晴らしさを語り始めるシャルティアに対して負けじとシノンも反論していく、次第に二人の言い争いはヒートアップしていくのだが、発端の原因となったペロロンチーノは二人の美少女が自分(の弓の腕前)を巡って争うという勝手な脳内変換を行い至福の一時を堪能していた。

 

「ペロロンチーノ様!この生意気な小娘に実力の違いを教えてやってください!!」

 

「上等じゃない!どっちの腕が上か勝負よ!!」

 

 後にとある場所で勝負する事となったシノンとペロロンチーノの勝負は大勢の観客が見守る中どちらも驚異的な腕前を披露し、結果として決着が着く事は無かったようだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《一般メイドと新たなナザリック地下大墳墓》

 

「ヘロヘロ様、その薄い物は一体何なのでしょう?」

 

「ん?おおシクスス、それにフォアイルとリュミエールか、これが気になるか?」

 

「はい!なにやらその薄い物に向かって手を動かしていらっしゃったようですが…」

 

 絶世の美女三人がヘロヘロの周囲に集まりその薄い物、ノートパソコンを覗き込む。左右から前屈みになって覗き込んでしまっている為ホワイトブリム謹製のメイド服の下から豊満な双丘が自己主張を激しくしていくのだが計算されつくされた見えそうで見えない角度によって肝心の部分は絶妙に隠されている。

 

──ちらちらと左右から迫る二人の美女を覗き見つつ鼻の下を長くしているヘロヘロ。

 

「……ゴホン…これはノートパソコンと言ってな、今新たなナザリック地下大墳墓を設計しているところなんだよ」

 

「「「あ、新たなナザリック地下大墳墓ですか!?」」」

 

 驚きの声を上げる三人に釣られて周囲で談笑していた者達も気になったのかヘロヘロの周りに集まってくる。

 

「お、結構作業進んだか?」

 

「ま、佐藤さんから譲ってもらったデータを改良するだけだからな、それほど時間は掛からんだろう」

 

 先のコラボイベントに使用されたナザリック地下大墳墓のデータ、一度限りの役目を終えた事によりそのデータは削除される運命にあった、しかしアインズ・ウール・ゴウンの者達がこのまま削除するのは惜しいとして佐藤にそのデータを譲って貰えないかと交渉し、佐藤は快くこの申し出を引き受けたらしい。

 

 そしてそのデータを基にキリトが茅場晶彦から齎された世界の種子《ザ・シード》を用いてナザリック地下大墳墓を新たに生まれ変わらせたのだ。

 

「これでNPC達も自由に現実とナザリックを行き来出来るようになる、真の意味でナザリックは一つの世界となったんだ」

 

「なんと…一つの世界を創り上げるとは…あぁこれぞナザリック地下大墳墓の正当な支配者が成す奇跡…ふぁぁ」

 

「「フォ、フォアイル!気をしっかりもって!!」」

 

 シクススとリュミエールが慌てて崩れ落ちるフォアイルを抱き留める。ヘロヘロ達プログラマーにとってはなんて事は無い簡単な作業なのだがNPC達にとってはまったく違う捉え方となってしまうらしい、改めて自分達の仕える支配者達は偉大な御方達なのだと再認識する一般メイドのシクスス達であった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《桐ヶ谷直葉と武人建御雷》

 

「あ、あの~…」

 

「す、凄い勢いで食べてるわね…」

 

「リズさんあれは食べてるって言うより飲み込んでるのでは…」

 

 おずおずといった様子でテーブル一杯に広がる食事を一心不乱に頬張っている無精髭と甚平が目立つ男に直葉と付き添いで一緒にいたリズベットとシリカが話し掛ける。

 

 直葉が話し掛けた男の名は武人建御雷。その傍らにはコバルトブルーに輝く巨体が眩しいコキュートスの姿と弐式炎雷とナーベラル・ガンマ、そしてエンシェント・ワンの姿もあった。

 

「おや、すこやんに何か用かい?お嬢さん」

 

「あ、はい!…えっともしかして…あの人って○○さんでは…?」

 

 武人建御雷の本名と思われる名前を口にする直葉、過去テレビや雑誌で紹介されていた武人建御雷を覚えていたのだ。

 

「おぉ~すこやんの事を覚えてる人がいるとはね、しかもこんな若い子がなぁ…」

 

「や、やっぱり!そうなんですか!!」

 

 憧れの人物である本人を前にしてテンションが上がる直葉、その声に漸く気付いた武人建御雷が手を止め直葉達の方へ視線を向ける。

 

「んん?その子達は誰だ?」

 

「ドウヤラ武人建御雷様ヲ慕ッテイル者達ノヨウデス」

 

 問われたコキュートスが簡単に状況を説明する。

 

「あ、あの桐ヶ谷直葉といいます、大ファンなんです!サインして頂けませんか!!」

 

「………断るっ!!!」

 

「「「「えぇっ!?」」」」

 

 直葉の願いをバッサリと斬り捨てた武人建御雷に直葉達は当然として、彼の人となりを熟知している弐式炎雷やエンシェント・ワンでさえも驚いていた。

 

「どうしたんだすこやん?現役の頃は快くサインを書いていたって言っていたじゃないか」

 

「俺は既に引退した身だ!……桐ヶ谷直葉といったか?君も過去の人物を追いかけるのではなく今現在活躍している者達を追え!俺の剣は既に折れたからな!」

 

 そう言って自身の膝を指差す武人建御雷、その先には手術跡と思われる縫い傷が残っていた。

 

「俺のファンならば当時の引退会見も覚えているだろう?悔しさの余り涙を堪え切れなかった俺の姿を見た筈だ」

 

「…はい、良く覚えています。父も非常に残念がっていました」

 

 三年おきに開催されている世界剣道選手権大会、その個人の部で優勝した経験を武人建御雷は持っているのだ。そして、並み居る強敵を退け勝ち取った念願の優勝杯を片手に帰国した彼を悲劇が襲ったのだ。

 

「……酔っ払いが運転する車が信号無視して通行中だったすこやんを轢いた事件か…」

 

「そうだ、あのくそったれのせいで俺の剣の道は絶たれたんだよ」

 

(マサカ、武人建御雷ニソノ様ナ過去ガアッタトハ…)

 

(……武人建御雷様を手に掛けたその男、万死に値するわ…これはアルベド様に御報告しておいた方が良さそうね)

 

 コキュートスとナーベラルそれぞれが違う事を考える、コキュートスは創造主の過去の悲劇を悲しみ、ナーベラルは今も尚服役中の男に報いを与えなければならないと物騒な事を考えていた。

 

「……いいえ、貴方の剣は折れてなんかいません!コラボイベントで私達と戦ったあの時の貴方に私は世界大会で戦い抜く貴方の姿を垣間見ました!」

 

 実際に剣を交えた直葉はその激しい怒涛の攻撃に世界大会で活躍していた武人建御雷そのものの太刀筋なのだと確信したようだ。

 

「……」

 

「今も練習していなければあの動きは出来ません、剣道経験者なら絶対に気付きます」

 

「…その口ぶりからして君も剣道をやっているようだな」

 

「はい、幼い頃からずっと続けています」

 

「………」

 

 直葉の言葉に何か考えさせられる事があったのだろうか、数秒か、あるいは数分か…──張り詰めた緊張感の中、腕を組み目を瞑って沈黙する武人建御雷。

 

(な、なんか重苦しい空気になってない?)

 

(は、はい…まさかこんな事になるなんて…)

 

 リズベットとシリカが軽い気持ちで着いてきた事を後悔し始めた頃、武人建御雷が目を開き沈黙を破るべく口を開く。

 

「…桐ヶ谷直葉、俺と勝負してみるか?」

 

「えっ!?わ、私とですか!?」

 

「ああそうだ、君にとっても悪い話じゃないと思うぞ。…俺も失った大切な何かを思い出せるかもしれんしな」

 

「……っ!!──是非!お願いします!」

 

 真っ直ぐにぶつかって来る目の前の少女に過去の自分の姿を重ねる武人建御雷、直葉と同じ様に情熱を持って剣道にのめり込んでいた頃を懐かしく思う。

 

(失意のどん底にいた俺は酒、ギャンブルに溺れ、そして時を経て…ナザリックに心の拠り所を見出したんだったな…そしてどんな事があろうとも決して折れない存在を創りたくてコキュートスを創ったんだ))

 

 気付かれない様にコキュートスを見る。例え事故に遭ったとしても、例えどんな災いが襲い掛かろうとも決して砕けないコバルトブルーの強靭な鎧を纏う彼の姿は武人建御雷が心の底から欲しいと思った全てを備えていた。しかしそれは仮想世界だけの話だ、どれだけ心血注いで創り上げたとしても現実世界の武人建御雷は何一つ変わらない。

 

(……もう逃げるのはやめにしないとな…)

 

 たとえ逃げだったとしても、仮想世界で仲間達と共に冒険するのは本当に楽しかった、ナザリックを発見して攻略した事も、異形種狩りにあった事も全てが輝かしい思い出である。しかし現実世界の彼は未だ立ち止まったままであり時間だけが進んでしまっているのだ。

 

──その状況に終止符を打つ時が来た。

 

(…彼女と打ち合えば、何かを掴めるかもしれない…だが確証は無い。それでも…昔とは違い今は仲間達も、コキュートスもいる)

 

 不安を抱えながらも再び歩み始めようとする武人建御雷、その心には既に小さいながらも力強い情熱の炎が芽生え始めており、ナザリックで得た掛け替えのない仲間達がその背をそっと押してくれている。そのことに本人が気付いたのは後日、彼の自宅兼練習場である古い道場で直葉と相対した時であったらしい。

 

──そして直葉との激しい竹刀の応酬の末に、彼は一つの結論に辿り着く。

 

 現役復帰は諦めざるを得ないとしても…それでも未来ある若者達の指導は出来る、彼は自らの所有する古い道場で再び剣の道を歩み始めたのだ、……──数多の才能ある若者達と共に。

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