ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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第03話

10月01日07時21分 桐ヶ谷和人の部屋

 

 未だ深い眠りの中にいる和人を叩き起こすように携帯にセットされていたアラーム音が鳴り響く、布団の中からもぞもぞと腕を伸ばし携帯を探ろうとする和人だったが早朝の冷やかな空気がその腕を布団の中へと押し戻してしまい…。

 

「……後…5分」

 

 再びまどろみの中へ吸い込まれていく和人、しかし携帯のアラーム音はそれを許さず次第に自己主張を激しくしていく、ついに根負けした和人が布団の中から顔を出し携帯を探し出してアラームを止めた。

 

「ふぁぁ…眠い…」

 

 上体を起こししばらくそのままボーっとしていると外の方から何やら音が聞こえてくる。

 

「スグは元気だな…」

 

 夏の気配が去って冬の足音が近付いてくるこの季節。より一層昼夜の寒暖差が激しくなりそのせいで体調を崩す人も多い。しかし剣道着を着込み日課の素振りを精力的に行うスグと呼ばれた少女、桐ヶ谷直葉には関係無い事のようだ。

 

 尚もボーっとする和人、そこへ着信音を知らせるアラーム音とはまた違った音が鳴り響く。

 

「…エギル?」

 

 早朝に電話を掛けてきたのはどうやら頼れる兄貴分的な存在のエギルであった。

 

「もしもし?こんな早くからどうしたんだ?」

 

『おぉキリト!今起きたところか!?』

 

「あ、ああ」

 

 早朝からテンションが高いエギル、何やら興奮しているようだ。

 

『ちょっとネット見てみろ!!あいつら…イベント初日からとんでもねー事しやがった!!』

 

 エギルの電話越しの大声に思わず携帯を耳から放す、エギルの言う"あいつら"と"イベント初日"というキーワードから連想出来るのはコラボイベントのボスであるアインズ・ウール・ゴウン、もしくはALOのプレイヤー達のどちらかしかない。一体何があったというのか、寝惚けていた脳は既に覚醒状態にありエギルの興奮が和人に伝わったのかその動作は素早い。

 

「ちょっと待ってくれ、今PCを…」

 

『見たら驚くと思うぜ…じゃあまた後でな!』

 

 電話を切りPCのモニタに集中する和人、エギルの言葉に期待感が高まり脳が活性化していき視界が冴え渡っていく。何も映っていない真っ黒なモニタに光が灯る、起動に掛かった時間はいつもと変わらないのだが和人にはその僅かな時間さえも遅く感じてしまっているようだ。

 

 すぐにネットを開くとトップニュースがずらりと並ぶサイトが画面いっぱいに広がる、一つ一つを流し読みしていくとその中に目的の項目があるのを見付ける。

 

「…これだな」

 

 その記事の題名は《新生ALOコラボイベント開始!波乱の幕開け!》

 

──記事にはこう書かれている。

 

 10月01日より開始された《新生アルヴヘイムオンライン》と《ユグドラシル》とのコラボイベント、日付が切り替わると同時にメンテナンスが終了し日曜日と言う事もあって大量のプレイヤーがログインしていったようだ。

 

 数万人に及ぶプレイヤーの捜索によりコラボイベントの舞台となる《ナザリック地下大墳墓》を難なく発見したプレイヤー達。筆者もこの中にいたのだがALOの種族全てが勢揃いするこの光景に思わず言葉を失ってただ見惚れる事しか出来なかった、その時のスクリーンショット(以下SS)はこちら。

 

そして問題の《ナザリック地下大墳墓》なのだが周囲一帯は毒々しい色をした沼地に変貌している。恐らくこの沼地は《ユグドラシル》での《ナザリック地下大墳墓》が存在している場所《グレンデラ沼地》だと思われる、もし同一の沼地であるならば地表に近付けば猛毒の状態異常に陥るだろう、更に猛毒耐性を持っているツヴェークと呼ばれる魔物が生息している事も確認出来た、SSはこちら。幸い我々ALOのプレイヤーは飛行可能である為ツヴェークに襲われる心配はないので無視しても問題は無いだろう。

 

 さて沼地の観察を続けていた筆者だったが、既に数多くのプレイヤー達が突入を開始している。我先にと先陣を切っているのは血気盛んな火妖精族のサラマンダー達だ。彼等は総じて武器の扱いと攻撃力、火属性魔法に秀でておりその圧倒的な攻撃力にものを言わせての短期決戦を得意としている。

 そんなサラマンダーに先を越され慌てて他の種族達も後を追う。彼等が焦る気持ちは良く分かる、何せ支配者41人と固有名詞を持つNPCを倒せば確定で伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を始め貴重なアイテムを入手する事が出来るのだ。

 しかしその為にはこの《ナザリック地下大墳墓》から脱出しなければならないが勿論彼等もすんなり逃がしてくれる筈はないだろう。あぁ、言い忘れていたが勿論脱出アイテムの類は使用不可能だ。

 

 少々話が長くなってしまった、読者達が知りたいのは此の先、この記事の題名にもあるようにイベント初日に起きた波乱の内容だと思う、先に結論を話しておこう。

 

──第一階層に侵入した我々を待ち受けていたのは、ラスボスである41人とその配下のNPC達全てだったのだ。

 

 勿論これだけでは波乱とは呼べない、問題はここからだ。

 

──全てが巨大だった、41人の支配者も配下のNPC達も《ナザリック地下大墳墓》内のあらゆるモノ全てが巨大だった。地上から10m以上の空中に浮かんでいる我々が、あろうことか見上げているのだ。筆者達を見詰める彼らの異形の姿も相俟ってまさに魔王と呼ぶに相応しい41人の支配者達。

 

 唖然としている数万に及ぶプレイヤー達に骸骨の魔術師が前に出てこう言い放つ。

 

「いつから、ラスボスとは最奥で待ち構えているものと思い込んでいた?」

 

                           >>後半へ続く

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「や、やりたい放題してるな…」

 

 記事をざっと読みした和人が軽くドン引きしている。どうやらメンテ終了と同時に突入したプレイヤー達はほぼ全滅したらしい、数万人のプレイヤーが30分も経たない内に一網打尽にされてしまったようだ。

 記事によるとギルドマスターのモモンガが唱えた魔法によるものらしい、巨大な魔方陣がモモンガの足元から広がり徐々に光り輝いていくその姿は幻想的で思わず魅入ってしまうほど。

 

「広範囲殲滅魔法か何かか…?」

 

 記事にはその魔法の詳細は語られていない、全文を読み終えた和人はこれ以上この記事から攻略のヒントになりそうな情報は得られそうに無いと考え、情報交換が頻繁に行われているであろう攻略掲示板を開く。

 

 

《新生アルヴヘイムオンライン コラボイベント攻略スレ》Part08

 

 

219 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

   

んでモモンガが使ったあの魔法の詳細分かったん?

 

 

220 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

>>219 ユグドラシルの超位魔法失墜する天空(フォールンダウン)で間違いないだとよ、ユグドラシル経験者が言ってた。

 

 

221 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

いきなり超位魔法ぶっぱなしてくるとか相変わらずぶっとんでるなアインズ・ウール・ゴウン。つうかあいつら全員でかすぎんだろ

 

 

222 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

最初見た時びびったわ、何なの?ボスはデカイっていう決まりでもあるの運営さん?

 

 

223 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

このまま何の策も無しに突撃しても意味がないって事でアルンに領主達が集まって作戦会議するらしいよ

 

 

224 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

アリシャたんprpr

 

 

225 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

>>224 通報しますた

 

 

226 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

>>224 通報しますた

 

 

227 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

>>224 通報しますた

 

 

228 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

なぁなぁボスの一人が気になる事言ってたんだけど聞いた奴らいる?

 

 

229 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

>>228 突入と同時に飛んできた矢に一撃でやられたから何も聞いてねぇわ、なんて言ってたん?

 

 

230 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

山羊頭の悪魔がさ「今の状態では俺達を倒す事は不可能だ、出直して来い」って言ってたわ。なんか弱体化させる手段があるんじゃね?

 

 

231 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

可能性は高いな、正直強すぎて無理ゲーだし

 

 

232 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

ま、領主達の会議待ちかなこりゃ、以下ナザリックの可愛いNPC達を語るスレに変更で。

 

シャルティアは頂いていく。

 

 

234 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

アルベドは俺の嫁

 

 

235 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

マーレちゃんprpr

 

 

236 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

>>235 お前…マーレは男の娘だぞ…

 

 

237 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

なん…だと…?…いやそれはそれでアリだな…

 

 

238 名前:以下名無しに変わりまして黒の剣士がお送りします

 

ダメだこいつ早くなんとかしないと

 

            ・

            ・

            ・

 

「ダメだこいつ早くなんとかしないと」 

 

 以降ナザリックのNPCについての雑談が延々と続くのみでこれ以上は見ても意味は無さそうだと和人は掲示板を閉じ顔を洗う為に1階に降りていく。しかし有力な情報を得る事は出来たようだ、エギルは勿論クラインも知ってそうだが皆が集まった時にでも改めて話したほうが良いだろうと和人は降りながら考える。

 

 洗面所で顔を洗い終えリビングに向かうと同時に外で素振りをしていた直葉が玄関からその姿を現す、その額には薄っすらと汗が浮かびあがり持っていたタオルで拭いている最中であった。

 

「あっお兄ちゃんおはよう!今日は起きるの早いんだね?」

 

「ああ、エギルの奴に叩き起こされたんだよ」

 

「エギルさんに?何かあったの?」

 

「コラボイベントでいきなり大事件が起きてな…」

 

「ふーん?後で調べてみよっと。シャワー浴びてくるね!」

 

 早足で駆けていく直葉を見送りリビングに入る和人。母の翠は既に会社に向かった後のようだ、先程まで暖房をつけていたのかほんのりと温かい空気になっている。

 

 コーヒーを淹れてソファに座りほっと一息つく和人、そのまま暫くソファに身を預けていると昇ってきた陽射しが再び心地良いまどろみへと和人を誘う、コーヒーをテーブルに置きその流れに身を任せ瞼を閉じようとした和人だったが…。

 

「ふぅ~…ってお兄ちゃん!今日は皆でイベントやるんでしょ!寝たらダメだよ!」

 

 直葉に叩き起こされてしまい半ば強制的に覚醒状態へと舞い戻る。

 

「分かってるよ…ふぁぁ…」

 

「もうっ…、ご飯作るからTVでも見てて待ってて!」

 

──この兄妹、まるで夫婦のようである。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

10月01日08時34分 ナザリック地下大墳墓 円卓の間

 

 数人の支配者が椅子に座って思い思いに寛いでいるところへモモンガがログインする。

 

「おはようございます」

 

「「「( ノ゚Д゚)おはよう」」」

 

 全員と挨拶を交わし現在の状況がどうなっているのかの確認に入るモモンガ。

 

「あの後妖精達は攻め込んできましたか?」

 

「いんやー散発的に侵入してくるのが数回あっただけで特に問題は無かったよ」

 

「そうですか、やはり最初のあれがインパクトあったようですね」

 

「だねぇ~いきなり超位魔法ぶち込んだからなぁ」

 

 超位魔法とは《ユグドラシル》における最強の魔法群の事を指す、《ユグドラシル》の仕様では詠唱時間が長い代わりにMPの消費は無く一日に4回までの使用制限が設けられている、勿論コラボイベント用にこの超位魔法にも《ユグドラシル》とは違う制限が設けられているようだ。

 

 モモンガが使用可能魔法一覧を確認すると《失墜する天空(フォールンダウン)》の名前が使用不可を表す黒字に変化しておりその横にはリキャストタイム39:58:09とある。つまり1度使用すれば丸2日は使用出来ないという事だ。

 当然威力の方にも修正が加えられていたのだが、予めバフをこれでもかというぐらいに重ね掛けしていた事もあり本来の威力並みに底上げされていたようである。

 

 この超位魔法《失墜する天空(フォールンダウン)》により一撃で消し飛んだ妖精達、辛くも生き残った妖精達も続けて動き出した支配者達とNPC達により追い払われてしまったようだ。

 

「リアルで掲示板を確認してきましたがどうやら作戦会議に入るようですね。暫くはゆっくり出来そうです」

 

「よっしゃああ!!じゃあNPCと戯れてくるわ!!!」

 

「ええ、思う存分遊んできてください!」

 

 ギルドメンバーの項目を確認すると大半はログアウトしているようだ、残りのメンバーはそれぞれが自身が担当した階層に居たりNPCと一緒に居たり第九階層のロイヤルスイートでのんびり過ごしたりしてこの《ナザリック地下大墳墓》を楽しんでいる。

 

「ペロロンチーノさんは…第二階層か」

 

 手持ち無沙汰になったモモンガは一番の親友の元へ遊びに行こうと思いつく、指輪の力でシャルティアの私室である死蝋玄室の前に転移する。

 

「ペロロンチーノさーん?いますかー?」

 

 吊るされている薄絹のピンクのベールを手で払い除け甘い香りが充満した部屋に入ったモモンガが見た光景は…。

 

「うっへっへへへ~シャルティアアアア~~(^q^)」

 

「うふふ、ペロロンチーノ様は甘えん坊でありんすね~」

 

「結婚しよう!シャルティア!」

 

「勿論でございんす!!わらわの全てをペロロンチーノ様に捧げるでありんす!」

 

 シャルティアに膝枕され満足そうに横になっているペロロンチーノがシャルティアに求婚している姿であった。

 

「………俺は何も見ていない」

 

──モモンガは静かにその場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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