ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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第04話

10月01日10時34分 新生アルヴヘイムオンライン 浮遊城アインクラッド第22層南西エリア南岸のログハウス

 

「どーすんだぁキリの字?領主達の作戦会議の結果を待つっつー手もあるがよ…」

 

 忙しなく落ち着きのないクラインがキリトに問い掛ける、イベントに参加する事は決定事項ではあるが先の蹂躙劇を見て一先ずの作戦会議を行っているところであった。

 

「…いや突入してみよう、とりあえずボスの実力がどの程度なのか確かめておきたいしな」

 

「よっしゃあ!んじゃ先に行ってるぜぇ!」

 

 キリトの返答を聞いた途端嬉しそうな顔になり早々と部屋を後にするクライン、何かと真新しい事に目がないクラインにとって今回のコラボイベントは正に直球ど真ん中なのだろう。気が早いんじゃないかと生暖かな視線で見守りつつ残っていたメンバーも後に続いて行く。

 

「いこっ、キリト君!」

 

 最後まで残っていたアスナが立ち上がろうとしていたキリトに手を伸ばしつつ笑顔で話し掛ける。

 

「ああ、折角のイベントなんだ、楽しまなきゃな」

 

 伸ばされたアスナの手を取り立ち上がるキリト、手を握ったまま部屋から出て行こうとする仲睦まじいキリト(パパ)アスナ(ママ)の姿を満面の笑みで見つめるユイに二人が振り返る。

 

「行こう、ユイ」

 

「おいで、ユイちゃん!」

 

 言葉の節々に滲み出る親愛の感情を感じ取ったユイが嬉しそうにパタパタと羽を動かし二人に追いつく。

 

「──はいっ!頑張りましょうパパ!ママ!」

 

──幸せな家族の姿が、そこには確かに存在していた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

同日10時53分 ナザリック地下大墳墓 第九階層ロイヤルスイート

 

「あ”あ”あ”あ”あ”~~~~~極楽極楽…」

 

「そ”う”で”す”ね”~~~…骨に響く~~~」

 

 ラウンジに設置されていたマッサージチェアに座り至福の時を堪能しているのはモモンガともう一人の異形の人物。

 

「ヘロヘロさ~ん~こんなにゆっくりしてて良いんですかね~~あ”あ”あ”~~」

 

「良いんじゃないですか~~?あ”あ”あ”~~」

 

 マッサージチェアの繰り出す定期的な振動に揺れているのはスライム種の中で最強の座を欲しいままにしている古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)のヘロヘロと言う名のプレイヤーだ。ドロドロの体にマッサージチェアの振動が伝わりプルプルと波打っているその姿は異様である。

 

──そんな二人に外敵の侵入を知らせるシステムメッセージが鳴り響く。

 

「おっ、侵入者ですかあ”あ”あ”あ”~~~」

 

「そのようですねえ”え”え”~~~~…えーっと侵入者の数はっと…9人…?どうしましょうか、この数ですと『モモンガさーん』っペロロンチーノさん?」

 

 マッサージチェアから身を乗り出し立ち上がろうとした矢先に届くペロロンチーノからの伝言(メッセージ)、その内容は敵の数は少ないから自分とシャルティアで迎撃するとの内容であった。

 

「ふむ…」

 

「ペロロンチーノさんは何と?」

 

 目の役目を担っていると思われる二つの穴がモモンガの方へ向けられる。

 

「妖精の数はそれ程多くは無いので自分とシャルティアで迎撃するとの事です」

 

「大丈夫なんですかね?」

 

「守護者最強のシャルティアもいる事ですしあの二人なら問題はないでしょう、他の人には手出し無用と通達しておきます」

 

「では…」

 

 ドロドロの身を乗り出して迎撃に向かおうとしていた体を再びマッサージチェアに預けるヘロヘロ、モモンガも同様にマッサージチェアに身を預ける。

 

「ええ…、我々はこの強敵との戦闘を楽しむとしましょう」

 

「「ペロロンチーノさん、後は頼んだ( ´∀`)bグッ!」」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

同日10時55分 ナザリック地下大墳墓 第二階層 シャルティアの私室

 

 侵入者から一番近い場所にいるペロロンチーノが名残惜しそうにシャルティアの膝枕から離れて立ち上がる。それはシャルティアも同様だったようで立ち上がるペロロンチーノの背中を悲しげな瞳で見上げている、しかし何時までも悲しんでいる訳にはいかない、階層守護者としての役目を全うしなければならないのだ。

 

「さて、侵入者を撃退しに行くぞシャルティア」

 

「はい、御供いたしんす!」

 

「侵入者がいるから今は指輪を使えない、俺の背中に乗れシャルティア、飛んで行こうか」

 

「なっ!?至高の御方を乗り物代わりにするなど不敬でありんす!!それに私の転移魔法を使えば一瞬でっ」

 

 シャルティアが否定の言葉を口にしかけたところで不意に伸びてきた鋭利な爪の生えた人差し指がシャルティアの口を防いでそれ以上の言葉を紡がせないようにする。

 

「不敬なんかじゃないさシャルティア、…寧ろ──御褒美だ」

 

「あぁ…ペロロンチーノ様…」

 

 ペロロンチーノの言葉により瞳にはハートが描かれ真っ白な頬は赤く染まりきっている、もしこの場にぶくぶく茶釜が居れば「黙れ、弟」と言っていたに違いない。

 

「さあ、背中に乗れシャルティア。振り落とされないようにしっかりと捕まるんだぞ」

 

「で、では失礼するでありんす…」

 

 シャルティアが自分の身長の2倍近くはありそうなペロロンチーノの背中に恐る恐るよじ登り、4枚ある羽の内、上部にある羽の付け根部分を遠慮がちに掴む。

 

「ここで大丈夫でありんしょうか?」

 

「シャルティア、そこではなく俺の首に腕を回せ、出来る限り密着するんだ」

 

「えっ!?し、しかし…」

 

 ペロロンチーノの要求に一瞬動きが止まるシャルティア、無意識の内に片腕で胸を庇うように押さえる。何も知らない第三者が見ればその大きすぎる形の整った双丘を押し当ててしまう事に恥ずかしいという感情を抱いているのだと思うだろう。

 

──しかし、現実は違う。

 

 シャルティアを、シャルティア・ブラッドフォールンを創り上げたのは何を隠そうこのペロロンチーノである。故にペロロンチーノはシャルティアが胸を押し付ける行為に途惑っている理由も何もかもを知り尽くしている。それを知っている上で彼は、ペロロンチーノはシャルティアに催促(イジワル)しているのだ。

 

「…うぅ…ペロロンチーノ様は意地悪でありんす…」

 

 何処かシャルティアの様子がおかしい、ペロロンチーノから辱めを受けているにも関わらずシャルティアの表情はどこか恍惚としていてほのかに上気している。勿論その理由もペロロンチーノは把握しているのだ。

 

「これで…よろしいでありんすか…?」

 

 その双丘をペロロンチーノの背中に押し付けて耳元で囁かれる上擦った声に見え隠れしている艶めかしいシャルティアの声に、ペロロンチーノは心の中でとある人物に感謝の言葉を捧げる。

 

(佐藤さん…あなたが神だ…ありがとう、ありがとう…)

 

 シャルティアの設定を完璧なまでに再現した佐藤達ALO運営チームの熱意と情熱にペロロンチーノは深く、深く感謝するのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

同日11時03分 ナザリック地下大墳墓 第一階層

 

 キリト達一行が慎重に飛行しつつナザリック地下大墳墓へ侵入する、記事に書いてある通り内部の広大さは尋常じゃなく果てが見えないほどだ。その上薄暗い通路の先はかなり入り組んでいるように見える、地上に視線を移すと大小様々な棺が等間隔で並べられており中に何がいるのか考えただけでも恐ろしい。

 

「キ、キリト君…離れないでね?手、ちゃんと握っててね?」

 

「大丈夫だアスナ、皆いるし俺もユイも傍に居る、安心してくれ」

 

「ママ!私が一緒にいます!」

 

「あ、ありがとうユイちゃん…そ、そうよね、キリト君の言うとおり皆いるもの…だいじょ」

 

 キリトとユイの言葉にほっと安堵の息を漏らし心を奮い立たせようと言葉を紡ぐもその言葉は最後まで紡がれる事は無かった。

 

──アスナ達の頬を一陣の風が過ぎ去っていく。

 

「ひぅ!」

 

「…風?奥のほうから?」

 

 キリトが疑問を口にする、言うまでもなくこのナザリック地下大墳墓は地下に伸びるダンジョンだ。入り口がある背後から風が吹くならまだしも今の風はキリト達の正面、奥の通路の先からこちらに向かって吹いている。

 

──自然現象ではない。

 

「皆、気をつけろ…何か来るぞ」

 

 キリトの勘が警告音を発する。何らかの装置が作動したのか、もしくは…未だ沈黙を保っている、彼等が動き出したのか。

 

 警戒心を限界まで引き上げて構えるキリト達、その間も風は止むばかりかその勢いを増していく。

 

「──ぐっ!?」

 

「きゃっ!」

 

 突如突風が巻き起こり一同に襲い掛かる、なんとか踏み止まろうと背中の羽を全力で動かしつつ突風によりまともに開けられない目をこじ開けて状況を把握しようと努めるキリト達。

 

「一体何が起きてんだぁ!?」

 

 精一杯、羽を動かしながらクラインが喚く。

 

──それが、いけなかった。

 

 唯一人、声を張り上げた事によりその矛先としてクラインが選ばれたのだ、遠くの暗闇の中から一筋の光がクラインに忍び寄る。

 

「クラインッ!!!」

 

「──んなっ!!?」

 

 キリトの咄嗟の言葉に属性ダメージの塊である矢と自身との間に間一髪、刀を差し込む事に成功し緩衝材としたクライン、しかし矢の勢いはそれで止まる訳もなくクラインをこのエリアを支えている大きな支柱へ追い込み激突させ大きな砂埃を巻き起こした。

 

「クライン!?」

 

「クラインさん!」

 

「嘘でしょ!?なんなのよ今の!」

 

 エギル、リーファ、リズが驚愕の声を上げクラインが吹き飛ばされていった方向へ視線を向ける。

 

「いてててっ…間一髪防御が間に合ったぜ…」

 

 砂埃が風により吹き飛ばされクラインの姿が薄暗闇に浮かび上がる、パーティメンバーの体力ゲージを示すバーを見るとクラインのHPは8割程削られ真っ赤に染まっている、もし防御に成功していなかったらHP全損していた事だろう。すぐにリーファが近寄り治癒魔法をクラインに向けて詠唱し始める。

 

「えっ、今の防ぐとか何それ怖い」

 

 クラインの無事な姿に一行が安堵の息を漏らしたのも束の間、聞き慣れない声が一行の間を駆け巡る。

 

「みんなっ!!前!!」

 

 クラインが吹き飛ばされた後も何も見逃さないとばかりに前方を警戒していたシノンが声を張り上げる。

 

──暗闇から浮かび上がるは異形の存在、このナザリック地下大墳墓を支配する41人の内の1人。

 

「俺の名はペロロンチーノ、ょぅι゛ょをこよなく愛する罪深き男だ」

 

「あぁ…なんと誇り高き御姿…流石はペロロンチーノ様…」

 

 シャルティアをその背に乗せ呟くペロロンチーノにキリト達一行の間に何とも言えぬ空気が漂う。

 

「「「えーっ………」」」

 

 放った言葉は犯罪者予備軍のそれであるにも関わらず背中に乗っているシャルティアは何ら疑問を持つ事は無い、ペロロンチーノの放った言葉は全てが真実となるのだから。

 

「シャルティア」

 

「はい!」

 

 いそいそと背中から降りたシャルティアがペロロンチーノの横に進み出て恭しくお辞儀し自己紹介する。

 

「ナザリック地下大墳墓第一、第二、第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールンと申しんす」

 

「NPCか…」

 

 階層守護者、即ちNPC。このダンジョンに常駐している為、恐らくは今後のイベント中に最も刃を交える事になるであろうその内の1人が今キリト達の前に立ち塞がる。

 

「シャルティア、この入り組んだ場所では俺の本領を発揮する事は出来ない、お前が頼りだ」

 

「勿論で御座いんす!このシャルティア、ペロロンチーノ様の身に危険が及ばないよう全身全霊を持って御守り致しんす!!」

 

──シャルティアの姿が変貌する。

 

 身に纏っていた黒のボールガウンは足のつま先から天辺の頭までが真紅に染まった鎧へ切り替わり、背中には純白の翼が生え揃え、右手には機械的な形状をした槍を装備しペロロンチーノを守るかのように前に進み出るシャルティア。

 

「さあ来るがいい妖精共よ!」

 

 悪のロールプレイを純粋に心の底から楽しんでいるペロロンチーノ、先程の問題発言はともかく純粋にこのイベントを楽しもうとするその姿勢に感化されキリト達の表情に笑みが浮かび上がる。

 

「よし!皆行くぞっ!!」

 

──ついに戦闘の幕は切って落とされた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

同日11時38分 央都アルン

 

 世界樹の根元に広がるアルヴヘイム最大の中立都市、央都アルン。中立都市であり世界の中心に位置している事から9つの種族全てがこの地を目指してくる為非常に交流が盛んな都市だ。

 そしてコラボイベントのお陰なのか道行くプレイヤーの数が普段よりかなり多くなっているようだ。コラボイベントに向けて装備を整えるプレイヤー、治癒魔法を行使出来るプレイヤーを探すパーティ等、普段より活気な空気に露店を営んでいるNPC達がこの好機を逃さないとばかりに客であるプレイヤー達を自身の店に呼び込もうと声を張り上げる。

 

──そんな活気溢れる中心部より少し離れた広場に彼等は居た。

 

 即席のテーブルと椅子が用意されたその場所に複数のプレイヤーが各種族混じって雑談を交わしている、既に準備は滞りなく終了し正午に開始される予定のコラボイベント対策作戦会議を待つばかり。

 

「来たかアリシャ」

 

 そう呟いたのは一番乗りしていた風妖精族シルフの領主を務めるサクヤという女性プレイヤーだ。緑色の着物を着込みその胸元には豊満な双丘が顔を覗かせており、端整な顔立ちも相俟ってか妖艶な雰囲気を醸し出していた。そのサクヤが遠くに見えるプレイヤー達の姿を確認する。

 

 こちらに向かって緩やかに高度を下げつつ降りてくるのは彼女の友人であり猫妖精族ケットシーの領主を務めるアリシャ・ルー。

 

「やっほーサクヤちゃん、待たせちゃったかナ?」

 

「いや私も先程到着したばかりだ、それにまだ時間まで少しばかりある」

 

 高く昇った陽に照らされて輝く小麦色の肌が眩しい、ワンピースに似た戦闘用スーツを着込み腰には武器であるクローがぶら下がっている。

 

「おっと、噂をすれば皆来たようだヨ」

 

 猫妖精族ケットシーの優れた視力が全方位から現れた一団を捉える。

 

──かくして新生ALOが始まって以来初となる各種族を治める代表者である全ての領主がここ、央都アルンに集結した。

 

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