ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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第05話

10月01日11時24分 ナザリック地下大墳墓 第一階層墳墓エリア

 

「──いやぁぁぁぁぁっ!!来ないで来ないで来ないでぇぇぇぇっ!」

 

 日光が僅かに届く薄暗い墳墓にシリカの叫びが木霊する、目尻に涙を浮かべながら迫り来る巨体から逃れようと必死に羽をはためかせて墳墓内を縦横無尽に駆け巡るシリカ。

 

「待て待て待てーー(^q^)」

 

 追っているのは勿論、至高の変態ペロロンチーノである、リズの後ろにすっぽり隠れて姿の見えなかったシリカがその姿を現した途端この有様であった、そんなペロロンチーノを止めようとキリト達が全力で攻撃を加えようとするが全ての攻撃はシャルティアによって弾かれ叩き落されてしまう、その間にもこの変態はシリカを追い掛け回しているのである、《ユグドラシル》なら問答無用でアカウント削除される行為なのは間違いない。

 

「シリカちゃん!こっち!」

 

「アスナさああああん!!」

 

「──こ、のっ!止まりなさい変態!!」

 

「シノンさん!一緒に!──þeir slíta fimm grǿnn vindr(セアースリータフィムグローンヴィンド)!」

 

「むっ!それがALOの魔法か!」

 

 ペロロンチーノの魔の手からシリカを守る為にアスナが身を呈して庇い、リーファの魔法が発動し緑色に輝く5枚の刃が現れペロロンチーノの巨大な体を斬り裂かんと群がる様に追跡していく、更にリーファの魔法に続いて弓のソードスキルである《ヘイル・バレット》を発動させるシノン。

 

「避けられるものなら避けてみなさい!この変態(ロリコン)!」

 

 ペロロンチーノに狙いを定めたシノンが《ヘイル・バレット》を放つ、このソードスキルは追尾性能を持つ3本の矢を同時に放つソードスキルだ、リーファの魔法に加えてシノンのソードスキルがペロロンチーノを襲う。

 

「罵倒のつもりのようだが…その言葉は俺にとって──褒め言葉だっ!」

 

 そう言い放ったペロロンチーノが《ユグドラシル》で最も使用率の高かったスキル《速射》を発動させる、自身に迫り来る3本の矢と5個の刃に向けて信じられない速度で次々と矢を吐き出し全てを撃ち落とすという神業を魅せ付けるペロロンチーノ。

 

──この男、変態ではあるが腐っても至高の41人に名を連ねる熟練プレイヤーでもあるのだ、弓の腕前は他のプレイヤーの追随を許さず、通称『爆撃の翼王』とも呼ばれている。

 

「ふっ、まだまだ甘いな少女達よ。もう少し幼くなってから出直して来たまえ」

 

「「む、むかつくーーっ!!」」

 

「ほら、お返しだ少女達よ!」

 

 憎まれ口を叩きながらお返しとばかりにゲイ・ボウを構えて《速射》を発動させシノン、そしてリーファ目掛けて放たれる。

 

「はあああああっ!!!」

 

「喰らいやがれっ!」

 

「女のケツばっか追っかけやがって!」

 

 同時に攻撃を放った直後の僅かな硬直時間を狙ってキリトとクラインそしてエギルがペロロンチーノに攻撃を加えようとするが…。

 

「止めなんし」

 

 視界の外から伸びてきたシャルティアのスポイトランスにより3人共纏めて薙ぎ払われてしまう。

 

「──がっ!」

 

「ちっくしょお!!」

 

「うおっ!」

 

 空中へと吹き飛ばされるキリト達、間一髪防御に成功したキリトとエギルの2人はHP全損を免れたが防御の遅れたクラインがまともに攻撃を受けてしまい戦闘不能を示す揺らめく炎(リメインライト)へとその姿を変える。

 

──そしてシノンとリーファに放たれた矢が2人の眼前に迫る。

 

(──あ、当たるっ!!)

 

 来る衝撃に目を瞑り身構える、しかしその衝撃はシノンを襲うことは無かった。

 

「シノンッ!!」

 

 突如割り込んだリズが持っている盾で矢を受け止めたのだ。

 

「リズ!?」

 

「ぐぬぬぬぬっ!!」

 

 羽を精一杯動かしその場で踏ん張るリズだったが、ジリジリと押されこのままではシノン共々やられかねないと感じたリズは一か八かの行動に出る。

 

 このまま矢の勢いが止まるまで受け止めきるのは不可能、ならばその軌道を逸らすしか二人が助かる方法は無い。精一杯の力を腕に籠めて腹の底から声を出し──。

 

「──だあぁぁっ!!!」

 

 ついに矢の軌道を逸らす事に成功するリズ、逸らされた矢が天井に激突し粉々になった天井の一部が降り注ぐ。

 

(…えーっ、おっかしーなー、ボス特権で攻撃力やらなんやら底上げされてる筈なんだが…)

 

 通常攻撃でも当たり所が悪ければ即死級のダメージになる事もあるそれをクラインは刀で防ぎ、リズは盾で受け流し、リーファに到っては防御魔法で完全に防ぐと言う荒業を見せ付けてきたのだ、これには流石にペロロンチーノも驚愕していた。ただ、単純に彼女達が強いのか?それとも偶々運が良かっただけなのか?

 思考に意識が傾いてしまい動きが止まり仁王立ちしているその隙だらけの体に、今までの恨みを返すが如く猛烈な勢いで二つの影が迫る。

 

「こっんのおおおおお!!!」

 

「はああああああっ!!」

 

 シリカとアスナが雄叫びを挙げつつペロロンチーノに迫る、思考に気をとられ支柱の影から飛び出したアスナ達に気付くのが遅れてしまったペロロンチーノに回避する時間は無かった。

 

「うおっ!?」

 

「ペロロンチーノ様!」

 

 しかし2人の渾身の一撃はペロロンチーノとシリカの間に割り込む様に入り込んだシャルティアと、その身を守る為に発生した障壁により防がれてしまう。

 

「えっ!?これって!!」

 

「シールド!?」

 

「ぅゎょぅι゛ょっょぃ──っていやちょっと待って強すぎない!?」

 

──アインクラッド第百層のボスもその身に纏っていた生半可な攻撃ではビクともしない障壁…の筈なのだが、敵の視界には表示されないシャルティアの障壁の耐久度を示すバーが見る見るうちに削られていくのを目撃するペロロンチーノ。

 

「下がれ!シャルティア!」

 

「は、はい!」

 

 これには余裕綽々の態度をとっていたペロロンチーノとシャルティアも慌てて距離を取らざるを得なかったようだ、それもその筈、この障壁は1度破壊されてしまえば2度と復活しないのだから。

 

「これがょぅι゛ょの力か…」

 

 幼女も成長し少女になり恋をし大人になり女性となり結婚し母となり身篭りまた新たな幼女が生まれてくる。これが何を意味するかと言えば、ぅゎょぅι゛ょっょぃ。

 

「よ、幼女じゃないですっ!!」

 

「──ふっ、慌てる事は無いょぅι゛ょよ、背伸びしたい年頃なのは理解するが数少ないょぅι゛ょである時間を大切にした方が良いぞょぅι゛ょよ」

 

「もぉぉぉぉ!!リズさぁぁぁん!!」

 

 泣きっ面のままリズの胸に飛び込むシリカ。

 

「お、おーっよしよし…ちょっとあんた!シリカは多感な時期なんだから苛めるのやめなさいよ!!」

 

 シリカの頭を撫でながらペロロンチーノに捲くし立てるリズの真横にシノンが並ぶ。

 

「助かったわリズ」

 

「気にしなさんな!それにしてもどうするべきかしらね、この状況」

 

「リズ!」

 

 自分を呼ぶその声にペロロンチーノとシャルティアの警戒をシノンとシリカに任せ声の方へ視線を向けるリズ。

 

「10秒だけで良い!持ち堪えてくれ!」

 

 シャルティアの重い一撃をなんとか受け流したキリト達だがそれでもかなりのダメージを負ってしまったようだ、リーファとアスナが治癒魔法と補助魔法をキリト達とリズ達に掛けようと詠唱しているのが見え、更にキリトは何やら自分のメニューを触る動作をしているようだ。

 

「無茶言わないでよもう!!」

 

「頼む!」

 

 キリトにそう返事し先程のペロロンチーノの一撃を防いだ時のダメージを回復する為にアイテムを取り出そうと一瞬の隙を見せてしまったリズ。

 

──その隙を見逃すほどペロロンチーノは甘くはない。否、少女には容赦がない。

 

「リズさん!!前!」

 

「リズ!!」

 

「えっ!?」

 

 固まっていた3人に向かって先程放ったスキル《速射》を発動させるペロロンチーノ、狙いは中央にいる──リズだ。両脇に居たシノンとシリカは注視していた事もあり間一髪のところで回避する事に成功するが、一瞬の隙を晒したリズはまともに受けてしまいそのまま吹き飛ばされ壁面に激突してしまう。

 

「きゃっ──!」

 

「もう少し幼くなってから出直して来たまえ」

 

 砂埃が収まった壁面にはリズのリメインライトを示す炎が揺らめいている、まだリズの意識はその炎の中にあり散り際に聞こえたペロロンチーノの言葉を聞き『あんた覚えてなさいよ!!!』とリズは叫んでいるようだ。

 

──尤も、その声は誰にも聞こえる事は無いが。

 

(漸く2人倒せたか、しかし復活ポイントはナザリックの入口だったよな?うーん、このままちんたらしてたらまた戻ってくるしなぁ…どうしよう)

 

 コラボイベントは始まったばかり、このまま戦いが長引けば不利になっていくのはペロロンチーノ達である、何せ1度減ってしまった障壁の耐久度は回復しないのだ。初日にこれ以上の障壁の消耗は避けたいと考えたペロロンチーノは遊ぶのを止め一刻も早く全員を倒そうと本腰を入れてキリト達の排除に専念しようとする。

 

──そこへ、この場の誰でもない声が響き渡る。

 

「侵入者は少数なのに随分と梃子摺っているな、ペロロンチーノよ」

 

──暗闇から現れたのはつい先程ログインした山羊頭の大悪魔、その名はウルベルト・アレイン・オードル。

 

 数ある魔法職の中で最強と謳われるワールドディザスターを取得している魔法使いであり41人の支配者達の中で最も『悪』に拘った男、そして重度の厨二病である。そんなウルベルトに付き従うのは彼自らの手で創り上げられたNPC、第七階層守護者デミウルゴスだ。

 

「おっ、ウルベルトさんか?いやーなかなか手強いよこの子達」

 

「新手かっ!?」

 

 前線に復帰したキリトが今まで使用していたユナイティウォークスに加え黄金に輝く長剣を持ち二刀流の構えを取っている、その黄金に輝く長剣の名は《聖剣エクスキャリバー》。かつて発生した大規模クエストで取得した伝説級武器(レジェンダリーウェポン)だ。

 

──構えるキリト達を見てウルベルトが問い掛ける。

 

「ふむ、まだやるつもりのようだが…そこの二人に加えて俺達も相手取りながら此処を突破出来ると思っているのか?」

 

 ウルベルトの言い分は尤もだ、ペロロンチーノとシャルティアを相手にして暫く経つが未だに二人の10個ある体力ゲージの一つも削る事が出来ていない、かつて戦ったアインクラッド第百層のボスを2体同時に相手にしているようなものである、そこへウルベルトとデミウルゴスが加わったのだ、最早キリト達の勝ち目は無いに等しいだろう。

 

「……このまま戦い続けても勝ち目はなさそうだな…撤退するよ」

 

「賢明な判断だ、お前達の再びの挑戦を待っているぞ」

 

「──必ずリベンジしに来る」

 

 剣を収め仲間達と共に入口へと引き返すキリト達、初めての挑戦は第一階層入口すぐで終わってしまったもののペロロンチーノ達と戦った結果得られた情報は多い。

 ボスの実力はアインクラッド第百層のボスとほぼ同等であり攻撃力はこちらの方が上のようだと実際にシャルティアの重い一撃を受け流したキリトはその結論に至る。

 

 確かにキリト達だけならナザリック地下大墳墓を攻略する事は不可能だろう、しかし今回のコラボイベントに参加するのはキリト達だけではない、アルヴヘイムに生きる全てのプレイヤーが同じ目的の為に手を取り合って戦うのだ、ならば必ず勝ち目はある筈、確かな手応えを感じつつキリト達一行は領主達の作戦会議の結果を知る為、央都アルンへと向かう。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

同日12時00分 央都アルン

 

 ついに始まった領主達による攻略会議、まず最初に口を開いたのはこの会議を開催しようと各領主に話を持ち掛けたサクヤだ。

 

「皆、急な呼び掛けにも拘らず応じてくれた事にまずは感謝の言葉を贈りたい、ありがとう」

 

「気にする事ないヨ~サクヤちゃん、私とサクヤちゃんの仲じゃん」

 

 アリシャの言葉に賛同するように各領主達が頷く。アリシャの言葉に緊張感に満たされていた空間が僅かに弛緩したのを感じたサクヤは早速本題に入る。

 

「ありがとうアリシャ、では本題に入ろう。皆も既に聞き及んでいると思うが先のナザリック地下大墳墓に攻め入った時の事だ。メンテナンス終了後、数万人のプレイヤー達で攻め入ったが結果は30分足らずで全滅してしまった」

 

 改めて口にすると何とも信じ難い話だとサクヤは率直な感想を述べる。数万人の大軍勢を一瞬で全滅させる事が出来る超位魔法を開幕直後に放ち恐怖を縫い付けてくるそのやり方は実に効果覿面だった、事実その後は記念に一度は参加しておきたいというプレイヤーとアインズ・ウール・ゴウンのファンで彼等に倒されたいというプレイヤーぐらいしか突入しようとする輩はいなかったのだから。

 

「諸君、我々は舐められている。──お前達妖精如きにこのナザリック地下大墳墓は陥落などしないと」

 

 このまま舐められたままでいいのか?このまま彼等の好きにさせアルヴヘイムを踏み躙られて良いのか?

 

──断じて否だ!それに我々には彼等を倒さなければならない理由がある筈だとサクヤは口にする。

 

「彼等を倒せば!伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を入手出来るんだぞ!指を咥えて黙っていられるか!?」

 

「サクヤちゃんサクヤちゃん気持ちは分かるけど落ち着いてヨ、キャラ変わってるヨ~」

 

 この世界を愛する妖精である以前に彼等は、重度のゲーマーなのだ。そんな者達が目の前にぶら下げられたお宝を前にして冷静でいられるだろうか?

 

──答えは否だ。

 

 未だ伝説級武器(レジェンダリーウェポン)の発見例は極僅かしかない、火妖精族サラマンダーのユージーン将軍の持つ《魔剣グラム》、アスナの持つ《世界樹の枝(クレスト・オブ・イグドラシル)》、そしてキリトの持つ《聖剣エクスキャリバー》のみ。もしかすると奪われる事を恐れて誰にも公表されていない伝説級武器(レジェンダリーウェポン)が他にもあるのかもしれないが現状は上記に挙げた3つしか無い。

 

 サクヤに発破を掛けられた領主達が瞳を輝かせ立ち上がり次々と拍手を送る、サクヤの言葉は重度のゲーマーである彼等には効果覿面であった。

 

「ありがとう、差し当たりコラボ期間中に限り不和を避ける為に条約を交わしたいと考えている、抜け駆けや伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を入手したプレイヤーを陥れる等の行為を避ける為、そして入手した伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を確実に持ち帰る為だ」

 

 そう言うと火妖精族サラマンダーの領主モーティマーに絶対零度の視線を送るサクヤ、その視線を受けたモーティマーは何処吹く風とばかりにそっぽを向き口笛を吹く。

 

「現在は各種族はPVPは封印されているがイベントが終了したと同時に解禁される、裏切り行為を働いた種族には残りの全種族で領地に攻め込むからな、安易な考えは起こさないよう願いたい」

 

──こいつ、本気だ。

 

 そっぽを向いたモーティマーが冷や汗の滝を流しつつ密かに企てていた計画は中止せざるを得ないと考えるのであった。

 

「それでサクヤちゃん、何か作戦はあるのかニャ?」

 

「ああ勿論だ。彼等には無く我々のみにある絶対的なアドバンテージを最大限に活用する作戦を考えている」

 

「ほほう!」

 

 サクヤの言葉にアリシャが目を輝かせる、同様に他の領主達も勿体ぶらずに早く教えろと催促する。

 

「ナザリック地下大墳墓内で死亡したとしても一切のデスペナルティは存在しない、これを最大限活かし波状攻撃を仕掛ける!」

 

──人、それを『ゾンビアタック』と言う。

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