ALO コラボイベント開催!《ナザリック地下大墳墓を攻略せよ!》   作:黒雲あるる

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第09話

10月5日20時58分 ナザリック地下大墳墓第九階層 円卓の間

 

「なんなんでしょうね、このサブクエスト?」

 

 首を捻るモモンガ、黒棺の水晶が破壊されたと同時に発生した謎のサブクエストに一同が様々な憶測を立てるが、クエスト内容は何も書かれておらず、並べられた憶測が正解なのかどうかも分からない。

 

「《生贄》…安直に想像するならば生贄を捧げて何かを召喚する、と考えるのが妥当でしょうね」

 

 タブラ・スマラグディナが自身の憶測を述べる。確かに今では世界中で楽しまれている某カードゲームにも生贄召喚というシステムがある。いやそのカードゲームだけではない、古今東西様々なゲームにも言える事だ。

 

「佐藤さんにメールしてみますか?」

 

「…無駄でしょうね、今までのイベントならば納得のいく回答が得られるかもしれませんが…今回だけは違います」

 

 《新生アルヴヘイムオンライン》を運営している佐藤にメールを送っても満足のいく回答を得る事は出来ないとタブラ・スマラグディナは考える。

 彼の言うとおり今回のイベントは今までとは違う、普通ならばボスキャラというのはAIが担当するものだ、しかし今回は中に人が、モモンガ達が居る。

 もしそのサブクエストを達成した結果がボスキャラに有利な状況になると判ればモモンガ達は何がなんでもクリアしようとするだろう、その結果、攻略の難易度が上がりクリア出来ない状況になる可能性もある、その状況は運営が求めているものではない、今回に限っては運営は中立の立場を維持しなければならないのだ。

 尤も、ボスサイドに有利になる結果になるとは限らないが…それならそれでクリアしないように気をつければ良いだけである。

 

「……ふむ、まぁ何にせよ我々のする事は変わりません」

 

「ええ、ぷにっと萌えさんの言うとおりです、我々はこの1ヵ月を楽しむ、ただそれだけに集中しておけば良い」

 

 アインズ・ウール・ゴウンの出した結論は、──傍観。

 

 佐藤からの返信も先程の理由から期待は出来ない、その上クエスト内容も書かれていないのであれば現状打つ手は無しである。

 

「おい皆!ふし★ふぁーがピンチだぞ!」

 

 その時、円卓の間の中央に映し出されていた映像を観察していた1人がるし★ふぁーの危機を知らせる。その映像へと視線を向けると領域守護者グラントの体力バーは残り2つ、るし★ふぁーの体力バーは残り6つとなっており随分と苦戦を強いられている姿が映し出されていた。

 

「助けに行かなくてええのん?ぷにっと萌えたん」

 

「ええ、許してほしいなら今日の侵攻を1人で阻止して来てくださいと先程伝えておきました。ていうかグラント連れて行ってる時点でアウトなんですが…」

 

(((………き、鬼畜っ!!)))

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 転移直後の妖精達を奇襲するというるし★ふぁーの作戦は見事に嵌まり、グラントの眷属達が放つ大量の蜘蛛の糸に絡め取られた妖精達が無残にやられていくのだが……──如何せん場所が悪い。

 黒棺の転移装置が解放された事によりこの場所から再びゾンビアタックを敢行する事が可能となったのだ、これにより状況は次第に妖精側に好転していく。

 しかも恐怖公との戦いを制した猛者達の存在も大きい、奇襲を掛けられた直後こそ動揺したもののすぐさま立て直して反撃に出たのだ、ちなみに女性陣は既に逃亡済みである。

 

「もう少しだぞ!連携を怠るな!!」

 

 ユージーンの号令により体力バーが残り少なくなっていたグラントに妖精達が協力して波状攻撃を仕掛けていく、しかしグラントも黙ってやられる訳にはいかないと最後の抵抗を試みる、グラントの腹部にある刺激毛と呼ばれる大量の毛を自身の強靭な脚で蹴り飛ばし次々と周囲に撒き散らす、それら1本1本には猛毒が含まれており当たれば一定時間の麻痺状態となってしまうのだ、そして動けなくなり地面に落ちた妖精達に今度は眷属達が襲い掛かる。

 

 しかしグラントの最後の抵抗は一時の時間稼ぎにしかならなかったようだ、麻痺状態になった妖精にすぐさま風妖精族(シルフ)達が解呪魔法を掛け更に防御魔法を重ね掛けしていき、水妖精族(ウンディーネ)が失われたHPを回復させる為に最上位回復魔法を、猫妖精族(ケットシー)が素早さを上昇させる補助魔法を、土妖精族(ノーム)が自慢の耐久力を活かして盾となり眷属達を引き付け、火妖精族(サラマンダー)の火属性攻撃魔法が眷属目掛けて解き放たれる。

 

──しかしこの状況こそグラントの求めていたものだとは妖精達は気付かない。

 

「全員で掛かれっ!」

 

 ユージーンの言葉にキリト達含む全ての種族が様々な武器を構え突撃していく、眷属達は既に殲滅され残るはグラントのみ。残りの体力バーは1つになっておりそのバーも危険域を示す赤色に染まっている。そしてグラントに最期の刻が訪れる。

 

──最後に攻撃を加えたのは、闇妖精族(インプ)の妖精であった。

 

 -System Messages- 領域守護者 グラント の撃破に成功!ドロップアイテム《グラントの鋭牙》を獲得!

 

 喜びに沸き立つ妖精達、しかしここで1人の妖精がある事実に気が付く。

 

「あれ……ボス何処行った!?」

 

 その言葉に慌てて周囲を見渡す妖精達、しかし黒棺内にるし★ふぁーの姿を発見する事は出来ない…。

 

「あ、あの野郎!逃げやがったな!?」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「あ、危ねぇ…グラントが囮になってくれてなかったらやられてたな…」

 

 グラントが最後の力を振り絞り妖精の注目を一身に集めると同時に彼女はるし★ふぁーに此処を離れるように伝えていたようだ、結果的にグラントはこの戦闘で脱落する事となってしまったものの彼女の心は嘗て無い程に満たされていた。それもそうだ、彼女はその身を犠牲にして至高の御方を救う事が出来たのだから。

 ナザリックのシモベ達にとって至高の御方の御役に立てる事は何よりの至上の喜びとなる、それこそ命を救ったとなれば尚更だ、これ以上の幸せは有り得ないだろう。そして同じナザリックのシモベ達は彼女に惜しみない賞賛を贈るだろう。

 彼女は消えゆく意識の中で至高の御方々の御役に立てた事を誇りに思いながら…恐怖公の眷属が犇く待機部屋へと転送されていくのであった。

 

「グラント…お前の稼いでくれた時間、無駄にはしねぇぜ!」

 

 グラントに感謝の言葉を述べ、るし★ふぁーは何れ追って来るであろう妖精達を迎え撃つに相応しい場所へと移動を始める。黒棺を越えて複雑な迷路を駆け抜け第三階層へ降りる階段を駆け下りる。

 暫く進むとまた第二階層へと昇る階段、それを過ぎると見えてくるのはシャルティアの住居の死蝋玄室。甘い香りと女の嬌声が囁かれる異質な部屋を駆け抜けると再び見えてきたのは第三階層へ降りる階段であった。

 勿論道中一本道等ではない、大変複雑な迷路が侵入者を待ち構えているのだがるし★ふぁーにとってはこの迷路は庭のようなものだ、正解の道を何の迷いも無く突き進む。

 

「しっかしなかなかめんどくさい構造してるよな、ここ。シャルティアがいれば楽なのになー」

 

 シャルティアがいれば一瞬で移動出来たのだが、ぷにっと萌えの指示により既に退避済みである、シャルティアの持つ転移魔法はナザリックの中では大変貴重な魔法なのだ、彼女の他に修得しているのはモモンガのみと言えばその重要度が分かるだろう。彼が居ない時の防衛の要としてシャルティアは非常に重要な存在となっているのだ。

 

「今更だがぷにっと萌えさん鬼畜すぎんだろ!!あんな大軍勢1人で撃退出来る訳無いじゃん!!」

 

 思わず足を止め先ほど伝言(メッセージ)を送ってきたぷにっと萌えに苦情の叫びを放つるし★ふぁー。

 

──この男、こうなった元凶を作り出したのは自分自身だと言う事をすっかり忘れてぷにっと萌えに怒りをぶつけている。

 

こっちから声がしたぞっ!!

 

「げっ!もう追いついてきやがった!?何で!?」

 

 この迷路の構造を完全に把握しているるし★ふぁーに即座に追いつく事など普通ならば不可能だ、しかし妖精達はこの迷路は初見の筈にも拘らず既にるし★ふぁーに追い付こうとしている、これには理由がある。

 

 ALOの魔法の一つに対象にトレーサーと呼ばれる使い魔を憑依させ対象の居場所を逐一報告するという魔法がある、コソコソと何処かに向かおうとしていたるし★ふぁーの姿に間一髪気付いた1人のプレイヤーが即座に追跡魔法を唱えていたのだ。そのお陰でこうして即座に追撃部隊を差し向ける事が出来たのである。

 

「居たぞぉっ!!撃て撃て撃てえええ!!」

 

「マジかよ!?もう少しなのに!!」

 

 様々な属性の魔法がるし★ふぁー目掛けて放たれる。

 

「うおおおお!!ここで脱落してたまるかあああ!!」

 

 気合で大半の魔法を弾き返すも、擦り抜けた魔法が次々とるし★ふぁーに命中する。残り体力バーは…1つとなり注意域を示す黄色に変化する。更に誰かが唱えたのか猛毒を示す状態異常アイコンがるし★ふぁーのステータスに加えられる。

 

「猛毒!?や、やべえ!」

 

 階段から開けた空間に吹き飛ばされたるし★ふぁーの視線の先には見た目が不気味で尚且つボロボロな吊り橋が鎮座していた、更にその先には朽ち果てた地下聖堂の姿と──大量のアンデッドの姿。

 

「これは…飛行禁止エリアか!?」

 

 開けた空間に出た瞬間に強制的に地面に着地させられる妖精達、るし★ふぁーを仕留める千載一遇のチャンスに道中の数々の陰湿なトラップに引っ掛かった者達を断腸の思いで置き去りにしてきた事もあってかその数は1000人を切ってしまっている。しかしここで歩みを止める訳にはいかない、置き去りにしてしまった者達の思いも背負い彼等は尚も前進する。

 

「お前等っ!俺を助けろ!!」

 

 るし★ふぁーの命令に即座に動き出すアンデッド達、妖精達のいるこちら側に来る唯一の道であるボロボロの吊り橋に殺到するその姿は命知らずにも見える、実際何匹かは殺到する集団に押し出され深い谷間へと落ちてしまっている、それでもそんなのお構い無しに妖精達の元へ雪崩れ込むアンデッドの大群。

 

 今までは空を飛べた事によりスルーする事が出来ていたがここではそれは出来ない。

 

「来るぞっ!!魔法部隊!防御部隊!前へっ!」

 

 土妖精族(ノーム)の部隊が前面に躍り出て吊り橋の前でアンデッド達を待ち構える、その背後で魔法の詠唱に入る妖精達、既にるし★ふぁーの姿は朽ち果てた地下聖堂の中に消えてしまっている、早く後を追わなければという焦りからか詠唱を間違えてしまう妖精が多く見受けられる。

 

「落ち着くんだ皆!まだそこまで遠くには行っていない筈だ!まずはこいつらを叩くぞ!」

 

「ブ、ブラッキー先生!」

 

 不味い空気だと感じたキリトが咄嗟にこの空気を断ち切る為に声を出す。そのお陰か、落ち着きを取り戻した事により速やかにアンデッド達の排除に成功した一同はボロボロな吊り橋を少しの犠牲者を出しつつ渡りきり地下聖堂の中へ踏み切る。

 その先には黒棺の転移装置と同じ装置が設置されていたが目的のるし★ふぁーの姿が無い事からこの転移装置を使い何処かへ逃げたのだろう。

 

「し、しぶといなあのボス…」

 

 予想外の逃走劇に一同が疲れを見せ始めた頃、予想だにしていなかった報告が一同の間を駆け巡る。

 

 -System Messages- 至高の支配者の1人 るし★ふぁー の撃破に成功!ドロップアイテム《堕天使の杖》を獲得!

 

「「「………ええっ!?」」」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓第四階層 地底湖

 

「くっそー、ここまでか…ま、楽しめたし良しとすっか!それにやられたからって今後遊べない訳じゃないしな…にしし」

 

 邪悪な笑みを零するし★ふぁー、その体力バーは猛毒により徐々に減少し恐らくは後1回のスリップダメージで尽きてしまうだろう、その数秒の間にるし★ふぁーは最後の行動に出る。

 

「本当はこいつに乗って悪役らしい最期を迎えたかったんだがなぁ…ふふ、俺の分まで大暴れしてくれよな」

 

 るし★ふぁーが地底湖を覗き込み、湖底に沈む者の名前を静かに呟く。

 

「ガルガンチュア、──起動」

 

 その言葉を最後にるし★ふぁーの姿は光の粒子となり砕け散る。至高の支配者の最初の脱落者は、るし★ふぁー、至高の問題児にしてトリックスターと呼ばれた傍迷惑な男。

 

──だが彼の悪戯はここで終わる事は無かった。このコラボイベントをまた違う視点から楽しむべく彼は堕天使の姿を捨てて妖精の姿を得るのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓??時??分 ???

 

「……グラント殿…やはり貴女も来られましたか…」

 

 意識が消えたと思った次の瞬間には見知らぬ部屋に転送されていたグラント、背後から聞こえてきた聞き慣れない声に振り返ると、そこにいたのは今まで見た事も無いような御馳走の数々…血が滴り落ちそうな程の極上の肉の塊達、それが数百、数千、数万と部屋一杯に埋め尽くされていたのだ。

 

「───っ!!!」

 

 グラントは歓喜に震える、まさかこれ等(・・・)は身を挺して時間稼ぎをした私に向けての至高の御方からの御褒美なのだろうか?

 

──ならば…ならばこの御褒美は私1人で独占する訳にはいかない、この御褒美を共に味わおうと彼女は眷属達を召喚する。

 

「ちょ、ちょっとお待ち下されグラント殿!!我輩達は敵ではありませんぞ!」

 

 恐怖公が慌てた様子でグラントを制止しようとするが…彼女の瞳に映っているのは極上の肉の塊のみ。最早彼女達は止まらない。

 

──否、止まれない。

 

「や、止むを得ん!!眷属達よ!明日を生きる権利を勝ち取る為に逃げるのです!!」

 

──今此処に、妖精達とアインズ・ウール・ゴウンの戦争の裏に隠されていたもう一つの戦争が今この部屋で巻き起こる。

 

──この捕食する者とされる者の戦争は、るし★ふぁーがこの部屋に転送されるまでの暫くの間続けられたという。

 

 

 

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