持ちサーヴァントでいろいろ妄想してみた 作:砂岩改(やや復活)
一応、ベースはfate/grand order ―fast order―を参考にして書いています。ほどよく纏められて書きやすかったので。
そして予想外の文量に、本当は3000で納めたかったけど無理でした。
「行ったぜセイバー!」
「あぁ」
「小癪なぁ!」
ランサーメデューサの絶叫。彼女の体にはジークフリートの得物、バルムンクが突き刺さると両断する。
「おう、いい太刀筋だ。相当、名のある英霊と見たぜ」
「そちらの魔術も大したものだ。詠唱なしで発動できるとは古代ルーン魔術だと見える。身のこなしから見て魔術師ではないようだが」
「ほう、鑑識眼も一流か。こんな状況じゃなけりゃ決闘を申し込んでいたところだぜ」
キャスター。クー・フーリンはジークフリートと話している内に獣のような瞳で彼を見るがすぐに納める。戦士として分かり合った二人は静かに信頼関係を築くと藤丸とオフェリアの元に戻るのだった。
ーー
「オフェリアさん」
「……」
ほんの少しだけ安堵したマシュに対してオフェリアは優しい笑みを浮かべながら頭に手を置くと優しく撫でる。端から見ても愛のある撫で方だった。
(か、体が勝手に…)
先ほどの一連の行動は彼の意思によるものではない。本人からしてみればつい無意識にと言った反応が正しいのかもしれない。
「貴方が居ればもうこんな数合わせに用はないわ。オフェリア、貴方がこの特異点Fの調査の主導を命じるわ」
「所長。先輩は先輩なりに」
「今までのことは感謝しているわ。それでもオフェリアと藤丸の差は歴然。全てにおいてね、能力のあるものがそれに相応しい働きを求められるのは当然の事よ」
「でも…」
「いいんだよ、マシュ。ありがとう…オフェリアさん。よろしくお願いします」
「……」(いや、無理だから。俺中身違うし)
藤丸を庇おうとするマシュであったが彼自身がそれを止めてオフェリアに頭を下げる。すると彼女は静かに首を横に振り、反対の意を示した。
「え?」
「どういうことオフェリア。私の言うことに従えないと言うの?」
「……」
「なんとか言いなさい!」
(話せたら話すわバカ野郎!こっちだって話せなくて辛いんだよ!)
「マスター、どうした?」
(ジークフリート、すまない。俺が話せないことを説明してくれ)
「無視するんじゃないわよ!」
オフェリアの態度に怒り心頭と言ったオルガマリーは声を上げながらこちらを睨み付けてくる。早く誤解を解かないと殺されそうな勢いなのでジークフリートに状況を説明して助けてもらう。
「すまないがお嬢さん」
「なによ、サーヴァントが私に口を出すんじゃないわよ!」
「私のマスターは言葉を出せないんだ」
「え?」
「爆発の影響かは分からないが。私のマスターは言葉を発せず、記憶も大半を失った。使える魔術もそのほとんどが焼失してしまったのだ」
後半はちょっと作り話。嘘は言ってないがな、彼女自身の記憶はあるが魔術に関することの理論なんてこっちには何にも理解できない。全部、レフのせいだ!
ジークフリートの話を聞き終えたオルガマリーは先ほどの真っ赤な顔から一転、真っ青な顔に変わり頭を抱える。
「そんな…」
へたりこむオルガマリーは絶望にうちひしがれながら座り込んでしまった。
(だからこそ、声のだせない俺より藤丸くんが主導で動いてくれた方がいい)
「だと言うことだ」
「…分かりました。でも僕にそんなことが出来るんでしょうか?」
不安一杯と言った藤丸の肩に手を置いて軽く叩く。頑張れと言ったつもりだ。それは向こうにも伝わったようで少しだけ顔が変わる。
(いい子だ)
年齢的にも下。しかも同性となれば可愛がるのは当然のこと、藤丸にも頭を撫でてやる。
「…ありがとうございます」
「おっしゃ、一丁上がりっと」
そんなことをしているとゆっくりと歩いてきたクー・フーリンが帰ってくる。
「ありがとうございます。危ないところを助けてもらって」
「まぁな、セイバーの援護のお陰でこっちもだいぶ楽できたしな。お互い様だ」
「ありがとよ、お嬢様ちゃん」
平常運転に戻ったクー・フーリンは俺ことオフェリア(偽)の腕を揉む。
「なにやってるんですか!」
突然のセクハラに固まっていた俺とクー・フーリンの間に割り込むようにマシュが入り、二人を引き離す。
(まさか男にセクハラされる時がするとは…)
中身が男ということもあり完全に油断していた。これからはこう言うことも気を付けなきゃならないと思うと気が気でない。
「ははっ、結構いい体してるな。その強気な顔も好みだぜ」
「フォウ!」
クー・フーリンの軽口に警戒するようにマシュの肩に乗っていたフォウがこちらの肩に飛び乗り威嚇する。その様子がとても可愛くて思わずナデナデしてしまうとフォウもリラックスしたようにかわいい声を上げてくれる。
(隠れとこ…)
またセクハラされても困るので少しだけジークフリートの後ろに隠れる。
「マスター。その…背中は少し…」
(あぁ、すまない。それは不味かったな)
ジークフリートは誰であろうと背後に回られるのを嫌がる。それは彼の体の問題なのだがすぐに分かるだろう。そんな彼の反応を見たクー・フーリンはすぐにその正体を察していた。
「とりあえず状況を聞きましょう。どうやら彼はまともな英霊のようです。そしてオフェリアさん、無事にレイシフトしていて良かった」
突如出現したのはロマニ、彼は映像越しにだがこちらを見て労うがその目はどことなく警戒の色を残していた。
「お、それは魔術による連絡手段か?」
「初めまして、御身がどこの英霊かは存じませんが我々は…」
「そう言う前口上は結構だ。手っ取り早く用件を話せよ、そう言うの得意だろ軟弱男。それにお嬢様さんは俺の正体を察しているとおもうぜ」
「軟弱…ってオフェリアさんはもう予想が?」
「流石ね、記憶は失っても鋭い観察眼は健在のようね」
クー・フーリンの言葉に少し落ち込むロマニだったが彼の言葉に驚く。いつの間にか復活したオルガマリーも手早く褒める。
「そうなのかマスター?」
(あぁ、まぁ。知識があるからな俺には、姿を見ただけである程度の英霊かは見分けられる)
fate知識様々である。元々は英霊とかそう言う神話系は全く分からなかったがこの作品のお陰でかなり鍛えられた。
(アイツはアイルランドの光の御子だよ。名はクー・フーリン、言わずも知れた大英勇だ。今回はランサーではなくキャスターみたいだけど)
「なるほど、クー・フーリン。味方としてはかなり心強いサーヴァントね」
ジークフリートの翻訳越しに伝えるとオルガマリーは顎に手を当てながら思考する。
「まぁ、防御役のマシュ、前衛のセイバー、後衛のキャスターと布陣は磐石よ。どれほど強力なサーヴァントだろうと対処は可能ね。オフェリア、貴方のサーヴァントは一体、何者なの?」
(いいのか?)
「ここには敵は居ない。味方に俺の正体を明かした方がどちらも動きやすいだろう」
ジークフリートの同意を得て正体を明かすことを許可する。するとそこにクー・フーリンが話に割り込んできた。
「おっと、今度は俺が当てる番だ。なぁ、大英雄。このお嬢ちゃんは間違いなく最高補の英霊を引き当ててるぜ」
「分かったのか?」
「あぁ、あの剣筋、体捌きを見てただ者じゃねぇとは思ってた。さらにマスターでさえ、背後に回られることを嫌がるのがいいヒントになったぜ」
「え、まさか…」
クー・フーリンの解説で一番に察したのはオルガマリー。彼女の知識のなかでもとある英霊にたどり着いたのだろう。
「ニーベルンゲンの歌の大英雄。ジークフリート、あの邪竜殺しにまみえるとは運が良いぜ」
「流石は降霊科のエースね。文句無しの人選よ、触媒もなしによく召喚できたわね」
オルガマリーが誉めてくれている後ろでマシュは藤丸にジークフリートの解説を行っている。というか、出会ったばっかりの筈なのに仲良いな!
「つまり貴方はこの街で起きた聖杯戦争のサーヴァントであり唯一の生存者なのですね」
「負けていないと言えばな」
ロマニの質問を皮切りにキャスターことクー・フーリンはこの世界で起きた聖杯戦争の詳細を聞く。人間の居ない街、傀儡と化したサーヴァントたち。そして待ち受ける敵、セイバー。
「じゃあ、行きましょう」
オルガマリーの声を期に全員が冬木の心臓部。大聖杯のある場所へと向かう。人が住め環境では無くなったこの街は悪路極まれりだが着実にゆっくりと近づいていく。
「まさか生存者が居たとは…だが彼女は邪魔だな」
それを遠くから見ていた男性は障害となり得る者に向けて魔力を起こす。
「フォウフォウ!」
「少しですが。オフェリアさんは柔らかくなった気がします」
(まぁ、元々。マシュに対しては気にかけてた節があったし。彼女も接しやすいんだろうな)
自分の頭や肩を動き回るフォウを肌で感じながら癒されているとマシュが話しかけてくる。回想を見るとオフェリアがいた頃のマシュはマシーンのようなイメージを受けていた。なんでこんなに変わったのかは詳しくは分からないが。今の時点でもかなり女の子らしくなったと思う。
「オフェリア、貴方はこれから藤丸の教育をしていかなければならないわ。こいつはレイシフト能力だけは高いんだから有効に活用なさい」
(なんだかんだ言ってよく見てるんだよな。所長って)
今回はジークフリートという強力なサーヴァントもいる。ゲームみたいに所長を死なせないようにしなければ。
(は?)
「マスター!」
すると突然襲ってくるのは浮遊感。おかしい、さっきまでじめんを歩いていたんだ。マンホールなんてなかった。ジークフリートたちの声が聞こえる。足元を見れば自分の足元だけ亜空間ゲートのようなものが出来ている。
(俺だけピンポイントで狙われたのかよ!)
「フォウ!」
とにかくフォウは落ちないように投げておく。するとそれはマシュがキャッチ。
「お嬢ちゃん!」
「オフェリアさん!」
クー・フーリンと藤丸が素早い動きで手を差しのべてくる。だが手が動かない。突然のことで頭が追い付かずにそのままゲートに飲み込まれる。
「オフェリアさん!」
彼女が落ちた瞬間。ゲートは閉じ、全員がオフェリアが落ちた地面に向けて叫ぶ。無意味だと分かっているがやってしまう。
「マスター!」
そのすぐ後。オフェリアの気配を察知したジークフリートは霊体化して急行するのだった。
ーーーー
(いっつぅ!)
尻もちを着いてしまったオフェリア(偽)はその痛みに耐えながら立ち上がり、周囲を見渡す。ここには炎がなく全体的に静かな印象を受ける。ここは廊下のようだがかなり広い。
(ここは城か…まさかアインツベルンの城!?)
冬木にこれほど大規模な城はアインツベルン家の保有している城しかない。
(こんなところにも来れるなんて)
アニメを知っている身としては嬉しい限りだったがなにか奥から足音のような音が聞こえる。
ズシン…ズシン…ズシン…
(まさか…)
アインツベルンのサーヴァントは一騎しかいない。あの誉れ高き大英雄、そのバーサーカーとなれば必死。
「■■■■■■ーー!!!」
(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!でたぁぁぁぁ!)
ムンクの叫びの如くの大絶叫(心で)と共に全速力で逃げる俺。
(なにか使える呪文はないのかぁ!)
そう言えば似たような状況で凛が使っていた魔術をふと思い出す。
(
両足に現れる青いライン。魔力喚起によって視覚化された魔力回路が活性化されている証だ。
全速力で駆ける、それと同時にバーサーカー《ヘラクレス》の剛力によって生み出される一撃、それをなんとか避けるが風圧で窓は割れ、体は吹き飛ばされる。
「■■■■■■!」
風圧を利用してさらに加速。思考は混乱しているがどうすればいいかは体が勝手に動いてくれる。そのお陰でこっちもかなり冷静になってきた。
到着したのはエミヤと士郎が戦っていたホール。スケルトンを倒した魔力を撃ち出す方法で窓を破壊して脱出路を作る。
(こんな狭い場所。命がいくつあっても足りない!)
(
まるで辞書を読んでいるような気分。頭の中で言いたいことが勝手に浮かんでくる。これは恐らく、オフェリアの記憶の中から俺が必死に呪文やらなんやらを引き出してるんだろう。既に情報は詰まっているのだ。
「■■■■■■っ!」
(おりゃぁ!)
壊したのは二階の窓。なぜかって?そりゃあ…。ヘラクレスの剣が俺の足を狙ってるのが分かったからな!
(あんなんが当たったら足どころか下半身が消し飛ぶわ!)
綺麗な背面跳びを決めるとそのまま城外へ。受け止めてくれるエミヤは居ないので全身を地面で打ちながら着地。ここで体力を使いきり着地などの余裕が持てなかった。
「■■■■■!」
(ここまでか…ジークフリート!)
頭に浮かぶのは自分が召喚したジークフリートの姿。彼なら助けてくれるかも知れない。そんな思いと共に壁を突き破って襲ってくるヘラクレスを静かに見つめる。
「すまない、待たせた…」
ヘラクレスの一撃を真っ向からの一芸で相殺したのはジークフリート。彼は素早く俺を持つと木陰に隠して再び襲ってくるヘラクレスを迎え撃つ。
「■■■■■っ!」
「ここは通さん!」
ギリシャ神話の二大英雄と邪竜殺し。この二人は互いに守るべきものの為にぶつかり合うのだった。