インフィニット・ストラトス <The future lingering scent> 作:姫戸三角
「はいはーい。クロニクル先生質問ー」
休み時間に入った後、あきらかにサイズが合っていないブカブカの制服を着た少女が手を上げて尋ねてくる。
「布仏ちゃん・・・・・・やったか? 答えれることならかまわへんよ」
「じゃ~先生は何歳なのー?」
「今年で二十四・・・・・・やったと思う」
「じゃぁー、何で織斑先生と仲がいいんですかー?」
少し話すかどうか躊躇ったが、気がつけば周りを囲み聞き耳を立てていたこの学園の女子生徒の行動力を考慮すると、どうせすぐばれると思い言える範囲で白状することにした。
「4ヶ月ほど織斑先生の家に住ませてもろとったからな」
「「「えっ!?」」」
顔を赤くした女子生徒もいたが、それくらいで止まらないのがこのお年頃である。
「せ、先生達は同棲していたんですか!?」
「あー。思ってるのとはちゃうで? 一応世界で二人しか居ない男性操縦者やからな。世界一安全な場所に隔離されたと言うか監視されとったと言うかな? あと、当然織斑少年も一緒やった」
「あー・・・・・・」
納得はしてくれたようだが、きっかけさえあればそこは年頃の女子だった。そのまま質問攻めにあい、当然次の授業の開始を告げるチャイムが鳴るまで続いた。
「ISは兵器や」
休み時間とは雰囲気が違う彼が言った。
「普通の兵器ではまったく通用せえへん、圧倒的な力でなぎ払う事ができる兵器や」
現在のISは『アラスカ条約』においてISの軍事転用を規制されている。だが、それを守っている国は無いと言ってもいい。大国家は平然とISを軍事ISを転用しているのが現実だ。
あくまで、他国がISを用いて攻撃してきたときの防衛手段として、抑止力として大義名分を歌い、いくつもの軍事用ISは作られている。
「もし、どっかの馬鹿がISを使って攻撃してきおったら・・・・・・」
クラスの空気が変わった。生徒達からの緊張と、教師達の視線。先ほどまでの違う張り詰めた雰囲気が教室を包み込む。
「そうなったらや、君たちが戦場の最前線に立つことになる。つまり――その手でISを・・・・・・人を殺すことになる」
まだ高校生の生徒達、しかも初日の授業を受けている最中の生徒達にはまったく実感がなかった。
「アラスカ条約があるからそんな事は起きへんと思っとるなら、その考えは早めに捨てたほうがええ。人間はそんなに綺麗じゃあらへん。しかも、ISにはまだ解明されてない部分も多くある。もしかすると暴走して全人類にその牙を立てる日が来るかもしれへん。――これからISに関わる以上、いつか絶対に『選ぶ』日が来る。乗り手にしても製作者にしてもや」
生徒たちの表情が変わった。緊張から少しの怯えと覚悟へと変わったのを見て満足そうに彼は続ける。
「まぁすぐに焦る必要はあらへん。そのためにこの学園があるんやからな。――ISは人類に裁きを下す神の使いになるかもしれへんが、元々は人類を宇宙へと羽ばたかせる翼として作られた物や。今でこそ兵器としてしか見られておらへんが、そういう道もあるというのはこれからを担う君らに覚えとってほしい」
時間はお昼となり、教師たちも昼食を取る時間である。
「なぁ・・・・・・クラベル。お前が来た時に話した内容は、やはり本当なんだな」
箸を止め、いつもとは違う雰囲気で彼女はそう問いかけた。
「正直に言うと半信半疑だった。だがお前の授業の話を聞いて、本当にあった話なのがわかった」
「ワイから見れば過去の話やが、織斑先生にとってはまず起きへん話や」
「だが、絶対とは言い切れないだろう」
普段の彼女からは考えられない、不安と恐れ、躊躇いが混ざった弱々しい瞳が彼を見る。
「ちゃんとそうならないよう手は打った。千冬さんもその場に居たやろ? もし起きたとしてもワイが必ずまた止めてみせたる」
彼は安心させるような笑顔でそう言いきって、お茶のお変わりを注ぎに席を立った。
「馬鹿者・・・・・・。織斑先生と呼べ」
その小さな呟きは、職員室の中で誰にも聞こえることなく溶けて消えた。
小説を読んでいると、IS学園って、『IS軍事学園』だと思うんですよね。
もしかしたら話の中で書かれていないだけで、こういった授業も行われているのかもしれないですけど。