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Take4-2
「ひ、酷い目に遭った………」
ノンストップ、完全閉鎖で行われた固有結界とは似て非なる何かで行われたライブはようやく幕を閉じた。
というかいつの間にかその中から外に出れていた。
「………外、だと…?」
赤茶けた大地に、突き刺さる無数の剣。
空には回り続ける歯車があり、古今東西、凡庸な剣から魔剣の類まで突き立った剣の丘。明らかに室内ではなく、かと言って外でもないその場所は―――――。
「ま、まさかまたしても――――固有結界か!」
「ご明察だな。何を隠そう、私たちも例のアレから避難している身でね。……固有結界でも展開すればすぐに魔力が尽きると思っていたのだが――――計算が外れてしまい、このザマというわけだ」
振り返ると、そこには赤い外套を羽織った男が―――――どういうわけか、たくさんの女性に囲まれていた。
「アーチャーさん、ケーキ焼いてみたんですけど……その、味見してもらってもいいですか?」
「えー。じゃあ私のも食べてもらいたいなー?」
雪の妖精のような小学生が皿に乗せたケーキを食べてもらおうと、そしてそれを小悪魔にした感じの少女は口に入れたケーキのイチゴを口移ししようとその男、アーチャーに詰め寄る。
「ふむ。有難く頂くが、口移しは遠慮しておこう」
「ちょっとそこの赤いアーチャー! 私に捧げるケーキはまだなの!? 女神をほったらかして小さい子と戯れてるなんていい度胸してるじゃない!」
「ケ、ケーキ……冥界に帰る前に食べられて良かった……」
そして怒れる金星の女神。更にそれに瓜二つな冥界の女主人は手製のショートケーキで人目もはばからずに泣いていた。
「というか、なんで
「……いや、単純に君の注文したケーキが一番手間と時間がかかるだけなのだが……彼女と同じショートケーキで良ければ直ぐに出せるが?」
「嫌よ! こんなに待たせといてそんな地味なの出したら天罰喰らわすわよ!」
「そしてジャガーはおかわりを要求するー!」
「あのー、これの作り方を今度教えて頂いても…?」
「……アーチャー、このフルーツケーキは、その……もう、無いのでしょうか……?」
「―――――今直ぐに用意する!」
そして、何やら他にも紫の髪の女性やらジャガーを名乗るナニカやら、金髪の美少女剣士やら、「やっぱり傍に置くのは美人に限るわー」などと言ったりもするゴルドルフから見てもハイレベルな女性陣。
―――――これは、固有……結界?
わいわいと楽しむ、完全に大人気な赤アーチャーによる固有結界ピクニック。
しかし、このいたたまれなさはなんだろうか。
吹雪のせいで雪山で足止めされ、コヤンスカヤには割と軽くあしらわれ、ここ一月は女っ気が皆無だったゴルドルフは心の中で泣いた。
この時、ゴルドルフは今度こそ本物の固有結界と、またそれと似て非なる何かものすごく居づらい空間を形成する固有結界っぽいものに出会った。
「………コ、コヤンスカヤ君は……」
ふらふらと、固有結界の中心から離れるように歩きだすゴルドルフ。
通常であれば、そんなことをしても結界の外には出られないのだが――――不意に、また景色が変わる。どこまでも青い空に、降り注ぐ強烈な日差し。果てのない砂漠。
そこには鎧を身に着けた無数の戦士がいて、いつの間にかその戦列の只中にいたゴルドルフが慌てて周囲を見渡している間に、雷鳴のような声が轟いた。
「―――――――――遠征は終わらぬ! 彼方への野心ある限り!」
「「「「然り! 然り! 然り!」」」」
叫ぶのは、一際大きな黒馬に乗って剣を掲げる王。
偉大なる征服王のAランクのカリスマ、そして周囲の雰囲気に負けて思わず自らもいつの間にか持っていた槍を掲げてしまったゴルドルフに、親切な兵士が仲間だと思ったのか馬を貸してくれる。
「む? な、なんだ……?」
「どうか、健闘を」
「此度の遠征においてこの演習が、我ら最後の戦いとなるであろう! 相手は最古の都市を統べる賢王とそのサーヴァント! 此度は古に挑む戦である! 相手にとって不足はない―――――蹂躙せよぉオオオオッ!」
「うおおぉぉぉっ!? ば、馬鹿! 止まらんか!」
周囲の馬が一斉に駆け出し、親切な兵士が馬に指示を出してくれたおかげで戦列の半ばで引きずられるように前進してしまうゴルドルフは―――――そこに、都市を見た。
イスカンダル率いる無双の軍勢―――それであっても苦戦は免れないと、悟ってしまうほどに強烈な魔力の波動。黄金のサーヴァントと、それに従う七人の猛者たちを見た。伝説にもほとんど語られない、人に限りなく厳しかった神代を、その特異点を生き抜いた猛者たちを見た。
「―――――ハッ、エアを抜かねば勝てぬとでも? 思い上がったな征服王! ウルクを守り抜いた我が配下、我が陣営を舐めるなよ! レオニダス一世!」
「ハッ! 行くぞッ、これが! スパルタだぁあああああッ!
スパルタの王が呼び寄せるは、伝説に語られる無双の三百人。
レオニダス一世の持つ、防衛戦などの不利な戦いであるほど力を発揮するスキル“殿の矜持”によりこれ以上なく強化されたスパルタは、遠目に見れば巨大な壁のように見えた。
「―――――鬼の小娘! 後で飴をやろう」
「―――――くははは、飴はともかくとして鬼の力を見せつけるのなら是非もあるまい!奪われた我が右腕は戻り、怪異となった! 羅生門大怨起!」
「掻き乱すが良い、風魔小太郎!」
「―――――承知!
ロケットパンチが陣形に風穴を開け、更にその周囲が暗闇で覆われ、現れるのは二百人の忍者たち。火が放たれ、燃え盛る前衛を突破するのは牛若丸を筆頭とした突撃部隊。
更に牛若丸は一直線にイスカンダル目掛けて突撃し。
それに続くのが弁慶と巴御前。
軍勢を率いることに、あるいは大軍との戦いや乱戦に特化したバビロニアの英雄たちがサーヴァントの連続召喚たる王の軍勢と真っ向から激突する。
一人一人の力は、正式な七人のサーヴァントを揃えた賢王の陣営が卓越している。しかし、その数。圧倒的なまでの数の暴力を誇る王の軍勢を相手にするにはまだ足りない。イスカンダルさえ倒せば戦いは終わるが、そうでなければ徐々に押しつぶされるだろう。そしてそれは互いの陣営が正しく理解していた。
イスカンダルを討たせはしないと、王の軍勢の中でも指折りの猛者たちが牛若丸たちを押しとどめ、多少の傷を負いつつもイスカンダルは倒れない。
そして、此処カルデアでは。彼にも軍師と呼ぶべき存在がいた。
諸葛孔明、彼の疑似サーヴァントとなったかつてのマスターにして臣下、ウェイバー・ベルベット。
「破ってみせるがいい――――――
気配遮断を無効化し、更に侵入者を惑わせる陣地が展開され、小太郎の召喚した忍びたちの動きが止められる。その間に王の軍勢は体勢を立て直し――――。
だが―――――だがしかし。原初の大地に呼ばれた者は彼ら戦士だけではない。
「王の話をするとしよう―――――星の内海、物見の
言うなればそれは、固有結界による固有結界の上書きのような現象。
石兵八陣を、王の軍勢の心象たる大砂漠を、最果ての楽園の花たちが埋め尽くしていく。それは、賢王たちに新たな活力と魔力を与え――――。
「我が声を聴け! 全砲門、解錠!」
「ヘブンズフィール、起動。
彼方に現れるのは古代ウルクの城塞都市。
そして、先触れとして放たれるのは天草四郎による全てを飲み込む暗黒。それにより石兵八陣諸共に王の軍勢の前線が遂に崩れ―――――。
「矢を構えよ、我が赦す! 至高の財を以って、ウルクの守りを見せるがいい! 大地を濡らすは我が決意!
それは、ウルク城塞からの遠距離砲撃。
ギルガメッシュと、彼が築き上げた都市―――――そして、神代を生きた、彼の英雄王が自らの民であると認めた、ウルクの民たちの総力が結集された砲撃である。
天草四郎が宝具を放つ時点より前、マーリンの花が王の軍勢の視界を奪い、かつ足元を覆って押しとどめた時点で賢王のサーヴァントたちは十分に相手から距離を取っていた。それ故の全力砲撃。近代のような、数の有利を真正面から粉砕するかのような重火力が投射され、王の軍勢のサーヴァントたちが一般兵のように吹き飛ばされていく。
それは、相手よりも数の少ない少数精鋭だからこそできる無茶な部隊運用であり――――如何にイスカンダルとその配下が強大であっても、序盤でその懐に引きずり込まれ、そして何よりも、その規模が大きすぎるが故に逃れられない砲撃だった。
しかし、その逆境。
その困難を乗り越えるからこその征服王。
最早被害は避けられぬと悟った征服王は、最善手を打った。
すなわち――――被害を顧みない突撃。
数の力が活かせるうちに、真正面から敵軍を粉砕する。もっとも単純にして強力な戦術。
数の暴力と、火力の暴力。互いに桁が違うが故にどちらが勝つとも言えないその戦い。
「―――――彼方にこそ栄えあり! 我に、続けぇいッ! AAAALaLaLaLaLaie!!」」
しかし、それは―――――戦として極めて正しい選択は、巻き込まれたゴルドルフにとって死地だった。
「うわぁああああああ――――っ!?」
砲撃が、直撃する――――。
咄嗟に目を瞑ったゴルドルフだが、気づけばもう戦いの喧騒は遠く。
「…………ま、また固有結界だと……?」
恐る恐る目を開けると――――そこにあったのは、どこかの森。
これまでとは打って変わって穏やかな心象風景に、その男は安堵した。
これならば、最早命の危険も、妙な空間に巻き込まれることもない。
「あら。アナタがお客さんかしら! いらっしゃい、アリスのお茶会へ!」
誰かが用意したのだろう。
お茶にケーキ、お菓子が沢山盛られたテーブルには、お茶会を楽しむ少女たち。とはいえ、誰が作ったのかなどどうでもいいのだろうが。
自分も参加しても良いのだろうか、というと少女は言った。
「アナタもワタシも、ここでは皆が平等なの。だから、何も気にしなくていいわ。
――――――そう、ワタシたちのティーパーティーを、終わらせようとさえしなければ」
そうか。
もしかすると、そういうことをしようとした人物がいたのかもしれない。それは、もしかすると―――――頭が鈍く、中身がなくなってしまったかのように何も考えられない。
そう、もう名前は必要ない。
全てが平等で、そして―――――そして。
お菓子を味わいながら、少しずつ消えていく。
劇場でコンサート→やだ、固有結界とそれに似て非なる(ry の使い手多すぎ…?
固有結界's「歓迎しよう、盛大にな!」
シェルター代わりに多数同時展開された固有結界のせいとこれまでの戦いのせいでカルデアが魔窟になっています。ひどいもんである。固有結界のたたき売りなのである。
なお賢王はわざわざサーヴァント7人に魔力を供給しているので、賢王含めて全員が弱体化している設定です。でもって地味に退去するのは嫌だとゴネた征服王の相手を割とノリノリでしています。