セイバー、
セイバー、
ライダー、
セイバー、
ランサー、
アーチャー、
アルターエゴ、
キャスター、
フォーリナー。
九人の料理人と、その使役する調理道具ないし食材は、審査員の胃袋を制するまで戦い続けなければならない…。
今また、聖杯を巡って熾烈な戦いが行われんとしていた――。
Take6
『―――――以上、44名。登録認証 オールクリア。』
『安全性審査:教会規定 特別免除により、全員のカルデア入館を許可します』
『正面ゲート 開放。 ようこそ、ゴルドルフ・ムジーク様。』
『並びに国連査問会の皆様。 当カルデアは 皆様の入館を 歓迎します』
「ほ――――う!
ほほ―――――う!」
「いい! いいではないか! こんな地の果ての工房に期待などしていなかったが、まさか、これほど近代的な施設だったとは!」
胴間声を静寂の中に響かせながら、ゴルドルフ・ムジークはカルデアを歩く。
寒い外から温かい場所へと移った安堵もあったのだろうか。後ろに40名の兵隊を従えて、さあこの場所を奪い取ってやろうと意気揚々と人影に近づき―――――気づく。
「ほう、そこにいるのが報告にあった――――」
『チキチキっ! サーヴァント大激突! カルデアお料理フェスティバルー!』
「………は?」
ぱんぱかぱーん。
妙にポップな音と共にクラッカーが鳴り響き、突然ライトアップされるカルデアスの近くに置かれた解説席。
『はーい、みなさんこんばんはー! 司会のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンですっ! 皆さん周回してるー? うーん、よきかなよきかな。――――うん、殺すわ。なんで私とシロウが出る前にストーリーが終わってるのかしら! むしろバーサーカーの霊衣でわたしを肩に乗せてもいいと思うの!』
『冬木のマーボーこと言峰綺礼です。いやあこれからの聖堂教会の言峰神父の活躍に期待したいですね。というか、魔法少女で出てませんでしたか?』
『あんな攻めが軟弱なのは私じゃないわ! というかなんで女の子同士でやってるのよ! シロウとしなさいよ、シロウとー! なんでシロウと
『えー、コホン。それでは企画の説明に入ります。今回、新所長を歓迎したいということで集まったサーヴァントの皆さんによる料理大会となっております』
『さぁーてぇ!……優勝者には、お土産としてこの黄金のカップをプレゼントー! 見事この黄金のカップを手にし、願いを叶えるのは誰かー!? なお、提供はスポンサーであるウルクの賢王、ギルガメッシュさんです』
『彼は食べたい料理だけ食べる権利が与えられております』
「フハハハハ! これならば我が料理を食べることに異存あるまい? さあセイバーよ、我に手料理を振る舞うがいい!」
『うわー、やる気十分みたいですねー』
『……えー、審査はあくまでも新所長が行います。では新所長、一言お願いします』
言峰神父が言うと、いつの間にか一緒に来たはずの兵士が黄金の波紋に飲み込まれて消えて一人になったゴルドルフがライトアップされる。
「………は? いや、は? 料理フェスティバル…? というかあれは聖杯では…?」
『そのとおりー! さすがは新所長、目の付け所がフラットですねー!』
『それ褒めてないよね。ではエントリーサーヴァントを紹介しましょう。なお、参加者も他の人の料理を食べることができます』
『エントリーナンバー一番! アルトリア・ペンドラゴン!』
「――――正々堂々と、食べ尽します」
『もう食べる気満々ですねー! 料理もできないヤツにシロウは渡さないわよー!』
「――――舐めないでもらおうか。伊達にシロウの料理を味わい続けたわけではない!」
『それ自慢していいのかな? 直感スキルは攻防に便利なスキルだそうですが、料理ではどうなのか気になりますね』
『エントリーナンバーニ番! ネロ・クラウディウス!』
「―――――聖杯を取って、余は奏者と添い遂げる! 邪魔する者は蹴散らすぞぉ!」
『彼女は好きなスキルを取得できる皇帝特権を所持してまーす』
『料理に使えるスキルとかあるんですかねぇ……』
『エントリーナンバー三番! 征服王イスカンダル!』
「―――彼方にこそ栄えあり! 料理だろうがなんだろうが、全て征服してくれるわ!」
『料…理……?』
『さて、彼は分裂するアサシンをゴミ掃除のように片付ける実力者ですが料理の腕も気になりますね』
『エントリーナンバー四番! 新撰組、沖田総司!』
「いぇーい! ノッブ見てるー? この戦いに勝って、たくあんだけのひもじい生活とはオサラバですよ!――――カフッ」
『ちなみに、気管から出血するのが喀血で食道から出るのが吐血なので、結核を患っていたとされるオキタの場合は吐血じゃなくて喀血っていうのが正しいらしいでーす』
『正直どっちでも良いですが、ご覧の通り病弱スキル持ちです』
『エントリーナンバー五番! エリザベート・バートリー!』
「アイドルの手料理――――見せてあげる!」
『アイ…ドル?』
『さて、彼女の料理は金星料理とも言われているそうですが』
「ふざけんなー! 金星への風評被害だわ!」
『イシュタルさんから抗議が届いてまーす』
『というわけでエントリーナンバー六番、飛び入り参加のイシュタルさんです』
「―――――金星の女神の料理、見せてあげるわ!」
『どう見てもリンじゃない。これは中華ね』
『麻婆が食べたいですね』
『エントリーナンバー七番、殺生院キアラさんです』
「―――――ふふふ。料理ですか……殿方に喜ばれると聞きますね」
『うっわー。教育に悪そう……シロウなら平気だと思うけど、会わせない方が良さそうねー』
『ボブみたいな髪型になりそうですからね』
『シロウはそんな変な髪型になんてしないもんねー!』
『おっと、心は硝子らしいですよ』
『エントリーナンバー八番、メディアリリィさん!』
「少しでも美味しくいただいてもらえるよう、頑張りますね!」
『これがなんであんな感じになるんでしょうか! わたしには全くわかりません!』
『月日は残酷ですね』
『エントリーナンバー九番、アビゲイル・ウィリアムズ!』
「――――ふわっふわのパンケーキに、とろっとろのバター! カリッカリに焼いたベーコンを乗せると堪らないわ!」
『………えーと、意図せず禁忌の衝動を引き寄せる魔女裁判スキルと、人間の脆い常識と道徳心をたやすく崩壊させる正気喪失スキルを持っているらしいでーす』
『コメントとスキルの乖離が酷いですね』
これにて、全ての参加者が揃った――――――さあ、聖杯戦争を始めよう。
『調理、スタート!』
「米よ――――舞い上がれ!」
「魚鱗よ、落ちよ! ロサ・イクトゥス――――!」
「――――遠征は終わらぬ。彼方への野心ある限り! 麺を茹でよ!
「「「然り!然り!然り!」」」
「此処に、旗を立てる―――――さあ、今こそ出番ですよ新撰組!」
「腹減ったのう、総司」
「さっさと立て、今立て、切れ、ただ切れ。みじん切りだ」
「「「―――――此処が、新撰組だ!」」」
『なんか凄い宝具使ってるんですけどー』
『あれはズルいですね。まあ今回は妨害とかしなければ特にルールとかないけど』
「ふふん、そんなの私自ら〆たスッポンと馬の肉、あとワイバーンの肉に敵うものですか! そう、料理は愛情なの!」
『エリザベート選手、何で勝負するつもりなんでしょうか』
『ワイバーンは、できれば食べたくないですね』
「――――ふーん、意外とマトモな調味料を揃えてるじゃない」
『………イシュタル選手、やっぱり中華ですねー』
『泰山の店主に頼んで少し分けてもらいました』
「うふふふ、こんなはしたない姿を見られるなんて……熱くなってしまいそうです」
『………モザイクかけときましょう』
『えー、殺生院キアラ選手、ちょっとグロテスクな素材を使っているので自主規制です』
「小さくなぁーれ、小さくなぁーれ…… ボウルで跳ねる小麦粉みたいに小さくなぁーれ……ぺったん、ぺったん、メイプルぺったん…… スプーンひとさじ、苺みたいに小さくなぁーれ……」
『………つ、次行きましょーう!』
『メディアリリィ選手は材料がよくわかりませんね』
「ふんふふんふふーん♪」
『おっと、アビゲイル選手。生地を作っています。やはりパンケーキなんでしょうか』
『同じパンケーキでも随分違いますね』
そうして、特に大きなハプニングもなく料理は進み――――。
遂にその時は訪れた。
『さて、ではまずセイバー! 青いほうー! 料理をどうぞー』
「―――――いいでしょう。これがシロウに教わった炊き込みご飯です」
現れたのは、ごく普通の和風の茶碗に入れられた普通に美味しそうな炊き込みご飯。季節のキノコとか、お肉とか人参とかをバランス良く入れた衛宮家のレパートリーの一つである。
『では新所長、食べて感想をどうぞ』
「う、うむ……………まあ、普通だな」
「――――くっ、シロウの料理には届かないというのか…!?」
『シロウより料理が上手くなってから出直してねー!』
「ええい、文句があるのならば寄越せ! 我が全て食べる!」
「……大釜一つ分ありますが」
「何……だと!? い、いや! この英雄王に二言はない! この純金延べ棒を好きなだけ持っていくがいい、セイバー! それを以ってその炊き込みご飯は我のものとする!」
「こ、これだけあればシロウに高級食材を好きなだけ買ってもらえる…!」
『それでいいのか英雄王。では次の方』
「ふっふっふ! 見るが良い、これこそが余の築き上げた至高の芸術! 奏者の顔だ!」
ででーん、と出てきたのは魚の切り身盛り合わせで無駄にリアルかつイケメンに表現された、彼女のマスターの顔であった。
『もしかして、陣地作成スキルでしょうかー』
「うむ、うむ! ――――ああっ、待て、待つのだ! そこを取ってしまったら奏者の髪型が崩れてしまうではないか!」
『おっと。これは食べられませんね』
「む、むむむぅ。ならばそこ、その端っこの髪の毛の部分を取るが良い! ああっ、それではないぞ馬鹿者め! その一つ下だ!」
「………凄く、味わいにくいのだが」
涙目で見てくるネロに気圧されるゴルドルフ。さもありなん。
『では、次の方―。征服王さん』
「―――――食事は終わらぬ、我らの胸に彼方への野心ある限り! これこそが余と、余の臣下たちが築き上げた最強料理―――
そこには―――――広大な砂漠と、そこに広がる無数の鍋料理があった――――!
『これはすさまじい攻撃です! 砂漠で鍋料理! しかも有り得ない量です!』
『いつの間にか攻撃になってますね。では新所長、どうぞ』
「どうぞって……は? まさか、全部食べろとでも?」
「―――――フハハハハ、流石の余でもそこまでの無体は言わぬとも! 茶碗一杯で構わぬ。そら、何も言わずに味わってみるがいい」
「…………ほう、これはなかなか」
「よし、では次だ」
「……ほうほう、これもなかなかどうして」
「うむうむ、ではこれだ」
「……………ほ、ほう」
「これもなかなか良いぞー、余も心が踊った!」
「………………」
「コイツはなんとな、東方への大遠征で見かけた料理なんだが―――」
「………………………ま、待て、茶碗一杯では…?」
「何を言う。“全ての料理を”茶碗一杯だ、何もおかしなことはあるまい?」
「「「「「然り! 然り! 然り!」」」」」
槍を突き上げ、大声で賛同する数と雰囲気の暴力にゴルドルフは負けた。
彼は泣きながら途中で何度かトイレに行きつつも全ての料理を食べた。
『激しい攻撃でしたねー。では次ー、オキタさん!』
「ふっ、沢山食べて喜ぶなどというお腹に優しくない文化は日本にはありませんとも! むしろ計算通り! 今こそ新撰組特製七草粥の出番です!」
「―――――たくあんだ」
トン、と土方さんにより机に置かれたのはたくあんが盛られた皿。
先程まで皆で作っていた七草粥はどこにもない。そして目をそらす新撰組の面々。
「えっ。あの、まさか………食べ……」
「たくあんだ」
「ちょっ、バーサーカーな土方さんはいいですから! なんで皆さん目を逸らすんです!? なんでたくあんになってるんですか!?」
「何ィ――――沖田ァ、お前たくあんに文句があるのか?」
「うわああん、ありませんよぅ!」
しかし、意外や意外。ボリボリとたくあんを齧ったゴルドルフ新所長には意外と好評だった。
「………鍋よりは、良い」
『さて次、エリザベート・バートリー選手!』
「私はかつて学んだの……料理は、沢山作りすぎると食べきるのが難しいって! なので全てを詰め込んだスープを作ったわ!」
それは、赤い――――ただひたすらに赤い。
何を使ったらこうなるのか、よく分からないレベルで赤い。これでどうしてそんな自信が湧いてくるのか疑問に思いつつ、ゴルドルフは一口食べ――――。
「―――――ァアアアアアアアアッ!? ひ、酷いッ! なんだこの味はァァっ?! ぬぐおおおお、ひ、一口食べる度に味蕾が死んでいくかのようだ……!」
『おっとーここで大きなリアクションです!』
『未来が死んでいくとかけているんでしょうか。英雄王並みのギャグセンスですね』
「食えるかこんなもの!?」
『おっと、ところであれは何でしょうかー』
『全自動完食式オープンロックですね。全て食べなければカルデアには入れません』
「はぁ!? な、なら他の参加者は――――」
「では、私はシロウと買い物に出かけます。イリヤスフィール、今晩のおかずは期待していて下さい。イリヤスフィールの好物を頼んでおきます」
『行ってよーし!』
「余は奏者のところに帰るぞ! 開け、黄金の劇場よ!」
「
「一步音越え、二歩無間、三歩絶刀――――!」
宝具まで使って逃げ出す面々に涙目のエリザベートだが、それはそれとしてこの料理が酷い。色々と酷い。ワイバーン以外にも混沌の爪とかの魔獣の素材がけっこう入っているのである。ゴルドルフがサーヴァントだったら霊基再臨していたかもしれない。でも食べきったが、最後は意識が無かったので神父が押し込んだ。
『さて、お次はイシュタル選手! これは麻婆です! やっぱり中華です!』
『本当に麻婆とは驚きですね』
「ちょっ、アンタたちが言うから作ってあげたんでしょ!? なんでそんな反応されなきゃいけないのよ!?」
『『えー』』
「くぅっ、なんか凄く腹立つ……っ!」
「…………」
『おっと、ゴルドルフ選手限界が近いのか無言です!』
『では、次ですね』
トン、とキアラが机に置いたお皿には黒いウネウネしたものが。
「――――――はい。ふふふ、これは私の一部のようなもので……その、とても恥ずかしいのですが。ゼパ、ゼパ……なんでしたっけ?」
『ゼパなんとかさんだー! これは酷い!』
『料理ですらないですね。まあ食べないと出られないんですが』
「…………」
『おおっと、ゴルドルフ新所長、果敢に口の中へ入れていくー!』
『無言ですし、眼が死んでますが、いいガッツですね。さて、残り二人も巻きでいきましょう』
「はい、パンケーキです! 名前は……ハーゲンティさんです!」
カタン、と机に置かれたのはメディアリリィのピンクのパンケーキ。
…………これならマトモだと思ったのか、何も知らずに食べるゴルドルフ新所長。
しかし、減らない。
食べても食べてもなくならない。
おかしいと思ったのか、周囲を見渡すゴルドルフにメディアリリィが近づいて言った。
「それ、無限のパンケーキですから。――――食べ終わるときは、こうして、こうやって下さいね。それ、えいっ!」
「や、やめ―――――む、むごごごごごっ!?」
『……うわぁ』
『…………大丈夫なんでしょう、あれは』
口の中に一枚丸ごと押し込まれたゴルドルフだが、メディアの魔術なのかあるいは単なる力技か、ゴルドルフの腹が膨らんだ代わりに無限のパンケーキは口の中に消えた。
『さて、いよいよ最後です!』
『これを食べれば終了、すぐに審査と結果発表ですね』
『では最後の方、どうぞー!』
「いいわ……。――――わたしが作ったのは、タコ焼きよ」
というわけでアビゲイルが持ってきたのはタコ焼き。
最早魔神柱?とかいう謎の物体まで食わされたゴルドルフに怖いものなどなく、果敢に口の中に放り込み―――――。
「………こ、れは………」
不意に、ゴルドルフは先程のパンケーキを食べてから苦しくて仕方がなかった胃の痛みが軽くなるのを感じた。一つ、二つ、三つ、食べる度に胃が軽くなり、その分だけ気分も回復してくる。
「ほう、ほう、ほーう! こ、これは素晴らしい…!」
『ど、どういうことなんでしょうか! 新所長が元気になっていきます!』
『まるで意味が分かりませんね』
泣いた。ゴルドルフは泣いた。
あんなに痛めつけられたお腹がもう痛くなかったから。まるで胃袋が無くなったかのように痛みがない。
痛みがない、それだけのことがこんなにも素晴らしい。
「優勝はこのタコ焼きだ――――!」
『おーっと番狂わせ! タコ焼きは料理だったのでしょうか!?』
『魔神柱よりはマシなんじゃないでしょうか』
「………やれやれ。見るに耐えぬ哀れな道化よ……げふっ」
『ではそこで炊き込みご飯に溺れてる英雄王、賞品の授与を』
「では、願いを言うが良い―――――聖杯一個分の範囲でな! 具体的にはレベルは最大で2までしか上がらん!」
「……? わたしが優勝なの? やったぁ! それじゃあ、えっと、マスターさんと一緒に、世界でいっちばん美味しいパンケーキを食べたいわ!」
「ふむ、造作もない事よ―――では、賞品はウルクパンケーキツアーペア旅行券とする! ウルクの大杯よ、我の行きつけのあの店を予約するがいい!」
『そこ、チョイスは英雄王なのね。というかウルクにパンケーキ…?』
『まあ、一応美食家ではあるな』
そうして、聖杯戦争?は平和裏に幕を閉じた―――――。
――――――ぐちゃり。
そして、その夜。
ゴルドルフは、どこかでなにかがのたうっているような音を聞いた。
―――――――ぐちゃり。ぐちゃり。
「ええい、眠れないではないか………何故誰も止めんのだ!」
その音はうるさいほどで、たまらずベッドから起き上がるゴルドルフだが音の出処がよく分からない。ベッドの下かとも思うが、何もない。
電気を点けてみるが、部屋の中に不審な様子はない。
やはり部屋の外からかと思い廊下に出るが、こんなにも音が響いているのに誰も廊下に出てきてはいなかった。
――――――――――ぐちゃり。ぐちゃり。ぐちゃり。
「………? ええい、どうなっている!? 一体どこから――――」
廊下を進んでも、進んでも、音は小さくなるわけでも大きくなるわけでもない。
ただ、うるさいほどに響いていた。
そして、トイレに辿り着いたゴルドルフは、
なんとなく用を足して、手を洗おうと鏡の前に立ち――――――。
「―――――は」
黄色い眼が、こちらを見ていた。
ゴルドルフの、からっぽになった腹の中から。
でっぷりとしていた腹部は、がらんどうになり。ただ不気味な黄色い目と、灰色の触手だけがそこにあった――――。
「は、はははははははは―――――」
『ねぇ―――――お腹いっぱいになったら、満足したかしら? 欲張りな、新しい、所長さん?』
――――――ぐちゃり。
湿った音が響いて、止まった。
胃袋を、制する(物理)
作風が迷子というか、ネタが尽きたのでちょっと修行してきます…。