ゼロの使い魔導書   作:すぴんど

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遅くなりまして

誤字脱字の修正ありがとうございます。

相変わらずヴィータちゃん動かしやすすぎ問題。そしてやっぱり時の流れが遅い…。


第11話 時には休みも大切

虚無の曜日、それは学生たちにとっては待ちに待った週に一度の休日である。

 

羽目を外して思う存分はしゃいだり、自身を高める鍛練や勉学に時間を費やしたり、首都に出てショッピングをしたりと、理由は各々様々だが生徒たちには、授業のある普段のスケジュールから解放された行動がとれる日なのだ。

 

「えーと、街に行きたいのは誰かしら…ってかキュルケ、なんであんたまで……。」

 

「あら、タバサとの仲の良い私がここに居るのは、当然の事でしょう?」

 

そんな多くの生徒達同様、ルイズもタバサとの虚無の曜日の約束を城下町でお茶でも飲みながら…と、思っていたらキュルケがついて来ようとしていた。興味をもったものに何かと首を突っ込むことの多い彼女がそうなるのは、ある意味当然といえば当然のことだった。

 

「ちなみにあたしはタバサのシルフィードにのせてもらうからね。あっちは多分あと3人くらいが限界よ。」

 

「手や口でいいのなら…もう少し。」

 

流石にそれはどうなのよ? そう思ったルイズは少し考えてると、どうせ最初から最後まで一緒というわけでもないだろうとシグナムが提案したところで、シルフィードにタバサ、キュルケ、ルイズ、はやて、ヴィータが背に、車椅子の代わり兼護衛としてザフィーラが手に捕まれて先に行くことになった。

 

少し重量的にきつそうなのか、タバサの使い魔の風竜が文句をギャアギャアと叫んでいたようだが、帰りに大きな肉をひとつお土産にすると約束、さらにそれをキュルケが好みの具合に焼いてくれるとされて、あっという間におとなしくなった。

 

風竜の癖に生肉じゃなくて焼いたお肉のが良いなんて…ルイズが珍妙なものを見る目をしていたが、それを気に留める者はいなかった。

 

そして、シグナムとシャマル、リインフォースは馬で首都トリスタニアへと向かうようにして、お昼頃に合流しようという話となった。

 

着いていく程度の速度で恐らく飛べるがどうする? と、シグナムが念話でルイズに打診したが、首をブンブンと横に振って却下された。

 

ルイズとしてはこれ以上ヴォルケンリッター達を目立たせたくなかったのもあるし、高速で首都上空へ見慣れない格好をした人間が現れて、しかも杖を持たずに飛んできたとあれば最悪警備隊が現れたり、王宮に彼女達の説明を求められるかもしれない。そういったあらゆる面を考慮しての否定なのだ。

 

広く物を見る目や周りを考えての対応は、今の突然の首振りといいまだまだだが、どうやら目の前のことを考えてみる力はしっかりあるようだと、この反応をみてシグナムのルイズに対する評価が上がった。彼女は主の主を試したようで、どうやら未だに人格者としても主はやて>ルイズとみなしているらしい。

 

そんなことにまでは気づいていないルイズだったが、彼女自身、今日のお茶会や首都での交流をもってヴォルケンリッターの面々と、より仲良くなりたいという計画があった。

 

こっそりはやてに相談して、何をしたらいいのか聞いた彼女は既に本日のプランがぎっしり頭に詰まっている。

 

ルイズ自身、守護騎士システムという意図しなかったものとはいえ、闇の書を通して魂が繋がっているはやてよりも、ヴォルケンリッターが自分を大切に思うことは無いだろうというのをどこか自覚している。だがそのままでいいと思える彼女でもないし、上になれないのならせめて横に並びたいと考えてしまうのがルイズである。それは、使い魔より下のままなどというのは、自身のプライドが許せない…というのもあるのだが、厳密にはそれだけではなかった。

 

ルイズは今はやてを妹の様にかわいがっている。そんな彼女が作る家族の様な輪に、自分も入りたいという寂しさが本心にはあることに、彼女は気づいていなかった。今もこうしてシルフィードに乗る時に、『浮遊』で浮かされたはやての手を取ってひっぱり、落ちないようにぎゅっと抱きしめているというのに、基本的に素直じゃない彼女は自分の行動が自覚できない。更にヴィータが少しムスッとして見ていることにも、気づけていない。

 

「ほわー…はやいなぁこの子は。」

 

「はやて、大丈夫? 寒くないかしら?」

 

初めての風竜に乗っての飛行に感嘆の声を漏らしているはやてを、寒くないかと気遣って自分のマントを外して彼女にかけるルイズ。使い魔とはいえ貴族のマントを外して平民にかけるなど、やはり普段のルイズからは考えられないのだが、無自覚とは怖いものである。

 

「今日はハヤテの服もちゃんとしたのを買わないといけないわね。」

 

はやては現在一張羅、しかも入院用の服である。空調設備の効いた病院内ならともかく、エアコンどころか電気ストーブすらないこのハルケギニアで過ごすにはかなり無理のある格好である。そんなわけで、ルイズとしてはトリスタニアへと着いてから一番にしたいことは、まずはやてやヴォルケンリッターに予備の服を買ってあげることだった。

 

「…はやてばっかじゃなくて、あたしらの分も忘れんなよ。」

 

「わ、解ってるわよ! 当たり前でしょ!! 私はあんたたちのご主人様なんだからね!!」

 

大切なはやての世話や手助けを取られて少々機嫌の悪いヴィータが、揚げ足を取り。ルイズがそれに反論する。なんとなくだが似た者同士な二人であると察しているはやては、そんなふたりをみてこっそりと、くすくす笑っているのだった。

 

そんなこんなしている内にトリスタニアに着いて、早速問題が起きた。ザフィーラの上にまたがるはやてが注目の的になってしまっているのだ。大きな狼が街中に居るのだから無理もないことなのだが、普段色々な使い魔と過ごしている魔法学院の生徒たち3人はうっかりそのことに気づかないままに街へと入ってしまったのだ。

 

最初はルイズとはやてはザフィーラを変身させて、帽子でも被らせてはやてを抱えさせようかとも思ったが、大きな尻尾はどうにもならない為に仕方なくそのままとなった。

 

「あはは…まぁ目立ってるうちは変な人も寄りつかんやろし、これはこれでええんちゃうか?」

 

「まあ、そうだけどね…これならスリも来ないと思うし、そうだはやて…あなたが財布を持っていてくれるかしら?」

 

そう言ってルイズが手渡そうとした瞬間、金貨の入った袋が宙へ浮いて人ごみに消えていく。目立っているからこそ、どうやらメイジのスリに隙を窺われていた様である。羽振りの良さそうな貴族3人、多少のリスクはあれど狙う価値があったのだろう。

 

「…っ! ザフィーラ!!」

 

いち早くはやてが察し、そう言われたザフィーラが駆けた。大急ぎで屋根へと昇り、人ごみから裏路地へ逃げたスリへ向かって白い魔法陣を展開して叫ぶ。

 

「囲え…(はがね)(くびき)!!」

 

スリの周りを光の柱が囲い、逃げ道が塞がれる。狭い路地に逃げ込んだために却って隙間なく壁に囲われ、完全に逃げ道を失った。

 

メイジのスリは、その光の壁に魔法を打ち込んでみるがびくともしない。仕方なく、空を飛ぶ魔法の『飛翔(フライ)』で上空へと逃亡を試みたが、はやて達はすでに更に先の手を打っている。

 

「ヴィータ!」

 

「うおりゃあぁあーーーっ!!」

 

唯一の逃げ道だった空から、鉄槌を振りかざした少女が降ってくる。あわれ、盗賊は囲いの中に骨を折られながら叩き戻されて意識を失った。

非殺傷設定にし忘れたヴィータがはやてからげんこつを貰った。

 

仕方ないのでそのままザフィーラに引きずる感じに咥えさせて詰め所まで行き、賞金と感謝状を貰ってめでたしめでたし…などと行くわけもなかった。

 

スリが路地に逃げてくれたお陰で注目こそ深く浴びなかったが、それをみていた二名は別である。

 

「びっくりした…あなた、使い魔じゃないのよね? なのに喋れて、魔法まで使えるなんて……。」

 

「…午後に聞きたいことが増えた。」

 

ザフィーラ達は、詰め所を出てから延々と赤と青のコンビの質問攻めにあっている。

 

彼女達の興味をものすごく刺激してしまったようだ。

 

そんななか、昨日は仰がなくてすんだ天を仰ぐ桃色の少女。

 

「どうしてこうなるのよ…。」

 

「昨日の授業といい、どうして上げて落とすようなことがこう起きるの…?」

 

ルイズは先程シグナム達を思いやって、目立たないようにとしたばかりだ。だというのに、自分が発端でこんな目立つことになってしまい頭を抱えている。

 

まるで、昨日教室で株をあげた後に爆発させたのと同じではないかと、ルイズは始祖に申し訳ないと思いつつも、ままならない世界を呪っていた。

 

「なんか不貞腐れてるみてーだけど…今日のはルイズがあんなとこで金の塊みてーなもの出すからだよ。もう少しこっそり渡せよな。」

 

ぐさり。後ろを歩くヴィータの正論が心に刺さる。

 

「う、うるさいうるさいうるさい! 仕方ないじゃない…こんな真っ昼間の往来で、こっそりじゃなく大胆になんて思いもしなかったのよ!!」

 

刺さった針で感情のタガが外れたルイズは思わず叫びをあげたが、ヴィータはこんなことで怯むような子でもないし、それを宥めたりしてくれるはやての様に優しい相手でもなかった。

 

「んだよ、警戒心が足りねえなぁもう。そんなんじゃはやての主人になんて認めらんねーぞ。」

 

「な、なんですってぇ!?」

 

容赦なく追い討ちで傷口に塩を塗るヴィータ。

 

「へっ、悔しかったら言われる前に気づけってんだ。」

 

べーっ! と、舌を出してヴィータが逃げ、ルイズがそれを追いかける形で、ふたりは噴水広場をぐるぐると回っていた。

 

ぱっと見市民の目には平民の子供がいたずらをして、それを魔法を使うのも忘れるほどムキになって本気で追いかけ回す貴族の学生の図である。貴族を恐れがちな平民たちにとってはあまり和やかともいえない光景なのだが、対象の二人が幼かったり、怒っても可愛く本気で怒っていないように見えてるせいか、彼女たちの周りには円ができて笑いがこぼれていた。ルイズはもちろんかなり真剣に怒っている。

 

「やれやれ…目立つなという話だろうに。」

 

「仕方ないわよシグナム。いくら警戒心を持っていて欲しいとはいっても、常にピリピリしてもらうなんてことは出来ないし、ね?」

 

そんな賑やかな場所と化してしまったトリスタニアの噴水の広場。念話を使うまでもなく、後から着いたシグナム達はあっさりと彼女達を見つけて遠巻きからこうして眺めている。

 

「私とてそこまでは望んでいない。しかし、しでかしてしまってからでは取り返しのつかないこともある。だから常に考えて動くことを主の主には学んでほしいのだ。」

 

「それならきっと大丈夫よ。今回はこんなことになっちゃったけれど、ルイズ様は頭のいい子だし、反省したことはきっと次に活かしてくれるわ。」

 

シグナムがシャマルを見る。そう言ったシャマルがルイズを見る瞳は、信ずるに足るものの様だ。その瞳をしたシャマルを見て満足したのか、彼女は再び視線を噴水の広場へと戻した。

 

「それにしてもヴィータもヴィータだ。まったく、普段から闘っている時の様に頭を働かせていればこんなことなどせんだろうに。経験浅い主の主はともかく、これでは鉄槌の騎士の名が泣くぞ。」

 

今度は自身の仲間の行動の軽さへイライラが飛ぶシグナム。ヴィータにバカがつくほど生真面目と言われている彼女のストイックな性格では、こう考えるのも無理もない。

 

「どうしてあいつは主の主に反省していただくだけでなく、わざわざからかって火を点けるのだ。」

 

「……きっと、ヴィータもはしゃぎたいのだろう。」

 

そんなシグナムには理解できないヴィータの行動の答えを、優しさ溢れる笑顔でそう言ったのはリインフォース。

 

「ここは、地球ほどではないが平和だ。私達の生まれた世界とよく似た場所で…こんなにも澄んだ空が見えていて、青く広がっている。何か心に来るものがあるのだろう、あの子はよく一人で雲間から覗く空を見ていたからな。」

 

「…そうね、本当に空がきれい。……あの世界から戦乱が無くなった様なこの場所で、闇の書の呪いが止まったはやてちゃんと、こうしてみんなで一緒に過ごして居られる。ある意味私たちの望んだもの全てが在るようなものだもの。ヴィータちゃんがはしゃぎたいのも解るわ。」

 

隠そうとしてあんな態度なのかもしれないけれど、と笑いながらふたりを見るシャマル。

 

「ならばこそ…それを無くさない為にも、しっかりと戒めねばならんだろう? 享受して甘えているだけでは、いずれほころびが生じて壊れるぞ。」

 

厳しい言葉を言うシグナムにも、いつの間にかうっすらと笑みが浮かんでいる。

 

「それは…そうだな、全くだ。将…いや、シグナムよ、今回はちゃんと叱ってやってくれ。」

 

「そうだな。任せておけ、リインフォース。」

 

3人は笑顔のままルイズたちと、青い空を見上げていた。

 

 

 

三人が合流して、ヴィータが表面上は軽く、念話ではかなりきつめに叱られた後、合流後の予定通り、まずは服屋へと向かうこととなった。

 

ルイズ御用達の服屋にて衣服を揃えることになったのだが、問題が発生した。

 

「困ったわ、これがないとちょっと…女の子としては。」

 

顔がくもったシャマルが更衣室で頭を抱えている。

 

この世界にはブラジャーという概念がどうも存在していないようなのだ。

 

「正直私としてはそこまで気にすることではないのだが」

 

「だめよ! シグナムは確かに私よりは平気かもしれないけど、何倍も激しく動くじゃない!!」

 

服どころか下着にすら無頓着になりそうなシグナムをシャマルが止める。

 

「つけてないとそのうち垂れちゃうわよ! もう!!」

 

「どうしたの? ってあら…なによこれ。」

 

キュルケが騒ぎ声を聞いてなにごとかと、更衣室に平然と入ってきた。

 

同性とはいえ流石にいかがなものかとルイズは止めようとしたが、キュルケはあっという間にカーテンの奥まで行ってしまった。そんなこんなで開いて止める訳にもいかなくなり、いきつけの店で大きな騒ぎを起こすわけにもいかず、ルイズは彼女を止めることはできなくなってしまって現在更衣室の外からふくれっ面でこちらをにらんでいる。

 

「へー…こんなのあるのねぇ、あら結構お洒落じゃない。ねえ? ミス・シャマル、これっていったい何のためにつけてるものなの? 胸につけるものみたいだけど、鎧じゃないし。なんか垂れるとか言ってたし、よろしければ教えていただけないかしら?」

 

ヴィータにおっぱい魔神と言われたシグナムと同じか少し大きいくらいの、同じような形をした胸部装甲を持っているキュルケ。

 

そんな彼女としては、シャマルたちがつけていたブラはまさに未知の物体であると同時に、魔法と同じくらいに興味の対象へとなった。女の子としては、『垂れる』というキーワードを聞いてはやはり黙っていられないのだろう。

 

「私たちに敬称はいらないわよキュルケちゃん。ええっと…そうね、最近だと小さい時はそんなに意味はないなんて言われてるんだけど…キュルケちゃんやシグナム、それとわたしくらいの大きさになるとね、その…ほら? 重いじゃないの、胸。」

 

ちょっと自分のことも含むのが照れくさいのか、後半少し照れながらハルケギニア人にブラジャーの説明を始めるシャマル。

 

「それでね…胸筋辺りと胸を繋いでる部分のお肉ってね、一度痛むと治らないの。だからこういう下着をつかって、胸が生活のなかで揺れるのを抑えたり、負担を肩や首にも分散させてあげるのよ。」

 

半分嘘である。というのも、成長の概念の無いヴォルケンリッター達が垂れるかはわからないのだ。

 

その理由はというと、これまでは月日が少し経てば闇の書が暴走、転生をしていからだ。その都度ある程度リセットがかけられた守護騎士システムによって、次の所有者が覚醒時に肉体をシャマルたちは再構成していたから解らないのである。

 

とはいえ、人の形をしている以上リセットがなければどうなるかは解らない。最悪再構成すればどうにもなるかもしれないが、はやてがそれを許してくれるだろうか。物みたいに扱うみたいで嫌やと彼女は言うかもしれないし、何よりこんな理由で、そんなことをして良いのかという話である。四肢が欠けたというのならともかく。

 

話を聞いたキュルケはなるほどといった顔をした後に真剣になにかを考え始め、しばらく熟考したのち、彼女は口を開いた。

 

「これ、うちに作らせてもらえないかしら?」

 

「何…?」

 

彼女から出た言葉はブラジャーの生産の申し出。突然の協力にどう返したらいいかわからずにシャマルとシグナムが困っていると、彼女は微笑んで話し始めた。しかし、その薄い笑みの眼には何か光るものが宿っている。

 

「ふふ。主人にお金をかけて特注してもらうのは気が進まないでしょう? それになんかいいお金になりそうだし…何より、私も欲しいのよこれ。」

 

そういって自分の胸を腕を組んで強調して、どこか艶美なポーズをとるキュルケ。

 

「ネグリジェやベビードールにもない…シャツ越しにもちらちら見える。そんな大きな胸の人だからこそ出せる魅力とおしゃれの楽しさが、そこにある気があるのよ。」

 

なんだかんだいっても、大人びていても女の子。行きつく先はどうやらおしゃれの様だ。

 

「基本的にはできた試作品を毎回私の分と合わせて2~3つずつ送ってもらう形でどう? これなら足りなくなって困るなんてことも早々ないでしょ?」

 

「…何の話してんのよあんたたち。ちょっと一回出てきなさい!」

 

商談は外から突然聞こえた桃色の髪の主人に止められたが、着替え直して出てきたシャマルがブラジャーの重要性と必要性、それを作ってもらおうとしていたという話を始めた。

 

彼女としては、シグナム達以上に垂れる可能性が高いといわれている、ハリの強さよりも柔らかさの魅力が強い胸をしているため、それはそれは饒舌に、必死に話した。

 

「それはあかん…シャマルやシグナムの胸が垂れるなんて…私、嫌や。もちろんリインフォースも。」

 

外にザフィーラがいるせいで、シグナムかシャマル、リインフォースが居ないと身動きが出来なくなり、近くのテーブルに座っていたはやてが地を這って抗議を入れに来ている。胸の事のせいか、すさまじい執念だ。

 

「だー…なにやってんだはやて。リインフォースも何やってんだよ?」

 

ヴィータがはやてを半端に抱えあげて、ぱんぱんと軽くほこりを叩いてからきょろきょろと見回すと、リインフォースがはやての居たテーブルの辺りでおろおろ、うろうろとしている。しばらくしてこちらに気が付くと、慌ててこちらへ来てはやてを抱き上げた。

 

…まさか這い始めたときは胸で死角になってた、とかじゃねえだろうな? そうヴィータはシグナムやキュルケよりは柔らかさがありそうなものの、やはり前方への出張の激しいリインフォースの胸をみて、ちょっと無茶苦茶な推理で原因を探してみた。

 

「でも…ツェルプストー家の施しを受けるなんて……。」

 

国境を挟んで犬猿の仲、そんな相手からの品物を献上されるなど…と爪をがじがじと噛みながらミス・ヴァリエールが苦しい顔をしている。

 

「ならヴァリエール家が作る? 言っとくけどこの下着、すごい出来よ? 採算の分からないものを貴方のとこの人たちが作ってくれるかしら?」

 

「…むむむむ。」

 

ルイズは考える。これがキュルケだけなら勝手に垂れてればいいのよ! と、コンプレックスを爆発させてつっぱねて終われる些事なのだが、シグナムやシャマルが関わるとなると話は別だ。

 

別に彼女たちだけで、垂れていってしまうとしても本来はそこまで大きな問題ではない。大枚をはたいてそこまで施しをする必要もないからである。しかし、彼女たちは闘う騎士なのだ。

 

はやてへの思いを考えれば、彼女たちが垂れたり筋(?)が傷つくのを嫌って動かなかったりはしないと思うが、その痛みが原因で命取りになったら目も当てられない。戦のある世界から疎い人たちが聞くと、ブラジャーひとつでここまで大事になるのは…とてつもなくバカみたいな話に聞こえるが彼女たちには真剣な問題である。

 

しかし、家にどう説明しても自分の母親が戦場をかけていた事を考えると聞き入れてもらえそうにない。帯でも巻いて固めておけと言われるだろう。…もともとそんなに母は気にするほどないので余計に理解してもらえなさそうだ。

 

頭のまわるルイズは考えを戦闘と、お洒落といった理由から切り離してさらに考えてみる。健康…こちらの方で何かないかと考えていると、ひとりの大切な人間が思い浮かんだ。

 

「ちい姉様……。」

 

そう呟いてからルイズは、頭の中で案をまとめ上げる。

 

「私のお姉さまの一人が、胸…結構あんのよ。そんなお姉さまの健康に良いとわかれば、きっと作ってくれるわ!!」

 

彼女の姉の一人、次女カトレア。彼女はある理由により、ひどく父母達から体の健康を大切にされている。そんな彼女の助けになるならば、親はきっと力になってくれるだろう。

 

「ふーん…それで? それはちゃんとシャマルやシグナムにも行き渡るのかしら?」

 

「………。」

 

ルイズは固まった。詰めが甘かったようだ。確かに量産や販売はこれではしてくれないかもしれない。

 

「もう…じゃあこうならどう? 二人の家で共同開発。サンプル提供者はシャマル達。それの商業への発案者は私。推薦者は貴女。これ打診してみない? これなら私やシャマルをないがしろにもできないから量産しないなんてことはしにくいでしょうし、あなたは体裁をある程度保てるでしょ? 私の方は多分すぐにOKが出ると思うけど、ルイズの方は一回挨拶に行った方がいいかもしれなさそうね。その顔だと♪」

 

そういってくすくすと笑うキュルケと、うまく言いくるめられたようで不機嫌そうなルイズ。髪の色は似ていれど、彼女たちはやはり水と油に近いようだ。むしろ、似ているが違う、混ざらないという意味ではぴったりな例えかもしれない。

 

しかしこの出来事が後に、二人の家を和解へ向かわせる最初の歯車になるとはこの時誰一人として予想できなかった。

 

とりあえず先ほど詰め所でもらったお金を使って、特注で今回は予備を一つずつ3人が作ってもらうことになり、余計な飾りつけを付ける余裕はないが、カップやストラップなど、ちゃんと構造を細かく指定した箇所はしっかりと作ってもらえて、一安心したシャマルであった。

 

その後ルイズが出してくれたお金で、貴族のモノではないがある程度の服をはやて、シグナム、シャマル、ヴィータ、リインフォースと5人分を買って店を後にした。

 

店の外に出ると、ルイズの顔色が少し悪い。どうしたのかとはやてが尋ねると、どうやら予算を甘く見積もっていたらしい。

 

「なんだ、そんなことか。」

 

「そんなことってヴィータ、アンタねえ…。」

 

私の有難さを見せる計画が…そう言おうとして、すんでのところで思いとどまるルイズ。間違ってもそんなことは言えない。今日の作戦は、あくまで相手から好意を持たれ、自発的に感謝されてこそなのだから。

 

そんなふうに悩んでいるとヴィータが八重歯を出してにやりと笑う。

 

「ちょっと待ってな。」

 

そう言って人ごみに消えていくヴィータ。しばらく待ちぼうけを食らったルイズたち、しばらくしてシグナムやシャマルがため息をついた。さらに少ししてから、ヴィータが先ほど詰め所でもらった量の3倍程度の金貨を持ってきた。

 

なにやらものすごく上機嫌である。気持ち悪いほどにやにやとしているヴィータに一同は少し引いた。

 

そしてその両手で持っている金貨に、流石にルイズだけではなくキュルケや、はやて達も驚いたようでどうしたのかと尋ねる。

 

「アアアンタ、まさか泥棒したんじゃ…。目立つなとは言ったけどそんなのはダメよ!?」

 

「んなことするかよ…信用ねーなぁもう!」

 

折角貰ってきたのにと、ヴィータが頬を膨らませてルイズを睨むが、それでも目尻がにやついている。一体どうしたのだろうと怪訝な顔で見ていると、やれやれと肩をもんだ後にヴィータは説明を始めた。

 

「メイジのスリを何人か見付けて詰め所に突き出してやっただけだよ。一人目の後は楽だったぜ? あたしが大通りで金貨の袋をぽんぽん手の上ではずませてりゃ向こうから勝手に来てくれたからな。」

 

そういって金貨の袋をルイズに投げるヴィータ。今度は盗まれないようにと、しっかりと両手でルイズは持ってからヴィータの方をものすごーく複雑な顔で見てから呟いた。

 

「えと…変に疑ってごめんなさい。あと、ありがとう。」

 

「あの店はあたし達じゃ入れて貰えないみたい所だったみたいだし、そんな店のいい服買ってくれた礼だよ。」

 

気にすんなーと笑いながら次の目的地だった場所へと歩きはじめるヴィータ。気分が良いのか、普段と違い随分と素直に喋る彼女にルイズは少しどぎまぎしながら後ろをついていくと、彼女の背、お尻辺りになにか不思議なものが見えた。

 

それは紐でヴィータの肩からたすきがけで吊るされている。何やらうさぎと人がくっついたような、不思議なぬいぐるみだった。

 

「あれ? ヴィータ、それのろうさやん!? どないしたん?」

 

はやても気づいたようで、前を行くヴィータに声をかける。それどころか、はやて達はどうやらそのぬいぐるみの正体を知っているようで、ルイズは首をかしげた。ふたりの目には入らなかったようだが。

 

「えへへ。はやてがくれたものじゃないけど、こいつがここに戻る途中の店に売っててさ、スリとっちめた金で買ったんだー。こっちの世界であえるなんて、思ってもなかったよ!」

 

そう言って手前に持ってきたぬいぐるみを、ぎゅっと優しく抱きしめるヴィータは、誰の目で見ても幼く可愛い少女だった。




時間をかけてちまちま作っていった今回ですがなんか不安定な気が…。

ブラジャーひとつでものすごく話の時間を取られてしまいました^^;

調べると、昨今の大きな胸の人のブラ事情って大分変わってるんですね。外国人よりな形や中身をしていると思われるシグナムやキュルケのような人は、つけなくても激しく動かなければそこまで大きな問題にならないみたい?
日本よりな(気がする)シャマルは逆にないとまずいようで。

「手や口でいいのなら…もう少し。」
なんか所々の台詞が今回えっちいような…? ははは…読み返してからそう思った私です。

なのはの世界の子供が達観しすぎていたり、ゼロ魔の世界の大人や貴族が理想論や流れに酔ってる人が多いせいか、この先がキャラディスにならないか不安になる今日この頃。
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