ゼロの使い魔導書   作:すぴんど

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インフルエンザ辛かった…
最近遅いのはゼロ魔読み返してるせいもあります、ごめんなさい
A'sは2ndは円盤あるけど無印がどこにいったのか部屋で見つからなくて、Amazon会員特典で見てたり……。



第12話 大切な人を守るためのもの

太陽も真上辺りから街を照らし始め、お昼の時間になった頃。

 

タバサがおすすめと言う飲食店へ向かい、そこで昼食や話をということになった。

 

しかし、案内されている途中でヴォルケンリッターたちと、リインフォースの足が止まる。

 

ルイズがこの街の話をはやてにしている時に、突然足が止まったザフィーラたち。なんだなんだとはやてとルイズが彼女たちを見ると、裏路地の入り口にヴォルケンリッターたちの視線は揃って向いている。

 

「み、…みんな揃ってどないしたん?」

 

なにか意外そうな顔をしている四人と一匹が珍しいからか、少し不安そうな顔ではやてが尋ねる。

 

「感じる。」

 

「は? 何をよ…?」

 

曖昧なヴィータの反応に首をかしげるルイズとはやてに、リインフォースが説明を加える。

 

「主の主と我が主、魔力の反応が…わずかにですがこちらからあります。」

 

「魔力…精神力のことよね確か。つまりそれって…この先にメイジがいるってこと?」

 

ルイズが返事を返すが、それは違うだろうとキュルケは彼女たちをみた。

 

精神力の探知という聞きなれない技術に、この人たちそんなこともわかるの? という疑問もあったが、そんな彼女たちが興味を抱くものの方が更に気になる。

 

「もう、ルイズったらバカね。それならスリも盗られる前にすぐわかったでしょ。」

 

「ば、ばばばバカとは何よバカとは!」

 

ルイズの会話を無視してキュルケが続ける。

 

「つまり、メイジ以外の何か。それがこの先に居るか、あるってことじゃないの? 不思議な感覚があったから、貴女達は気になってるのよね?」

 

頷くリインフォースにキュルケはニッコリと笑った。

 

「ふぅん…なんだかあたしも気になってきたわ。マジックアイテムかしら、それとも魔法を使う生き物? ねぇ、行ってみましょうよ!」

 

そう言って、すたすたと指差された方へ歩いていくキュルケにヴィータが続き、タバサも歩いていく。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! お、お昼御飯どーすんのよ!?」

 

「あら、じゃあルイズは来ないのね。」

 

ルイズが抗議するが、キュルケにそう言われて後の言葉がむぅ…と、詰まってしまう。

 

「行かないなんていってないでしょ! だ、大体ねぇ、タバサがそっち行くんじゃあご飯のお店にも行けないじゃない!!」

 

そう叫ぶと、ほらあんた達も行くわよ! と、主の動きを待っていた残りの者達を連れて、ルイズも路地裏へと向かっていくのだった。

 

途中、まともに掃除されていない道路に、程度の差があれど嫌な感情をそれぞれ抱きながら、目的の場所に一同はたどり着いた。

 

しかし、その辿り着いた場所を見て驚き、もしくは疑問を感じて口に出す者たちがいる。

 

「え? ここに何かあるの?」

 

「不思議。」

 

「本当に? 王宮近くや有名なところならともかく路地裏のよ?」

 

ルイズ、タバサ、キュルケたちハルケギニア人の3人が、それぞれ感想をのべた。

 

「だってここ…武器屋よ!? 魔法と全然関係ないじゃないの!」

 

そう、何かを探して辿り着いた場所は武器屋。

 

基本的に武器屋に売られているものは平民のものであり。ましてや、こんな見窄らしい路地裏の隅っこにある武器屋に、彼女たちが足を止めるようなものがあったなどとは到底思えないのだった。

 

「いや、間違いありません。この店から不思議な魔力を感じます。」

 

「なにかしら、この魔力…大きく感じるのに小さいような、掴み所がない感じ。なんの意味があってこんなことをしているの?」

 

シグナムが断定し、シャマルが武器屋から漂う魔力を訝しんでいる。

 

「ふうん、まあ…なんにせよ入ってみないとわかんないでしょ。危険なものなら今ごろとっくに騒ぎの種でしょうから、危ないなんてことはないと思ってるけど…。」

 

そう言ってルイズは扉を開け、店の中に入って

いくと、店内は太陽が真上を指す時間だというのにどこか薄暗い。そして、店棚の奥のカウンターには鷲鼻の店主が一人いるだけだった。

 

やはり街の裏通りにあるような店らしく、客もいなければ、とてもじゃないが興味を引くものはぱっと見ありそうにない。

 

すると、ふかしていたパイプから口を離し、店主がルイズへと睨みをきかせながら話しかけた。

 

「貴族の旦那、うちはまっとうに商売してまさぁ。でなけりゃこんな裏でいつまでもくすぶった生活、しちゃいやせんて。」

 

辺りを見回していたルイズを徴税官やらと勘違いしたのか、自己弁護を始めながらルイズたちの方へ全身を向け、姿勢を正しながら店主がぼやいた。

 

「何を勘違いしたのか知らないけれど、私たちは単なる客よ。尤も、用があるのは私じゃないけれど。」

 

そういわれてぞろぞろと入ってくる残りのメンバーの八神家一行の5人と一匹、キュルケ、タバサ。あまりの客の多さに驚いた店主の手から、パイプがカウンターにぽとりと落ちた。

 

唖然としている店主をよそに、シグナム達がきょろきょろと店内を見回し、しばらくして八神家全員(といってもはやてはザフィーラの上に乗せられたままなだけだが)が使い古しや、錆びついた品が納められている樽へと近づいて、シグナムが一本の剣を持ち上げた。

 

店主が思わずあっ…と、まずそうな顔をしたがそれに気づいたものはいなかった。

 

「……これか?」

 

その剣は刀身すべてどころか鍔や柄まで錆やカビがついており、お世辞にもいいものとは言い難い。

 

「多分……。」

 

「なんつーぼろ剣だ、誰かこうなる前に手入れしてやれよ。」

 

シャマル、ヴィータもルイズたちと違って、魔力をそれから感じられる以上間違いないはずなのに、自分たちが辿り着いたものを見て思わず信じられなかった。

 

危険な物ならば購入して破壊、なども考えていたがこれはどうすればいいのかと悩んでいると―――

 

『んだとてめぇら!』

 

剣が、喋った。それはもう大声で…全員が思わず呆気にとられる。

 

『こちとらこれでも6000年を生きた伝説の剣だぞこのアマども! こんな姿でもまだまだ十分斬れるってんでぃ!!』

 

どうやら気になっていた探し物である魔力を出していた正体の剣は、自身をバカにされたと感じてご立腹のようだ。

 

「それって…インテリジェンスソード? ずいぶん珍しいものを置いているのね、あなたのお店。」

 

「へ、へい…ですが今の通り喧しく、言葉づかいも乱暴でして。全く、誰がこんなわけのわかんねぇものを作ったんですかねぇ。」

 

ルイズと店主が話している。どうやらこのぼろ剣は本物のようだと、店主の言葉でタバサとキュルケも、シグナム達が気になっていたのもこれだろうと確信する。

 

「それにしたって…ねぇ? 見つけたはいいけれどどうするのよコレ。あたし要らないわ。」

 

「喧しい。」

 

皆が口々にそのぼろ剣を罵ったり低く値踏みする中でひとり、興味を抱いている子がいた。

 

「あははははっ! 喋る子はシグナム達のデバイスがおるから今更驚きもせんけれど、自分からこんな言う性格の子を見るのははじめてやなぁ。なあ、ちょっと私にも見せて見せて!?」

 

はやてだけが、面白そうに笑ってぼろ剣を見つめていた。そんな彼女を見て店主が驚いている。これまでこのぼろ剣を見つけ、怒鳴られてそんな反応をした人間は一人としていなかったのだから、そうなるのも無理はない。

 

だってぱっと見て喋るしかできなくなった鈍らである。何の価値を彼女が見出したのか店主には理解が出来ない。いや、店主どころかルイズたちも、魔力があると解っているシグナムたちにも理解し難いものだった。

 

(こんなもの要らない。) 

 

その理由はいろいろあるが、はやてを除いた全員の心の考えを例えるのならこうである。彼女一人だけが今この場ではそう思わず、剣を抱きかかえたがってシグナムに両手を出している。

 

「おお…結構剣って重いんやなぁ。えへへ、シグナムのレヴァンティン借りたことないし、初めて持ったから不思議なカンジや。」

 

わっとっと…と、ふらつきながらもはやてが渡された両手で柄を握って、むん! とザフィーラの上で気取ってみる。その姿に迫力なんてどこにもなく、愛らしさしかなかった。

 

『おでれーた…。』

 

そんなはやてに今度はぼろ剣が驚きの声を上げる。ハルケギニアに来てから、彼女は人を驚かせることがとても多いが、今度は剣すらもそうさせてしまったようだ。

 

普段闇の書を抑えるためにぼんやりと光り続けていた左手のルーンが強く光り、はやてにぼろ剣の情報を流していく。

 

「んぅ? なんやこの知識。それに…体が、ちょい軽い……?」

 

『いや本当おでれーた…てめ、「使い手」か。しかもその足が―――』

 

どうやらぼろ剣自身も何かの力を持っているようで、はやてを分析しているようだ。まずいと思ったリインフォースやシグナム達がとっさにそれぞれの行動をとる。

 

シグナムが剣を取り上げ、リインは念話を送った。

 

(剣よ、それ以上我が主のことをこの場で話すのはやめてもらおうか。)

 

〔!?〕

 

初めてのことに言葉が止まるぼろ剣。

 

「やいデルフ! またてめぇなにか失礼なことをお客様に言おうとしやがったな!?」

 

普段から訪ねてきた客を小馬鹿にしては、憤慨させて追い返していることを知っている店主は、勘違いしたのかぼろ剣をどなりたて、そのおかげでで話が逸れた。

 

そんな怒りの店主の声が色々と飛んできている間も、念話によるやりとりが行われていた。

 

(我が主の何を知ったのかは知らないが、基本的にほとんどのことを、後ろの赤と青の髪をした二人の少女は知らない。無駄に騒ぎを大きくするのはやめてもらいたい。)

 

〔…けどよお、こんな恐ろしいものを抱えたやつそのままにしていいのかよ。〕

 

そうではないかと思ってはいたが、あのわずかな間にナハトヴァールと闇の書の暴走まで読み取っていたぼろ剣に、内心舌打ちをするリインフォースたち。

 

(我々はそれをどうにかする為に慎重にこの世界で動いているのだ。今それをこんなことで崩されるわけにはいかないし、簡単に他の者に話すわけにもいかない。)

 

〔なるほどねぇ…ならよ、俺っちにもちょっと手伝わせてくれよ。〕

 

何…? 念話を聞いていた、もしくは話していた者達が眉をひそめる。まだ数えるほどの言葉しか話していない者たちへ、突然仲間になるなどの申し出をされれば裏があるのではと疑いたくなるのも無理はない。

 

事情を念話で明かされたぼろ剣はもう慣れたのか、念話を聞いている全員に自分から返した。相手を読み取る力といい、驚異の産物だ。

 

〔ん? なんかあるとおもってんのかお前ら。 違ぇよ、せっかく巡り合えた「使い手」なんだ。こっちはこっちでそこの娘っこについていきたい理由があるのさ。〕

 

(「使い手」とは、恐らく主はやての左手のルーンのことだな? あくまでも闇の書ではなく、このハルケギニア内での縁や理由ということか。)

 

シグナムが会話に加わり、推測をぼろ剣に向ける。しかし、返ってきたのは意外な言葉だった。

 

〔忘れた。〕

 

思わずずるりと手からぼろ剣を落としそうになるシグナムだったが、そのあいまいな答えに即座に剣をぎりぎりと握りしめなおした。

 

〔いて…痛ぇっ! しょ、しょうがねえだろ!! これでもすっげえ長いこと生きてるんだ。少しは忘れたりすらあ!! 覚えてるのはただ「使い手」と感じた奴とともに居なきゃとか居たいってことだけだ!〕

 

ぼろ剣はある意味とても真っ白だった。それこそ思惑に裏がないどころか、表の事さえ一部真っ白で何もないなほどだ。

 

(解った…もういい。幸い先ほどのやり取りや、お前を見る限り使い道がないという訳でもなさそうだ。)

 

はあとため息をこぼした後、シグナムは剣をまじまじとみる「ふり」をしてから、はやてとルイズたちの方を見た。

 

「主はやて、主の主ルイズ、この剣を先ほどのお金で買っていただけませんか。」

 

「ええええっ!?」

 

タバサは表情からは読めないが、念話の内容を知らない店主とキュルケ、そして念話を聞いていたにも関わらずルイズが驚いた。

 

「インテリジェンスソード、これらは私たちのもつレヴァンティンたち同様に、アームドデバイスに似た力があると思われます。持っておいても損はないでしょう。」

 

「ええーこんなぼろ剣を? 貴族や従者が持つものじゃないわよ。」

 

話を聞いていても、そんなに要るものかしら? という疑問が抜けないルイズを納得させるために、シグナム達が説明を始めた。

 

「おそらくではありますが、この剣には視覚や聴覚があります。」

 

『ちゃんとデルフリンガーって名前があるんだ。それで呼んでくれよ、剣士の姉御。』

 

ぼろ剣はシグナムの発言を肯定するでもなく否定するでもなく、先にカチカチと鍔部分の金属を上下させ、自身の名前を口?にした。どうやら剣はともかくぼろ剣呼ばわりは嫌なようだ。

 

「ふーん、それで? そのぼろ剣が私達みたいなことが出来ることに何の価値があるのよ。」

 

もっとも、貴族のルイズに剣の言葉など戯言にしかならず名前で呼んでくれることなどなかった。

 

「敵に襲われた時に便利です。」

 

そうシグナムに言われても、ルイズは頭に?マークを浮かべただけだった。

 

「ああもう! シグナムったら説明省き過ぎよ。解るようにちゃんと言わないと!!」

 

シグナムの様な戦場に居た人にしか解らない説明の仕方に見かねたシャマルが、剣を取り上げる。

 

「ええっとデルフちゃんだったかしら? まずはあなたの目や顔はどこにあるの? どれくらい、どこまで見えてるの?」

 

『顔ねえ…わかんね。喋れば鍔が鳴るからその辺りじゃねぇか? まあ顔はともかく、人で言う見えてるってことなら、四方八方全部。樽の中に居たときからお前ら全員見えてたな。』

 

うんうんと頷いてルイズをシャマルは見た。彼女もようやく理解したようで、少しして手をポンと叩いてああ!と声を出すルイズ。

 

「つまり近づいてくる人が居ればそれが解って、なにかあればこの子が教えてくれるってことね。もう、それならそうと言ってよ。」

 

「そうよ、シグナムったら本当説明とか下手なんだから…。」

 

ふたりにそう言われて少し気まずい顔をしてシグナムは頭を下げた。

 

「と、とにかく! 仰る通りです。まがりなりにも剣ですし、いざと言うときの為におふたりのどちらかが持っておいても損はないかと思います。」

 

(つけ加えるのならはやてちゃんがいいと思うわ。ガンダールヴのルーン、光ってたみたいだし…あの時ならきっとはやてちゃんでも防御くらいはできると思うの。)

 

デルフリンガーの使い方をシグナムとシャマルが提示する。

 

(あ、さっきのがガンダールヴっちゅうルーンの力やな? なんや体が羽みたいに軽なって、気持ちいい感じだったんよ。)

 

どちらかというと二人が提示したのは盾の役割だが、盾ではガンダールヴのルーンは効果を出さない。幸か不幸か、デルフリンガーが剣だということが幸いした。これならはやてでも持てるからである。

 

「はい、私!私が持ちたい、ルイズお姉ちゃん!!」

 

「なっ!?」

 

またも店主とキュルケが驚く。無理もない。デルフリンガーは大剣では無いとはいえそこそこの長剣である。小柄な130サントあるかどうかのはやての身長よりもあるだろう剣を持ちたいなどとは常識の外の話だった。

 

「そうね、というか私嫌だわ。そんなの持つの。はやて、あんたが持ってなさい。」

 

「ええ…? ちょっとルイズ! はやてにあんなの持てるわけが―――」

 

そういって視界をはやてに戻したキュルケは声が止まり、開いた口もそのままになった。

 

「うんうん、よろしくなーデルフ君♪」

 

『おう、久しぶりの「使い手」さんだ。末永く行こうぜ相棒!!』

 

はやては平然とデルフリンガーの柄を持ちひょいひよっいと軽く振っていた。

 

キュルケとタバサは知らないが、もちろんこれはガンダールヴのルーンの力によってである。現にこの後はやてがぎゅっとデルフリンガーを抱こうとした瞬間、ルーンが力を弱めたせいではやては自身の感覚と力が普段程度に戻り、腰をぐきっとしながらザフィーラの背中に突っ伏した。

 

「あはは、変なもち方したらアカンよね。」

 

そういって柄を握り直したはやては、またひょいひょいと振るのを見せて、必死に大丈夫、持てるよとキュルケ達にアピールをした。

 

呆気にとられていた店主を現実に戻してデルフリンガーの料金を払い、一同は武器屋を後にしてようやく料亭に辿り着く。

 

タバサがおすすめとしたお店ははしばみ草の料理がおすすめの店だった為、ルイズとキュルケがうべっと舌を出し、事情をよく知らない八神家たちも話を聞いて顔をしかめたが、普通の料理もあり、そちらも悪い味ではなかったので事なきを得る。

 

「あなたたちと居ると驚いてばかりね。」

 

「これから解決。」

 

一通りの食事が終わったところで、タバサとキュルケの待ち焦がれた質問の時間が訪れた。

 

「待ちなさい。先に自己紹介からよ、その後に気になることがあれば彼女たちに聞きなさい。」

 

ちぐはぐにいろいろ聞かれても困るので、ルイズはまず八神家の面々にこの前オールド・オスマンたちと取り決めた「設定」を喋らせる。しどろもどろになりそうな、というより既に半分くらいの名前やらを忘れているヴィータは、みんなが念話でカバーだ。ついでに、ミスとかつけて呼ばれるのはくすぐったいからやめてほしいということも伝えた。

 

「一点に特化したメイジ、ね。なるほど…あなたの錬金はそういうものなのね。」

 

「私達にも、できる?」

 

おそらく個人個人ではなく全員を対象として気になっていた点、魔法について納得と理解、そして新しい疑問を持ったタバサとキュルケに、ヴィータはうーん…と腕を組んで唸った。

 

「多分、無理じゃねえか? あたし達とキュルケねーちゃん達は多分根本が違う。」

 

「…どういうこと?」

 

唸るのを止めたヴィータが今度は背もたれに寄りかかりながら、キュルケを指差した。

 

「キュルケねーちゃんは髪が真っ赤で肌が焦げてる。」

 

「焦げ…。」

 

褐色はともかくもう少し言い方ないのかと思いつつも、ヴィータの言葉を聞き続けるキュルケ。ヴィータは次にルイズとタバサに両手の人差し指を向ける。

 

「で、逆にルイズやタバサのねーちゃんは肌が白い。」

 

「ちょっとヴィータ、私だけ何で呼び捨てなのよ! あと指差すな!!」

 

敬意の様なものをヴィータには期待していなかったが、ひとりだけ、しかも身長が自分より低いタバサさえもねーちゃんと呼ばれているのに憤るルイズ。

 

「でも、みんな人間だ。」

 

そんなルイズを無視して話を進めるヴィータ。

 

「あたしらの魔法と、こっち…はるきげにあ?の魔法ってそういう部分の違いだと思うから、多分できないと思う。現に特化して無くてもなんでもかんでもあたしは錬金なんてできねえし。」

 

「ハルケギニアよヴィータちゃん。でも私もそう思うわ。」

 

カンブリア紀の生物の名前になってしまった世界を戻して、シャマルがヴィータの意見に同意する。仕組みは解らない、しかしこの世界の生物はリンカーコアを持っていないのに平然と魔法を使う…というのは先日のキュルケのサラマンダーの観察で彼女たちは確認済だ。きっと人間であるルイズたちも同じことだろう。となれば、外見こそ人間だが、魔法という視点から見ればお互い違う人種であることは間違いない。

 

「そっかぁ残念だわ。あたしなんかは火の系統だから出来ることはそんな多くないし…話を聞いていっそ特化できるのならさせちゃいたい、なんて思ったんだけど…ね。」

 

「火か…ふむ。それでしたらば、幾何かはお力になれなくもないとは思います。」

 

あくまで知識の方でですが、と付け足すシグナム。火自体はものすごく単純なものだが作用のさせ方はそれこそ色々だ。引火、爆発のふたつにしたって多数の種類がある。

 

「というわけでシャマル、頼んだ。私には教えるのは無理だからな。」

 

「えー!? 私が教えるの? …あ! あなたさてはさっきのやりとりをまだ気にしてるんでしょう!! もう、子供なんだから……。」

 

やりとりがシャマルへと移ったところで、タバサは本来の目的、彼女の魔法の癒しの風へと意識を向けた。

 

「あなたは…水の特化?」

 

「えっと…私は水と言うか、補助かしら。遠くを見たり、それに干渉したり…癒しの風はもちろん私の十八番だけど、それだけってわけでもないわね。」

 

遠見の魔法はルイズたちの世界では風の魔法なので、以前のギーシュのようにキュルケとタバサは疑問に駆られる。

 

「タバサちゃんもキュルケちゃんも、あまりこっちの系統で深く考えない方が良いかも。属性より概念とか言葉で考えてもらうと解りやすいんじゃないかしら。私は癒す…というより助けるかしら、ヴィータちゃんは潰すとか叩くのが得意。シグナムなんかは斬るとか貫くかしらね。どう? こう考えるとなんとなくだけど理解できない?」

 

「確かに。納得は難しいけれどね…それにしても、言葉ねえ。」

 

そのような点から魔法を考えたことがあまりなかったキュルケは、少し頭をひねってみる。もしかすると、こういった考えをすることでより強くなれるのではないかと女の勘が囁いたからだ。

 

「やっぱり根本的に私達とは魔法が違うのね…キュルケ、あんまりはやてたちのこと言わないでよ。先住魔法と思われたら困るから。」

 

ルイズがキュルケに今日のことは他言無用だとジト目で釘を刺すと、意識を体の中から外へと戻してキュルケはつまらないものを見る顔でルイズを睨み返した。

 

「解ってるわよ、むやみやたらに言う気どころか、他の人に言う気すらもともとないってば、少しは私という人間を信用しなさいっての。」

 

「できるわけないでしょ! アンタという人間から何を信じろって言うのよ!! アンタの家が! 何人!! うちのご先祖様たちをたぶらかしたと思ってんの!!!!」

 

詳しくは省くが、これがルイズがキュルケを嫌う理由である。彼女の家、ツェルプストー家は恋に熱い血筋で、ヴァリエール家からある時は恋人を、ある時は妻や夫を、ある時はヴァリエール家の血縁者さえも盗ってしまったりされているのだ。

 

ルイズにとってのツェルプストー家はいわば物盗りのような存在であり、そんな人間と思い込んでるキュルケを信じることは彼女には無理である。

 

そんな中、二人の喧嘩が始まって話がまたずれそうなのを、杖を二人の顔に割り込ませて中断させるタバサ。

 

「ヴァリエール、あなたもシャマルに聞きたいことがあったはず。今はそっちが先。」

 

「…ルイズでいいわよ、タバサ。」

 

はっと思い出して、キュルケとの喧嘩を止めてシャマルの方へ真剣な顔を向けるルイズ。キュルケもタバサがいつになく真剣な顔をしているため、一度立ち上がりかけた椅子へと座り直した。

 

「あなたは、魔法の毒は治せる?」

 

「ねえ、シャマル。私のお姉さま、生まれつき体が悪いの。こういうタイプの病気って治せないかしら?」

 

シャマルはふたりの真剣な顔を見て、姿勢を正して向き合った。

 

「どうかしら…魔法の毒は、かかってる人に会ってみないと解らないわ。どういうものか、くらいなら少なくとも解るとは思うけれど、呪いだった場合はちょっと私だけでどうにかできるかわかんないわ。」

 

「そう…。」

 

得られたのはやはり可能性止まりだったが、タバサは落胆などしていなかった。今まで何もわからなかったものを、どんなものかくらいは解るだろうと「助ける」のエキスパートが言うのだ。これだけでも大きな手がかりである。

 

「ルイズ様のお姉さまもそうね…会ってみないことには。そういう生まれながら、というものになると名前こそ病気と言われたりするけれど、病気とは限らないから。」

 

「どういうこと? 病気なのに病気じゃないって…。」

 

例えば、とシャマルははやてにごめんと念話を入れながら障害者や先天性疾患の人の話を始めた。生まれながら心臓の一部が普通より小さい人や、足が動かない人、足や足の神経自体ない人。そういった人間に必要なのは健康な心臓のような「人としてのパーツ」を受け取るか作ることであり、手術や移植ではない治療という方法ではどうしようもないということを簡単に説明していく。

 

「…なるほど、確かにそうね。」

 

タバサとは逆にルイズは表情に陰りを見せるが、それでもと、シャマルの手を握ってお願いをするのだった。

 

「確かにそうかもしれないけれど、貴方の言う通りまずは会ってみなければどうしようもないわ!! だから、今度診てみてちょうだい、お願い。」

 

「はい。必ず。」

 

そんなルイズの手を握り返すシャマルは、願わくばこの子の姉が自分の力で助けられるようにと、この世界の神に祈った。

 

「……タバサさんは?」

 

隣の席に居て、一人会話から離れていたはやてが、ふたりを見つめたまま動かないタバサにぽそりと耳打ちをする。

 

「今は、まだ彼女にそんな無茶をさせられない。」

 

まだ信頼を得たわけではないのだから、そう思っていたタバサにはやては思わず苦笑いして、さらにそのまま喋る。

 

「そないなこと、気にしなくてええんですよ? 朝食の時私を何度も助けてくれてるじゃないですか。気楽にいつでも言って頂ければ、シャマルの用事がない時ならお貸ししますからね。」

 

すこし近くなった声で耳がむず痒いタバサだったが、彼女の気遣いがそれもこそばゆくて、思わずはやての頭を撫でて誤魔化した。

 

「わ、わわ…なんや恥ずかしいですって。」

 

「………。」

 

不思議とタバサの心が落ち着いていく。ここ数年、人に優しさをここまで伝えることが少なかった彼女の心に、少し暖かな何かが灯った。

 

ヴィータがそんなふたりを、シルフィードの上でのルイズとのやり取りの時みたいな嫉妬めいた目で見ていたが、それは今回も気にしている者はいなかった。

 

一同は食事を済またあと一度何人かでそれぞれ別行動をして、お土産にいくつかのお菓子や本、アクセサリーなど各々の欲したものを買った後に集まり、学院へと帰っていく。

 

辿り着いた学園には、何故か巨大なゴーレムが待っていた。




街編おしまい
だいぶ駆け足にしたつもりですがようやく次からフーケ編です。

血縁者まで盗ったのかは解りません。
もしそうなら、もしくは本編後にそんなことがあればいつかまた虚無が生まれるときにツェルプストー家からからもあり得る…?
そうしたらそこからゲルマニアの皇帝目指す話とか妄想が膨らみますよね。
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