ゼロの使い魔導書   作:すぴんど

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お待たせしました。

日常や脱線の小ネタを考えつつ本編もある程度進めていかねばーと先の会話やシーンを考えながら書いてたら袋小路に陥っていました。申し訳ない。

2ndA'sグラーフアイゼンのラケーテンフォルム変形過程が私の実力だとこんなふうにしか文字でできない!
シーンの動画を見てるともっと長々書くことあるのですがそんなとこまでいいよ!ってなってしまったり…。
変形動画を見れる人、もしくは覚えている人いましたらダレカタスケテー

そしてアイゼンの火はアフターバーナーなのか、それともロケットエンジンなのか。
形的にはアフターバーナーのように思える気もするのですが皆さまはどう思われますでしょうか。
どうでもいいことかもですが一度気になると止まらない…。


第13話 ものごとへの姿勢と認められたルイズ

「何よあれ!?」

 

「何やあれ!?」

 

はやてとルイズ、主人と使い魔のふたりがそろって声を上げる。視線の先には見たことないほどの量の土の塊が人の形を成して屹立していた。

 

トリステイン魔法学院の中央塔に、30メイルはあるであろう土のゴーレムが居たのだ。

 

ゴーレム。土の魔法でギーシュが作ってみせたワルキューレと同じ魔法によってつくられた、術者の命令に従う命無き操り人形だ。もっとも、その恐ろしさはギーシュのとは比べ物ならない。

 

いくら「土」の塊とはいえ、これほどの質量をもつ物を加速を付けて叩きつけられればワルキューレのように叩かれて骨折、のような生きていられる怪我では済まない。良くても悪くても致命傷、運次第では血しぶきだけになって飛びちる運命をたどることになる。

 

そんな相対するのも恐ろしいゴーレムが現在中央塔をがんがんと殴っている。魔法だろうか、不思議と風を伝わる振動や地響きこそあれど、音はしていなかった。

 

「たぶん、フーケ。」

 

タバサがぽそりと呟く。ルイズは誰の事か良く解らないようだが、フーケの名を聞いてキュルケははっとした。よく見るとゴーレムの肩には、黒いフードをかぶった人影が見える…恐らく今土くれのフーケと言われた術者であろう。

 

「確か…最近ここら辺を騒がせている盗賊よね。ってなによルイズその顔は。アナタまさか…トリステインの国民なのに知らないの?」

 

恋にかまけている私でも知っているのに? とにやにやとした目で見て言うキュルケに、ぐぬぬと知らないのものは知らないので、迂闊なことが言えず唸るだけのルイズ。もっともキュルケ自身も、つい最近その微熱に浮かされた男たちから危ないと言われて知ったことなのだが。

 

「ん…? てことはまずいんちゃうか!? あの泥棒はんは学校の何かを盗みに来たってことやろ!?」

 

『そういうことだな、はやての嬢ちゃん。でもよ…なんか様子がおかしいぜ。』

 

慌てるはやてに同意するデルフリンガーだが、彼の声に焦りはない。

 

そんなはやてを見て、ゴーレムが傍に立つ塔へとタバサが杖を向けた。

 

「狙っているのは宝物庫、でも大丈夫。」

 

その言葉に男達から聞いた情報と照らし合わせて何かを納得するキュルケと、やはり理由を知らず可愛い顔で頭の上に?マークを浮かべるルイズ。勉学と自己の魔法にひたむきに努力を続けていた彼女は、噂話などといった学業の時間外の情報にひどく疎いのだ。

 

「確かに…中央塔はただでさえ他より強い固定化の魔法がかかってるし、宝物庫はさらに強力に重ねがけをされてるって聞いたわ。一人のメイジじゃ、仮にスクウェアクラスでもどうにもできないでしょうね。」

 

タバサとキュルケの話をきいてほっと胸をなでおろしたはやてだったが、そんな彼女の前に杖をもって主ルイズが前に出る。

 

「何言ってるのよ、なら次はあのゴーレムをなんとかしなきゃ!」

 

「ど、どうしてなん…ルイズお姉ちゃん?」

 

ルイズはシグナム達に叱られたりして、今日学んだこと…用心と、先を見ることを活かして考えていた。意地っ張りにフーケのことを知ってるとうそぶかなかったのも、情報を得るためである。ツェルプストーに笑われるのは非常に悔しかったことだが…なんとか耐えた。

 

鋭い目でしっかりとゴーレムを警戒しているその姿には、先程のおいてけ堀な表情と油断はもうない。

 

「塔は壊せない、なら次はフーケは何をするのか考えてみなさいはやて! 開かないなら開けさせればいい…今あそこを開けさせるために必要なものは何!?」

 

「え、え~っと…開けさせるのなら、鍵を探すとか?」

 

そんなことを言われても、平和な日本育ちのはやてである。本を読むことが趣味のひとつとはいえ、現在非日常真っ只中で半パニックな彼女に推理をしろというのは、とてもではないが不可能なことだった。そしてキュルケよりも先に、タバサが小さく口を開く。恐らくはこういう思考をすることになれていて、なおかつ座学も優秀なのだろう、あっという間にルイズの考えを理解した。

 

「違う…たぶん人質。開けられる人に、開けさせれば良い。」

 

タバサが答えを言った瞬間に、ゴーレムはルイズたちへ狙ったかのようなタイミングで振り返った。ガリアとゲルマニアの留学生と侯爵家三女、そして…闇の書で呪われたはやて。彼女たちとはやては、事情を知るオスマンにはこれ以上ない最高の人質となり得るだろう。

 

フーケ自身は後半のことは知らないだろうが、それでも異国の人間を預かっておきながら大けがをさせるような行動をとれば、最悪の場合国際問題。十分な交渉材料だ。

 

「私たちじゃなくても、学園の誰かがそうなることなんて、そんなの私は許せないわ!!」

 

ぎりりと杖を握るルイズの指に力がこもる。

 

「それに何よりはやて! 平民の貴女を守れなくて何が貴族よ!!」

 

そういってルーンを唱え始めようとしたルイズを、キュルケが止める。

 

「ちょっと、何してるのよルイズ! だからってゼロのアナタじゃ無理よ!?」

 

「うるさいわよツェルプストー! 貴族は魔法が使えるから貴族なんじゃないわ…敵に後ろを見せない者を貴族と言うのよ!!」

 

ルイズが魔法を使う。そのことに何かが引っかかったはやては、彼女が唱えるルーンを聞きながら記憶を掘り返していく。魔法が失敗してしまう事ではない、爆発の凄まじい威力のことでもない、でも何かが引っ掛かる…。あれやろか? これやろか? と、考えつくした先に彼女は自分の騎士がかわいらしく喋った時の言葉を思い出す。

 

――固定化や封鎖結界とか結界魔法のようなものを打ち消すような感触がどーたらこーたら。

 

そしてタバサが落ち着かせるために言ってくれた言葉。

 

――宝物庫には、固定化がかけられている。

 

あかん。はやての顔がさっと青ざめた。

 

「ルイズお姉ちゃん! だめや!!」

 

「ファイヤー・ボール!」

 

はやての制止も間に合わず、掲げていた杖を目標に向けて振りおろしてルイズが魔法を放った。

 

ファイヤー・ボールと言われたルイズの魔法は…呪文の名前の通り火の玉が出ることもなく、目標としていたゴーレムの肩の人影にも、ゴーレムの本体にも当たることもなく、魔法学院の塔へと当たったのか、宝物庫の壁を爆発させて―――

 

綺麗に整えられていたその壁に、ひびを入れてしまった。

 

「あっちゃあ…止めるの間にあわへんかった。というより、すごいけど最悪のパターンや。」

 

そう言って手で顔を隠すはやて。キュルケとタバサは、信じられないようなものを見たように目が点になる程に驚いている。

 

「な、何よ最悪って! 貴女を守りたいから私はこうしてるのに! それにちょっと外しただけじゃない、みてなさい…次こそはちゃんと当ててやるんだから!!」

 

はやてのしぐさをこの程度で大げさだと言わんばかりのルイズは、誰かに力強く肩を引かれて、尻もちをつく形で座らされた。そしてその直後、頭頂部に拳骨を入れられる。ルイズは突然の思わぬ痛みでうずくまり、涙を眼に浮かべて次の魔法の詠唱を止める。

 

誰がこんなことをと怒りながら顔をあげると、ヴィータが呆れた顔でルイズを見ていた。

 

「このバカルイズ、気づいてないのかよ…。あーあ、さっきまでのお前は悪くなかったのになー。」

 

そう言ってヴィータがさす指先の方向、ひび割れた宝物庫辺りの壁を見た。それがどういうことかとしばらく考えてから、ルイズも目が点になった。

 

「嘘…。」

 

「嘘じゃねーよ、シャマルからこの前言われたんだろ? 爆発には効果があるかもって。次からはもう少し向き考えて魔法打てよなおめーは。視界に入れておかなければこうはならないだろうから…多分だけど。」

 

はぁー…大きなため息をついたヴィータだったが、どこか彼女は嬉しそうに薄く笑みを浮かべていた。決してルイズをバカにした笑みではないが、それを見る余裕も理由を知る時間もなくなっていた4人と、唯一それに気づいた1匹はヴィータ共々あわれフーケの人質に…などということはなく、ゴーレムは再び振り返って中央塔へ向けて歩き出した。

 

当然である。ひびが入ったということ…それはつまり固定化が解けて傷が入れられるようになったということ。もう人質に用は無い。

 

「ど、どどどどど…どうしよう! わ、わたわたわたしの爆発でこんなことになるなんて!」

 

落ちこぼれ、ゼロのルイズの不名誉な二つ名をもつ彼女は、知らなかったとはいえここまで強い結界を壊して、こんなことになるなんて全く予想していなかったのだろう。そもそも彼女の心の中では、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるの理論で攻めようとしていただけである。はやてを守りたくて。

 

「スクウェアメイジ複数の固定化なのに…すごいわよルイズ。誰にもたぶん真似できないわ。」

 

「びっくり。」

 

失敗でパニックになって思考停止したルイズに、こちらも混乱しているのか煽りと称賛を混ぜたことを言うキュルケ。そして感想だけを告げるタバサ。ゴーレムは無情にもそんな彼女達に悩む時間すら与えず、そのひびめがけて今拳を振り下ろそうとしている。

 

(やれやれ…さて、どうすんだはやて? あたしがギガントで叩きつぶすか?)

 

顔を赤くしたり青くしたりしているルイズを除いた八神家の面々へ、事態の解決を図ろうとヴィータが念話で語りかける。

 

(待てヴィータ。何をしようとしているのか知らんが、これ以上あまり単騎で大きな力を見せるな。この世界の人間たちに何を思われるかわからん。揉め事か何かは知らんがやるのならばザフィーラと二人でやれ。)

 

まだ馬で帰路半ばあたりのシグナムが、ヴィータ達の念話に忠告をする。個人が常軌を逸した力を持っているのが解ると、その力で本人も周囲も人間は歪む。そんなものをヴォルケンリッターたちは数えきれないほど見てきている。それがはやてとルイズを巻き込む厄災、問題となりかねない以上、なるべく避けたいのは言われたヴィータも同じだった。

 

(なんだかよく知らねえけど盗賊だってよ。シグナム達が来るまでは待ってられねー…てか、もう今すぐにでも急がねえとまずい。現在相手はルイズが盗賊を狙って外した失敗魔法で、固定化をふっとばしちまった開いた宝物庫に入って、品定めする直前って感じ。)

 

(………。)

 

また何てことをしたのかとシグナムが頭を抱えているようだ。沈黙が続いているのに、どこか彼女の唸るような思念が流れ込んでくる。

 

(そーカリカリすんなよシグナム。しょうがねえだろ。)

 

少しけらけらという音が聞こえてきそうな口調で、ヴィータはシグナムを慰めている。しかしこんな珍しいヴィータをシグナムは訝しみ、余計に悩みの種が増えたのだった。

 

(お前…いくらあのぬいぐるみが見つかったとはいえ機嫌が良すぎやしないか? 甘やかしていては主の主ルイズの為にならんし、それが理由だというのならば、いつまでお前は浮かれているんだ。)

 

ルイズを庇うヴィータ。シグナムにその異様な光景は考えられない。昨日までのヴィータを見ても、いや…ついさっきまでのヴィータでも考えられないだろう。なにせ揚げ足を取るわ、はやての世話をするルイズに嫉妬するわ、どう考えても敵意の方が今までのヴィータには強かったのだから。

 

(優しいとかそういうのじゃねーよ。浮かれてるわけでもねえ…一発今ぶん殴っちまったし。ただあたしはほんの少し、本当にちょっぴりだけど嬉しかっただけだぞ。)

 

(嬉しいだと?)

 

そう、今のヴィータは殴った後もルイズをみてにやりとだが笑っている。それは単に嬉しい、それだけの理由だった。

 

(そうだよ。こいつさっきよ、自分ではやてを守るって言ったんだぜ。助けてでも、あたしたちにやれでもねえ。使い魔の代わりをしろってあたしたちに言っておいて、それでもまず先に自分から前に出てくれたんだ。)

 

(…何が言いたいんだお前は。一刻を争うのだろう、早く言え。)

 

性格か、それともルイズを見て嬉しいと思えたのが少し恥ずかしいのか。のらりくらりと話を進めていくヴィータの念話に、シグナムはピリピリとしびれをきらしていく。

 

(だーかーら、はやてのために戦おうとしてくれたのが嬉しい。ただそれだけだっての。それってつまりさ、闇の書を使うとか命令する側じゃなくて、あたしたちに近い方に立ってくれてるってことだろ? さて、それじゃ今はまだそんな力をもってない仲間の為に…ちょっくら手助けと行きますかね! ザフィーラ!!)

 

(心得た。)

 

デバイスに変化させアイゼンを構えるヴィータと、掴んでいる手を放すようシルフィードへ催促するザフィーラ。同時に、振り下ろされたゴーレムの拳が宝物庫の外壁を破壊する。

 

「わ、わ、わ! ヴィータ、ザフィーラ、お願いや!!」

 

「おうよ!」  「承知した。」

 

慌ててはやてが二人の騎士へ出撃を命じ、鉄槌の騎士と蒼き狼は空を駆ける。飛び立つ直前、ヴィータはルイズの方を振り返ると今度は頭をぽんぽんと軽く叩いた。

 

「ルイズ、お前の事ちょっとだけだけど気にいったぜ。ちょっとだけだけどな。」

 

言われたルイズは罪の意識が心の中にはいっぱいだったため、何のことか解らなかったが、心苦しい気持ちがその疑問のおかげで少しだけ楽になった。

 

そんな二人のやり取りの間にザフィーラの体が光で包まれて人型へと変わる。手甲の纏った拳を力強く握り、力と魔力を右手に込めて、宝物庫へと続く伸びたゴーレムの腕へと放った。

 

「でぇおああぁっ!!」

 

咆哮と共に打ち出された拳圧が、ゴーレムの腕を穿つ。穴が中心に空いて脆くなったそれは、ザフィーラの左手より繰り出された更なる拳圧によって吹き飛ばされた。

 

突然の事態に驚き、無くなった手を見つめているかのようだったゴーレムは二人を敵とみなしたのか、着地した二人の騎士の前に立ちはだかり、ぺしゃんこに踏みつぶそうと襲いかかってくる。

 

「珍しく派手にいくじゃん、ザフィーラ。」

 

にやりと幼く悪戯心ある顔を向けて、ヴィータが笑う。

 

「既にキュルケとタバサには事情を知られている。だが、他の奴らにまであまり知られるわけにはいかん。ならば…多少派手でもさっさと済ませるに越したことは無い。」

 

「はっ、それもそうだな! こっちもいくぜ…グラーフアイゼン、ロードカートリッジ!!」

 

Explosion――グラーフアイゼンの声と共に鎚の先より少し下、柄にもなる鉄棒の部分と頭を繋ぐ赤い留め具の様な部分が伸びる。よく見るとそこは外側と内側の二層、ピストン構造になって内側が突き出ることで伸びていた。何かを装填するような音と共に、内側の層が外側の層へと飲み込まれて戻っていく。するとどうしたことか、煙を吹いて赤い魔力光を帯びながらグラーフアイゼンの形が変わっていく。

 

"Raketenform(ラケーテンフォルム)."

 

鎚の殴打する左右の円柱部、その片方の先に、貫くように伸びた四角錐が内側から生える。その錐の先端は叩きつけた鎧ごと内側の肉体にまで突き刺さりそうな鋭さである。そして反対の部分は円柱の内側、側面、外側をパーツとしてYの字の三つに割れたかと思うと、捻子のように回転しながら更に形を変えていく。三つが更に細かい部品へと変化、分割されると金色に一部を輝かせながら、ジェットエンジンのノズルのような形となった。最後にそんな各パーツをがっちりと固定して、変形が完了する。

 

ラケーテンフォルム、ヴィータの持つグラーフアイゼンの形態の一つで強襲用の形態だ。火を噴きながら後方から噴き出る推進力に乗って、面ではなく点から始まるようになった攻撃は、ギーシュを殴り飛ばした時のハンマーフォルムとはその威力も、早さも比べ物にならない。

 

「ラケーテ!」

 

剣道の八相の構えのように縦にグラーフアイゼンを持って、しっかりとヴィータが柄を握った瞬間に三つのノズルが火を噴いた。ノズルの部分からロケットエンジンやアフターバーナーのような魔力のエネルギーが溢れて、推力へと変わる。その推力に引っ張られるようにしてヴィータが体を宙に浮かせ、踏みつけようとしてきたゴーレムの足へと一目散に突っ込んで行った。

 

「危ない!」

 

「無茶よヴィータ!!」

 

自身の失敗がこの事態を招いてしまい、罪悪感にとらわれて俯いていたルイズが悲鳴を上げ、キュルケが叫ぶ。

 

「ハンマァアアアーーーッ!!」

 

ルイズとキュルケがヴィータの無謀と思える行為と飛び散る土煙に対して思わず目を伏せたが、激突した後に見えた光景は、そんな彼女たちの予想を大きく上回っていた。

 

叩きつけられたゴーレムの片足が消し飛び、ヴィータの持つアイゼンは未だ勢いを保ったままである。力のぶつかり合いを制したのはヴィータの方だったのだ。その小さな体と一つの鎚で、ゴーレムを上回ったのである。しかも飛び出てきたヴィータには、八重歯をむき出しにしながら笑う余裕すらうかがえる。

 

「嘘…。」

 

ヴィータはそんな彼女達の言葉を無視して勢いのまま一度ゴーレムを飛び越すと、その場で傾いたコマのようにして空中でくるくると勢いを付けてから、先ほどと同じようにまた一直線にゴーレムの胴めがけて突っ込んで行った。

 

「うおらあぁあぁーーーっ!」

 

ゴーレムの残った腕から胴、そして一つになってもなんとか立っているその足へと。ゴーレムの体を滑り落ちるように、ヴィータがアイゼンを叩きこんだまま突き進む。まるで袈裟斬りのように体を潰されながら削り取られたゴーレムは、もう片方の腕と、足の付け根もえぐられてだるまになり倒れた。

 

「とどめ、やっちまえザフィーラ!」

 

「縛れ、鋼の軛!!」

 

倒れたゴーレムへ追い討ちをザフィーラがかける、鋼の軛――昼間にスリを捕まえるために撃ったものと同じ魔法だが今回は目的も形も違う。先の鋭い杭のようになった鋼の軛が、大地からではなく空よりゴーレムの体めがけて降り注ぎ、地面へ磔にしていく。

 

手、足、体と自身の限界を超えて砕かれたのか、形を保てなくなったゴーレムは活動を停止してただの土の塊へと崩れた。

 

「障害は片づけた。宝物庫へ急ぐぞ。」

 

「おうよ。」

 

ゴーレムに有無を言わさずに片づけ、そのまま空を翔けて穴の開いた宝物庫へと入ったふたり。だが、既にそこにはしんと静まり返っており人の気配はない。良く解らないガラクタに見える物や、どうみても高価そうなきらめきを持つ物が、玉石混淆ながらも清潔綺麗に整えられて置かれているだけだった。

 

「やられたぜ…くそっ。」

 

「……片方は術者を追うべきだったか。」

 

歯噛みするヴィータたちの見つめる部屋の壁には、彼女たちには読めないハルケギニアの文字でこう書かれていた。

 

秘蔵の破壊の杖、確かに領収しました。―― 土くれのフーケ ―― と。

 

「わりい、間に合わなかった。」

 

シルフィードの上へと飛んで戻ってきたヴィータが全員に向けて謝るが、それをまともに、もしくは真面目に受け取ってくれたのは主のはやてだけだった。

 

「ええんよ、ご苦労様。ありがとなヴィータ、ザフィーラもっ。」

 

そう言って笑顔を返すはやて以外の面々は、どこかおかしい様子だ。

 

ルイズは再び俯いていて、ぶつぶつと何かを言いながら青い顔をしている。口がものすごく早く動いて呟いているせいで、残像でおもわず人間のできない形に見えた気がするほどだ。

 

キュルケは胸の前で両手の指を組んで、狼に戻ったザフィーラを何やら非常に潤んだ瞳で見ている。熱視線がその瞳からは強く向けられており、思わずザフィーラがたじろぐ威力を放っているほどである。

 

タバサはぽそぽそとダメだとか、まだ早いとか、解らないのに迂闊とか言いながら、杖でぽこぽことシルフィードの頭を叩いて止まらない。

 

「…なにやってんだこいつら。」

 

「あはは…なんやろ、どうないしたんやろなあ? みんな。」

 

ひくひくとひきつった笑顔の後に、はあとため息をついてヴィータは彼女の主の主、今回の事の被害が拡大した原因であるルイズへと近づくと、ぺしぺしと頭を、拳骨の時とぽんぽんと叩いた時の中間程度でたたき始めた。まるでバスケットボールのように、ルイズの頭が弾む。

 

「おいルイズ、ル~イ~ズ~!」

 

しかし、ルイズは未だ下を向いたままである。

 

「だー! おいルイズっ!!」

 

すこーんと、ハンマーフォルムへと戻ったグラーフアイゼンを軽く振り、インパクトの直前に手首を引いて寸止めをすることで、怪我をさせない範囲でルイズを叩いた。

 

「あ痛ぅっ…もう、ヴィータ! 何すんのよ…私はねぇっ!!」

 

「考え事して自分を責めてたって、何にもなんねーぞ?」

 

宝物庫を壊されるきっかけとなった自責の念か、それとも再びヴィータに強く叩かれて浮かんだものかは解らないが、目に涙を浮かべて睨みつけてきたルイズの目が見開かれる。ヴィータとしばらく視線を重ねてから、やがて悩んでいても何にもならないことを悟ったのか、ごしごしと制服のシャツで目をこする。そしてそこにはいつものめげない、プライドの高いルイズの顔が戻っていた。

 

それをよしと判断したのか。ヴィータはにやっと笑ってアイゼンを待機形態に戻すと、はやてとルイズの間へ割り込んで座り直し、背中をはやてへと傾かせて預けた。

 

「くよくよ考えてても始まらねーんだ。次にお前が出来ることをしろよ。ほら、どうすんだよ。」

 

そういって自分の役目は終わったとばかりにルイズの方を向いたまま、終いにはやての膝で寝そべってしまった。一応取り逃がしたのはヴィータたちが詰めを誤ったせいでもあるのだが、そんなことは知らないと言わんばかりである。

 

「ヴィータ…なにも出来んままフォロー頼んだ私が言うのもなんやけど、逃げられちゃったのはルイズお姉ちゃんのせいだけやないだろ。」

 

ふにふにとヴィータの柔らかそうなほっぺをつつきながら、はやてが笑って言う。ヴィータ自身は、はやてにつつかれていても特に嫌ではないのか、されているがままで薄く目を開いて、ルイズの方を見た。

 

「うー…わあってるよはやて。でも…パス、こういうのをどうするか考えるのは、ルイズがぴったりだからな~。」

 

これも嬉しかったことの影響だろうか? それともルイズが得られた信頼なのだろうか? ヴィータはルイズに結局丸投げした。

 

そんな気持ちを感じ取ることが出来たのだろうか。それとも単純なだけだったのだろうか。ヴィータにそう言われて一層気合が入り、自分のできることをしないと! と…そうプライドの戻った顔に更に一喝、ぴしゃりと自分の頬を両手で叩くと、鳶色の目にさらに強く光を宿して、ルイズはそれを活力に口を開いた。

 

「タバサ、とりあえず降ろして。学院長に報告しに行くわよ。」

 

「…学院長は今日は留守。居たら中央塔が殴られているのに出て来ないはずがない。」

 

……彼女の意気込みは空回りに終わった。せっかく燃え上がった気力が削がれ、削ぎ落ちたいくつかの決意がいらいらへと変わっていく。

 

仕方なく宿直のシュヴルーズへとフーケの件、最後に自分の失敗魔法で宝物庫の壁の固定化が解けてしまったということを正直に報告してから、ルイズは眠りについた。

 

疲れてもう余裕がなかったのか、お風呂に入るのも忘れて泥のように眠るルイズ、はやてだったが…騎士たちはそのまま、部屋のテーブルを囲んで座り何かを話している。

 

「学院の宝を盗まれたか…我らにお鉢が回ってくるのは避けられんだろうな。主の主の責任でもあるしな。」

 

シグナムが寝る前にはやてが入れてくれたお茶と作ったクッキーを軽く食べながら話を進めて、シャマルがそれに頷くと魔法陣を展開していく。

 

「そうね、だったら面倒なことになる前に取り返しちゃわないと…。」

 

そう言って彼女の魔法、遠見の鏡と探査魔法を用いて奪われた宝を回収しようとしたところで、ヴィータに手を掴まれて止められた。

 

「ヴィータちゃん?」

 

何か意見があるのか、ヴィータはシャマルに魔法の行使を止めさせる。

 

「まー待てよみんな。あたしらが何でもしてやってたらルイズの為にならねえだろ。アイツはシャマルとは違った意味で頭は回るけれど、それをしてもらうだけじゃ駄目だしな。せめて自分の身くらいは、はやてと一緒でもまとめて守れるようになって貰わなくっちゃな。」

 

「お前、まさかわざと盗賊を逃がしたんじゃないだろうな?」

 

そう言って悪巧みの様でもあり、どこか楽しそうな顔をするヴィータを、やはりシグナムが悩みの種のような顔で見たが一理あると思えたのか。話の続きを促すように姿勢を戻した。

 

「せっかくだからさ、この事件を使ってルイズにできる戦い方を教えて…鍛えてやろうぜ。」

 

そう言うとヴィータは全員に念話で自分のたくらみを話し始めたのだった。




ちょっと違うタイミングや助言を重ねていくだけで、ルイズは色々考え方が変わっていくと思うんですよね。

そして読み返すとフーケのゴーレムについてあれ?と思える点が一つ。些細な内容ではありますがね次で活かせればなと思います。
それと、ルイズの失敗爆発魔法についても屁理屈や言葉遊びかもしれませんが面白そうなところが一つ。
長々悩んでいましたが、どうにか続きを書けそうです。

お待ちいただけた方々、そしてまた読んでいただけた方々、ここまでお読みいただきありがとうございます。

次は再戦、舞踏会あたりまで書ければと思います。ではまた。
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