ゼロの使い魔導書   作:すぴんど

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ヴィータによる、はやてという妹ができたことで、少し優しくなったり賢くなったルイズの育成計画(`・ω・´)

韻を踏むって難しい


第14話 ルイズをあたしが染め上げる

「なるほど、お前の考えは良く解った…しかし私は反対だな。」

 

シグナムは一理ある、なんて思ったことを後悔していた。こめかみに手を当てて目を閉じてため息。却下という気持ちのオンパレードだ。

 

「うむ、お前の推測はどちらも一度しか見たことのない事だ。そして保証も確証もない。我が主を結果危険に晒したらどうするつもりなのだ?」

 

シグナムと同様に、ヴィータの内容に否定の意見を述べたのはリインフォース。軽率だと、どこか子供を叱りつけているような顔をしている。

 

どちらかと言えば見守ったり、はやてと自分達が仕える…そんなふさわしい主へとなってもらう為、教育や試しをしていたつもりのシグナム。しかしそれは、あくまでこちらが見守ることで安全だからであって、危険に飛び込むようなことをさせるつもりは彼女には無いのだ。

 

「だーかーら、そうならねえ為にあたしが一緒に行くんだろうが。」

 

逆に、多少怪我してもある程度強くなって貰おう。そう思っているのがヴィータである。彼女はどうやらルイズを自分のもとで磨くつもりのようだ。

 

「ふん、つい数日前に両手両足を捥いで連れて行く…みたいなことを言った奴の発言とは思えんな。」

 

「うっせ。」

 

シグナムの皮肉に対して、ジトっとした目で言い返してからそっぽを向いたヴィータは、なにか言いにくいのか、しばらくもじもじとしてからそのまま呟き始めた。

 

「だってよ…ルイズが可哀そうだって思ったんだ、思っちまえたんだからしょーがねーだろ。」

 

本当に、先ほどの脅しや今日の昼あたりまで嫉妬や敵対心を振りまいていた人とは思えない。そんなヴィータの発言に否定派の二人どころか、思わずシャマルまでもが訝しんだ。

 

「ヴィータちゃん…何か悪いものでもお昼に食べたの?」

 

「だぁーっ!! なんだよなんだよシャマルまで…いや解ってる、あたしらしくねーこと言ってるのは…けどよ!」

 

少しだけ俯いてから、ヴィータはすやすやと寝息を立てている自分の主と、今日のことで疲れたのか、少し寝息の荒い主の主を見た。

 

「はやてが、こうして欲しいってあたしには思えるんだ。」

 

それはヴィータが、主であるはやての優しさできっと一番救われていて、子供の姿をしているからか、一番自由があるからこそ感じたことだった。

 

「そりゃあ、ルイズが死んだら大変なことになっちまう。だから勿論、自殺に行くようなことなんかはさせられねえ。でもさ…あたし達みたいにさ、はやてを今日みたいに思ってくれて、守ろうとしてくれるのなら…さ? そんな人をはやては自分の都合で縛ってほしいとは思わねーと、あたしは思う。」

 

あの時のルイズを見てヴィータは、からかい混じりの言葉を彼女に言ったものの、心での評価を一気に改めていた。

 

「だってあれってさ、ルイズはつまり…あたしたち騎士と同じことをしてくれようとした人ってことじゃんかよ。」

 

原因はルイズ自身だけどな。と半笑いながらにヴィータは言った。ヴォルケンリッター達…使い魔の下僕と同じなど、ルイズが聞いたら怒ること間違いない言葉だ。そんな彼女は現在気が付けば寝返りをうったのか、はやてを抱き枕のようにして腕で包んで今も寝ているので、何も気にせずヴィータは話を続けていく。

 

「あいつはあたし達と違って人間だから脆くてすぐに死んじまう。でも、そうならない様になるべくしてやることは出来るだろ。ルイズのやつはきっと責任感から、明日からフーケを追う…はやてが納得できる方法、説得とかで止められると思うか?」

 

(…無理だろうな。出会ってまだ数日だがっ、今日の態度でもう十分に思い知らされた…っ!!)

 

聞こえてくるのは念話によるザフィーラの声。しかし、彼はさっきまでとは違いどういうわけか、今はここに居なかった。再度の襲来を警戒して狼の姿に戻り、外の警備へと向かったのだ。しかしどうしてだろう? 聞こえてくる声は焦燥が混じっていて、なにやら赤い髪の女性や青い竜から外で逃げているような声だ。

 

「…主はやてが止めてくれるだろう。」

 

「さっきも、はやてはそうしようとしてたけどさ…ルイズは言うことなんて聞かなかったぜ? シグナム。」

 

勝ち誇ったかのようにふふんと笑うヴィータ。現場を見ていたヴィータだからこそ、ルイズの信念をザフィーラ同様に理解していた。

 

「あたしがやろうとしてるのは、別にあたしの我儘ってわけじゃねえんだ。こうすることがきっと…今のこの"家族"にとって一番いいって思えるから、全員で笑っていられると思うからみんなに聞いてもらったんだよ。」

 

家族…もしそう例えられるほどの存在であるのならば、そんな相手のしたいことや夢を縛るなんてことは、誰もができるだけしたくないことだろう。現に地球に居たときのはやては、多少の寂しさを感じてこそいても…シグナムにも、シャマルにも、ヴィータにも、ザフィーラにも、彼らがしたいことをしようと外へ出るのを止めなかった。

 

「そうか…そうだなヴィータ。お前は多感で心の機微に聡いからな…お前がそう言うのならば、きっとこれが一番私たちの関係にとって良いことになるのだろう。」

 

否定派だった一人のリインフォースが感銘を受けたのか、ヴィータへと賛同した。シャマルもうなずいて、最後にシグナムが折れた。

 

「主はやての為、か。確かにこの方は私達と主の主であるルイズが、いがみ合う光景など見たくはないだろうな。」

 

「そうだよシグナム。それに…あたしらみたいとか、自由で居てほしいなんて言ったけどさ…別にルイズははやての騎士ってわけじゃない。いちおーは、いちおーは命の恩人で…あたしらのもう一人の主人なんだ。そいつのやりたいことを護ってやるのもあたしたちの仕事、だろ?」

 

「ルイズ様は、はやてちゃんを守ろうとしてくれる。だからルイズ様のしたいことはさせてあげたい。そしてルイズ様は私達の主の主…その道を守るのもまた騎士の務め……そういうことよね、ヴィータちゃん。」

 

長々と話すことになったことをシャマルがまとめ上げると、全員の考えは等しくなった。

 

「しかしヴィータ。そこまで言うのなら一つ、たった一つだけある…とても難しい懸念はお前に任せていいのだろうな?」

 

責任をとれよ、と言うつもりなのか…少しだけ彼女にしては珍しく悪そうな顔で笑うシグナム。

 

「心配ねえよシグナム、あたし一人で十分ルイズは守ってやるさ。」

 

「…そのことではない。というより、一人で行くつもりかお前…?」

 

は? と言った顔でヴィータの口が開く。

 

「当たり前だろ…もちろんシャマルやシグナムにはいざって時のバックアップに待機しといてもらうけどよ。ってか、じゃあなんだよおい、懸念って。」

 

「最後の否定派、我が主はやての説得だ。優しい主の事、間違いなく…こちらもそう簡単には折れんぞ? ヴィータ。」

 

さっきの意趣返しのようにふふんと笑ってから、会議は終わりだといわんばかりにシグナムは眠りに入っていった。

 

「そうね、大変だと思うけど、そこはちゃんと言いだしっぺがやらないと…ね? それじゃあヴィータちゃん、おやすみなさぁい♪」

 

シャマルも服を脱いでシグナムやルイズ、はやてのいる大きなベッドへと向かっていく。

 

「先ほどの私達へ言ったあの気持ちがあれば、きっと我が主も納得して下さるだろう。ヴィータ…任せたぞ。」

 

二人と違ってただ一人、本当に真面目にヴィータの顔を見てから、どこで覚えたのかぐっと両手でガッツポーズに似た構えをするリインフォース。ファイトとか、頑張れとかのエールが、脇をしめているそのポーズで強調された胸からぽわぽわと伝わってきそうだった。

 

しばらくして、応援の気持ちは送り届けきったのか、固まったヴィータから離れてリインフォースも寝床についた。

 

「………何いーーーーーっ!?」

 

鉄槌の騎士の悲鳴が、明けの明星のような、ハルケギニアの宵明けに輝いて見えるどこかの星へ向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

「そうか…ミス・ヴァリエールの魔法が、まさか宝物庫の固定化すら打ち破るとはのう。」

 

翌朝、報告を聞いたオスマンは教師たちと、目撃者であるルイズとキュルケ、タバサにはやて、そしてヴィータを呼び出していた。ザフィーラは居ない。キュルケとタバサには内緒ということをこの前の食事で誓わせていたし、何より無駄に騒ぎの種を作ったり、秘密を公開したくなかったのである。

 

そして昨日のゴーレム騒ぎをシュヴルーズより聞きつけて、すぐに調べに行ったと言われるオスマンの秘書のロングビルが、息を切らして学院長室に戻ってくると、彼女の口から驚愕の言葉が出てきた。

 

「フーケの居場所が解りましたわ!」

 

肩で息をしながら、更にロングビルは事の詳細を付け足していく。

 

「ここから先の森の奥、馬で4時間ほどの距離にある小屋の近くで、怪しげな黒いローブを着た人影を見たという人が居りまし

た。手に何か長い箱のようなものを抱えていたとの報告もあります。」

 

「黒いローブ、抱えていたもの…間違いねえ、きっとそれはフーケだな。」

 

証人の一人であるヴィータがロングビルの証言を肯定して、事態は次のステップへと駆け足に進む。

 

「オールド・オスマン! 一刻も早くまずは王室へ連絡しましょう!!」

 

「これはゆゆしき事態です。ミス・ヴァリエールの責任もあります、いったいどうされるおつもりか!!」

 

そうまくしたてて視線を向けた教員たちに、ルイズはいたたまれない気持ちになったが堪える。その責任は破壊の杖を取り返して果たすつもりだったからだ。しかしそんな罵声をさっと手で遮る者が居る。それは杖を盗まれたここの学院長本人だった。

 

「たわけどもが! 一刻も早くというのならば儂らで今すぐに取りに行かねばなるまいが!! お主らは自身のメイジの杖をなんだと思っておる!」

 

普段の飄々とした雰囲気とは違う、真剣なオスマンの表情に思わずたじろぐ教員と、それを見て顔に笑みを浮かべるヴィータ。

 

「それに、生徒の責任とするとは何たることか。確かにミス・ヴァリエールにも責任はある。じゃが責任と言うのであれば、夜とはいえ、まだ帳が下りきる時間でもないのに誰一人として気づけなかったお主らも同罪じゃ。宿直が誰だとか、そういった問題ではない。あれほど巨大な影を落とすゴーレムと、フーケの気配に誰ひとりとして気づけんかったのじゃからのう…。そしてもちろん、そんな平和ボケになるようにお主らを戒めきれなかった儂にもな。」

 

助けられたことの感動も相まって、その姿はまさしくルイズの理想とする貴族像の一つだった。が、いつもこうならいいのにどうして普段はああなのか…という気持ちが彼女の心の震えをだんだんと小さくしていった。

 

「さあ、貴族としての務めを果たそうではないか。我と思う者は杖を掲げよ!!」

 

そして最後の所で人頼みなの!? と、ここまで言うものだからてっきりオスマン自身も赴くと、そう思っていたルイズの心の震えは完全に止まると、今度は別の怒りの震えが沸いてきた。

 

なぜなら教員は誰も、杖を掲げなかったから。

 

ルイズの震える心が、狂える炎のように力強くなっていく。はやてを守ろうと、民を守り秩序を守り信念を貫こうとした少女の心はもう我慢がならなかった。

 

もとよりそのつもりだ、そう思って自身の杖を掲げようとした時にルイズ自身の腕は上がった。勝手に。そう、勝手に。

 

「ミス・ヴァリエール…ん!?」

 

「ヴィータ!?」

 

ルイズの杖を持っている方の腕はヴィータによって持ち上げられていたのだ。

 

「あ、あんた…なにご主人様の腕を勝手に掴んでんのよ!?」

 

「っせーな、どうせこうするつもりだったんだろ?」

 

だったらいいじゃねえかとにやけ顔でヴィータが腕を離すと、下がりそうになった腕を今度はルイズ自身で掲げた。それは、まぎれもない彼女の意志だった。

 

「ミス・ヴァリエール、君は生徒じゃないか…一体どうして!」

 

「誰も大人たちは杖を掲げないじゃないですか!! それにおおまかな責任は私にあると思っています。だから私に…ヴァリエール家の名誉回復のチャンスを頂きたいと思います!!」

 

そうして教師たちの意見を突っぱねてルイズは杖を掲げ続けると、はやてが車椅子で寄ってきた。

 

「なんで? なんでお姉ちゃんがそこまでせなあかんの……? ルイズお姉ちゃん、やめてえな」

 

「ごめんなさい、いくらはやてのお願いでもこれだげは譲れないわ。これはね…あなたが私にリインフォース達、ヴォルケンリッターのことでお願いをしたように、私が私で居るためにどうしても曲げられないことなのよ。」

 

そう言ってはやてを宥めようとするが、優しい…今この場で言えば場違いで、平和ボケという言葉が学院の人間たち以上にふさわしい彼女にはルイズの言葉がどうしても納得できなかった。

 

「なんで…謝らないけんのはわかる。でも、生徒であるルイズお姉ちゃんがどないして…? 死んでしまうかもしれへんのに、何で?」

 

「貴族にはね、自分の命より大切なものがあるのよ。」

 

そう言ってしゃがんではやての目を見るルイズ。

 

「あんただって、本当は解ってるんでしょ?」

 

なんのこと? そう聞き返すような青い瞳を向けるはやてにルイズは鳶色の、はやてと反対の色の様な瞳で見つめ返す。何度目かの瞳を交えたやり取りだが、今回は初めての、ルイズがはやてに教えを説くような形だった。

 

「リインフォースに聞いた話だけどはやて、彼女が「あっち」で見るだけしか出来なかった時、あなたは自分の命や病気を治せるかもしれない手段があった。なのにそれは多くの人に迷惑がかかるからって、しようとしなかったそうじゃない。それこそ命の危機にまで病気が進んでも、苦しいとも痛いとも…生きたいとも言わなかったって聞いたわよ? それってあなたにとって、自分の命より…彼女たちの名誉が大切だったからじゃないの?」

 

それは自身の名誉ではなく誰かの名誉の為という違いがあるし、本人はそこまで考えてなくて、ただ大切な人たちを犯罪者にしたくなかっただけの、子供な願いだったかもしれない。

 

「はやてがそうしていたのに、私がそうしたら駄目なんてのはおかしいわ。」

 

それでも、それは誰かの為や、何かの為に自分の命を捧げられたのは間違いなかった。

 

「それは、だってそれは悪いことやん! お姉ちゃんがしようとしている…正しいこととはちゃう、ちゃうやろ…? 私と違うて正しいことに、どうして命かけなきゃいかんの…っ!?」

 

本質的には善悪の差があるとはやては主張する。そうして後ろめたい気持ちで押しとどまるのとは違うと彼女は思っているようだ。

 

しかしルイズはそれをも否定して、よりはやてを追い詰めていく。

 

「正しいことならそのままでも良いわね? でも、私のだって悪いことなのよ? だってひびを入れたのは、まだ正直信じられないけど私なんだから。このままじゃあ学院全体にも、私の家の公爵家にも迷惑がかかったままよ。だからね? 私はその責任を果たすために命を張らなきゃあいけないのよ。幼いはやてが迷惑にならないよう命を伸ばさなかったのと、学生の私が迷惑にならないよう命を懸けるのは、なにか違うかしら?」

 

「それは…だって…なぁヴィータぁ……。」

 

本当に珍しく、年相応に子供らしく言いくるめられて、はやてはヴィータに頼った。しかし彼女はちょっと複雑な顔で笑い返すだけで、助けてはくれない。

 

むしろ内心ではルイズがはやての説得をしてくれるから、ヴィータなんか嫌いや! とか一時的な怒りからでも言われなくてほっと胸を撫で下ろしたいくらいである。

 

だから、今この場に限っての彼女はいけいけルイズ! と、応援していた。

 

「ごめん、ほんっとごめんはやて…。でも、あたしはルイズの言うことも間違いじゃないと思う。それに、はやてのこと言われるとあたしはちょっとどうしようもできない。…なあに心配するな、あたしが昨日みたいにルイズを守ってやるさ!」

 

「そんなあ…うう。でも、嫌や。」 

 

そう言って言葉が出なくなって、それでも抵抗を止めないはやてを、最後にぎゅっとルイズが抱きしめた。

 

「もう、駄々っ子は駄目よはやて。それに、死ぬ気なんてさらさらないわ。ちゃんと生きて帰って、私はこれからもはやて達と過ごすんだから。」

 

はやてだって本当は解っている。半ば自分との運命共同体のような存在となってしまったのに、それでも自分を恨まないような人間のルイズが、死にに行こうとしているわけはないことくらい。それでも、戦いとは無縁だった彼女にとっては昨日の光景が忘れられず、あんな小さなビルの様なものに人のルイズが挑むことが怖くて、不安で仕方がないのだ。

 

「うう…絶対やで? 絶対にちゃんと帰ってきてな…ルイズお姉ちゃん!」

 

「ええっ、もちろん。私とはやての約束よ!」

 

そう言って少し目を潤ませながらも小指を突き出してきたはやてに、良くわからないままだがルイズは同じように指を出して絡めた。そうしていると、どこからかまたざわめきが起きる。

 

声のする方を見上げてみれば、今度はキュルケが杖を掲げていた。

 

「ミス・ツェルプストー! 君まで何を…っ!?」

 

「ヴァリエールには負けられませんもの。そ・れ・に…。」

 

そう言ってはやての方を見てキュルケは薄く微笑んだ。

 

「命を投げ出してでも大切なことをしようとする、守ろうとする。それをこんなにいたいけな、幼い平民のはやてすらしたことがあるのに、アタシがしてない…いえ、出来ないなんてそれこそ許せませんわ。」

 

さらに上がるもう一つの、この学院ではとても珍しい大きな杖が上がる。

 

「ミス・タバサ…君まで!!」

 

「ふたりが心配。」

 

フーケ襲撃を見ていた最後のメイジが杖を掲げると、オスマンは穏やかな笑みをしながら3人を見た。

 

「ふむ。切磋琢磨するのも、仲良きことも美しきかな…今のこの3人には、並大抵のメイジでは敵わぬじゃろうて。」

 

「おっと、待ちなオスマンのじーちゃん。あたしも一緒だから忘れんなよ。」

 

いつの間にか取り出したアイゼンをハンマーフォルムのまま掲げて、ヴィータが3人の前に立った。横柄な態度と言葉に思わず顔をしかめる者も居たが、オスマンの笑顔は変わらない。

 

「おお、そうじゃったな鉄槌の騎士よ。お主もいるのであればなおの事…見事やり遂げるじゃろうて、ほっほ。」

 

「そんな…まさか本当にこんな子供まで向かわせるというのですか学院長!?」

 

ヴィータの参戦に、教師の一人であるシュヴルーズから流石に声が上がったが、彼女の実力を知るオスマンはもちろん止めなかった。そして、ならば君たちが行くかねと教員たちに告げて、誰も手が上がらなかったことでようやく笑みがため息とともに消えた。

 

「では、魔法学院は諸君らの活躍に期待する。頼むぞ、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、そして鉄槌の騎士よ。」

 

「杖にかけて!」

 

3人が掲げる杖に、にっこりと犬歯を出して笑うヴィータがアイゼンを重ねて誓いを立てた。それから若きメイジ3人たちはそのままに、ヴィータはハヤテの車椅子を押しながら案内を頼まれたロングビルと共に部屋を出て行った。

 

 

 

 

「はあ、何で私アタシがよりにもよって泥棒退治なんか…。ダーリンもいないし~。」

 

屋根もない牧草を運ぶためのような馬車で森の小屋への移動中、先程の張り合いはどこへやら。キュルケはその荷台の中で、だらーんとだらしなく大の字の様に手と足を広げて座っていた。戦う前から燃え尽きた人間のようになっている。

 

「誰よダーリンって! 大体あんたが勝手にあげてついてきたんじゃないの!!」

 

「…あなたが死んだらはやてが悲しむから、わざわざそうならないようにアタシが来てあげてんでしょ『ゼロ』のルイズ。」

 

あの発言はなんだったのか、いや…人間にとって一時の感動などはこんなものなのかもしれない。本当の意味で心が感銘を受けることなど人生数えるくらいのこと。

 

はやての命の物語より、どちらかと言えばキュルケはルイズへの対抗心の方があのときは強かったのかもしれない。

 

「だー! おまえら喧嘩は帰ってからにしろ!! これからルイズにはな、言っとかなきゃなんねーことがあるんだ!」

 

ったく…とぶつぶつ言いながら両手で二人を制して、ヴィータはルイズの方に向かって隣へどかっとあぐらで座り直す。

 

「さて、じゃーフーケの所に行くわけだがルイズ。ピンポンパーン、第一問。」

 

「え。」

 

なげやりきわまりない効果音を棒読みしながらヴィータがルイズに問いかけていく。

 

「今回の責任を果たすってことはどういうことだ?」

 

「そりゃあ、フーケを倒すことでしょ?」

 

当たり前じゃないという顔をするルイズにしかめっつらのヴィータ。

 

「な、なによその顔は! 間違ってないじゃない!!」

 

「破壊の杖の奪還。」

 

横から小さな声が風にのって二人の耳に届く。

 

「タバサのねーちゃんが正解。」

 

「何よ! 一緒じゃないのヴィータっ!!」

 

とんちの話でもしてるのかと怒るルイズに、やれやれと大きくうなだれてから、きゃんきゃんと叫ぶルイズの口をひとさし指で塞いでからヴィータはルイズの目を見た。

 

おちょくるでもなく、怒るでもなければあきれるでもない真面目な瞳だった。

 

「おめーもあの場のはやてとの約束や、本質…見失ってんじゃねー。」

 

思わず声が止まったルイズを確認してからひとさし指を少し離してヴィータは説明する。

 

「いいか? これはオスマンのじーちゃんに頼まれたことでもあるんだ。だから一番にしなきゃならねえのは、破壊の杖ってのをあたしたちでちゃんと持って帰って、元通りにすることだ。」

 

でも、と言おうとしたルイズを話はまだ終わってないヴィータの言葉が遮る。

 

「確かにフーケを倒すことでも責任は果たせるけど、それは別にあたしらじゃあなくたっていいじゃん。王室のやつらにあとで任せてもいいんだ。まぁ…昨日はあたしも最近暴れてなかったから、戦いに夢中で考えるの忘れてたんだけどさ。」

 

真面目な顔のまま少しだけ反省をして、それでも目を離さないままだ。

 

「覚えとけ。自分がこうすること、こうしたいことで責任を果たせるんだって思ってることは、必ずしも周りのしてほしい責任のかたちとは限らねえんだ。」

 

「…解ったわよ。」

 

いやいやにぶすくれて言うルイズを見て、ヴィータは確信した。

 

「お前…やっぱフーケを倒すことで、ついでに自分に箔をつけよう! とか、これなら杖だけ持って逃げた奴って馬鹿にされないでしょ! とか考えてただろう?」

 

ぎくり。ルイズの目がそれた、図星だったようだ。

 

「はぁ…仮に杖だけ持って帰ってきたって、はやてやオスマンのじーちゃんが解ってくれるんだから、変なとこに見栄張るなよなほんとにさぁ。マリなんとかとか言う奴等みたいな、解ってないアホをいちいち全部気にしてたらきりがなねえよ……。」

 

「五月蝿いわね! そんなこと解ってるわよ…でも、でもねぇっ!」

 

普段のけなす相手への鬱憤や反骨心が溜まっているのだろう。ルイズはどうしてもそれを成し遂げたいようだ。

 

「自分から格下相手のとこまでわざわざ降りるなっての。」

 

しかし、あくまで何も知らないでルイズをけなす奴が下、という形でヴィータは説得する。心なしか口角が上がった気がした。

 

「それに、もし杖だけを持って帰ってからそういう奴がいても、すぐに誰もお前をバカにできなくなるぜ。」

 

「はあ? 何をどうやったらそうなるって言うのぶぎゅ!」

 

怒鳴り付けて迫るルイズのほっぺを、片手で押さえつけるようにつまんで、ふっふっふと笑いながらヴィータは、口から離していた手の指を中指もあげてチョキにした。

 

「今からアタシが教えるこの第二問と、戦い方でお前が強くなるからだ。」

 

「私が、強く…?」

 

正直自分のメイジとしての駄目さ具合、その自覚が本当はあるルイズには、ヴィータの言いたいことが解らなかった。

 

「ま、それは本番必要になった時のお楽しみだけどな。」

 

昨日の睡眠不足とはやてへの説得案の試行錯誤のせいか。そう言ったヴィータは目を閉じると、あっという間に眠ってしまった。

 

「ちょっと寝るんじゃないわよ! 何で今言わないのよ!! 教えなさいよヴィータぁっ!」

 

肝心のところは真面目さがあるけれど、全体としてどこか緊張感がない。

 

そんな雰囲気で、30メイルもあるゴーレムを操るメイジへと挑みに行くという、ハルケギニアの人からはとても思えない、馬車の上のヴィータだった。

 

ゴーレム相手に昨晩あれほど終始優勢だったのだから、無理もないかもしれない。

 

そして、こうしてルイズにあれこれ教えてあげる彼女の姿は、本来の歴史でなるはずだった、教導官としての才能の片鱗かもしれなかった。




遅れまくりんぐ。
忙しすぎて。それこそ、まだ届いたReflection見る暇がないほど。
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