薄荷色の抱く記憶   作:のーばでぃ

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第16話「しろ」

飛来する爪撃を紙一重の見切りでボルツが躱して行く。

恐らく初めてであろう二刀流を自前のセンスで巧みに操っている様は流石としか言えない。

左手の小剣で突き、払い、注意を引いて、右手の大剣で一撃を狙う。

そのトリッキーな動きを何とか凌いでいるものの、月人側の危なげさがじわりじわりと滲んできている。

 

ボルツは『獣の月人は先天的に観の目でいる』と表現していた。宮本武蔵の五輪書には『観の目強く、見の目弱く』と記されてるし、ボクもそう教えた。

あくまで『見の目弱く』だ。『見の目なし』じゃない。

『観の目』が視界拡大による反射の向上なら、『見の目』はある種の戦術眼に繋がる。これを完全に捨ててしまうと細かい部分で何をしているかが解り難くなるから、トリッキーな行動に弱くなる。

距離を誤魔化す様なフェイントを入れた斬撃や月人の腕の影から繰り出す突きなどは、攻撃力を犠牲にしてもかなりの効果を上げているように見える。

ボルツはボクからアドバイスを受け取った一瞬で、ここまで戦い方を組み立てていた。

 

月人の死角からダイヤが迫る。月人の体を踏み台にして頭部を狙う。

自らの体を駆け上ってくる故に、その死角であってもダイヤの存在と位置に気付いているが、6本ある腕のいくつかを回してもダイヤを捉える事は出来なかった。ボルツの攻撃がそれだけ嫌らし過ぎたからだ。

ボルツは目潰し役のダイヤの援護で終わらせるつもりは全くない。隙あれば容赦なくぶった斬る。叶うなら先生を呼ばれる前に終わらせようとすら考えているだろう。

 

道が見えた。ヤツの脇、反対側への逃走路。

ヤツはボルツとダイヤに掛かりきり。しかも押されている。

これならいける。月人の脇をすり抜け、反対側へ猛ダッシュだ。

身を小さくしながら走りだす。

 

――ボクは気づいていなかった。

月人の7つの目。そのうち額についている1つの目だけが、ずっとボクの動きを追っていた事に。

 

「――っ!?フォスっっ!!」

 

首筋に指すような殺気とボルツの怒声。

その二つに反応してとっさに床に伏せた瞬間、月人の薙ぎ払うような蹴りがボクの後頭部を削ぐように振り抜かれていった。

 

「……あ……?」

 

髪の毛と頭蓋の一部が吹っ飛び、壁に叩きつけられて薄荷色の雹を降らせる。

眩暈のような感覚を覚えた。変な風にひびが入ったようで、視界が若干ズレている。

くっつけば元に戻るボクらの体でも、頭部への喪失ダメージはマズい。

人間のように死ぬ事はないけれど、『頭の役目をしているインクルージョン』が削り飛ばされる事で、動いたり思考したりと言う行為に制限が掛かるのだ。

 

……膝をつきながら震える手で後頭部に触れる。

どうやら結構な量を、今の一撃で失ったらしかった。

 

今の一合で空いたリソースに踏み込んだボルツが、月人の腕を1本丸ごと切り飛ばしていた。

――逆に言えば。

ボクへの攻撃と腕1本を1-1交換されたのだ。

 

「こいつまさか――最初からフォスを狙っているのか!!?」

 

ボルツが最悪の予想を口にする。

 

とっさに身を投げ出して前転。

しかし間に合わず、右足の一部が追撃で振り下ろされた拳に叩き割られる。

床に打ち付けられた拳の衝撃がボクの全身を伝わり、さらにどこかでピキリとヒビが入る音を聞いた。

続くボルツの追撃は間に合っていなかった。

ボルツが更に最悪なものを見たからだ。

 

斬り飛ばした月人の腕が犬のような形状に変化して、足を割られたボクに向かって突っ込んで来ていた。

 

「なんだとおおぉーーッッ!?」

 

突如、月人がボルツに突っ込みヘルプに来るリソースを潰しに行く。

完全に狙った挙動だ。

 

明らかに、ボクが狙われている。

この足では逃げ切れる筈も無い。

 

「――フォスッッ!」

 

ダイヤの対応も間に合わない。

唸りをあげながら犬型の月人がボクに飛び掛かり――

 

「そぉいっっ!!」

 

――カウンターに、その口内に右手を突っ込んだ。

 

「……え?」

 

ダイヤの動きが固まった。

 

ボクはそのまま舌を掴み、床に叩きつけて左腕で首を押さえ、体重を乗せに掛かる。

一丁上がりだ。

組み敷いた腕の中から苦しそうな鳴き声がキャンキャン聞こえる。

 

「おいおいおいおい、暴れんなよ……君の方からラブコールして来たんだろ?」

 

有名な話だ。

1. 犬は舌を掴まれると体の構造上、何も出来なくなる。

2. 犬が獲物に飛び掛かる際は、まず喉笛を狙いに来る。

 

ふはははは、分離した際の形状が仇になったな!鉱物で出来たフォスさんだぞ!痛みなんて気にしないし、喉笛に来ると判ればカウンターのひとつも取れらあっ!

 

「――こっちは大丈夫!そっちのデカい奴の対処を!」

「さっすがフォスっ!」

 

ダイヤがUターン。

そしてボルツの怒声も続く。

 

「いつまでも――調子に乗るなっ!!」

 

強烈な蹴りが額の目に炸裂した。

グシャッと嫌な音と共に獣の月人が大きくのけぞる。

その隙に合わせ、ボルツがダイヤの隣に向かって大きく跳躍、着地した。

 

――額の目から霧のようなものが噴き出している。

獣の月人は体勢を立て直して頭を振ると、仕切り直しとばかりにこちらを向いて唸った。

額に手を当てたり、痛がる様子は見受けられない。

 

「完全に切断しなければ分離する事は無いようだな。――フォス、そっちは大丈夫なのか?」

「正直言うと、頭取られたのが地味に痛い。喪失した記憶は今のところ浮かばないけど、運動に必要なインクルージョンがすっ飛んだのか足がうまく動かないや。

……コイツについては、この形を取ってる限り問題ない」

「フォス……手、食い千切られちゃったりしない?」

「大丈夫だよダイヤ。この形状の獣はね。口に手ぇ突っ込んで舌を掴むと動きが極端に制限されるんだ」

「そ、そうなの?」

「しかし、先生を呼びに行く事はコレで出来なくなったな。

アレキ!――っくそ、こんな時に限ってダメな方が出てるか」

 

――『ダメな方』……?ボルツの言い方が少し気になる。

アレキは、廊下の片隅で気絶していた。

 

「あの月人は明らかにフォスを狙ってる……迂闊に斬って分裂させてしまったら、動けないフォスを連れ去られちゃうよぉ……」

「相手に出来るのは僕とダイヤで2体まで、か。……すまないダイヤ。僕の判断ミスだ。2種待機が仇となってしまった。早期の援軍が望めない以上、僕たちだけでやるしかない」

 

ダイヤが目を見開いてボルツを見る。

 

「ふふ。ボルツも間違う事、あるのね。少し……ボルツが近くなった気がするよ。

――うん、平気!なんだってやってやるっ!冬のフォスには負けないんだからっ!」

「そうだな。――目潰し作戦、引き続き試してみよう。あるいは、ここで時間を稼げばルチルが気付いてくれるかもしれない」

 

ダイヤ族の兄弟が同時に地を蹴った。

 

 

@ @ @

 

 

人間以外の動物は、だいたい鼻のみで呼吸するそうだ。こいつに呼吸と言う概念があるのかは解らないけれど、気道を塞いで窒息させるにしても両腕が塞がっているこの態勢では難しいと思う。

この状態で鼻を押さえるのは無理がある。

首の骨をへし折ってみるか、とテコの要領で力を込めてみるのだけれど、この犬より先にボクの腕の方からみしみし音がした辺りで止めた。

ボクはどうやら、完全に動きを封じられたらしい。

 

ボルツとダイヤの連携は獣の月人を押していたけれど、決定打を入れる事が出来ないのが大きなハンデになっていた。

切断すれば分裂される。分裂されたらボクが襲われる。だから斬れない。

人質を取られたまま戦っているようなものだ。

こんな事態、全く想定していなかった。

 

確かにボクは月人好みの薄荷色の石だ。だが、ここまで露骨に狙われた事はない。

――心当たりはある。多分、王さま騒動の交渉の時だ。ボクがターゲットになったとするなら、あの時以外に考えられない。

冬の大立ち回り……アレはもしかしたら、冬眠している皆を狙ったんじゃなくて。

狙われていたのは――ボク、か?

 

「……チクショウ」

 

確かに、あの時は想定していたよ。ボクのヘイトが高まるだろうなと想定していた。

でも、ボクは非戦闘員だ。先生、シンシャ、ボルツの3強が揃っていて押される事なんてありえない。今後の影響も大した物ではないだろうと楽観的に考えてたんだ。

 

――そのツケが、これか。そのツケが、あの冬か。

判断ミスしたのはボルツじゃない――この、ボクだ。

 

つくづくこの脆い体が恨めしい。

せめてダイヤの半分も硬度があれば。せめてボルツの半分も靭性があれば。きっと、何も出来ずに抑え込まれる事も無かっただろうに……っ!

 

「――くっ!?」

 

ボクの焦燥を隙と見たのか、犬の月人が拘束を振りほどこうと瞬間的に体を揺すった。

何とかそれに反応して、重心を動かし押さえつける。

数秒それを続けると、脱出は無理と悟ったのか喉の奥から「キューン」と声をあげて動きを止めた。

 

……そうだ、逃避しているような余裕はない。

 

前から解っていた筈だ。ボクは一人じゃ何も出来ない。何も成せない。誰かの手を借りなければまともに仕事も出来ないような脆弱な石だ。

だからこそ、せめてボクのできる範囲で誰かの力になれるようにと努力してきた。

今もそうだ。

たとえ発端がボクであろうとも、あの交渉が無駄だったとは思わない。

これがあの時のツケであるならば、それはそのまま月人の『焦り』と直結しているとも取れる。今確かに、『変化』が訪れているんだ。

 

そんな中でこの手を離せば、ボクは身勝手な悲観からボルツとダイヤの足を引っ張るだけの石になってしまう。

それだけは許せない。それだけは認めない。

ボクは、今のボクの役目を果たし続けるべきだ。

握った舌に力を込める。

 

「靭性最下級にも矜持ってヤツがある……逃がしはしない……お前だけは……っ!」

 

――恐怖か何かでも感じたのだろうか。

犬の月人の体が、強張ったような気がした。

 

 

@ @ @

 

 

状況が動いたのは、ボルツが『与えて良いダメージ』を見切ってからだった。

逆側まで貫通しない浅い斬撃であれば、分裂せずに傷口から霧を噴くようだ。

突きや殴打もセーフ。

そして、そうやって作った傷口は再生するが、完治までに多少の時間が掛かると見えた。

おまけに、筋肉の配置や挙動については哺乳類のそれにほぼ当てはまる――

 

「――見切ったぞ、化け物め!!」

 

ボルツの次の行動は必然だった。

腱斬り。中型動物を見た事がないボルツでも、散々月人を相手にしてきた経験が、筋肉の役目をある程度教えてくれたようだ。

腕の内側、腿の裏。およそ『稼働』に必要な筋肉を見切り、正確に切断するボルツの天稟が冴える。

瞬く間に右足と腕2本を停止に追い込んだその技は流石だった。

ダイヤも負けていない。脇の下を斬り裂き、ガードを誘って腱斬りに繋げるその術理は、型は違えど『逆風の太刀』と同じもの。

 

「ほりゃあああああぁぁぁぁーーーっっっ!!」

 

気合一閃。

ダイヤが頭部へのガードを潜り抜け、蓋の開いた糊の容器を月人の眉間に叩きつける。

クリーンヒットした容器はバキッっと音を立てひしゃげ、中に入っていた液体を瞬間的に溢れさせた。

糊が顔の形に沿って流れ、うまい具合に目を覆って行く。

 

「おまけよっ!」

 

ダイヤの2連撃。

Vの字を逆にしたようなその斬り筋は、7つの目を全て通した上で糊の流れやすい溝を掘り込んだ。

霧が噴き出し再生が始まる。

――だが、再生しようとする部分に『異物』が入り込んでいたとしたら、その部分はどうなる?

 

「――よしっ!完全に『食い込んだ』っ!!」

 

アレは鉱物を接着する為に使ってる樹脂由来の糊だ。

月人に『痛み』があるかどうかは分からないので、『沁みる』事による視界封鎖が期待できるかは分からない。

しかしああやれば――糊の粘性と接着力、そして再生による『食い込み』が、確実に視界を奪ってくれるだろう。

一発逆転の大快挙だった。

月人の腕が空を掻く。糊を落とそうと目をこするが、その行為は粘性のある液体をさらに塗り広げるだけだった。

 

月人のまともな腕は残り3本、右足も封じた。視界も封じた。

この条件なら――退却も、目が出る!

 

「――ダイヤ、フォスを頼む!僕はアレキを連れて行く!先生を起こしに行くぞっ!!」

「うん、わかっ――」

 

――あるいは。

ボクたちはまだ、月人を侮っていた部分があったのかもしれない。

 

勿論、まだ耳や鼻が残っている。それによる警戒は十分にしていた。

だが、『知能』と『機転』に対しては、十分では無かったのかもしれない。

もしくは――目的を遂げようとするその『覚悟』か?

 

――ブチブチブチィッッッ!!!

 

獣の月人が、霧を噴き出して動かなくなった3本の腕を、残っていた3本の上で引き千切った。

 

「なん……だと……?」

 

切り離された3つの腕は、それぞれ犬のような形に姿を変える。

個性でもあるのか、それぞれ違う形をしている。

1体はボルツ、1体はダイヤ――そして、もう1体はボクに向かって駆け出した。

声高々に吠えながら。

 

「バウバウッッ!!バウバウバウバウッッッ!!!」

「――っ!?斬って!!こいつら、吠えてボクらの位置を教え――っ!」

 

――ガシリと。

ボクの口を塞ぐように大きな手がボクの頭を掴む。

 

「……っ!?」

 

気付けば、組み伏せていた犬の背中辺りから太い腕が伸びていた。

その犬は変態の途中のようにボコボコと体が蠢いている。

足の方には――ボクに向かって来ていた犬が、先ほどまで押さえつけていた犬に1/3ほど埋まっていた。

 

こいつら……融合して、体の形を変えやがったのか!?

 

掴んでいる舌が舌では無くなる。

組み伏せていたアドバンテージが消え去る。

そして、ボクが次のアクションを起こすよりも腕の動きの方が早かった。

 

――ガキャッッ!!

 

「――が、ァッ……っ!?」

 

後頭部を、叩きつけられた。

 

変形の途中だからかはたまた別の理由か、脆いボクの体であっても頭が粉々に砕け割れるような威力はなかった。

しかし、既に運動機能の一部にマヒを起こしていたボクの頭をさらに砕き削るには十分過ぎる威力だ。

戦慄する。

 

――首から下が、動かない。

 

「フォスっ!!」

「ダメだ、避け――」

 

ドギャアァァッッッ!!!

 

自分に向かって吠え立てていた犬を3つに斬り飛ばしたボルツの警告はしかし、間に合わなかった。

獣の月人が繰り出した掬い上げるような渾身のスマッシュアッパーが、正確にダイヤを撃ち貫いた。

ダイヤはものすごい勢いで壁に叩きつけられ、その衝撃で四肢はもちろん胴や首まで割れて力無く床に崩れ落ちる。

 

「に――兄ちゃぁあああああんッッッ!!?」

 

――ボルツの慟哭。それが致命的なミスであった事を、一体誰が責められるだろうか。

自分の位置を、自分で知らせてしまったのだ。

 

その隙をついて月人の尾がボルツの足に絡みつくと、そのまま窓の外に向かって思い切り投げ飛ばした。

 

「――き、さまああああァァァッッッ!!!」

 

もはや呪詛に近いその声は、ドップラー効果を響かせて校外へ消えて行く。

ボクは、ピクリともしない体でそれを見ているしか出来なかった。

 

――チェックメイトだ。

 

ダイヤは行動不能、ボクも行動不能、ボルツは強制離脱させられた。

ボルツは戻ってくるだろう。

しかし、それより先にコイツは行動を起こせる。

 

「フォ……ス……?」

 

ボルツの殺気を纏った怒声が、気絶していたアレキを叩き起こしていた。

しかし、目に映るのは絶望の光景。

 

「……ゴメン、アレキ……どうか、逃げて……」

 

そんな言葉を、絞り出す。

最早それしか出来なかった。

 

――アレキの瞳孔が、散大したように見えた。

 

「……また、奪うの……?」

 

ぞわり、と強烈な悪寒が体を駆け巡ったような気がした。

 

「アタシから……また、奪うと言うの……?」

 

アレキの髪が、血で染めたような鮮烈な紅に染まって行く。

 

――アレキサンドライト。

浴びる光によって、緑に見えたり赤に見えたりする不思議な性質を持つ石。

じゃあ、それで構成されているアレキは……?

 

「――ふっざけんなああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

 

空気を震わせる雄たけびだった。

それはたまに受ける先生の一喝にも似て、ボクの体にヒビすら入れてみせる。

 

――刹那、ボクに圧し掛かっていた方の月人が細切れになって飛び散った。

アレキの右腕には、いつの間にか鞘を払った剣が握られていた。

 

「アアアあああアアあああァァァッッ!!!!」

 

咆哮が続く。

次は獣の月人に向かって振り抜かれる黒剣。

一太刀にも見えたそれはしかし、次の瞬間には月人をバラバラに斬り裂いている。

防御すらも間に合わない、まさに必殺の太刀筋。

 

ハンデ付きだったとは言えボルツとダイヤがあれだけ苦労した獣の月人を、アレキは一瞬で葬り去った。

 

太刀筋が、全く見えなかった。

『起こり』は見えた。でもそれは最初の一太刀分だけだ。モーションも、一太刀分にしか見えなかった。

一体、何回斬ったんだ?

……多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)と言われたら真剣に信じてしまいそうだ。佐々木小次郎でも敵わないんじゃないのかコレ。

 

「――赤い方のアレキが出た、か。今回は運に救われたな」

 

ボルツが戻って来ていた。

複雑そうな顔をしている。

2種待機の判断。そして離脱させられた時の一幕。ボルツの中では許されないレベルのミスに思えたのだろう。

 

「……知ってるの?アレキちゃん、どうなっちゃったの?」

「月人を見ると、確率で倒れるか『ああ』なる。……相変わらずイカれているな」

 

お前が言うな、と言うセリフは何とか喉の奥で止まってくれた。

 

「あ……あ、あ……」

 

今ので爆発した何かを使い切ったのか、再びアレキは体をガクガク振るわせてバタンと倒れ込む。

 

そして、アレキが細切れにした月人の破片が再びグネグネと動き出した。

 

「まだ動くのか……こいつは……っ!」

 

ボルツが忌々しく剣を構える。

マズい状況だ。

ボクはもう動けない。月人の破片はいくつに分断されたのか、もはや数えられない。

そして戦えるのはボルツ1人しかいない。

 

月人の欠片が形をとる。

 

……それは、なんかもこもこふわふわした小型犬にも似た容姿だった。

戦闘能力の欠片も見受けられない、愛玩動物そのものになっていた。

 

「……は?」

 

声をあげたのは、果たしてボクとボルツどちらだったのか。

 

へっへっへっへと舌を出してボク達を見上げている。

 

そのうちの一匹が、「よくもやったなこんにゃろー」とでも言いたげにボルツに飛びつくと、そのままぽいーんと弾かれて仰向けに落ちた。

「おきれないよー」とばかりに、小さな四肢が空を必死になって掻いている。

それに続いて別の個体が『ボルツ登り』を試みた。垂直に立つボルツを登り切るのは難しかったのか、胸のあたりまで登る事に成功するも、そのままズルズルと落下する。

2匹目、3匹目とボルツに飛びつき、しがみつき、時には弾かれて床に落ちる。

その様相はまるで大量の子犬に「あそんでー!」と纏わり付かれているようだった。

 

ってえか、ボクにも被害来てるんですが。

何匹か僕の上に乗っかって飛び跳ねてるんですが。

 

「……なんなんだ、これ」

 

と言うか……ここまで密集しても再融合しないのはなんでだ?

 

あ、ボルツが剣を振り上げたままプルプルしてる。

さすがの戦闘狂ボルツも、この可愛くてちまいのは斬れないらしい。

 

「……お?」

 

ボクの上に乗ってた子犬が、一斉に降りる。

そして――子犬たちは、ダーッと一目散にどこかへ走って行った。

 

……。

 

……。

 

「……逃げた?」

「しまった!!そういう作戦か!!」

 

ええー……

あざと可愛くなって逃走とか、さっきまでの戦闘は何だったんだ。

 

「っくそ、追ってくる!」

「ああー、待て待てボルツ」

 

更に判断をミスしてしまったと嘆いているのか、すぐさま追おうとするボルツを引き留める。

 

「とりま、あれは放っとこうぜ」

「なんだと?」

 

ボルツがボクに視線を向ける。

 

「あの状態のままでいてくれる限りは、攻撃能力はなさそうだ。それよりもまずやる事がある。2種待機の解除と先生を起こす事だよ」

「……そうだな、すまない。確かにその方が良いだろう。負傷者が2名も出てしまったし、まだ解決に至っていない。――さらに、皆を校内に呼び戻した方が良いと思うか?」

「良いねそれ。鐘を鳴らせばシンシャも気づく。――ここに至るまで、雑が出てなかったのが気にかかる。どっかでジェードとユークとっ捕まえて、意見具申して欲しい。

2チーム1組のフォーマンセルで事に当たる事。あのちまいの探すにしても、まだ見ぬ伏兵や再結合したデカいのと戦うにしても、多分校内の話になると思うんだ。なら、防御を固めた方が良い」

「そうだな。月人の動きも今回は露骨にお前を狙っていた……不測の事態が起きても対応出来るようにするには、フォーマンセルがベターな所か」

「うん、よろしく。……あと、先生を起こすのはコツがいる。ボクの胸ポケットにホイッスルが入ってるから持ってって。先生の耳元で思いっきり吹き鳴らせば何とか起きてくれる。おもくそ揺すって『月人だぁーっ!』って叫ぶのも割と効果がある」

「ジェードが絶賛していた奴か。わかった、借りて行くぞ。ついでにルチルも呼んでこよう」

「よろしくー」

 

ボルツが弾かれた矢のように駆け抜けて行く。

ほどなくして、校内集合を指示する鐘が鳴り響いた。

 

……やれやれ。とりあえず、前半戦は凌いだってとこか?

 

首も動かせない状態で、何とか周りを見回してみる。

大破したダイヤ。意識は残っていないだろう。

アレキも意識を飛ばしてしまっている。

ボクはと言えば、右足破損、体中いたるところにヒビ、後頭部が削り取られて視界が微妙にズレている始末。お陰で首から下がピクリとも動かない。

 

仮に、この状態でさっきのちまいのが何匹か戻ってきた上で融合されたら、かなり痛い事になるんだけど、どうやらその様子もなかった。

腕を千切り取って逆転するような機転があれば、当然思いつきそうな事だと思うのだけど……良く分からない相手だ。

 

「……満身創痍だなぁ……」

 

ポツリとつぶやいた台詞が、むなしく廊下に溶けて行った。

 

 

@ @ @

 

 

はじめに、ボクの頭だけ治してくれないか。

そうすれば、ダイヤの欠片集めも手伝えるから。

駆けつけてくれたルチルにそんな事を言ってみた。

 

「ドクターストップに決まっているでしょう。アホですか。……そう言えばアホでしたねあなた」

 

ルチルさんよぅ……フォスさんだって心無い一言に傷ついちゃったりするんだぜ?

ケガ人にはもうちょっと愛のある言葉を掛けるべきだと思うんです。

 

「ならケガ人らしく大人しくしていてください。欠片集めはゴーストが請け負ってくれています」

「はァーい」

 

釘を刺されてしまいました。

 

それでも施術はボクの方から先にやってくれる模様。早く終わる方を先に回したいらしい。

ボクの方がダイヤと比較したら軽傷だったと言うのもあるけど、年がら年中お世話になっちゃってるからボクの施術は慣れてしまったそうで。

 

「本当は、全方位完全劈開の石の方が、技術的にはるかに難しい筈なんですけどねぇ……」

 

ルチルは、何か悟ったように遠い目をなされておりました。

 

 

――施術中、ボルツが見舞いに来てくれた。

事態がかなり派手に動いたらしい。

見舞いと言うより、その連絡と分析の方が主な用事のようだった。

 

うつ伏せになりながら後頭部をカチャカチャされているこの図は、なんとなく「あっ、あっ、」な感じのポックルさんを思い浮かべてしまいちょっと落ち着かなかったりする。

 

さて、事態の推移だけども。

 

ボルツは先生を起こすのに成功し、事の推移と現状を報告したそうだ。

で先生が状況を見に行ったところ、もこふわと化した月人が一斉に先生に懐いて来たらしい。

最初は近くにいる数体だったのが、遠吠えとおぼしき声を上げると何処からかワラワラ出てきて先生にじゃれつく始末。

 

そしてついには――1体に、再結合したのだそうな。

 

「……戦闘は?」

「無かった。1体に結合した後でもなお先生にじゃれついていたな。『お手』とか『おすわり』とか……先生の言う事は良く聞いていたぞ」

「……あの図体で?」

「あの図体で」

 

なにそのカオス。

と言うか先生も先生だよ。

なぜアレに向かって『お手』とか『おすわり』なんて暴挙を試そうと思ったのか。百歩譲って「いけっ、月人!メガトンパンチだっ!」的な方だと思うぞアレは。

 

「……で、今はどうなってる?」

「他の石も混じって遊んでる」

「マジか」

「マジだ。会敵した時の暴れっぷりがどこに行ったんだと思うような様相だ。微笑ましく遊んでる」

「……ボルツはどう思う?罠だと思う?」

「それは僕がお前に聞きたかった意見だ。なんと言うか、もう訳がわからん。

まあ、仮に暴れたとしても先生が居るから大事にはならないだろうとは思うが……」

 

……。

 

……デスノート破棄時、夜神月の人が変わったような態度を目の当たりにしたLの気持ちがよーわかるわ。

何が何だかわからない……

 

「――その、大人しくなっているって言う月人の今のツラ、拝んでみたくなるなぁ」

「あなた狙われてたんでしょう?治した矢先に開かれたら私も流石にキレますよ?」

「ルチルには悪いが……僕個人の好奇心としては、そのアプローチは見てみたくはあるな。今のアイツがフォスを見た時の反応はかなり気になる。

敵対するのか……それとも大人しくしているのか」

 

敵意を測る、と言う点ではボルツの言う通りなんだよな。

最悪の想定をするのであれば、現在の大人しい態度は全部ブラフで、例えば皆が寝静まったころに襲ってくるとかか。

もしくは……ボクを目標としていた事自体がブラフで、既に目的を完了しているとか?

 

「――ボルツ、一応聞くけど点呼は取った?」

「取った。シンシャも含めて全員無事だ。ダイヤとお前以外はな」

「雑は?」

「影も形も無いな。ただし、石は全て校内に入れたからその後の外については知る限りじゃない」

「シンシャは?」

「緊急措置と言う事で、元々宛がわれている自分の部屋で待機してもらってる。訳を話したら納得したな」

「物的被害は?」

「作戦によって破壊したおまえの携帯糊ケースと、戦闘のあった廊下の壁や床ぐらいだな。資料については、少なくともユークとゴーストに聞いても異常は見当たらなかったと言っていた。アレキについてはまだ気絶したままだ」

 

……。

 

……。

 

「……なんか、ホントもう訳分かんねぇな」

「まったくだ」

 

何しに来たんだよアイツは。

ボクを狙いに来たなら来たで初志貫徹しなさいよ。

罠が仕掛けられてる様子も今のところないし。

対応に困るんですけど。

 

「こっちから仕掛けるのも、何かやり難い空気を作られてしまったからな。アレを狙ってやっているなら大したものだ」

「よねぇ。……しゃあなし、やっぱり後でツラ拝んどこう。護衛頼みます」

「ああ、助かる」

「……開いても、当面直しませんからね」

「うん、大丈夫。その時は、ダイヤを治してゆっくり休みを取った後で良いよ。いつも苦労掛けてゴメンね」

「――まったくもう!」

 

怒りつつも、何だかんだで受け入れてくれるルチルさんが好きです。

 

施術が終わり糊の定着を待つ頃には、お天道様はすっかり暮れていた。

月人の夜の活動記録はない。危惧されていた増援や罠の確率はこの時点で激減した訳だ。

気を揉んだ事を嘲笑うかのように、あっさりと警戒待機が終了した。

 

見舞いに来てくれたシンシャと少し話した。

内容は、おおむねボルツと話した事の焼き増しだ。シンシャなら何か見逃した部分に気付くかもと言う思いもあったけど、やはりそううまく行かないものだ。

シンシャはそのまま夜の見張りに出て行った。

今日一日は留まってくれるかもと思っていたけれど、未だ抵抗があるらしかった。

 

目が覚めたアレキも見舞いに来てくれた。

アレキが居なかったら間違いなく連れてかれていたと思う。

お礼を言うと、複雑そうな顔をしつつもアレキは笑ってくれた。

 

――話してくれたのは、クリソベリルの事だ。

 

ボクが生まれる少し前に、アレキのパートナーだったクリソベリルが連れて行かれた。

アレキが『ああ』なったのはその時から。

月人を見ると髪が赤く染まってバーサーカーになるか、そのまま気絶してしまうと言う体質になったらしい。

 

アレキが月人マニアになったのは、その体質をどうにか改善しようと月人の絵を描いた事がキッカケだったのだそうだ。

そしてその行為は、クリソベリルを奪って行った月人への憎しみを忘れない為の重要な儀式でもあった。

 

――アタシから……また、奪うと言うの……?

 

あの時のアレキの台詞を反芻する。

きっとあの赤いアレキは、月人に対する怒りと憎しみに染まった姿でもあるんだと思う。

 

――獣の月人の事をどう思うかと、聞いてみた。

害意の有無は関係なく、調べてみたいとアレキは言った。

そしてその後は――全て奪って粉々にしてやりたいと、アレキは言った。

 

――どちらも体質が邪魔するから無理だけどね、と取り繕うようにおどけた姿が凄く悲しかった。

 

 

@ @ @

 

 

ボルツを伴って獣の月人と顔を合わせてみた。

奴は先生にベッタリで、尻尾を振りながら先生に撫でられていた。

 

ボクの姿を見つけると、襲ってくるでもなく「キューン、キューン」と弱弱しい声をあげて先生の後ろに隠れてしまった。図体がデカいから全然隠れられていないけど。

 

……え、何その反応。予想外以前に心外なんですけど。

 

「フォス、治ったのだな」

「ええ、先生。まだ絶対安静と言われてますけどね」

 

軽く笑って月人に目線を向ける。

 

「んで……なんでボク、怖がられているんですかね?」

「わからん。他の子にはこう言う態度は取らなかったのだが……」

「ボルツにも?」

「ああ、戦闘した訳だから警戒されるかとも思ったが、特にそんな様子はないな、そう言えば」

 

んむー、とちょっと悩んでから、スッと右腕を差し出してみた。

月人がビクンと肩を上げてズリズリ後退りする。

 

「これはもしかして、アレかな?舌掴んで押さえつけた事が意識されちゃってんのかね?」

「……なるほど」

「?」

 

現場にいなかった先生がキョトンとしている。

でもそれなら、ボルツやアレキも怖がりそうなモンだけどね。

身動き出来ないように封じてから「逃がさん……お前だけは……」って感じに七英雄みたいな事を囁いたのがよほど怖かった?

 

「もしそうなら、戦闘していた記憶がありませんでしたー、なんて事はない訳か。

……先生は、ずいぶん仲が良さそうですけれど……ご存じなんですか?その月人の事」

「いや。知らん」

 

……ふむ。

 

「でも、似たようなものは良く知っている……?」

「……そうだな」

 

何か、複雑な話になりそうな事を察知したボルツが口を開く。

 

「敵意は無いようだし、外そうか?――それに、腹の探り合いに付き合うのは趣味じゃない」

「いやいや、そんなつもりはないよ。むしろ盾になってボクの体を遮って欲しい。どうやら彼とボクは相性が悪いみたいだ」

 

苦笑して、五条に流れるボルツの髪の陰に隠れた。

ボルツ越しに見えたデカい図体が身じろぎしている。

「いない?もうこわいのいない?」とこちらを伺っているのだろうか。

 

「彼……とても強かったですよ。赤いアレキが出てこなければ完敗していたでしょう。ボクと言う枷がありましたが、それでもダイヤとボルツを出し抜いて見せた機転は素直に称賛しています。

……しかしそれを境に、どうやら彼は目的を変更したように思えます。先生と、遊びたかったんでしょうか?」

「わからない。ただ――私に会いに来てくれたのだと、感じているよ」

 

先生の声は、旧知に対するようにやさしげだった。

月人は、ふすふすと鼻を鳴らしながら先生に顔を擦り付けているようだ。

 

「懐いてますね」

「ああ。昔――はるか昔に逝ってしまったが……私の事を、覚えていてくれたらしい」

「あー……もしかして、飼ってました?」

「ああ。とても賢い自慢の犬だった」

 

……。

 

……。

 

「待って、ちょっと待って。今なんて言いました?……『犬』って言いました?」

「ああ」

「どんな進化促進ウイルスぶち込まれたらこんなファンキーな犬になっちゃうの!?しかも分裂・再結合機能付き――アンブレラが涎垂らして欲しがるレベル。もしかして軍事施設の実験動物的な何かで?」

「いやいやいやいや、違う違う!ちゃんとした犬だ。白くて、中型の。ただ、目が……あの子と似ていたのでな」

「目……七つの目がある中型犬……っ!?」

「いやいやいやいや」

 

実はそれ犬じゃなくて妖怪の類なんじゃないのと本気で口にしそうになった。

ボルツが後ろにいるボクに問いかける。

 

「フォス、犬ってなんだ?」

「ああ。ボクが組み敷いたやつがいたろ?あんな感じの動物だよ」

「ほぉー……」

 

分裂して初めて本物に近づくとは、不思議な体の構造をしてやがる。

 

「ちなみに、お名前は?」

「『しろ』だ」

 

『しろ』ですか。

ワンちゃんに付けるオードソックスなネーミングだぁね。

 

「そうっスか――では、しろ君」

 

ボルツの背中越しにひょっこり顔を出すと、目に見えてビクッとしろの肩が跳ねた。

うーん……ガチに怖がられておるのう。

 

「――今回は、キミの勝ちだ。その実力、策謀、そして覚悟。ボクは顧問の位置に居ながら君の前進を止められなかった。アレキが動いてくれたのは本当に運の要素が強かった。

……キミの存在は、今後ボクたちの対月人戦略に大きな変更を強いるだろう。途中で目的を変更したとは言え、それを完遂して見せたキミの奮闘には素直に敬意を表そう。

 

――キミと戦えた事に感謝する」

 

しろも含めて、ボルツと先生まで目を丸くしていた。

 

――わふ。

 

数秒の後、しろが返事をするように小さく吠えた。

ボクはそれに少しだけ笑みを返した。

 

ボルツに声を掛ける。

 

「――以上。ボクも脅威なしと判断したよ。対応の必要もなさそうだ。翻意を腹に秘めていたとしても、ボルツの言う通り先生が何とか出来るだろう。

ルチルにドヤされる前に、ケガ人は大人しく戻る事にする。――ボルツはどうする?」

「あ……ああ、わかった。僕は……ここに残るつもりだ。先生のサポートを続ける」

「了解。……じゃあ、お疲れさまっした。おやすみー」

 

手を振りながらその場を後にした。

 

 

――後から聞いた話によれば。

 

しろはその後、日が変わるより前に、満足したように笑みを浮かべて金色の光に溶けて行ったそうだ。

先生の膝の上で撫でられながら。

光に溶けて行くその一瞬、元の白い犬の姿を見せる。

その姿は、ボクが押さえつけていたあの姿にとても良く似ていたそうな。

 




フォスの博物誌
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その11「犬」
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かつて世界中に広く生息していた中型の哺乳動物。
現在、わが国ではその姿が確認されていないため、6度目の隕石落下までに絶滅したと考えられる。

頭がひとつ、胴がひとつ、手足が2つずつと大雑把なパーツは我々と同じくするが、手足を移動に使用している為、いわゆる四つん這いの形状を取る。

嗅覚、聴覚に優れ、鋭い牙と素早い脚力を備えている。
基本的に群れで行動する生物である。

雑食ではあるが主に肉食であり、獲物を狩る場合は集団で追い回し、急所である喉笛に食らいつく方法を取る。

弱点として口に手を入れ舌を思い切り掴み抑え込むと、ほとんど行動できなくなってしまう。
しかし肉のある生物がこれをやろうとすると、鋭い牙のある口内に手を入れる事になるため大変危険である。

人類とは繋がりが深く、人類史の古くから愛玩はもとより狩猟、戦闘、行動補助など幅広い目的で飼われていた。

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