クリスさん(エリスさん)はやはり苦手らしい
赤い龍ことドライグ曰く、イッセーの性格がこの世界に転生する前と比べでかなりマイルドになったとの事だが、アイツの過ごしてきた人生を聞いていると確かにそうなのかもしれないと、少ない付き合いながらだが俺は思う。
とにかく人間じゃない知的生命体を嫌悪し、向こうから売られた喧嘩とはいえ容赦無くぶちのめしてたと考えれば、その人間に近いけど厳密には人間じゃない奴に対しての態度はマイルドになってる……と思う。
アクアに始まり、めぐみんにゆんゆん……。
クリスに対しては人間種族の筈なのにあんな対応なのかが解せないが、少しだけ変わって来てる筈だ。
殺伐とした修羅と呼ばれる世界でそうならざるを得なかった性格が……。
赤龍帝という
先輩から引き継ぐ形でこの世界の管理をしている私は勿論、先輩が唆してしまった事で転生してしまった彼の監視もしなければならないし、試しに正体を明かしたら殺され掛けたりもした。
ハッキリ言いましょう……彼の力は修羅世界の神々や人外を倒して頂点に近い所にまで登り詰めただけあり、単純に赤龍帝としての力を越えてしまっているし、恐らく私たち女神の力を総動員させて排除に掛かろうとも、彼なら嗤いながら返り討ちにするばかりか、重苦しい殺意と憎悪を向けながら残酷に殺してしまうだろう。
現にエリスである私が身をもって、それでも弱体化したらしい彼に何も出来ずに殺され掛けたのだ。今こうして生きているのが不思議だと思うくらいですね。
「なぁイッセー……俺がもしお前に鍛えてくれって頼んで鍛えて貰ったら強くなれるか?」
「は? どうしたんだよ突然?」
「いや、最近自分の立ち位置に情けなさをだな……」
「あら、引きニートがやる気出しちゃってるんですけど? 何なの急に?」
「っせーな、その引きニート以下に成り下がってるお前に言われたかねーよ。……で、どうなんだ? やっぱり無理か?」
「やる気あるならいけるんじゃないの? 俺だって元々只のガキからスタートしたし」
『ただし、無神臓があったがな』
しかしこの世界へと転生した変化、彼自身にも変化はちゃんとあった。
まず、蛇蝎の如く嫌っていた筈の人じゃない種族に対する対応の僅かな変化。
先輩のだらしなさが知らぬ内に変えたのでしょう、今の彼は見てると相当にマイルドな対応となったと思うというか、私を殺せず戸惑ってたのでそれは間違いないでしょう。
今だってクリスとしてこの場に居る私が見てる中、ギルド裏の広場で彼はタクシー代わりと言うアクア先輩をおんぶしたまま、カズマさんに自分の戦闘技術についてあれこれ語ってますし。
「冒険者ってスキルポイントが割り増しの代わりにあらゆる職のスキルが会得できるんだろ? それを厳選して会得して応用を効かせたら或いは……かもな。コイツみたいに宴会芸スキルなんか取らなければ」
「なるほど……」
「宴会芸って失礼ね。あれのおかげで少しはお金を手に入れられるんだから」
転生前の記録上、彼は単独行動が当たり前、他人に対しての思いやり皆無、人じゃない生物に対しては容赦無く殺害する等々本来なら転生云々無く問答無用で地獄行きになる所業を繰り返してきたのが、まさか先輩によって此処まで変化するとは……。
言ってもないし、言ったら多分増長するので本人には言ってませんけど、他の女神や神々からの評価が実の所かなり上昇してたりするんですよね。
『修羅世界の存在を徐々に更生させてる』
………なんて。
多分本人――特にイッセーさんが聞いたら即座に殺しに行きそうな話になってる事を知らずに、おんぶしてる側とされてる側であるお二人はそれなりに楽しそうに見えなくもない。
しかしながら、それだからこそ解せないんですよ。
アクア先輩の後輩で敵意が無いと訴えてるにも関わらず、同じ女神であるこの私に対しての、未だに変化の兆しが見えない彼の――イッセーさんの態度が。
「カズマよ、横から口を挟むようで恐縮だが、出来れば攻撃的なスキルを覚えるべきだぞ」
「……。その心は?」
「勿論、私との鍛練でそのスキルをぶつけて貰うためだ! 考えるだけで震えが止まらんよぉ……ふふふ!」
「いいえ、カズマさんには私と同じ爆裂魔法を覚えるべきですね! そしてお師匠様と三人で爆裂魔法道を広めるのだー!!」
「広めてどうするんだよ……テロ組織でも作れってか」
「ある程度サポート系のスキルも覚えた方が良いかも……」
「ゆんゆんだけはまともだ……」
わいわいと、自然と集まった面子の中に、クリスとして私も加わる。
「この前言ったと思うけど、アタシ的には盗賊系のスキルもおすすめかな。
結構便利だし」
「盗賊系か……スティールだっけ?」
「そうそう、モンスターの持ち物を傷つけずに先に奪えば、気にせず討伐とかできるでしょう?」
「確かにアイテム確保は大事かもしれない……うーん、悩む」
クリスとしての口調を忘れない様にと努めつつ、先輩をおんぶしながら別の方向をボーッと見ているイッセーさんに然り気無く振ってみようと声を掛ける。
「でしょ、イッセー君?」
「盗賊系ね……ペテン師野郎にはお似合いだな」
が、やはり私に対してだけは一切軟化した様子は無く、警戒心と嫌悪丸出しの顔で吐き捨てる様に言われてしまった。
「相変わらずクリスさんに対しては妙に噛みつくわね。何かあったの?」
「別に……」
「あ、良いの良いの。もう慣れたし、イッセー君ってさ、多分照れ屋さんなんだよ」
「………………殺すぞお前」
軽い冗談すら言ったら殺意と共に睨まれる。
めぐみんさんやゆんゆんさん、それからアクア先輩にはマイルドになってきてるのに、どうしても私にはそのマイルドさが一切向けられない。
一体何が駄目なのか……私にはまだわかりません。
何れはアクア先輩みたいなマイルドさを向けて貰えることを期待したいのですが……。
「あっち行け、シッシッ!」
「アタシは野良犬じゃないんだけどな?」
「んなもん見ればわかる。野良犬の方が一京倍マシだってな」
「酷いなぁ……」
先はまだまだ長そうですね……はぁ。
エリスがイッセーに野良猫みたいに懐かれずに内心ため息を吐いたその時だった。
「緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦備体制となって街の正門に集まって下さいっ!!」
何時もイッセーが突撃しては玉砕している相手であるギルド嬢の慌てた様な声が聞こえ、基礎的なトレーニングをしていたカズマ達は何事かと思いつつ、他の冒険者達に混じってゾロゾロと街の正門前へと向かう。
「何だ何だ? またキャベツの収穫か?」
「いや、様子からして違うだろうな、空気が張り詰めている」
「張り詰めてないのがすぐ隣にいるけどね……」
流れがこの前のキャベツ収穫と似てたので勘違いするカズマにダクネスがそれなりに真面目なトーンで説明しつつ、クリスが微妙な顔をしてその『隣』に視線を向ける。
「微妙に腹へったな……」
「さっき食べとくべきだったわね……失敗したわ」
「あぁ、だからそろそろ自分で歩けよいい加減」
「嫌よ。こんな楽なタクシーがあるのに何で降りなくちゃならないのよ?」
「あ、あのイッセーさん……その、このクエストが終わったらご飯食べませんか? 良いお店を見つけて……」
「あー! 何お師匠様を誘ってるんですかゆんゆんは! お師匠様はこの後私に稽古をつけてくれるんですー!!」
腹へったとぼやきながらアクアに降りろと呑気なイッセー
同意しつつ、降りるのを拒否し、降ろされてたまるかとギュッとしがみつくアクア。
然り気無くイッセーと楽しい時間があったらと食事に誘うゆんゆんに、それを聞いて喚くめぐみん。
緊急クエスト前というのに、他の冒険者と比べるまでもなく呑気なやり取りをし続けるせいで周囲から完全に浮いてるが、本人達にその自覚は無さそうだ。
「いや、寧ろイッセーが真面目だったらこの緊急クエスト誰もクリア不可能だろ。それを考えたらまだああしてた方が良いと思う」
「程よい緊張感は必要だが、緊張しすぎるのも良くないからな」
「まあ、確かにそうなんだけどさ……」
最近妙に馬が合ってるカズマとダクネスに言われてクリスは釈然としない表情で一応納得する。
見事に後ろも右も左も人じゃない種族で通ってる面子だというのに、その態度が当初と比べたら相当マシなのと、その対応が一切自分に向かれないのが実に納得できないとクリスは思っていたのだ。
「あ? 何だオラ、こっち見んな」
「わかったわかった。ったく、アタシに見られて照れるからってそんな言い方しなくても――」
「このアマァ……大概にしとけよゴラァ!!」
だからこそ、こう……小学生みたいな攻防劇をしてしまうのも無理は無いわけで――
「お、落ち着けってイッセー! クリスも挑発するなよな!」
「フシャー!!!」
「どうどうイッセー、一応闇の力が正門の向こうに感じるし、猫じゃないんだから威嚇しないの」
「べーっだ」
キレた猫状態のイッセーにあっかんべーをするクリスというやり取りで結局どこよりも目立ってしまうのだった。
そしてその二人のやり取りと同時に正門が開けられる。
そしてアクアが言った通り、街の外門前にはこれまでのモンスターとは一線を画する威圧感を放つモンスターと思われる鎧騎士が居た。
「デュラハン……」
どうやらデュラハンというモンスターらしく、イッセーにおんぶされたまんまのアクアは特にカズマに対して
説明する。
デュラハン。それは人に死の宣告を行い、絶望を与える首なしの騎士。
種族としてはアンデットとなり、生前を凌駕する肉体と特殊能力を手に入れたモンスターらしい。
明らかにこれまでのモンスターとは違うというのを説明と感じる威圧感で理解したカズマがゴクリと生唾を飲み込む最中、正門前に仁王立ちしていた漆黒の鎧を着た騎士は、兜越しのくぐもった声を放つ。
「俺はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の者だが」
魔王軍という言葉に冒険者達の顔色が変わる。
まさか侵略でもしようというのか……そう考えていた冒険者達だが、どこかこのデュラハンの様子はそういったものは感じられない。
それどころか、やがて首無し騎士というアピールのつもりだったのか、自分の脇に抱えていた首がプルプルとまるで怒りな前触れだと云わんばかりに震え出し――
「俺の城を……お、俺の城を粉々にしたのは誰だぁぁぁっ!!!」
怒りの咆哮をあげた。
「おかげであの日以降部下共々野宿生活なんだぞ!! 誰がやったぁぁぁっ!! てかこの低級の街で何故あんな力を持つ奴がいるんだ!!!」
『………』
どうやら自分の根城をどこかの誰かが破壊した怒りでやって来た……というのは怒鳴り声でわかる。
しかし集まった冒険者の誰しもが身に覚えのない事であり、逆に困惑してしまう。
「あぁ、あれ廃城じゃなかったんだ」
「でもあんな所に立ってたら爆裂魔法の的にしてくださいって言ってるようなものですよね?」
「ぬ!?」
『………』
しかし思いの外犯人は直ぐに……てかほぼ自白した形で割れ、多くの冒険者達の視線とデュラハン騎士の視線がそちらへと向く。
「貴様等か……!」
それはというか、イッセーとめぐみんだった。
すっぴん冒険者とアークウィザードの二人組の仕業とわかり、アクセル冒険者達の多くは微妙に納得しつつの生ぬるい視線を送る。
勿論その中にはカズマ達も混ざっていた。
「お前等かよ!!」
「いや、元を正せばこのガキが廃城だからって的にしたんだよ」
「否定はしません! えっへん!!」
イッセーに軽く小突かれためぐみんが胸を張って得意気になる。
どうやらどちらも反省の色はないようだ。
「そうか……どうやってあんな力を使ったのかは知らんが、犯人が分かったのなら――」
そして思いの外あっさり犯人を特定できたデュラハン……名をベルディアが威圧を込めた瞬間だった。
「分かったら? 何だゴミクズ? 断罪ってか?」
誰よりも、それこそ人外嫌い故に対応が酷いめぐみん、クリス等が可愛く思える程に冷酷な表情で一言、ベルディアに向かって吐き捨てた。
「っ!? 貴様……今俺に何と――」
「聞こえなかったか? あぁ、首の機能が失せてる欠陥だからか? 良いぜゆっくり言ってやるよ―――――――――だから何だよドカス」
何度も言う、イッセーは人外が嫌いだ。
女子供関係なく、人じゃなければその生きた環境故に態度に出てしまう程に大嫌いだ。
それはいくらマイルドになっても変わらない、イッセーが一皮向けられない大きな理由だった。
「城が壊されましたから人間様の住まう都に来ました? くくく、良いよお前……この世界の人間じゃない生物で『俺の知ってるボケ』を見たのは久々だぜオイ」
「何を言ってるんだお前は……! いや、そんな事よりこの俺を侮辱したのだ! それ相応の覚悟は出来て――」
「くくくくく………くくくくくっ………………げげげげげげ!!!」
最初に気付いたのはアクアと隣に居ためぐみん、そしてイッセーの監視をしていたクリスの三人だった。
ベルディアの言葉を無視し、ひとり狂った様にやがて変わった嗤い声を放ち出した瞬間、イッセーの放つオーラが変質したのだ。
「侮辱? したぜ? オーケーオーケー――じゃあ死ね」
『!? アレを使う気かイッセー!?』
「っ!?」
ギラリとした獣の瞳に睨まれ、身体が硬直するベルディアに見える、イッセーの左腕。
それは真っ赤な鎧を思わせる籠手であり、その力は中身を知らないベルディアの中にある感情を植え付ける。
『ヤバイ』
と……。
「アクア、ガキ……別にそのまんまで良いが、離れた方が色々と楽だぜ?」
「は?」
「あ、あのお師匠様……それは一体―――ふぇ?」
だが気付いた時には全てが遅かった。
魔族すら持ち得ない極大なる殺意と憎悪を放つイッセーの全身に鮮血を思わせる真っ赤な、魔力にも似た力が炎の様に溢れ、それはやがて髑髏の上半身を思わせる形へと変貌……。
「な、何だありゃ!? 例のすっぴんが何かスゲーぞ!?」
「ま、魔力? いや、違う……何だあれは……!」
すっぴんだけど何か色々とふっ飛んでるのをある程度知るアクセルの冒険者達がどよめく。
勿論、初めて見るイッセーの力の形を目にしたカズマ達もだった。
「イッセーの技……なのか?」
「まるで骸の骨みたいだが……」
「イッセーさん……」
「赤龍帝のオーラ……ヤバイかも」
驚くカズマやダクネスやゆんゆんの横で、イッセーの大半を知るクリスが焦りながらも聞こえない様にイッセーが起こしてる現象について小さく呟く。
そして離れる事無くイッセーが生成したオーラを形にした髑髏の上半身内に入ってしまっていたアクアとめぐみんも、イッセーの力に守られる形になって驚いていた。
「これは……」
「お、おお……こ、これがお師匠様の力……」
殺意しか感じられないギラギラした目をしながら嗤うイッセーの隣やおぶられてるという、正直怖すぎる場所に居るアクアとめぐみん。
しかし抜けてるのか、そんな殺意に対してよりもめぐみんはその力により魅せられ、アクアは呑気に『この分じゃ早く終わるわねー、お腹減った』といった感じだった。
「き、貴様……その力は何だ。その腕は何だ!?」
久方に感じる本能的な恐怖を圧し殺し、ベルディアが大剣を構えながら吠える。
やばい、まずい、下手こいた。
アクセルという低レベル冒険者の街にこんな……こんな……力を持った男が居たなんて聞いてないと。
「最近力を持て余してたんだよ……。そこにお前というサンドバッグが来てくれた。本当なら例の魔王をぶっ殺せば終わるんだろうけど……くく、なぁ、魔王にも恐怖って感情はあるのかい?」
だが後悔したところで、スイッチの入ったイッセーは止まるわけもない。
武者震い通り越した恐怖を抱くベルディアにニタァと嗤ったイッセーは、生成した上半身の髑髏により力を注ぎ込み、山をも越える巨大な修練僧を思わせる形へと変化させた。
「だからお前でまずは試させてくれよ、この、完成体・修羅龍でな」
「う、うそーん……?」
ここまで来るとベルディアにしてみればいっそ笑うしかできない。
他の冒険者達が驚きの声を上げながら見上げるその先には、このデカブツを作り出したイッセーが、修練僧の形をした巨人の頭部にある頭襟を模した五角形のパーツの中にアクアとめぐみんを連れたまんま立っている。
「おいすっぴんの奴もっとスゲー事してるじゃねーか!!」
「おいこれ勝てるだろ! 確か討伐したら五億エリスだし大金持ちじゃねーか!!」
よくは分からないけど、勝てる気しかしない状況に沸き立つ他の冒険者達と、唖然とするカズマ達。
「あ、あれで弱体化してるって……。
マジかよ。鍛えてくれって言ったのが恥ずかしいんだけど……」
「あ、あの巨体に踏まれたらどうなるのだろうか? き、きっと物凄い事になるのか!?」
「いや死ぬから、やめとこう?(歴代の赤龍帝とは全く違う進化を遂げたと聞いてましたが、ここまでとは……)」
そんな面々と街を背に、然り気無く街の外まで出ていたイッセーは、めぐみんとアクアをそれぞれ隣と後ろに置いたまま、小さくなったベルディアを見下ろしながら更なる領域へと進む。
「まだだ………定まれ……!!」
「うっ……!?」
純粋なる力を形に変え、それを巨大化させた―――だけでは無かったイッセーが握りこぶしを作る。
するとそれまで巨大化して安定してなかったイッセーの力はその形を変え――――
「は、はは、は……そ、そんなアホな……力が完全に安定した、だと……?」
ベルディアを見下ろす巨大な……天狗の仮面を被った巨人へと変化した。
『一誠お前……わざわざ何で使うんだ、完全にオーバーキルだぞこれでは』
ベルディアがその手に持っていた剣を落とし、呆然としてるだろう様子で見上げてる姿を一誠の中から見ていたドライグが呆れ混じりの声を出す。
だがイッセーはそれに答える事無く、どうしたら良いか分からなくなってる様子のベルディアを見下しながら宣言する。
「お前の知るところじゃないが、今俺はかなり弱体化してる。相棒と至った最終モードにはなれないし、多分今のままだと昔ぶっ殺した奴にも負ける」
何の事だか殆どわかってないベルディアに向かってそう言い始めたのと同時に、巨人の手にあった巨大な太刀が手に掛けられた。
「けどそれも却ってテメーにとっては良かったのかもしれない……」
それは破壊の龍帝と呼ばれた様々な理由の一つである純粋な破壊。
「何故なら……」
「っっっ!?!?!?」
太刀が鞘から半分ほど抜かれ、そこから勢い良く抜刀された瞬間、破壊の龍帝の力は異世界にて今示された。
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
「うおっ!?」
抜刀と同時に地面が抉れ、地面を伝いながら遠くにあった山を破壊する。
その余波にベルディアは当たりはしなかったけどぶっ飛び、後ろに『守られる』形となっていたカズマ達他の冒険者を襲う。
だが器用なのか、カズマ達や街はその抜刀にて発生した激しい突風で多少の木々を吹き飛ばされただけで街自体には何の傷も付けられず、もっといえばカズマ達自身の誰もが無事だった。
「ぐ……な、なんだ―――――う……!?」
そして数十メートルはぶっ飛んだベルディアはというと、ギリギリの所で首を守りながら吹っ飛んだ事で胴体と離れ離れになる事はなかったものの、巨人が起こしたそれを目の当たりにして絶句してしまう。
この場所から割りと遠くにあった山々が完全に消し飛び、平地へとなったその場所を。
「や、山が消え……た?」
もう訳がわからないベルディア。
城を破壊した輩にお灸を据えてやろうとしたら、出てきたのは意味不明の化け物で、その化け物はどうしたら良いのかわからない自分に向かって言うのだ。
「ここまで弱体化なら、ここら辺の地形が多少変形する程度で済みそうだな」
本気になるまでもなく自分を殺せると。
「な、何ですかお師匠様! 何なんですかアナタという人は!? 凄すぎてよくわからなくなりました!」
「確かにこれはオーバーキルね……」
『運が悪かったな、アレは』
破壊そのものとなる力。
赤龍帝としての力を極限まで高めた結果至った一つの道。
オーバーキル確定の力。
「ほら、掛かってこいよ魔王軍? 暫く好きにさせてやるから何でもしてみろや?」
「う……うぐぐ……! き、貴様卑怯だぞ! 降りて戦え!!」
「じゃあ降ろしてみろよ……!」
ベルディアの明日はどっちなのか……。
終わり
そんな訳でアホみたいな力を示して魔王軍を蹴散らしたイッセーはすっかり有名化した。
おかげで各所からパーティーの勧誘が来るのだが……。
「もう定員オーバーなんです! お師匠様は渡しませんから!」
「アイツは私の足なの! 居なくなったら困るのよ!」
「や、やっと出来たお友達と離れ離れになるのは嫌なので……」
イッセーが他に行ったら楽できない。
爆裂魔法道が極められない。
やっとできたお友達(と、思ってる)を失いたくない等々で三人の娘さんが相当必死こいてガードする。
皮肉にも人外に。
「黒神ファントム?」
「おう、カズマなら出来そうかもしれないんだけど、覚えてみる?」
「い、良いのか!? それなら是非!」
そしてますます自分が情けなくなり、生前にはあり得なかった向上心を芽生えさせたカズマは、地味にイッセーによって別方向にレベルアップしていく。
「この前の力、頼むからあんまり使って欲しくないんだけど……」
「アンタに言われなくても分かってる。あの時は溜まってた何かを吐き出したかったからな……。あ、言っとくが別にお前に従った訳じゃねーからな」
「わかったわかった……それなら良いけど、なんというかキミって変な意味じゃないけど可愛いよね、意固地な所とか」
「やっぱり喧嘩売ってるだろテメー……!」
秘密に話し合うイッセーとクリスのやり取りはそんなに変わらない。
「黒神……ファントム!!」
「は、速っ――ぶへ!?」
「!? わ、悪いダクネス! だ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……じゃない。な、何だこの全身に走る衝撃は……? た、頼むカズマ、もっとやってくれ!」
修行すればするほど勝手に調教されていくダクネス。
曲者だらけのパーティーは今日も平和だったとか。
そして――
「イッセ~ ふくらはぎ揉んで~」
「テメー全然歩かないで俺に背負わせてじゃねーかよ!! ……………ったくもう」
「あへぇ……気持ちいい~ もっとやってよ~」
「チッ……!」
「日を追うごとに甘やかし具合が半端なくなってるんだけど……」
「今日なんてアクアさん一切地面に足付けないでいたしね……」
「うぐぅ……毎度毎度お師匠様とアクアさんを見てると釈然としないんですけど、何か嫌なんですけど」
「そこだけは気が合うわねめぐみん……」
「うーん、踏みつけるとかはしないのか?」
駄女神はもっと駄目になり、発覚した駄目男はもっと駄目になっていくのだとか。
終わり
補足
元ネタは某柱間ァ!! の人ですよ。
で、再現できた理由が転生者の一人がその系統の力を使ってチョーシこいてたのを猿真似したからです。
その2
力を発散する事が最近無かったので、ちょっとしたストレス解消の意味でこんな事を。
オーバーキルでしたけど。
その3
駄女神さんを更に無自覚で駄目にする駄目男、それがイッセーちゃん。