この破壊の龍帝に祝福を!   作:超人類DX

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続き


アクアンキラー

 よくドライグとは眠った後の精神世界で話をする。

 赤い龍ってなだけあってまんまドラゴンなんだけど、思うによく俺のちっぽけな身体にこんなデカいのが入ったなぁとは思う。神器として封印されちゃったとはいえな。

 

 

「自分の感情をコントロールするって、こんなに大変だったんだな……例の雌女神と『まとも』に喋る度に頭の中が沸騰しそうになるのを何度静めたもんか」

 

『怒りを糧にしてきたからな。最初はそんなもんだろ。で、どうなんだ?』

 

「どうも何も無かったろ。やっぱりムカつくし首の骨でもへし折ってやりたいのは変わらない。

けど、ドライグの言う通り、俺達は所詮外様の存在だ。昔みたいに赴くままに怒りをぶちまける訳にはいかない――――ってのは何となくわかったぜ」

 

『ほう、癇癪坊主が随分と大人になったもんだ。俺は嬉しいぞ相棒?』

 

「茶化すなって。俺だって何時までもガキで要られないくらいは分かってるつもりだよ。

例のエリスって女神が――いや、すべての女神が俺を殺しに来ない限り、俺は俺なりに『我慢』して『理解』をしようと努力してみるよ。

ドライグの言うとおり、俺等の知る役立たず共とは違うみたいだしな」

 

 

 ドライグにだけは俺は隠し事ができない。そしてする気もない。

 俺がちっぽけだった子供の時からずっと見ていてくれた唯一の存在であり、俺が本当に信頼する人間じゃない生物。

 

 有り体に言えばアレか……保護者みたいなもんだなドライグは。

 だから俺は神とやらの封印をとっくの昔に今は失ったもう一つのスキルで否定してやった。

 けれどドライグは今も俺と一緒に居てくれる……それが嬉しくて、安心して……俺は俺で在り続けられる。

 

 

「なードライグ、神器としての封印は否定して逃げさせたってのに、なんで今も俺の我儘に付き合ってくれるんだ? その気になれば俺の中から出て自由になれるってのによ」

『今更過ぎる質問だな一誠よ? 前にも言っただろ俺がお前から離れんのは、お前のこの先を見てみたいだけだ。

何だ、まさか俺を追い出したいのか?』

 

「おいおい、変な聞き方したのは謝るけど、そんな意地悪な事聞くなよな……。

追い出したいなんて欠片も思ってないさ――ていうか、もしお前が俺から抜けてどっか行っちゃったら、地の果てまで追いかけてやるぜ?」

 

『俺にそんな台詞吐いて気持ち悪くないのかよ……』

 

「そりゃあそうだが……もしもドライグが雌のドラゴンだったら多分俺は割りとマジで口説いて―――――うへぇ、ごめん、ドライグが頭にリボン乗っけてる姿想像したら気持ち悪くなってきたわ。萌えボイスが全然想像できないおっさん声のまんまだし」

 

『俺も今自分で想像したら震えが止まらんぞ……』

 

 

 ドライグは人間じゃない。けど俺はドライグが好きだ。

 考えみたら俺……人外は嫌いって喚いてる割りにはずっと昔からドライグと一緒だったんだよな。

 これぞまさに矛盾してるって奴だよな……はは。

 

 

『最終的にどの道に進むかの判断はお前が決めろ。

その選択が間違いだろうが、そうで無かろうが、俺はお前の味方である事を誓おう。

まあ、酷い場合は口を挟むがな』

 

「ったくよ、逆に俺が女だったらお前に抱かれたいくらいだぜ。……ありがとうドライグ」

 

『フン、寒気のする台詞はやめろ』

 

 

 毛色の違う人外を知ってみる……か。クズ共の掃除をした時以上に難解だなぁ。

 

 

 

 

 サシで話したいと言い、何だか心配になる俺達に『大丈夫、流石に殴る真似はしない』とヘラヘラ笑ってまずはクリスと共に外へと出ていったイッセー。

 異常なまでに嫌ってたので、俺はどっちかというとクリスが心配になっちゃったりもしたんだけど、どちらも無傷で帰ってきたのでホッとしたもんだ。

 

 

「何を話したんだよクリスと?」

 

「あーいや……。

いがみ合いするのもちょっと飽きたから、こう……普通にやり取りするのに努めてみましょい……的な。

いやまあ気にくわないのは変わらないんだけどな?」

 

「嘘だろ……あんだけ殺意向けてたイッセーが……」

 

 

 早速次の日朝食の席にて話を伺ってみた所、何とマジで殺す気で追いかけ回してさえいたイッセーが、物凄い譲歩した様な事を言ったもんだから、俺達はただただ驚いた。

 

 

「それ本当かよクリス?」

 

「えーっと……うん」

 

 

 信じられずに思わず朝食に集まってきたクリスにも聞いてみると、彼女は少し曖昧気味に頷く。

 いや、うん……昨日ゆんゆんとどっか行ってからのこの怒濤の展開に俺はもうビックリしかしねぇ。

 

 

「ふーん、あんだけ人外嫌いだったのがどういった風の吹き回しかしら?」

 

「いや……俺は所詮この地じゃ外様だろ? なのに自分が生きてきた世界で物を計ってたのを少しだけ変えてみようかなーって。ほら、郷に入りては郷に従えって奴だ」

 

「お馬鹿なアンタにそんな言葉が使えたなんて驚きねぇ?」

 

「っせーな、言っとくが俺は別に人外嫌いは変わって無いんだぞこの野郎……おいこれ食うか?」

 

「でしょーね。……あーん」

 

「………」

 

 

 俺達にしてみれば驚愕だけど、考えてみたらこの駄目に駄目が二乗した女神にしてみればそんな変わらないのかもしれない。

 何せこう言う前からすでにイッセーに甘やかされてたし。

 

 

「ミルク飲ませて~」

 

「両手くらい使えや。俺は親鳥かってんだ……ったくもう、ほら溢すなよ?」

 

「ごくごく」

 

 

 

「相変わらず気持ち悪いくらいアクアさんには甘いね……未だにわかんないけどなんで?」

 

「イッセーに宿ってるドラゴン……つまりドライグ曰く『孤独拗らせた影響で、他人に頼られる経験が無く、ああいう駄目女だろうと『頼られてる』ってのが無意識に嬉しいらしい。だからあぁなるんだと」

 

「ふーん……。(じゃあ先輩はうってつけだったんですか。なんという偶然……)」

 

 

 そういった意味ではアクアはある意味快挙に近い事をしたのかもしれないとは思えるけど、イッセーにおんぶに抱っこ(物理)なのはちょっと引くわ……俺もアクアの事は言えんけど。

 

 

 

 最近ふと思う。

 『アレ? 女神の業務より楽じゃね?』と。

 

 

「お前さ、何で俺に散々言われてるのに師匠って言うの?」

 

「だってお師匠様は人間とは違う種族が嫌いでしょう? ならそこは仕方ないと割りきって、その上でお師匠様とお呼びしたいんです」

 

「ゆんゆんといい、お前も相当変わってるな」

 

「えー? お師匠様も結構変わってますけどねー?」

 

 

 修羅世界の中でも人格破綻者の烙印をも押されてもっとも危険視されていた男を転生させてからの私は女神としての力をもう一人転生させた引きニート男のせいでほぼ消てえしまい、惨めな生活を送らされる羽目になっちゃったと当初は恨んだりもしたけど……。

 

 

「ですのでお師匠様! 是非とも私とペアになって爆裂魔法道を極めつつ進化させましょう!」

 

「それは嫌だわ」

 

「んが!」

 

 

 人格破綻者と呼ばれていた方の転生者であるイッセーが、思いの外どころかかなり使える男だった。

 それはもう、女神時代ですら無かった程に楽は出来るわ、痒いところに手は届くは……。

 

 

「大体ペアになる意味がわからねぇ。なってどうなるんだ? 形式上じゃ同じパーティなのに」

 

「それは勿論、ペアとなることでより連携を深めつつ故郷にご招待して父と母にお師匠様だと紹介して……」

 

「は?」

 

「イッセーさん、ペアは止めた方が良いです。多分引きずり込まれます」

 

「失礼ですねゆんゆんは。どーせ同じ事考えてる癖に」

 

「………」

 

「何でお前の故郷に行かなきゃならねーんだし」

 

 

 役に立つという言い方はアレかもしれないけど、イッセーは確かに有能なのかもしれないと少なくとも私は思う。

 馬小屋生活から脱却させてくれるし、お金に困らないくらいには稼いでくるし、戦闘力は多分この世界に於て完全なオーバーキルなレベルだし。

 スケベな性格さえ無ければこれ程に使える奴は他に居ない。

 

 

「うーん、人間じゃない生物を理解するのはムズいな」

 

「別に難しい事言ってなくね?」

 

 

 これでもし失ったマイナスを持ってたら最早天然のチートで、今頃とっくに私は女神として復帰して――――

 

 

「どうしたのアクアさん?」

 

「へ? あ、いや……何時までイッセーは私を歩かせるつもりなのかしらと……」

 

「クエストなんだし目的地まで徒歩なのは仕方ないだろうに……甘えすぎじゃないか?」

 

「でも今まではずっとイッセーに足になって貰ってたわよ? てか当然じゃない?」

 

「それはいくら何でも引くよアクアさん……」

 

 

 ……。仮に今私は女神として復活したら、どうなるのだろう? 戻って死人を転生させるか天国に行かせるかの仕事に戻る? ………………あれ、何か違うって思ってるの私は? え、何で? あれだけ女神に戻りたいって今でも思ってるのに……。

 

 

「なーにをシケたツラしてんだよ? あぁ、元々シケたツラだったな」

 

 

 何よ、何なのよ。戻りたいに決まってるじゃない。

 戻りさえすれば、有能だけど一々嘗めた事言ってくるコイツとも、引きニートともおさらばして、上位世界から見下せるんだから戻りたいと思うに決まってるじゃない。

 

 

「……。何よ、話は終わったの?」

 

 

 なのに何なのよ、この複雑な気分は? イッセーのせいなの?

 

 

「一応話は纏まったという意味では終わったけど……

え、何コイツ? 何でこんなフキゲンなの?」

 

「もう歩きたくないらしい」

 

「ほら、何時もはイッセー君がおんぶしてたから……」

 

「そんな距離も無いのに歩きたくないって……どこまで堕落してんだよ……この駄女神は」

 

 

 あぁ、そうよ、コイツだわコイツのせいだわ。

 女神である私は敬わないし、バカだし、スケベだし、すぐナンパしようとするし、少しでも有能と思った自分がバカだったわ。

 

 

「チッ、何だまたか……? ったくしょうがねーな、ほれ、乗れよ?」

 

「お、おいおい、その流れで普通おんぶするかよ? 何時も言ってるけどコイツの為にならないぜ?」

 

「だってしょうがないじゃん。コイツ臍曲げるとひたすら怠いし。

てかもう駄目なのは元からだし、こりゃ更正なんて無理だ無理」

 

 

 ほら、こうやって女神様たる私の額を指で小突きながら嘗めた事言うし。

 

 

「アンタに私の何が分かるのよ……!」

 

「ただの怠け者」

 

 

 私を恐れもせずヘラヘラと笑って見せるし。

 

 

「で? 乗るのか乗らないのかハッキリしろよ。別に俺はどっちでも良いけど」

 

「…………。乗る」

 

「乗るんかい、少しは遠慮してみろよ」

 

「うっさいわね、アンタは黙って私の足になれることを光栄に思えば良いのよ! ほら早く!」

 

「へーへー、減らず口ばっかりだなお前は」

 

 

 私を小バカにする様に笑いながらしゃがんんだその背に身体を預けながら、私は戻った暁にはもっとコキ使ってやろうと心に決めた。

 

 

「はぁ……楽だわぁ。後で足のマッサージでもしなさいよね」

 

「はぁ?」

 

「良いじゃない。この私の生足に触れられるんだから、寧ろ光栄に思いなさい」

 

「笑わせるな、豚足の間違いだろ」

 

「お前ホントいい加減にしないとイッセーだって切れるぞ!?」

 

「切れる? キレてみれば? 私は全然怖いと思わないから」

 

「こ、この駄女神が……!

イッセー! いっそ一回ガツンってやっちまえ!!」

 

「何だよカズマ? 今更そんな怒る事なくね? あ、もしかしてカズマもおんぶして欲しいのか? 別に良いぞ?」

 

「いや違うし! あーもう、聞こえてるだろドライグ もっとこの二人駄目になっちまってんぞ!?」

 

『うーむ……俺もまさかここまでになるとは思わなかった』

 

 

 生きる為に破壊をしてきた野獣に人である事を教えて感謝させるのも悪くないしね。

 

 

 

 

 この日カズマご一行はとあるクエストの為に、とある湖へとやって来た。

 その道中、急に不機嫌になったアクアがめぐみんと割りと普通の会話を終わらせる事で例の堕落モードになり、それを我慢ならんとキレたカズマとで騒いだ道中もあったが、今日のクエストと要は浄化の魔法が使えるアークプリーストたるアクアだった。

 

 

「湖の浄化ってどれくらい掛かるんだ?」

 

「えっと、半日くらい?」

 

「長げーよ」

 

「うっさいわね! じゃあこのメンツで私よりも早く浄化出きるっての!? やれるもんならやってみなさいよ!」

 

 

 湖の水質改善とそこに住み着いたモンスターの討伐というクエストの要はアクアなのだが、思いの外掛かる浄化の作業時間にカズマが文句を言うと、アクアはイッセーにおんぶされた状態のままぷりぷりと怒る。

 

 だが確かにこの規模の湖を浄化させられる魔法を使えるのはアクアだけだし、残りは完全に殲滅型やらドM防御型やら、器用貧乏型やら盗賊型やら、破壊型なのでサポート回復型のアクアにしかできない作業だった。

 

 

「アクアさんが浄化をする間に住み着いたモンスターが襲ってくる可能性がありますので、その時は私の爆裂魔法の出番です」

 

「そんなの使ったら湖がぶっ飛ぶだろうが……」

 

「あ、それなら私の雷魔法で……」

 

「下手したらアクアが感電死するな」

 

 

 浄化の時間は掛かるものの何とかなるという流れになった訳だが、意外な事に問題は住み着いたモンスターをどう仕留めるかだった。

 というのもカズマご一行のオフェンスチームは、はっきり言ってしまうと火力が半端ないのだ。

 

 

「え~? では私の出番は無いんですか? つまんないです」

 

「アクアさんの周囲を警戒すれば良いと思う」

 

「いや、簡単な方法があるぞ、素潜りで仕留めりゃ良い」

 

 

 となると大規模な攻撃は駄目となり、爆裂魔法をぶっぱなしたかっためぐみんは残念がる訳だが、そこに来て一番火力がおかしいイッセーが軽い調子でそう言い出しながら上着を脱ぎ始める。

 

 

「水中でも何時も通り動ける鍛練はガキの頃には既にやってたからな。自慢じゃないがトビウオより素早いぜ俺は」

 

 

 水質が悪くなった湖というのに、平然と飛び込むつもりで居るイッセーにカズマ以外の女性人の顔が驚きに固まる。

 

 

「アンタ、服の下そうなってたの?」

 

「は?」

 

「いえその……この前チラッとは見えたんですけど、そんなに沢山傷跡があったなんて……」

 

「んー? あぁ、このしょうも無い傷の事か? バカみたいにだせーだろ?」

 

「いえ、ダサいとは思いませんけど……うわー……」

 

 

 身体中に刻まれる無数の傷跡を初めて見た女性陣は、何故イッセーがアレほどの力を持っていたのかを何となく理解した。

 アクアとクリスですら、これ程の傷跡があることを今知ったくらいだった。

 

 

「んじゃ取り敢えず全滅させてくるから、浄化の方は頼んだぜアクア?」

 

「……ええ」

 

 刃物で切られた、抉り取られた様な、貫かれた様な……もうとにかく傷だらけだけど彫刻の様に鍛え込まれた身体を晒しながらイッセーは湖へと飛び込む。

 

 

「あの傷ってもしかして、全部人じゃない種族にやられたのかな……」

 

「だからお師匠様は嫌いだと?」

 

「うん……だってそう考えると一番納得できるし」

 

「まるで戦争からの帰還兵みたいだったな……。

けど、一体どんな攻撃だったのだろうか……痛いのか?

それとも苦しいのかな? ハァハァ……!」

 

「お前のその考えに俺はある意味感心すら覚えるわ。てか空気読めやこのドM」

 

「……………浄化を開始するわ」

 

 

 潜ったまま浮上する気配が無い湖を眺めながら、残された面々は一気にお通夜状態になってしまったのは云うまでも無かった。

 

 

『ぎゃおおお!?!?』

 

「シャオラァ!! 鞄にされてーかこのワニ公共が!!!」

 

 

 本人は全然普通なのだが。

 

 

 それから約3分足らずで文字通り湖の水質を変化させた原因である住み着いたモンスターを完全に殲滅したイッセーは、陸に打ち上げといたワニっぽいモンスターの山を前に焚き火で身体と着用していた衣服を乾かしながら、何と殲滅させたモンスターを焼いて食ってた。

 

 

「あ、これ普通に美味いわ」

 

「多少の油っこさが有るけど、確かに美味いな」

 

 

 イッセーに影響でもされたのか、現代っ子だったカズマもすっかりサバイバルな生活に慣れたらしく、生体もよくわからないワニっぽい生物を普通に焼いて食いながら、湖のほとりで地味に浄化作業をしてるアクアを見ている。

 

 

「ブルートゥースアリゲーターだっけこれ?」

 

「違う違う、ブルータスアリゲーターだろ」

 

「どっちも違うからね? ブルータルアリゲーダーだよ」

 

「そうそうそれそれ、そのワニ公の皮って売れるのか? ほら、ブランドバッグとかに加工してよ?」

「うーん……微妙な所かも」

 

 

 イッセーの傷については敢えて触れず、アクアを残して勝手に盛り上がる面々。

 サシで話した夜以降、それなりにクリスとも『まとも』な会話をしてるせいで、一人地味に浄化作業をしてるアクアは疎外感が半端ない。

 

 

「思ったんだけど、カズマもゆんゆんみたいに魔力の類いが溜まられるアクセサリーを持ったらどうよ? そうしたらドライグの力を譲渡できるし」

 

「え、良いの?」

 

「おう、そうすればある程度修行の効率も上がるし」

 

「えーっ!? お師匠様私には!?」

 

「お前に与えると調子こきそうだから駄目だ」

「そんなぁ……。

ゆんゆんが良くて私が駄目なんて納得できないですよぉ……」

 

「そらこの子の方が真面目だから当たり前だろ」

 

「……………ふふん」

 

「い、今私の事を鼻で笑いましたよねゆんゆん?」

 

「さぁ? 私には何の事だか…………フッ」

 

「今また笑った! 絶対笑った!!」

 

「それと、それなりに身体が出来てきたカズマに教えてみたい技的なもんがあるんだけど、覚えてみるか?」

 

「え? 俺に……?」

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 わいわいと楽しげにワニの死骸の山を肴に盛り上がる面々……とは裏腹に地味に浄化作業中のアクア。

 

 

「まず全身の力を抜く、そして脱力の極致に達した瞬間、全身の筋肉をフル稼働させる…………と!!!」

 

「うわ!?」

 

「っ!?」

 

 

 途中空気が破裂するような音でビクッとしてしまうアクアだけど、振り向いて見ても誰も此方に意識を向けておらずイッセーが少し離れた所で巨木を粉々にしてた。

 多分何かやったのだろうとは思ったが、浄化中故に会話に加われない。

 

 

「名を黒神ファントム。むかーし、一度きり会った変な女に教えられた技術のひとつなんだけど、これをカズマに教えようと思う。…………覚える気はあるか?」

 

「お、俺にできるのか……? そんな凄そうなの……」

 

「途中で投げ出さなければいける。ガキの頃の俺でも出来たんだ、カズマにだって可能さ」

 

「お、お師匠様の引き出しの多さにはただただビックリです……」

 

「凄い……」

 

「ここまで来ると笑っちゃうよ」

 

「是非覚えるべきだカズマ! 修行相手は私に任せろ! というか私を木偶人形として扱ってくれ!」

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 アクアはもう我慢限界だった。

 

 

「ちょっとぉぉぉぉっ!! 私今物凄く頑張ってるんですけどぉぉぉ!!! 何でアンタ等だけで楽しくやってるのよぉぉぉっ!!!」

 

 

 怠けるのは好きだが、誰かが怠けてる横で仕事をするのが嫌いなアクアが怒号をあげる。

 それでも浄化魔法を継続してる辺りは妙なプロ意識を感じる。

 

 

「何なのよさっきから勝手に盛り上がって! 仕事しろ仕事を!」

 

 

 うがー! と吠えるアクアが特にカズマとイッセーに対して怒鳴り散らす。

 だがイッセーもカズマも平然としている。

 

 

「仕事も何もこのワニ公の山を見ろよ? ちゃんとしたじゃん」

 

「う……じゃあ暇ならこう、サポートするとかあるでしょう!?」

 

「何しろってんだよ? 三三七拍子でもやれってか」

 

「それくらい考えなさい! だからアンタは引きニート

なのよ!!」

 

「引きニートはオメーのせいでとっくに卒業しとるわ!!」

 

 

 未だに自分の現状を棚にあげてカズマを引きニート呼ばわりするアクアにむきになって言い返すカズマ。

 しかし確かにアクアの浄化が終わるまで遊んで感は否めなかった。

 何せモンスター処理はイッセーがすぐやっちゃったせいで。

 

 

「てかオメーはイッセーに寄生してんだから半日程度働くくらいで文句言うな!」

 

「はぁ!? アンタに言われたくなんですけど!?」

 

「俺は俺でやれるだけやってますぅ! イッセーにちょっとだけど生活費渡してますぅ!!」

 

「え、そうなんですか?」

 

「おう、貰ってるよ。俺はカズマだし自分の小遣いにしろって言ってるんだけどな。

てか、そこら辺はダクネスが知ってるだろ?」

 

「うむ、よく私とクエストしてる」

 

「いつの間にそんな事してたんだ……へー?」

 

 

「ほーらな!」

 

「偉そうに……! きぃぃっ!!」

 

 

 勝ち誇った顔をアクアに向けるカズマにめちゃんこ悔しがりつつもプロ根性で浄化を続ける。

 知らん間にチマチマとクエストをやって小金を稼いでイッセーに渡してたなんて知らなかったとはいえ、よりにもよってカズマに見下されるのは嫌でしょうがなかった。

 

 だがそれを知らされて納得できる程大人じゃなかったアクアはとにかく自分を差し置いて遊んでるのが許せず、とにかく文句をポンポコと吐きまくってた時だった。

 

 

「きゃあ!?」

 

 

 女神の癖にバチでも当たったのか、子供みたいな癇癪を起こしていたアクアが足を滑らせ、まだ浄化の済んでない緑掛かった色の湖へと転落してしまったのだ。

 

 

「わぷっわぷっ!?」

 

「何やってんだよあの駄女神は」

 

「コントみたいな落ち方してやんの……ばっかでー」

 

 

 バチャバチャと湖に落ちてもがくアクアをケタケタと笑う男の子コンビ。

 しかしその内文句を言いながら上がってくるのだろうと思ってたのに、さっきからガボガボと何かを訴えながら徐々に沈んで行くアクアの姿に違和感を覚える。

 

 

「アクアって何か水が得意って言ってなかった? てか、ルーツだろ?」

 

「その筈なんだけど……あるぇ?」

 

「ちょ、ちょっと二人とも、ほ、本当に溺れてない?」

 

「いや、溺れてるだろ」

 

「カナヅチじゃない感じといいますか……」

 

「もしかして足をつった……とか?」

 

 

 やがてブクブクと完全に沈み、全く浮上して来ないのを眺めていたゆんゆんの小さい声に、カズマ達は一瞬無言になり――

 

 

「おいおい、水を司る云々言ってたのに溺死とか笑えないギャグに昇華させるなし……ったくもう!」

 

 

 風の如くスピードでイッセーが飛び出すと、先程モンスターを始末する際に湖に入った時の『仕込み』も忘れ、沈んだアクアを助けるために飛び込むのだった。

 

 

 

「もう嫌ぁ……アオコだらけでヌメヌメになるし」

 

「はぁ……」

 

 

 不慮の事故で落ちた所を引き上げて救出したイッセーは、アクアと揃ってアオコだらけでヌメヌメになってしまっていた。

 

 

「さっきブルータルアリゲーダーを討伐した時に服が不自然な程に濡れてなかったのは、デュラハンで見せたあの力を使ってたからなんだね」

 

「あぁ……だがそれも無意味だったがな」

 

「ひっく……ひっく……早くお家に帰りたぁい!」

 

 

 それでもメソメソと泣くアクアを引っ張り、やりたくなった力の譲渡でブーストさせるという裏技で湖の浄化自体は予定の3分の1で済んだが、アオコっぽいものは取れたけど同じくヌメヌメと臭いが取れずにすっかり気分が落ちていた。

 

 

「ぐすん……」

 

 

 一応ブーストさせたアクアの浄化魔法で帰り道には既に元には戻っていたが、それでもアクア的にメンタルが砕けたのか、イッセーにおんぶされた状態でまだメソメソしてた。

 

 

「普段まともに歩かないからこうなるんだろ……」

 

「くすん……」

 

 

 足をつった理由も容易に想像出来た為、同情はしつつも何気に厳しい一言を貰うアクアに言い返す気力は無さそうだ。

 

 

「大丈夫かー?」

 

「全然大丈夫じゃない」

 

「だろうな、水が得意のお前が足つって溺れたんだから、精神的ショックは結構デカい。

なるほどね、そこんところは俺と変わらないらしいねお前は」

 

「………くすん」

 

 

 そんなアクアをイッセーは人外嫌いが嘘の様に、妙に優しく子供にするかの如くあやしている。

 出会って僅か一週間足らずで人外嫌いそのまんまの中、理由不明な程に例外的扱いをされてるというからなのか、軽く下手くそに歌まで歌い始めたイッセーにカズマ達は微妙に気恥ずかしい気分になる。

 

 

「泣かないでアクア~♪ お前は傲慢くらいが調度良いし、見た目だけなはまぁまぁだかるぁ~♪」

 

「ぐすん……な、何よその歌?」

 

「今即興で作ったアクアの歌。

どーよ、中々だろ?」

 

「……下手くそ」

 

 

 

「自立心を覚えさせるために苦労してあの駄女神引っ張り出したのに、完全に失敗しちまった……」

 

「どうしても裏目に出るよね……まるで何かしらの加護でもされてるみたいに」

 

「お師匠様ってアクアに何かする時が一番楽しそうな――うっ!? な、何ですかこの胸の痛みは……!? も、もしや私の中に隠されてる闇の力が増幅を……!?」

 

「や、やめてよめぐみん、私も段々……うぅ……」

 

「うーむ、鬼畜さが足りん」

 

 

 アクアの図々しさと、イッセーの妙な献身さが上手く噛み合い過ぎて気持ち悪い事になってる姿を見て、カズマは軽く頭痛がするとばかりに額を押さえ、未だに解決の兆し無しな駄女神と、ある意味駄目男を仲間達と生ぬるく見るのだった。

 

 

 湖浄化クエスト(裏テーマ・アクアの堕落改善作戦)

 

 成功したけど……失敗。

 

 

 だがこの時は知らなかった。

 街に戻った時に偶々出くわしたとある少年が無謀にも……。

 

 

「女神様! キミ、女神様に何をしたんだ!?」

 

「は? 何って……おんぶ?」

 

「そんな事は聞いてない! 何故女神様をおんぶなんてしてるのかと聞いてるんだ!!」

 

「むにゃむにゃ……」

 

 

 うっかり間違って地雷でも踏みそうな男子君がよりにもよって割りと普通に困惑してるイッセーにいきなし絡みだしたせいで、カズマ達は別の意味でハラハラする事となったとか。

 

 

多分次回に続く。

 

 

 

 

 

 街に戻るや否や、いきなし見覚えのない明るい茶髪の男に絡まれたカズマ一行……というよりアクアをおんぶしてるイッセー。

 どうやら話を聞いてみると、彼はアクアによってこの世界に転生した転生者らしいのだが……。

 

 

「何でって言われても、コイツがやれって言うから……」

 

「コイツとは何だ! 女神様に向かって!!」

 

 

 よくはわかないが、どうやらアクアの信者らしい。

 イッセーの立ち位置に文句を付けてくる美少女連れの転生者に取り敢えずイッセーは怒りもせずにかわそうとする。

 

 

「おいアクア、お前に転生させて貰った奴が何か言ってるんだけど」

 

「むにゃむにゃ……ふぇ?」

 

 

 途中で面倒になり、取り敢えずいつの間にか下手くそと罵ってたイッセーの即興アクア応援ソングですやすや眠ってた所を起こして事情を説明させようとしたのだが……。

 

 

「誰よあんた?」

 

「へ?」

 

 

 アクアはどうやら覚えてなかったらしい。

 

 

「え、おんぶの理由? そんなのイッセーにおぶって貰った方が楽チンだからだけど? それがなにか?」

 

「あ、い、いえ……」

 

 

 そしてアクアに言われて何も言えなくなった転生者は……。

 

 

 

 

 

 

 

「一対一の勝負だ!」

 

「……………………」

 

 

 連れの美少女二人に応援されながら、何とよりもよってカズマじゃなくてイッセーに勝負を挑んだのだ。

 

 

「もし俺が勝ったら女神様は貰う!」

 

「ば、ばか野郎! どういう相手なのかも見切れないのか! 親切心で言うけどやめとけ!!」

 

「レベルすら上げられないすっぴんでパーティーに寄生してるような男に俺は負けない!!」

 

「バカなのかアイツ!? てかバカだろ!」

 

 

「て、彼は言ってるけど、どうする? このままお前が彼の所に加われば解決しそうだけど」

 

「はぁ? 嫌に決まってるでしょうが。アンタをコキ使えるこの環境から抜ける意味がわからないし」

 

「でもあの様子じゃ楽させてくれそうだがな……」

 

「う……、そ、それでもよ! 良くわからないけど嫌なの! 良いから手加減気味にパパッと片付けなさい! そして足のマッサージをしろ!!」

 

「お前ってホント……くく、おかしいよな? 人間じゃないのに最初からずっとお前に何言われても腹が全然立たねぇや。

オーケーオーケー……ならパパッとやるさ」

 

 

 ヒヒッと嫌な笑みを浮かべたイッセーにカズマ達があちゃーと片手で顔を覆うしぐさをする。

 そう……終わったなと。

 

 

終わり






補足

ドライグがめちゃ大好きなイッセー君。
若干キモいレベルになってるけど、仲良しなので問題なし。


その2
エリスさんに対して、びっくりレベルにまともに対応しようと頑張ってみる事にしたイッセーくん。
まあ、人外嫌いなのは別に変わっちゃいないので微妙ですけど。


その3
だというのに、ほぼ初期からイッセーに色々とめちゃくちゃな事を言っては、普通に応じてもらえるアクアさん。

女神らしからぬ性格故に波長が面白い程に合っちゃったらしい……と、ドライグの見解。
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