もっと前にアクアさんみたいな神様と出会ってたら、イッセーも違っていたのかもしれない。
チート転生者ってのは良く聞く話だけど、思うにイッセーの場合は果たしてチート転生者の位置付けになるのだろうか?
転生数日でしれっと裏ボスをぶっ倒す。
手からオーバーキルなビーム出す。
魔王軍の幹部を魔力に似た力で作った巨人で粉微塵にする。
更に言えばその力を他人に譲渡して一時的にブーストもさせられる。
等々、聞くだけならもろにチート転生者なのだけど、何故か俺は嫌悪感はない。
それは多分、アクアの話によって知った神に匙を投げられた世界の出身で自分自身で開化させた結果チートに見える力と知ってるからなんだろう。
でなければ生き残る事すら出来ない世界では生きられなかったのと、そのチート転生者に人生をめちゃくちゃにされたという経験をしていると聞いたからってのもあるのかもしれない。
あと、性癖っつーか女の好みが我が儘に加えてその好みのタイプからは圧倒的にモテないのも大きいのかもしれない。
何せナンパしては玉砕してる様な奴だし。
つまり何が言いたいのかというと――
「女神様!? 女神様じゃありませんか!!」
イッセーの中にある地雷は踏んじゃダメ・ゼッタイ。
だからマジで頼む、めぐみんの再来にならないでくれ……。
街に戻るや否や、いきなし見覚えのない明るい茶髪の男に絡まれ出したカズマ御一行――というよりは、湖浄化クエストの帰り道ずっとアクアをおんぶしていたイッセー。
全然見覚えも会った事もない高そうな鎧に身を包む男にイッセーも軽くびっくりしたのだが、それも一瞬の事だった。
「ちょっとごめん、いきなり何なんだよって言いたいけど、その前に声のトーンを下げてくれるか?
臍曲げた連れがやっと落ち着いて寝てるんだ」
「すぴー……すぴー……」
「っ!? そ、そうなのか、す、すまない」
タイミングの問題だったのか、めぐみんの時とは違って比較的穏やかに話すイッセーに、男は反射的に頭を下げると、横からカズマが訝しげな顔で口を開く。
「アンタ誰だ? 今アクアを女神様って言ったが……」
女神を自称してるから多少なりともそう認識されてるとはいえ、ほとんど信じて貰えてないアクアの事をハッキリ女神様と宣った明るめの茶髪で顔立ち良しな男にカズマがイッセーの割りと普通な態度に内心ホッとしつつ問いかける。
てのも、めぐみんの時みたいに『ぶっ殺すぞガキャァ!!』と、ド三流のチンピラみたいに怒鳴り散らしてトラブルに発展すると思ってたからであり、現にその被害者第一号のめぐみんは微妙に解せないって顔をしてる。
「む、そういうキミこそ何者――――もしかして二人は転生者か?」
男の口にした言葉にカズマは『やっぱりな』と内心ごちる。
イッセーも既に確信はしていたが、その顔は相当に嫌そうな顔だった。
「うっわ、改めて転生者って立場と自覚するだけで、こんな凹む気分になるとはね」
転生者に復讐した自分が、その転生者そのものになってるというと改めて自覚させられ、そんな自分に軽い嫌悪感を抱いてしまったらしい。
「取り敢えず女神様に挨拶をしたいのだが……というかキミ、何で女神様を背負ってる?」
「何でって、コイツがやれって言うからだけど」
「コイツだと? 女神様に向かって何て傲慢な口の聞き方を……!」
転生者らしい男がイッセーのアクアに対してのコイツ呼ばわりに目くじらを立てながら更に絡み始めた。
イッセーを知ってる者からしたらハラハラしてしまうのだが、無知というのは素晴らしいものらしく、めんどくさそうにかわそうとするイッセーに食いつく転生者の男。
「キミだって女神様によって転生できたのだろう? だったら敬って然るべきだというか、そうやって気安く密着すべきでは無いと思うぞ?」
「………」
「ちょっとオイ、親切心で言うがそれ以上言うのはやめろって……」
「キミに話して無い、ちょっと黙っててくれ」
どう見ても気持ち良さそうにすやすやと呑気に寝てるアクアをおんぶしながら、見知らぬ男に説教されるイッセーが何を思ってるのか読めず、ハラハラしながらも割りと本気の親切心で忠告するカズマだが、転生者男は全然聞く耳を持ちやしない。
「おいアクア、ちょっと起きろ」
「うへへ……そうそう、背中流しなさいよイッセー……うぇへへへ」
「なんちゅー寝言を……」
いい加減鬱陶しくなってきたイッセーは、取り敢えずアクアを起こして対応させようと、おんぶから下ろしてペチペチと頬を叩いて起こす。
その行為に転生者の顔つきがまた変わるのだが、そこはもう無視し、夢でも見てるのかアホな寝言を言ってるアクアが間抜けな顔で目を覚ます。
「ふぇ……? にゃに? お風呂は?」
「風呂なんか入ってねーよ。それよりお前を知ってる男が居るんだが、何とかしてくれ」
「私を……誰よ?」
「お久しぶりです女神様、僕です御剣響夜です!」
ねむねむ……と目を擦ってるアクアに御剣響夜だったらしい名前の転生者男が張り切り気味に挨拶をするのだが……。
「? どなた?」
「はい?」
悲しい事にアクアは御剣を覚えてすら居なかったらしく、めっちゃ真顔で誰と返した。
それこそまるでコントみたいなタイミングだった為に思わずカズマ達は吹き出してしまう。
「そんな! 僕ですよ女神様! 御剣響夜ですよ、この魔剣グラムを女神様より頂いた……!」
「あー……そういや居たわねそんな奴。今まで数多くを転生させたのと、イッセーのインパクトが大きすぎて忘れてたわ」
「イッセー……? というとこの二人のどっちかの事ですか?」
完全に忘れられてた事に軽いショックを受けつつも、アクアにとって一番印象に残ってるらしいイッセーという名前の転生者が二人の男のどっちかだと踏んだ御剣がカズマと――
「そこのお嬢さん二人、俺の名前は兵藤一誠ってんだが、実に可愛いらしくて俺のハートはどっきゅんこしちゃったよ! ねぇねぇ、二人の事もっと知りたい、だから軽くお食事でも――」
御剣に引っ付いていた美少女二人にいつの間にかナンパしてたイッセーを見て……絶句してしまった。
「お、おい! 人の仲間に何をする気だ!?」
さっきまでのローテンションが嘘の様にハイテンションになってるイッセーに御剣が突っかかる。だがイッセーは無視して美少女二人のナンパをやめない。
「ちょ、ごめん後にして! ………あ、俺の事はイッセーって呼んでほちぃな? いや呼んでくれ! それだけでテンションが上がるから――」
と、御剣をガン無視して取り巻きの美少女をナンパするイッセーだが、何故失敗するのかが実によく分かるナンパのやり方であり、それを見ていたカズマ達でも特にめぐみんとゆんゆんと、それから何故かアクアが不満気味な顔をしてるのにも気付かない。
そして――
「キモい! 寄るな!」
「キョウヤじゃない男が近付くな!!」
御剣大好き美少女二人にあっさり拒否されてしまったのもお約束だった。てか罵倒までされた。
「…………………き、キモい……。
ふっ、でっすよねー? あ、あははは、ごめんよ? あはははははは」
美少女に罵倒されて一発でへし折れたイッセーは、睨み付ける美少女に涙声で謝ると、最初は仲間に唾つけようとする奴と怒った御剣すらも若干同情するレベルで凹むと、そのまま少し離れた所で体育座りをし始める。
「お、お師匠様大丈夫ですか?」
「フッ……わかってるよ、何度も玉砕してるんだから自覚してらぁ……どーせ俺はキモいさ……ふへへへへ」
「そんな、キモいなんて思いませんよ私は……!」
「変な所のメンタルが弱いねイッセー君は……」
今まではやんわり拒否られてたのでダメージは少なかったが、今回ばかりはガチガチの拒否を受けたせいか、珍しくイッセーが凹んだ時のアクアみたいな事になってしまい、そんなイッセーに意外な気持ちと共に変な気分を感じながらよしよしとクリス、めぐみん、ゆんゆんがメンタル回復ケアをしている。
それがまた驚く事に、然り気無く頭を撫でてみてもイッセーはその手を叩き落とそうとはしなかった。
「キモいって言うのはひどいだろいくら何でも……お前の仲間」
「い、いやまぁ確かにそうかもしれないけど、いきなりあんな真似を女性にする彼の態度もいけないだろ」
「否定はできないわね、全くバカねぇイッセーは」
良くはわからないが、拒否られたイッセーを見て微妙にホッとするアクアが、体育座りしながら丸まってる姿を軽く笑う。
結局彼が体育座りを止めるまで暫く停戦となったのは云うまでも無い。
「しかしキミはどうやら女性好きらしいな。キミが勝手に凹んでる間に街での噂を聞いたのだが、女性を取っ替え引っ替えに侍らせてるとか」
「…………………」
メンタルが多少回復したイッセーに対し、取り巻きの美少女を背中で守りつつ話す御剣にイッセーは否定するのも疲れたのか無言だった。
「それに女神様に湖の浄化をさせておいて自分達は見てただけなのも許せない。キミ達の職はなんだ?」
「冒険者だが……」
「すっぴん」
「最弱の冒険者に冒険者以前のすっぴん。
なるほど、しかし仲間はアークプリーストにクルセイダー、アークウィザード二人にシーフか。
中々パーティメンバーには恵まれているのに君達は最弱職となれば、寄生してるとしか思えないな」
「「………」」
やがでカズマにまで飛び火し、軽くディスられてしまうのに対し、何かもう色々とめんどくさくて言い返す気力もわかなった。
「おいお前、先程から私の仲間に随分な言い方だな。他所から来たのかは知らんが、よく知りもせず勝手な事を言うのはやめてもらおうか?」
「む……」
だがそんな二人を庇うように、何時もの様子が成りを潜めていたダクネスが御剣を睨む。
だが御剣にしてみればどうにもこの男二人の立ち位置が立ち位置だけにそれが信用できない様子。
「わかった、なら少し手合わせ願おうか。さっき仲間に唾付けようとしたそこのキミの実力を確かめさせて貰おう」
「は?」
「!?」
だからこそ御剣は、そこまで言うならと手合わせを申し出て来たわけだが、よりにもよって指定した相手がイッセーという奈落の落とし穴。
「お前、それはやめろ、てかどういう相手なのかも見切れないのかよ?」
「見切ってるつもりだし、心配しなくても手加減はするさ。が、もし僕が勝ったら女神様を貰うが……」
「は? 何で私が……」
「だってそこの男は僕の仲間をナンパするようなスケベ男なんですよ? 女神様の身が危ないじゃないですか! 大丈夫です、僕は必ずや勝利して女神様をお守りします!」
スケベは否定できないが、人外嫌い故にアクアに対してそんな感情ゼロという事を知らない御剣が軽く自分に酔うようにアクアに跪く。
その後ろで取り巻きの美少女二人が不満そうにしてのにも気づいてない。
「という訳だスケベ君。僕と戦って貰おうか」
「……………………………。果てしなく俺にメリットが無いんだけど……おい、どうするアクア?
この彼はどうやらお前が欲しくてしょうがねーんだと。加わってやったら?」
「嫌よ、アンタをコキ使えるこの現状から抜ける意味がわからないわ」
久々に真正面から喧嘩を売られたイッセーがめんどうそうにアクアの意思を耳打ちで聞くと、本人は嫌だと言い切った。
それどころか身の危険を感じるとばかりに自分の身を庇っていた。
「早く帰ってお風呂入ってマッサージしてもらってご飯食べたい。だからとっとと終わらせなさい」
「お前ってホント……くく、不思議だな、何でか知らねーがお前に嘗めた事言われても全然腹が立たないや」
「少しは私に対する信仰心でも芽生えたんじゃないの?」
「それとは違うが……ま、良いや仰せの通りに」
減らず口が減らないアクアにクスクスと笑ったイッセーは、既に魔剣を構えて戦闘体勢に入っていた御剣と向かい合い、自然体のままその場に立つ。
「ふわぁ………あ。良いよ、好きなタイミングで来な」
「バカにしてるのか?」
最弱以下のすっぴんのやる気の無さに少しムッとする御剣。
そんな彼に対してイッセーは……。
「家畜を殺して食うのに、嘗めるもヘッタクレも無いだろ」
「……!」
嘗める嘗めない以前に相手にもしてないと、家畜を食う人間の気持ちを例えに言い放ったその瞬間、カッとなった御剣が転生により強くなった力を全力で振るうために、目にも止まらぬ速さに見える速度で棒立ちしてるイッセーに肉薄し、大きく跳躍した。
「テヤァァァッ!!!」
タイミング、速度、何から何までドンピシャでイッセーは反応すらしてない様子で勝ちを確信した御剣は、つい手加減するのを忘れて魔剣を全力で振り下ろした。
だが――
「………え?」
「ふわぁ……」
振り下ろされた剣からボキッと折れる音と共に振り下ろした剣が急激に軽くなった。
一瞬の出来事に目を見開く御剣は着地し、切り裂いた筈のイッセー……そして自分の持っていた剣とを交互に見ながらショックを受ける。
まず、イッセーを切り裂いた筈なのに本人は変わらず怠そうに欠伸をしていた。
まさか避けたのか? と一瞬勘ぐった御剣だったが、そうじゃなく、ちゃんと当たってはいたのだ。
だが当たったというだけであり、更に言えばイッセーは無傷だし、御剣の持っていた魔剣は――
「あーあ、折れちゃった?」
「う、嘘……だろ……?」
中程が見事に折れ、御剣の目の前へと軽い金属音と共に転がっていた。
「ぼ、僕の魔剣がぁぁっ!?!?」
当然発狂する御剣と、心配して寄り添う取り巻きの美少女二人。
そんな二人を無言で見下ろすイッセーの視線に、やっと気付いた恐怖に怯えた顔で後ずさる。
「な、なにをした!? 女神様から頂いた特典能力か!?」
「カズマも俺もそこのアクアを道連れにしたせいで、んなもん貰っちゃいない。
これは俺がこの世界に来る前から鍛えて手にした――――って言っても信じられないか? キミの世界には悪魔も堕天使も天使も、妖怪も、神も、神器を宿した人間も居なさそうだしな」
「な、なにを……!」
御剣を血祭りに上げずに済みそうでよかったとホッとしてるカズマと自分に与えられたもんは何も無いと教えるイッセーは、剣を折られて取り乱す御剣に向かって続ける。
「心配しなくても俺はキミに何にもしない。まあ、この世界に来る前なら殺っちまってたかもしれんが、皮肉な事に俺も転生者になっちまった。
自分の事を棚に上げて転生者はクソだなんて言える訳も無いだろ?」
「う……」
ニコニコと、違和感しか感じない笑顔に恐怖を更に加速させる御剣と、そんな男をさっきまで罵倒してしまったと顔を青くする美少女二人は後悔した。
「でも今俺は何故か知らないけど、妙にムカムカしてる。
で、何故かと考えた結果、キミはさっきあのアクアを『自分が勝ったら寄越せ』とか何とか言ったよな?」
「い、言った……」
「よなぁ? まあ、確かに人間じゃない生物に人権があるとは思えないが、今までアクアとカズマに始まり、ダクネスやらクリスやらめぐみんやらゆんゆんやらとそれなりに楽しーくやって来たんだわ。
その結果――」
ニコ~っとしていたイッセーがここで冷血的な真顔になる。
「アクアを物呼ばわりされたら、意味わかんねーくらいムカついた」
そして怯える三人に例の赤い髑髏の上半身……未完成型の赤修羅を見せると。
「だからさぁ……この意味不明なムカつきを何とかしてくれよ……頼むぜ? なぁ?」
「「「ひぎゃぁぁぁっ!?!?」」」
御剣達の断末魔が街全体を響かせたのであった。
「アルティメット・阿修羅・バスター!!!!」
そう、赤修羅を器用に自分の脇腹に腕だけ展開させて完成させたマッスル技で。
結論から述べるとイッセーはマッスル技を一回使って撃破した後、御剣を見逃した。
別に恨みも無かったし、剣をへし折られてメンタルも折れちゃってたので追撃するのもちょっと可哀想かもしれないと思ったのも大きいし、二度と会うことも無いと思ってたからだ。
「あへぇ……気持ちいぃ~」
「俺は何時からマッサージ屋になっちまったんだろうか……」
「とは言いつつお師匠様は何時もアクアを甘やかしますよね……微妙に納得できません」
「わ、私もちょっとやって欲しい……かも」
金を叩いて買った家は既にかなりの人数となっており、今日もアクアが占領してる部屋にて、実に悦な顔でだらけてるアクアがうつぶせでベッドに横になってる所に、イッセーは本当に言われた通りマッサージをしてやっていた。
「そういえばカズマさんは何処に言ったんですかね? ダクネスも居ませんが……」
「あぁ、カズマなら湖の時に教えた黒神ファントムの特訓だとさ。
理論とかは教えたから後は実践で掴むしか無いんだ」
「あの高速移動技ですか……カズマさんが覚えたら凄そう……」
「あへぇ……ひへぇ……」
もう何かだらしなさ通り越した顔でご満悦なアクアの上に股がりながら、背中やら腰まで律儀にマッサージしてるその体勢はどうなんだ? という突っ込みをしたくてたまらないめぐみんとゆんゆんは我慢しつつ、ダクネス相手に特訓しに行ったカズマについてを語り合うついでにクリスも居ないことに気付く。
「クリスも居ませんよね?」
「あ、そういえば。でもよく一人で何処か行っちゃうし……」
「あー……アレは多分野暮用でもあんだろ。ほっとけ」
エリスとして上司に色々と報告にでも行ってるんだろうよ……と内心ごちながら絶妙な力加減でマッサージを続けるイッセーは、そろそろ終わりにしようかとアへ顔にすらなり始めてたアクアに話しかける。
「おい、もう終わりで良いか?」
「やだー! もっとぉ……」
が、アクアはまだ足りないらしく、微妙に甘ったれたイントネーションで続行を促す。
すると流石にムッとなっためぐみんがアクアに文句を言う。
「お師匠様に甘えすぎですよアクア! 普通にずるいんですよ!」
元から知ってるとはいえ、最近ますます頼りっきりなアクアと、それに何やかんやで応じるイッセーの気色悪さすら覚える関係に不満爆発のめぐみん。
よく見ると声には出してないがゆんゆんもそんな表情だった。
「嫌よ~ だって楽なんだも~ん。うへへへ」
「ぐぬ! お、お師匠様もそろそろ断ってみたりすべきです!」
「断るっても、コイツすぐ臍曲げるしな。だったら応じてた方が楽っつーか……もう凝ってる箇所が全然無いんだけど」
怒るめぐみんに全然堪えずなアクアと、断る方がめんどくさいと返すイッセーにめぐみんは悔しそうにぐぬぬと唸ってる。
というか、うつ伏せのアクアの上に馬乗りになって股がってるという絵面が、見てるとイライラしてしまう。
「じゃあお尻もやってぇ~」
「尻だと? おい、お前仮にも雌だよな? 俺もお前に欲情なんざしないけど、流石にそれは駄目じゃねーのか?」
「べっつにー? スケベなのは知ってるから抵抗感なんてないもーん」
「本気で頭来るんですけど! いい加減にしてくださいよアクア!!」
「イッセーさんの言うとおり、それは流石に無いと思います」
御剣なる男とのやり取りで、アクアが物みたいな言い方をされた際にイッセーが、軽く頭に来たというのもそうだし、アクアに対して異様に甘すぎるのが我慢ならないめぐみんとゆんゆんがそれだけはとイッセーを説得する。
「逆にお師匠様をマッサージしてあげますよ! 普段お世話になってますし! ね、ゆんゆん!」
「え、えっと……は、はい」
「いや俺別に要らない――」
「じゃあもうアクアのマッサージはやめて私と何かしましょう! テーブルゲームとか!!」
「ちょっと待ちなさい! この後まだ色々として貰う事があるのよ!」
「あるって……なにをさせるつもりだよ?」
「絵本読んで貰ったりとか! お菓子を食べさせて貰うとか!」
「ガキかお前は……」
これでイッセー本人に自覚が殆ど無いというのだから、始末に終えない話である。
そして――
「脱力の極致ってなんだろ? こうか?」
「それはただ顔に出してるだけだろ。アレだ、私が四つん這いになって椅子になるから、背中に座って軽く瞑想すれば良いと思う――いや、すべきだな!!」
「脱力と関係ねーだろそれ! お前の願望だろうがこのドM騎士!」
「あぁん! その蔑んだ目が堪らないぞ!!」
ダクネス相手に黒神ファントム会得の修行を開始したカズマは、取り敢えず相手をしてくれるドM騎士に四苦八苦してたようだ。
終わり
補足
アクアさんが賞品扱いされて、軽くムカッとしたらしい。
これがまだ生前時代だったら屁にも思わなかった事を考えたら、これは成長してるのだろうか…………というよりは自分も同じで軽く自己嫌悪しちゃってるから強気になれてないと思われる。
その2
割りとマジなマッサージになってしまったのは、アクアさんが段々エスカレートして足だけじゃ嫌だーと言い出したのを例によって……
『ったく、しょうがねぇな……』
と言って応じちゃったからです。
その3
ダクネスさん相手に黒神ファントムの特訓を開始したカズマさん。
頑張れ、もしかしたらキレて暴れるイッセーを止められる男になれるかもしれんぞ!
少しだけ反応が欲しい乞食気分……