この破壊の龍帝に祝福を!   作:超人類DX

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彼は……混沌よりも這い寄る

タイトル通りというか、そろそろ匹敵レベルを出そうかなぁ……みたいな?


現実と夢の狭間から這い寄るマイナス

 今存在する現実を否定し、己の描いた夢へと逃げ込むマイナス。

 

 幻実逃否(リアリティーエスケープ)と名付けられたその過負荷(マイナス)こそ原点であり、無限進化よりも最初に自覚した力。

 

 出る杭を地面に埋め込み、二度と出ないように釘をぶっ刺すという意味合いも込められたマイナスは、クズ共を始末するに大いに役に立った――いや、というか役に立てざるを得なかったというべきなのかもしれない。

 

 じゃないと、半分を失った俺はとっくに死んでいたのだから……。

 

 

 

 

 不思議な人間。

 『彼女』が最初に抱いた印象はまさにそれであった。

 

 

「ぐぅ……な、何とか生き残れたが、一体何じゃここは?」

 

 

 その日、彼女は日課となっていたある事をする為に、何時も通う墓地へとやって来た。

 理由は現世をさ迷う成仏できない霊を昇天させるという金にもならない真似事なのだが、これは単に彼女の性格がそうするだけの謂わば善行みたいなものであり、所属している組織でも幹部位置にいるのに抜けてると言われてる原因でもあった。

 

 

「薄気味悪い所だなオイ……」

 

 

 なので彼女は、墓地のど真ん中にぽっかりと空いた大穴から這い出て来たその人物を前につい思わず物影に隠れながら様子を眺めていた。

 

 

「失ってピンチになっちまったから、ヤケクソになってゴミ共を全部否定した後までは記憶にあるけど、一体全体俺は何でこんな墓地っぽい場所に?

まさか知らん間に殺されてくたばったのか? でもこんな俺にわざわざ墓なんざ立てる親切な輩は居ない筈だし……」

 

(……?)

 

 

 耳をすませてみると、どうやらこの場所に居ること自体が解せないらしく、口調からして少々の粗暴さを感じる少年と思われる人間の男を観察していた訳だが、彼の周囲に成仏出来てない霊達がうようよ沸いてる事について教えてあげるべきなのか微妙に迷っていた。

 

 

「くそ、それもこれもあの襲撃で一回死んだのを否定した際にアイツとスキルの大半が消えちまったせいだ……ったくもう、微妙に薄気味悪いし」

 

 

 というかそもそもあの彼は見えているのだろうか? さっきから魂が唸りながら旋回してるのだけど……と、若干迷っていると。

 

 

「っ!?

嘘だろ、ゴミ共の気配がまだある? いや、待て……寧ろ殺し尽くす前より増えてるのか!?」

 

 

 暫く周囲を見渡しながらぶつぶつ言っていた少年が何かに気付いた様にハッとすると、やがて冷たい殺気を放ち始めた。

 

 

「おいおい冗談じゃないぜ。

力の殆どを原因不明のまま失った後、このままじゃ直接始末できないと全部を否定した筈なのに……マイナスは欠陥だけど決してポンコツじゃない俺がポカしたのか?」

 

 

 それは『あってはならないミス』をしてしまった時に見る絶望にも似た……ある種『自分達』が好みそうな感情だった。

 だが、彼女が感じたのはそれだけでは無かった。

 

 

「折角人が寝てる所を襲撃しくさったクズ共を粉々にしてやったのに、今度は訳のわからんワープと来たもんだ。

奴等の生き残りが仕掛けた罠なのか、それとも何かの現象か……まあ、それはこれから多くを感じるゴミの掃除をしながら考えるとするか――」

 

 

 圧倒的な……人が持つにはあまりにもおぞましき負(マイナス)の感情に除き見ていた彼女は身震いすら感じた。

 そして悟る――彼をこれ以上ここから覗いてたら間違いなく良からぬ事が起こると。

 だから彼女はこっそりと、成仏させる時間をずらそうと墓地から帰ろうとしたのだが――

 

 

「―――――ねぇ? そこん所どう思うかな? 意見をお聞かせ願いたいなー?」

 

「っっ!?」

 

「やぁ、そこの変なおねーさん? 何処に行くのかな?」

 

 

 墓地の真ん中に居た筈の少年の声が自分の背後から聞こえた瞬間、自分は下手こいたんだと悟ってしまった。

 

 

「あ、あの……」

 

「おねーさんどう見ても人間じゃないよね? 悪魔? いや違うな、悪魔に属した種族かな? あ、動かないでねおねーさん、動いたら思わず全身を串刺しにしたくなっちゃうからさー? 穏便に行こうぜお互いに」

 

「……!」

 

 

 チクリと何か先端が尖ったもを背に突き付けられながら、少年は放つ殺意とは真逆の子供っぽいイントネーションで脅しをかける。

 その脅しに、そしてどん臭いとはいえ自分の背後をあっさり取ったその身体能力に女性は抵抗するつもりは無いと声を出そうとするのだが……。

 

 

「わ私は今ここに来て、そしたらアナタが……」

 

「じゃあこの場所がどんな所だか知ってるんだね? あ、今さら下手くそな嘘は良いぜおねーさん、正直に頼む―――――――お前が仕掛けたのか?」

 

「……」

 

 

 完全に何かを誤解してる様子の少年の声が怖いくらいに低くなる。

 

 

「ゴミ共がどうやって否定から逃れたのか実に興味あるな? お願いだから俺に教えてよおねーさん?」

 

「な、何の事を言ってるのか全然……そもそもアナタは一体……?」

 

「おおっと、そこに来て面白いジョークを言うとはおねーさん中々ユーモアじゃん? 俺これでも結構おねーさん側達には有名だぜ? 赤龍帝としてね」

 

 

 クスクスと背後から微笑と共に言われた聞き覚えの無い単語に女性は頭に大量のハテナを生産する。

 

 

「赤龍……帝? えっと、何でしょうそれは?」

 

「……………は?」

 

 

 全然聞いた事もない、通り名と思われるその名を知らないと返されたのが意外だったのか、ここに来て少年の声が年相応に困惑したものになる。

 

 

「え、ちょ……知らない? 嘘だろ? なら今俺は知らないおねーさんに偉そうに語ってたの? なにそれ、クソ恥ずかしいんですけど」

 

「な、何だかよくわかりませんけど、ごめんなさい?」

 

「………………………。少~しだけおねーさんに聞く事が出来たみたいだな」

 

 

 自分の悪名を知らないと返されたのがそんなに意外だったのか、殺気を霧散させた少年は女性に対して此方を向けと言う。

 

 それに対して下手に逃げたら危ないかもしれないと感じた女性は、言われた通りに振り返る。

 

 

「おーねさん人間じゃ無いみたいだ……………けど、なんちゅー特盛!!?」

 

「へ?」

 

「いや、何でも無い」

 

 

 その際、自分より頭ひとつ分程背の高い少年に上から下までジロジロと見られ、特盛と訳のわからんことを言われてキョトンとしてしまう中、気を取り直しでもしたのか、少年は軽装の丸腰の姿で一言……。

 

 

「とりあえず駒王町はどこ?」

 

「? ? ?」

 

 

 茶髪で少しあどけなさを残す容姿の少年は、これまた全然聞いた事もない地名と思われる場所を質問し、女性の方はただただ訳がわからないと困惑するのだったとか。

 

 

 

 より混沌へと溶け込むマイナスを持つ不思議な少年に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初に彼を街で見掛けた時、そして彼が同僚の体であるベルディアを粉々にした話を聞いた時、驚きつつもその事を聞いたりもした。

 

 

「それやったのどうせドライグと無神臓を持つ側の俺の半身だろ。

まったく、自分の事とはいえ、やることが一々派手だねぇ」

 

「は、半身? それって最近ギルドに現れたすっぴんの方の……」

 

「そうそれ。そいつは完全に俺の半身。

前に言ったと思うが、俺はマイナスと鍛えた身体と経験以外の力の大半を失ってる。

原因はそれまでわからなかったが、この世界とやらに半身の俺が存在してるおかげで全部の合点がいった。

表で派手に遊んでるのはドライグと無神臓を持つ俺自身だってね」

 

 

 最初の邂逅から結構な時が流れたこの日、城が粉々になったという理由で街にやってきた同僚が、今目の前で街に出ていた自分の代わりに店番していた少年そっくりの少年に粉々にされたという事を受け、急いで戻って真偽を確かめてみた所、どうやらベルディアを粉々にしたのは少年が失ってた多くの力を持つもう一人の少年の仕業であって自分じゃ無いらしい。

 

 

「じゃあアナタじゃないのね?」

 

「まーね、そのベルディアっての俺会った時無いし」

 

「そ、そう……よ、良かった」

 

 

 ガチャガチャと投棄されていた魔法具を修理してる茶髪の少年の言葉に魔法具店の女店主兼リッチー兼魔王軍幹部のウィズはホッと胸を撫で下ろす。

 ついにこの人外嫌いが自分に黙って魔王軍を絶滅させようとしたのかと思ってたので。

 

 

「第一俺ってこの場所から殆ど出歩かないじゃない」

 

 

 だが本人はやってないと主張してる……。

 基本色々と曲者だが、彼は嘘だけは言わないとわかってたので、ウィズもそれを信じて釘と杭を投棄された魔導具に刺し、手をパンパンと二回叩く少年を見つめながら椅子に腰掛ける。

 

 

「よし、リサイクル完了。

ま、3000エリスってところだな、原価なんて無いし売れたら丸儲けだ」

 

 

 王都なら軽く万単位だろう魔導具に破格すぎる値段を付ける少年。

 

 

「何と言いますか、毎日見ても全然飽きない凄い力ですね……。

現実を否定して思い描いた夢へと書き換える力でしたっけ?」

 

「万能に見えて負万能だから履き違えられても困るね。

あと、また敬語口調になってるよ」

 

「あ……」

 

「ったく、どうであれ一応はアンタの方が年上なんだから、そのむず痒い口調は止めてくれ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「だから謝る意味が………チッ、この世界の人間外生物はよくわからんね。調子が狂う狂う」

 

「あの、アナタが居た世界の私達みたいな人達は一体どんな事を?」

 

「まず人間様を食い物にする。それと見下す。あと前に話した転生者ってのに呆気なく堕ち、ソイツの粗◯ンぶちこまれて悦んでる単細胞」

 

「そちっ……!? あ、そ、そう……」

 

「まあ、他種族と平気で寝られる神経が俺にはわからないからどーでも良かったけどそこら辺は」

 

「………」

 

 

 カチャカチャとまた別の魔導具を修理の作業をし始める少年を見ながらウィズは罰の悪そうな顔をする。

 この少年と邂逅し、何やかんやというか……三度は殺されかけたというやり取りを経て、今じゃ奇跡的に自分の経営するお店の住み込みの店員として居る訳だが、どうもこの少年は今自分で言った様に人間ではない生物がめちゃくちゃに嫌いらしく、顔を隠して街に繰り出す度、獣人を見ると顔をしかめる程だった。露骨に。

 

 

「しかしでも驚いたよ。まさか殆どを持ってる方の俺が人間じゃない生物と楽しそうにしてたなんてよ……。

ったく、何があったんだか知らんが随分と甘くなってやんの」

 

「前に紅魔族のアークウィザードとよく街をフラフラしてるのを何度か見た時はアナタと思った……」

 

「あ、そうそうそれ。

力の大半が向こうにある分、俺以上に聞き分けが無い筈なのに、一体何が原因なのか……本当に不思議な世界だよここは。何せ俺も何やかんやアンタとこんな商売やってるし」

 

「………」

 

 

 クスッと笑いながら再び釘と杭を刺して手を叩き、一瞬にして壊れた魔導具を再生させる少年の手腕を見ながらウィズは最近思った事をおずおずと聞いてみる。

 

 

「その……半身という事はつまり何時かは一人に戻るの?」

 

「半身の俺が俺に気付いたらね」

 

 

 ウィズの質問に修理した魔導具の機能テストをしていた半身――つまりマイナス・イッセーの手が一瞬だけ止まりつつも軽く返す。

 

 

「俺も半身の俺も元々は兵藤一誠という一人の人間だったんだぜ?

ていうか、こんな形で分離する事自体ありえない想定外な現象だし、そりゃあ勿論一人の人間として戻るさ」

 

「じゃ、じゃあもし戻ったらアナタはどうなるの……?」

 

 

 不安げに問い掛けるウィズに、あの時とは違って自分が背を向けた状態となってマイナス・イッセーはその質問にこう返す。

 

 

「さぁ? それは戻ってみないとわからないな。

まぁでも多分力の殆どを持つ向こう側の俺がベースとなり、俺はマイナスとしての切っ掛けとして消滅でもするんじゃないの? どう考えたって俺が出涸らしみたいなもんだし」

 

 

 あっさりと、自分が無くなる事に何も疑問も恐怖も無いとばかりにマイナス・イッセーは平然と答えた。

 

 

「最近それと似たり寄ったりな事を聞くねアンタって。

なぁに? もしかして俺に消えて貰いたくないの? あぁ、商売下手のアンタにしちゃリサイクル品で利益だしてる俺を手離すのは惜しいよねそりゃあ?」

 

「そ、そういう訳じゃないけど……怖くないの? 自我が消える事に」

 

「べっつにー? どーせ俺は半身の俺以上に必要無い存在だし、そもそも過負荷(マイナス)だからねー。

コントロールは出来るけど、所詮はそれだけだし」

 

 

 一休みとお茶を飲みながらマイナス・イッセーは淡々と自分が消える事に対して語る。

 半身側……つまりアブノーマルとドライグの力を持つ側のイッセーを基本ベースと捉え、回帰する事になんの不満も無いと言い切れるこの投げ捨ててる感は流石負完全化してるとも言える。

 

 

「寧ろ回帰する方が安心するっつーの?」

 

「そんな……」

 

 

 が、それはこの世界で誰とも関わる事無く一人で半身の居場所を突き止めた時の場合であり、本人は全然気付くこと無いが、それに疑問というか違うというか、そうあって欲しくないと思ってしまってる者が一人だけ出て来てしまったのだ。

 

 

「あ、あの……こう、上手く力だけを明け渡すって事はできない?」

 

 

 それがこのウィズであった。

 粗暴、野蛮、あと人外嫌いで『幼馴染みの仮面付けた魔王軍幹部』をイラッとしたからという理由で串刺しにしたあげく、完全に殺し掛けたりもした程に嫌悪した場合の行動が過激で、割りとその幼馴染みにビビられてもするが、彼はマイナスの塊を自称するにはあまりにも――

 

 

「そんな事をする意味も無いっつーか、マイナスだけ返したら俺は正真正銘の出涸らしになってこうやってアンタの店の売り上げにも貢献できねーぞ? なんだ、ヒモになれってか? 人間の女の子に頼まれたら吝かじゃないけど、嫌だよそんなの」

 

 

 献身的だった。

 それは多分、失う事で捩曲がってしまう前の……本来持つ少年の優しさなのかもしれない。

 最初こそ世界について知るだけ知った自分を用済みとばかりに始末してこようとしたのかもしれないけど、結局の所自分はこうして生きてるし、何より日を追う毎に少年は自分に対しての態度が軟化していった。

 

 

「空のスキルポーションの入れ物に対し、『空である現実を否定し、新品だった頃の状態へと書き換える』………よし、成功。くくく、原価0で売りさばけてウハウハだぜこんちくしょーめ……あひゃひゃひゃ!」

 

 

 それこそ、利益赤字のこの店を黒字にして見せるくらいに。

 

 

「俺は確かに力の大半を持つ側の俺程に人外に対して悪感情は持ってないのかもしれない。

けど、それは単に向こうの俺が力の大半を――人外生物に完全な見限りを抱いた際に覚醒した無神臓(インフィニットヒーロー)があるからだ。

だから一人としての俺に戻り、この世界から消え、俺が居た世界へと帰り全てを終わらせる。それが俺の目的であり役割」

 

「う……」

 

「寧ろ何でアンタにどうしてそこまで引き留められるのかがわからないね俺は。

アンタとて、急に気が変わった俺に串刺しにされるかもしれないってハラハラする様な現状は嫌でしょうに?」

 

 

 ベルディアを粉々にしてから割りと顔が割れてしまった半身の為に、表を出歩く時はわざわざどこぞのフレンチクルーラードーナツを思わせるグルグルのお面を付けるマイナス・イッセーはこの日、奇跡的にも同じ街を拠点にしていた半身の様子を確かめるため、こそこそと付いてきたウィズを横に、わいわいやってる自分の半身と、その脇を固める殆ど人外のパーティを見て微妙な気持ちになっていた。

 

 

「あのカズマっつー奴と、ダクネスっていう黒髪じゃない以外はドストライクな女の子以外の仲間が全員人外生物って、マジで俺の大半の癖にどうしちまったんだろうか?」

 

 

 自分はあくまで影(マイナス)であり、存在してはならない者であり、そして力の一部でしかないと下すマイナス・イッセーのその表情は何処か儚げで、自嘲気味……ウィズにはそう見えた。

 

 

 

 

 

 出涸らしと自称するマイナス・イッセー。

 しかしその力は果たして本当に出涸らしなのかと問われると、この抜けてる世界においてはかなり凄いとも言えなくもない。

 まあ、スキルだけはだけども。

 

 

「完成体の修羅龍が使えるとなると、やっぱ8割り向こうの俺の方が強いな。まいったね、軽く喧嘩売っても負けるぜこりゃ」

 

「あのベルディアを粉々にした巨人のこと?」

 

「そう。あれって基本的に攻防兼ね備えてる技だから、メテオクラスの魔法でも傷つけられるかどうか…………てか水色髪の女をめっちゃ甘やかしてるらしいけど、マジで俺かアレは?」

 

 

 ベルディアを粉々にしてから割りと顔が割れてしまった半身の為に、表を出歩く時はわざわざどこぞのフレンチクルーラードーナツを思わせるグルグルのお面を付けるマイナス・イッセーはこの日、奇跡的にも同じ街を拠点にしていた半身の様子を確かめるため、こそこそと付いてきたウィズを横に、わいわいやってる自分の半身と、その脇を固める殆ど人外のパーティを見て微妙な気持ちになっていた。

 

 

「うーん、目視だけでも人じゃない方が多いなあのパーティー」

 

「…………」

 

 

 アクアをおんぶしている半身の自分に違和感しか感じないマイナス・イッセーの物影に隠れながらの独り言に、ぴったりとひっつきながら隠れていたウィズは内心『アナタもそう変わらない様な……』と最近すっかりリッチー種族の自分と行動している事に抵抗感を見せなくなったマイナス・イッセーに対して思う。

 

 

「ちょっとウィズさんや、もうちょい脇に退いてくれないか? このフレンチクルーラみたいな面だと片眼しか見えないからこの位置だと微妙に見えない」

 

「あ、はい……こう?」

 

「違うから、何で退けって言ってるのに引っ付くんだよ? 逆だっての」

 

「はい」

 

「だから違うってば! 何でこっちに詰めるんだよ――あ、やべ……聞こえちゃう」

 

 

 質が悪いことに、無神臓側のイッセー同様、マイナス・イッセーも変な所に自覚してない面があるらしく、最初の頃と比べても大分マイルドになっており、もっと言ってしまえばその変化も向こうのイッセーよりも遥かに速かった。

 

 

「ったくもう、アンタって何か抜けてるっつーか、まぁ良いや……俺も半身の俺もどうも多少なりともこの妙ちくりんな世界に影響されたっぽいっつーか――おおっと? 美少女連れの勇者っぽいイケメン君の剣へし折ってら」

 

「……。その場に立ってただけなのに、逆に相手の武器を破壊するって……」

 

 

 端から見たら只の変質者の二人組にしか見えず、気付いた街の住人の何人かが、ギョッとしているにも気付かず、みっちり密着した体勢で向こうの側のイッセーがヘラヘラ笑って怯える少年少女に何かを話してる様子を覗き見をしながら、ウィズの疑問に答える。

 

 

「ありゃあ、破壊の技術(スタイル)だよ。

うーん、修羅龍の事もあるし、もしかしてマイナス以外は殆ど変わってないのかな? 考えてみたら向こうの俺って無神臓で無限に進化し続けるし」

 

「! そ、それならわざわざ一人に戻らなくても良いんじゃ……」

 

 

 御剣少年に何かを言ってる無限進化イッセーに対してボソッと呟いたマイナス・イッセーにウィズはいきり立つ様にして言うが……。

 

 

「それを推すねアンタって。そんなにマイナスのスキル持ちの俺をコキ使いたいのかい? 大人しい顔して結構そこは魔物らしいのね」

 

「こ、心は人間のつもりですから……!」

 

 

 が、相手にされずにマイナス・イッセーは冗談っぽく仮面越しにケタケタ笑う。

 

 

「お、修羅龍の腕を脇腹に……アレはアレかな?」

 

 

 日に日にあちら側の彼との距離が狭まってきている事にウィズはかなり焦っており、わざと向こうの彼や彼のパーティの人達と鉢合わせしないように避けてきたのも、この隣の彼が元の一人へと戻るのを少しでも先伸ばしにしようと考えてたからであった。

 

 

「お! やっぱりアルティメット・阿修羅バスターだ。はは、こうして客観的に見ると派手だねぇ」

 

「あ、あれって自分のお尻が痛くなるような……」

 

「そこは気合いと謎理論で乗り越えるのさ……ふふ、俺も元の一人に戻ったらやっと完成したアロガント・スパークでもやりてぇもんだぜ」

 

 

 だがこのように本人は戻るつもり満々。

 奇妙な引き合わせにより、共に行動してから日に日にその態度が軟化していくマイナス・イッセーを……ハッキリ言ってしまえば向こうの彼の一部として組み込まれたくないと思ってるウィズは実にモヤモヤした気分になるのであったとか。

 

 

「へへ、早く俺を見つけてくれよ俺の半身? 元に戻って、さっさと元の世界に戻って完全に根絶やしにしようぜ? くっくっくっくっ!」

 

「………」

 

 

 そして関係ないがこれを期にひとつ発覚した事が。

 

 

「あ、イケメン君と美少女が泣きながら逃げた。へぇ、見逃したなんて珍しいな俺にしては。あのタイミングだとバラバラにするんだけどな……」

 

「あちら側のアナタはかなり気性が荒いみたいだけど……」

 

「おいおい、それじゃあ俺は違うみたいな言い方じゃないか? 俺も向こうの俺も同じなんだぜ?」

 

 

 どうやらイッセーという男は皮肉にも、人間より人外を引き付ける天然の何かがあるようだ。

 それは本来なら悪魔から始まる彼の別の人生を思わせるものなのかもしれない……。

 

 

 ヒョウドウ イッセー

 

 通称・過負荷イッセー

 

 生前世界に残された幻実逃否(リアリティーエスケープ)が具現化したイッセーの半身。

 

 備考・ほぼほぼ持ってるイッセーと違い、まだ人外に対しての嫌悪感は少なく、ドジ踏む商才の欠片無しのウィズ個人に、無神臓側のイッセー同様の理由で気づけば世話焼きしてる男。

 

 

 

 

 

 

 

 実力・マイナスがヤバイだけで普段は、野良の子猫にすら負ける程度。

 

 

「さーて向こうも帰ったし俺も帰るかな。

あ、でもせっかくだし何か食べて帰る? この前旅の商人との商談で儲けたし、奢ってあげるよ」

 

「ええっと、じゃああの人達が居ないところでなら……」

 

「? あぁ、一応魔王軍の幹部だもんなアンタ。まぁ俺もいきなり姿晒すつもりも無いから、別の街にでも行くか」

 

 

 最近負った怪我。

 

 偶々降ってきた岩に下敷きになった。

 

 バニルなる存在と結構マジでガチタイマンしてギリギリ勝った時に負った傷(否定して即復活)

 

 試しに別の街で女の子ナンパしようとしたら背後からマジ気味の氷の魔法で氷付けにされた。

 

 ドジって転んだウィズの頭が諸に顔面に入って鼻の骨が折れた。

 

 ドジってひっくり返りそうなウィズを本能的に助けようと動いたらそのまま肘がボディにめり込んで肋が折れた。

 

 ヤバそうな魔導具を再生して機能テストしたら爆発の魔導具で腕が吹っ飛んだ。

 

 またドジったウィズがスッ転びそうになった所をまた本能的に助けようと動いたら、そのまま一緒に崖から堕ち、ウィズを庇いながら自分が下敷きになって全身の骨が粉々になった。

 しかしその際特盛を顔面に貰ったので別に良いやで済ませつつ幻実逃否で即復活。

 

 バニルなる存在からの評価……『アイツ怖い』

 

 

「よーっし、街に着いたらちょっくら人間のおんにゃのこナンパしよーっと!」

 

「……………どうせ失敗すると思う」

 

「……………………………。だよねぇ……もう300回は気味悪いって拒否られたしなぁ」

 

 

 追伸……。

 

 

「何がダメなんだろ? アンタって一応女の人だしわかる?」

 

「え? それは多分、迫り過ぎ……?」

 

「迫り過ぎ? 前にアンタにシミュレーションした時、アンタ別に何にも言わなかったじゃん」

 

「だ、だってその時は別に悪いとは思わなかったから―――きゃ……!?」

 

「ちょ、危なっ―――ぐへぇ!?」

 

「うぅ……ご、ごめんなさ……い?」

 

「お、おごぉ……あ、アンタの膝が俺の未来の子孫を作る箇所に……!

死ぬほど痛くてこ、呼吸ができないし、てか、これ不能になりそう……あががが……!」

 

「あわわ! ごめんなさい! 今すぐ治療をするから見せて――」

 

「!? アホかアンタ!? こんな所でんな真似したら捕まるわい! あいででで!? ど、怒鳴ると響く……!」

 

「だ、だって私のせいで……ど、何処ぶつけちゃったの?」

 

「あ、アンタに無いもんだよ……ぐへぇ……」

 

 

 またドジってひっくり返りそうになったウィズを、またしても自然と動いたら、男にしかわからない箇所に上手く膝が入って地獄を見る。

 

 

 

続く?

 

 




補足

単純戦闘能力はまず雑魚ですが、ハッキリ言ってそれが有り余るレベルとヤバさがある。

しかし、やっぱり半身だけあって根は似てるのか、何かもうアクアさん対応みたいな事を彼女にしてるらしい。

しかも商い下手な彼女をフォローしてるお陰で、割りと黒字らしい。

その2

マイナスだから運をステータス化するとマイナスにカンストしてるので、否定して傷は何とかなるものの、生傷が割りと絶えないらしい。

主にドジ踏んだ彼女のフォローで。
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