この破壊の龍帝に祝福を!   作:超人類DX

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生活開始1日目。

テンプレの如く金に困る……のか?





異世界の沙汰も金次第

 赤龍帝・兵藤一誠。渾名は破壊の龍帝。

 

 ひょんな事から力を喪っていた事に気付かずに、不意討ちを喰らって命を落とした彼は、同じく命を落とした平行世界の少年と共に女神アクアによって異世界へと転生する事になった。

 

 その転生の際に色々と騒ぎがあったものの、無事女神諸とも異世界へ降り立った一誠は、取り敢えず人が集まる町か何かでも目指そうとクレーターだらけにした平原を後にしようとしたのだが……。

 

 

「ちょっと待ちなさいよ! 何普通に飛んで行こうとしてるの!!」

 

「俺はそんな武空術みたいな真似できねーよ!!」

 

 

 それが当たり前ですとばかりに空をジェット機の如く飛ぼうと宙に浮かび始めた瞬間、ちょっとした縁で一緒に居る一般少年と力のほぼ全てを失った女神により出鼻を挫かれる結果となってしまう。

 

 

「ん?」

 

『何だアイツ等……小僧は分かるが、女神を自称していたあの小娘は飛べんのか?』

 

「そういえばあのアクアってのは女神としての力をほぼ失ったとか言ってたねぇ……。仕方ねぇ、たまには足腰の運動の為に歩くとするか」

 

『そうする他無いか。あまりにもこの世界の事を知らないしな』

 

 

 滅茶苦茶焦りながら必死こいて自分を呼び止めようとする二人に対し、生前殺意しか向けられない人生ばっかりだった一誠は妙に新鮮な気分を味わいつつ、取り敢えず地上に降りる。

 

 

「あ、焦ったわ……そういえばアンタ飛べたのよね」

 

「飛ぶとは違うぞ。

こう……大気を足場にして空中を歩くって言った方が正しい。

まあ、ドライグを使えば飛ぶ事も可能だけど」

 

「ま……マジでありえねぇ」

 

 

 兵藤一誠……異世界生活を開始してまだ二十分。

 

 

 

 焦った……。

 兵藤の奴町探そうぜとか言うのと同時に普通に飛ぼうとするもんだから、危うく置いてけぼりを喰らう羽目になる所だった。

 

 

「この街道を進めばアクセルという町に着くぞい」

 

「本当か!? おいじーさん、その町は黒髪でおっぱいボインで、大和撫子の様なおんにゃのことか居るのか!?」

 

「ヤマトナデシコは知らんが、探せば居るんじゃないかのぉ? 何せあの町は冒険者の集う町だしの」

 

「お、おぉ……サンキューじーさん! っしゃあ! 行くぞオラァッ!!」

 

「だからそんな速く走れないっつーの!!」

 

 

 よくは知らないけど、俺とそんなに歳が変わらない筈なのに、生前かなりの修羅場を経験したらしい兵藤は、すれ違うこの世界初の住人相手に町があるという情報を獲るや否や、俺の世界じゃ間違いなく世界新記録を樹立出来るだろう速度で走り出そうとする。

 

 幸いアクアの奴がまた必死こいて止めたから何とか止まってくれたけど、コイツの基本スペックのヤバさはある意味この先頼りになる気がしてならねぇ。

 

 

「チッ、俺は早くおんにゃのこをナンパしたいのに」

 

「アンタねぇ……そんながっついても失敗するのがオチよ」

 

「ケッ、元女神風情に人間のおんにゃのこの何がわかるってんだ」

 

「今でも私は女神よ!」

 

「ちょ、待て……お前ら歩くの速い……!」

 

 

 だが俺は本当の意味で普通の人間だ。

 力を失ったとはいえ元は女神らしいアクアとも、自称弱体化を名乗ってる癖に巨大な岩をビームで何回も破壊してる兵藤とは違って、ただ歩くだけでもそのスペックの差は大きい。

 だからあの二人にとっては普通でも、俺にとっては多大な労力なのだ。

 

 

「なぁに? まだ最初の町にすら着いてないのにもうへばった訳ぇ? ったくこれだら引きニートは……」

 

「う、うるせぇ! 俺は生前平和に生きてたんだよ!」

 

「俺としては佐藤君の様な生き方がしたかったな……。

うん、良いよ、確かに急いだってしょうがないし、ゆっくり歩こう」

 

 

 力を失ってる癖にまだ俺を見下すアクアとは正反対に、何を思ったのか急に俺に合わせると言い出す兵藤に俺もアクアもちょっと驚く。

 

 

「私と随分態度が違うのね」

 

「だってキミは女神なんだろ? でも佐藤君は普通の人間だ……俺も分類上は人間だし、同じ人間同士仲良くはしないとね」

 

「え、お前人間だったの? ていうか、お前の生きてた世界じゃ手からビーム出したし変な籠手出すのが人間なのか?」

『そんな訳無いだろ。コイツが人間の中でも突然変異的な存在なだけで、その他は基本的に貴様と同じくらいだ』

 

 

 同じ人間同士という言葉に地味に驚く俺に……ええっと、赤い龍? ってのが兵藤の左腕に出てきて説明をしてくれる。

 どうやら兵藤の世界でも普通の人間は俺等と何ら変わらないだけで兵藤がおかしいだけらしい。

 

 

「そういえば兵藤に両親は?」

 

 

 そんな男の両親もさぞおかしな奴だったんだろうなぁ……と軽い気持ちで聞いてみる。

 すると兵藤はほんの一瞬だけその表情を冷たいものへと変えると……。

 

 

「知らね。

餓鬼の頃の俺を気持ち悪いからって理由で精神病院に無理矢理入院させた後、どっか消えちまったよ」

 

「……わ、悪い」

 

「割りとヘビーなのね、アンタの人生」

 

『? 何だ小娘、お前の事だから知ってると思ったが』

 

「私が知ってるのはコイツが化け物相手に殺生しまくったって事ぐらいよ」

 

 

 な、何か空気が悪くなってしまって。いや俺のせいだけど。

 本当、俺とは真逆の人生だったんだな……。

 

 

 うーん、兵藤一誠……あーもうめんどうだからイッセーで良いわ。

 コイツ、確かに気性は荒めかもしれないけど生前は碌でも無い人生だったみたいね。

 

 親に捨てられる気持ちなんてのは女神である私には分からないけど、佐藤和真……じゃなくてカズマに両親の話を触れられた時に一瞬見せたあの何とも言えない表情を考えても、今のイッセーの人格を形成する要因なのは間違いないわね。

 

 

「つーか俺の事なんてどうでも良くね? んな事より佐藤君の世界はどんなんだったんだよ?」

 

「どう……どうって……普通? 多分兵藤の世界と文明も変わらないし、悪魔ってのも堕天使ってのも天使ってのもドラゴンってのも空想の存在であるぐらいで後は変わらねーかな」

 

「へー? ドライグみたいな存在が空想かぁ……慣れすぎちゃってるからちと想像付かねぇな」

 

『俺達の居た世界でも普通の人間共の思考はこの小僧と同じだろ』

 

 

 正直コイツは一刻も早く縁を切りたい。だけどのこのクソ引きニートのせいでこんな状況になったというのであるなら、仕方ない。

 コイツのこの全盛期から遠退いたとはいえ、規格外な力を利用し、楽をしながら何としてでも女神としての力と地位を取り戻さないとね。

 

 だから精々私の為に蟻の様に働いて貰うわよ……くーっくっくっく!

 

 

 と、悪どい顔してカズマとくっ喋るイッセーを眺めるアクアだが、その考えは直ぐに失敗する事となる。

 

 

 

 

 所謂RPGゲームで言うところの始まりの町であるアクセルなる場所へと到着した異世界人三人組。

 

 

「……。コンビニは本当に期待できそうも無いな。ゲームも無理だなこりゃ。つーかTVとかも無さそうだぜ」

 

「来た時点で何と無く覚悟はしてたけどな……つーか、諸にゲームっぽい町だわ」

 

「チッ、つーか見てるとぶっ殺したくなる種族がぞろぞろ居るじゃねーか……」

 

 

 中世のヨーロッパっぽい町並みを見て、現代っ子筆頭のイッセーとカズマはこの時点で現代っ子必需品の確保は不可能と肩を落としつつ、取り敢えず適当にブラブラするのだが、すれ違う町人の中に結構な割合で混ざっているエルフっぽい何かやら獣耳を付けた人間じゃない種族に、カズマは改めて異世界に来たのだと思い、逆にイッセーは微妙に嫌な思い出しか無い他種族に対して小さく物騒な事を呟いていた。

 

 

「猫の耳……猫妖怪か何かか? クソが、そういやクズ野郎の寵愛(笑)が受けたくて俺を殺しに来たゴミ共の中に姉妹だかなんだかで居たなぁ……」

 

「マジかよ」

 

「ああ、不意討ちかましてきた礼に全身を粉々にしてから顔面剥いで送り主に送り返してやったがね……」

 

「お、おぅ……グロい」

 

「その気性の荒さをこの世界では控えなさいよ。

言っとくけど、アンタの世界とは違ってこの世界の人々は基本善良でアンタに悪感情なんて無いんだから」

 

「あーそうだった……うーん、どうも身構えちまうな。

エルフとかならまだ大丈夫なんだが、猫はどうしてもね」

 

「どんだけ嫌いなんだよ猫が」

 

 

 生前、とある猫妖怪に散々悪だなんだと罵倒され、あげく不意討ちで殺されそうになった思い出があるせいか、猫耳……いや獣耳に対して異常な嫌悪感を示すイッセー

 まあ、獣耳種族だけに足らず……人間以外の種族は基本何でもかんでも殺してしまってたので、他種族は異世界に来ても好きになれそうも無かった。

 

 とはいえ、そんな物騒な台詞を平然と吐いてるイッセーに対して引きはしても距離を置こうとはしない辺り、アクアもカズマもある意味ぶっ飛んでるのだが。

 

 

「ここが冒険者の集まるギルドね」

 

「みたいだな……やっぱり登録とかするのか? 正直兵藤が今すぐ魔王ってのを倒しに行ったらそれで終わりな気がするんだが……」

 

「嫌だよめんどくさい。今更魔王なんざ飽きるくらいぶちのめしたし、第一冒険者ってのにならんと金があんまり稼げないんだろ? 登録しといて損は無いだろ」

 

 

 カズマの言葉にイッセーがめんどくさそうに……されど然り気無く凄い事を言いながら、この世界じゃそんなに暴れるつもりは無いと先に宣言する。

 

 

「え!? アンタ魔王倒さないの!? じゃあどうやって私は女神に戻るのよ?」

 

「………あー、じゃあ気が進んだらね。うん」

 

「それじゃ困るのよ! アンタなら多分余裕で倒せると思ったからわざわざ私が付き合ってやってるのに!」

 

「んな事言われたって、俺の目的は普通のおんにゃのこのハーレム王だし、魔王なんて興味ねーよ。つーか、待ってたらその内誰か倒すんじゃねーの?」

 

「そんな気長に待てるか! 今すぐ登録して行ってこい!!」

 

「あ? 行ってくださいだろ? このアマ、俺が動かねぇと自分のアイデンティティー取り戻せねぇ癖に偉そうだなぁオイ?」

 

「し、しまった……! ぐっ……も、もう良いわよ!!」

 

 

 一刻も早く女神の職に復帰したいアクアは、涙目になってギルドの扉を乱暴に開けた。

 

 イッセーが魔王を討伐して世界に平和をもたらせば、その時点で目的を果たした事になって女神として復帰できるという、あまり根拠の無い期待をしていたのに、本人はまさかのやる気無し。

 

 あくまでも異世界に転生した理由が『ハーレム王』であり、その他はどうでも良いという考えは楽してさっさと女神に戻りたいアクアにしてみれば誤算でしかなく、ついつい感情的に詰め寄ってしまった。

 

 が、見た目だけなら怖さもへったくれもない小娘であり、そもそも女神相手に利用されてやるつもりも一切無かったイッセーの凄味入りチンピラ口調に圧されてしまったアクアは、内心ちょっと怖かったとビビってしまい、結局イッセーの言う『その内』を待たないといけない現実に泣き寝入りの形で退いてしまった。

 

 

「お、おい良いのか?」

 

「良いんだよ、あんな雌の言うことをホイホイ聞く義理なんざ無い。

それにアレに女神としての力を取り戻させたら、間違いなくキミや俺を見下し始めるぜ? それはそれでムカつくだろ?」

 

「まあ確かに……」

 

「だろう? だったらあの青雌も存分に働いて貰おうぜ、案内人としてキミが道連れにした分をたっぷりとなぁ?」

 

『バカだなあの小娘。イッセーは引く程のサドなのに』

 

 

 先にギルドの扉を潜って行ってしまったアクアに対して、『ケーッケケケケケ!!』と嗤うイッセーにさしものゲス寄りのカズマも若干引いた。

 自分も良い奴とは到底思えない性格だが、正直イッセーよりはマシな気がする。

 

 

「まあ、チート使ってゲームクリアしてもつまんねーし、何より力を取り戻したあの駄女神が俺達に何て言うか簡単に想像できてムカつくのも同意出来る。

うん、此処は兵藤の言うとおり精々道案内の仕事をこなして貰うかぁ……」

 

 

 まあ、それでもゲス寄りなのでカズマもカズマなのだが。

 

 

 

「と、登録料……?」

 

「はい、冒険者として当ギルドに登録するには登録料金としてお一人一千エリスが必要となります」

 

 

 そんなこんなでとっとと女神職を取り戻せると鷹を括っていたのを本人に拒否られて涙目のアクアは、悔しさやら何やらで怒りながら涙を流し、受け付け嬢にギョッとされつつ登録申請をしたのだが、早速とばかりに異世界にて女神の力を失った後の洗礼を受けていた。

 

 

「おいどうした?」

 

 

 登録しようとしたら金が掛かる。しかも一人千エリスだから三人で三千エリス。

 その事実に更に凹みながらギルド内をトボトボ歩くアクアに、遅れてイッセーと共に入ってきたカズマが声を掛ける。

 

 

「お金掛かるんだって、ギルドに登録するのに……」

 

「え、マジ? おい参ったぞ兵藤、金を稼ぐ前に今すぐ登録料を稼がないといけない――――って、あれ兵藤?」

 

 

 てっきり横に居るのかと思っていたイッセーが居ない。

 はてとアクアと一緒に冒険者集まるギルド内をキョロキョロ見渡すと……イッセーは直ぐに見つかった。

 

 

「そこの麗しのお嬢さん、俺は新参者の冒険者希望なのだが……その前にキミのような子と出会えてぶっちゃけ冒険者がどうでも良くなった。

どうだい、今から俺と将来設計と墓入りを前提にデートを」

 

「え、あ、あの……」

 

「おいコラ! うちのパーティメンバーを口説くな!」

 

 

 

 

「何をしてるのあのバカは?」

 

「……。こんないきなりとは俺も予想外だぜ」

 

 

 プリーストらしき女の子に、同じパーティを組んでるらしき騎士っぽい男の怒鳴りも無視して早速とばかりにナンパをしていた。

 それはもう、下手くそ過ぎるナンパで……。

 

 

「テメェそれ以上ほざくなら……」

 

「うっせぇボケ!! 俺はこの子に用があって、テメーみてーな汗臭い野郎なんざ用はねぇ!! 消え失せろ!!」

 

「んだとぉ!!」

 

 

 そして気付けばオロオロしているプリースト横に騎士っぽい男と取っ組み合いの喧嘩に発展。

 困ったことに冒険者というのは騒ぎが好きなのか、他の冒険者が『やんややんや』と捲し立てるだけで止めようともしない。

 なので……。

 

 

「オラァッ!! ――――え?」

 

「何だその蚊みてーなパンチはぁ?」

 

「こ、この……うわっ!?」

 

「完武・兜砕きーっ!!!」

 

「ぎゃふ!?」

 

 

 元の世界じゃ破壊の龍帝と嫌われていた男に単なる冒険者が勝てるわけも無く、騎士っぽい男の頭部をブルドッキングヘッドロックのように捉え、自分の膝に当ててその膝を抱え上げると、そのまま一気に膝を叩きつけていた。

 それはイッセーの得意とする物理法則完全無視の殺人技なのだが、流石に手加減はしているのか騎士っぽい男の頭部が砕けるという事は無いまま気絶にとどめいた。

 

 

「ふん、雑魚め……さて続きを――ってあれ!? さっきの女の子は!?」

 

「あぁ、さっきのプリーストならお前を怖がって出てったぞ?」

 

「なぬぅ!? くっ……いきなり失敗か」

 

「そんな事より冒険者にもなってないのに強いなお前! 登録したらウチのパーティ入れよ!」

 

 

 だが一連の騒動が他の冒険者の目に留まったのか、よく分からないが勧誘までされ始めていた。

 

 

「お、おい早く呼ばないとアイツ別のパーティに行くんじゃねーか!?」

 

「ま、マズイわ! アンタみたいな引きニートならどうでも良いけど、アイツは性格はともかく使える男、さっさと引っ張るわよ!」

 

「一言余計だ!」

 

 

 それを遠巻きで見ていたアクアとカズマは焦りながらイッセーに群がる冒険者の山を掻き分け、今度は別の女の子冒険者をナンパしていたイッセーを無理矢理引っ張って連れ出す。

 

 

「あんだよ、折角ナンパしていたのに……」

 

「うっさい! 女ナンパする前に登録料を何とかするのよ! じゃないと冒険者になれないの!」

 

「つーかお前凄いな、よくあんな下手な台詞がぺらぺら出るもんだ」

 

「え!? へ、下手なの? …………あ、そう」

 

『だから迫りすぎなんだよお前は……そら、この小娘の言うとおりとっととギルドとやらの登録料を何とかしてやれ』

 

「お、おう……」

 

 

 未だ注目を集める中、登録するのに金が必要なのとナンパ下手を指摘されて地味に傷ついたイッセーは、ドライグに言われるがまま登録料を何とかしようと、こっちを見ていた適当な冒険者に話し掛ける。

 

 

「ねぇ、今金が無くてギルドに登録できないみたいなんだ。後で返すから三人分……で、良いのか、登録料貸してくんね?」

 

「何だお前? そんな事も知らないで来たのかよ? アホだなぁ……まあ、良いもん見せて貰ったし三人分の登録料くらいは出してやるよ」

 

「おおっマジか!? アンタ良い奴だな!!」

 

 

 

 

「え、アイツ凄くね? 今会った奴から金貰ってるし」

 

「あの暴れっぷりが功を奏したみたいね……チッ、ムカつくわホント」

 

 

 呆気なく他の冒険者から金を手に入れるイッセーにカズマは『兵藤はもしかしなくてもコミュ力が凄いのか?』と若干負けた気分になり、アクアは先程受けた屈辱を引きずってるのか、卑屈な態度だった。

 

 そして割りとあっさり三千エリスを確保したイッセーが戻ってきたのだが……。

 

 

「はい、佐藤君の分ね」

 

「あざっす!」

 

「ふん、気性の荒さがこんな状況を常に生むなんて考えないことね、ま、褒めて遣わすわ」

 

 

 素直に頭まで下げながら受け取ったカズマと違い、上から目線のアクアの台詞がいけなかった。

 

 

「……………。あ、ごめんさっきの人、千エリスは返すわ、コイツは働き者だから自分で稼いで登録するんだと」

 

「!? ちょ、待ちなさい!!!」

 

 

 アクアに渡そうとした千エリスをそのままそっくり先程の冒険者に返そうと回れ右をしたイッセーに、アクアはギョッとしつつも慌てて引き留めようとする。

 

 

「待たない。考えてみたら佐藤君は良いけど、お前の為に何で金持ってこないといけないんだ? つーか、そんな事ほざくならテメーで金作れ」

 

「あ、アレはちょっとした冗談よ! ほ、ほら私って口悪いから……ね、わかるでしょ?」

 

「わからねぇな? 俺は短気でバカで気性が荒いからよぉ……?」

 

「い!? い、いや……ぐぅ……わ、わかったわ、さっき言ったのは訂正するわ。だから意地悪しないで私の分も……」

 

「……って、お前の背中に必死こいてしがみついてる子は言ってるけど大丈夫なのか?」

 

「うん、大丈夫大丈夫、ほら返すよ……そして今度何か奢るぜ」

 

 

「イッセーさん……いやイッセー様!! この卑しく駄目な私にも何卒お慈悲をお慈悲をくださぃぃぃぃっ!!!!」

 

 

 何を言っても、冒険者に返そうとするのを見ていようよヤバイと思ったのか、遂にイッセーの脚にしがみつきながら、元女神もへったくれもない台詞で媚だしたアクア。

 

 

「い、いや俺は良いから取っといてやれよ……なんか可哀想だぞ……」

 

「はぁ……じゃあ飯でも食うかなー?」

 

「ご、ご飯代は登録してからすぐ私が稼ぎに参りますから! 何卒! 何卒ぉぉぉっ!!!」

 

「……………。お前、ドSだろ。さっきから物凄いアレな顔して笑ってるし」

 

「そうかなぁ? こんなしょうもねぇ女なんかどーでも良いんだけどなぁ? クククク!」

 

 

 ヒッヒッヒッ! とアクアに見えない所で嗤うイッセーにお金をくれた冒険者がかなり引いている。

 結局こんなやり取りを挟みつつ、アクアも無事に登録料を手に出来た訳だが……。

 

 

「ありがどうございます! ありがとうございましゅぅぅ!」

 

「鬱陶しい、離れろうざってぇ」

 

「はい!」

 

「スゲー……生の調教する奴初めて見た」

 

 

 アクアとイッセー間の上下関係だけはハッキリ決まってしまった様だと、カズマは改めてこの男だけは敵にしたくないと畏怖とほんの少しの尊敬の念を覚えるのだった。

 

 まあ、この数分後にはアクアも元に戻ってイッセーに何時か復讐してやると思う程度にメンタルを戻すのだが。

 

 

 

終わり。

 

 

 

登録を済まし、早速とばかりにクエストを開始する凸凹トリオだが、レベルやらステータスやら要領が悪すぎる二人は稼いだ金を考えなしに使って直ぐに貧乏になる。

 故に宿も最底辺の馬小屋になってしまうのかと思われたのだが……。

 

 

「この世界の良いところは、簡単に金が稼げるってところだな。

ふふふ、人間のおんにゃのことトークできる店も選び放題だぜ」

 

 

 基本的にスペックがおかしい龍帝の少年が、暫く余裕で遊んで暮らせるだけの金を半日で稼いで来てしまったからさぁ大変だ。

 

 

「おねげーします! おねげーしますご主人様! 私も高級宿で宿泊出来る工面を何卒ぉぉ!!」

 

「あ? んだよ、また無駄に金使ったわけ?」

 

「すまん、このバカが昼間っからシュワシュワやら飯を食いまくって金を……しかも俺の分まで」

 

「寄生虫より最低だなこの女。はぁ……まぁ良いや、佐藤君が可哀想だし良いぜ別に」

 

 

 毎日毎日稼ぎ頭のイッセーにプライド捨てまくりの駄女神。

 そしてイッセーもイッセーで数週間共に色々とやって来たせいなのか、最初の頃と比べてアクアに対してもわりと優しくなってしまったのか、ため息混じりで甘やかしてしまう。

 

 

「あのさ、もう殆どイッセーに世話になってる身分でこんな事言うのも変だけど、このバカだけは更正させるべきだと思うぜ」

 

『それは俺も同意する。小娘の為にならん』

 

 

 ドライグに知らされたイッセーの特性『情を持った相手には打って変わって献身的になってしまう』というのを今のアクアに対する対応を見て少しばかり危惧したカズマがドライグと共に忠告する。

 しかし……。

 

 

「何で俺がこんな雌甘やかさなきゃなんねーんだよ?

別に何にも変わってねーよ」

 

「……マジかコイツ?

気付いてないとかどういう事だよドライグ?」

 

『イッセーは他人に頼られる事を知らなかったからな、ましてや悪感情を常に向けられる人生だったんだ。

お前やあの小娘に頼られてる、そして悪感情を向けられてないという状況に無意識に行動してしまうんだろう』

 

「二度目になるけどマジか……。もしかしてイッセーは駄目人間製造機か……アレは人間じゃなくて女神だけど」

 

 

 発覚する駄目人間及び駄女神生成気質、それも無自覚。

 確かにカズマ自身も『魔王? んな事より今の生活が楽でしょうがない』と低レベルで安全なクエストしかしない状況ではあるが……。

 

 

「イッセ~ お腹空いた~」

 

「あ? チッ……じゃあギルド場で飯でも食うか」

 

「わーい、あ、でも歩くの怠い~」

 

「はぁ!? テメェ歩くくらい……あーもう良いや、ほら」

 

「わーいわーい、イッセーのおんぶ~」

 

 

 

「アレは無いだろいくら何でも」

 

『あぁ、この先が流石に不安すぎる』

 

 

 女神としての力を失ってしまったのがあるのか、上位職に着いているのに失敗するアクアやカズマをフォローしまくる内に気付けば二人に対して無自覚に過保護化してしまったイッセーが心配で仕方なかった。

 

 その内自分達の組むパーティに入ったメンバーにもこうなってしまうのかと……。

 だから取り敢えず体を動かすクエストを受注する。

 

 

「ジャイアントトードねぇ……こんなの適当に」

 

「いやぁぁぁっ!! 食べられちゃうぅ! 助けてイッセー!!!」

 

「チッ、上位職じゃねーのかよあのアマ! ドライグ!!」

 

『Boost!!』

 

「喰らえ! 地獄のメリーゴーランド!!」

 

「スゲー……そこら辺の枝二本でジャイアントトードを切り刻んでら……」

 

 

 カズマに言われて見ていただけのイッセーだが、アクアが巨大蛙に丸飲みにさせられる際に助けを求められてしまうもんだから、悪態を付きつつもつい助けてしまう。

 

 

「うぇぇぇん……気持ち悪いよぉ」

 

「エグい臭いだなおい……はぁ……仕方ねーな、戻って風呂入れよ……ったく、手間の掛かる」

 

「で、でもイッセーの服が汚れる……」

 

「洗えば良いだろんなもん、おら行くぞ」

 

「ぐすん……」

 

 

 

「あれ、失敗かもしれない」

 

『大失敗だな』

 

 

 クエストは成功しても、生活パターン改善は大失敗。

 そんなクエストの帰り道……。

 

 

「ふっふっふっ、見てましたよ!

我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

 

 中二病っぽい格好の少女と出くわす。

 そしてあろうことかイッセーが巨大蛙を赤龍帝の籠手を使用して討伐するのを見ていたらしく……。

 

 

「わかりますよ! 貴方も私の仲間ですね!」

 

 

 イッセーの赤龍帝の籠手に同類と勘違いしてキラキラした目で寄ってきた……。

 しかし……。

 

 

「あなたなら私と同じ爆裂魔法を――」

 

「邪魔だクソガキ!! 俺はアクアを風呂に連れて行くのに忙しいんじゃボケ!!!」

 

「」

 

「ひ、ヒデェ……」

 

 

 見た目からして『あり得ない』イッセーは、寧ろそんな少女に対して失せろとチンピラ口調で怒鳴り散らすと固まる彼女の横をアッサリ通りすぎて去ってしまった。

 無意識の内に見知らぬ少女よりパーティ組んでるアクアの方が優先順位が高かったが故の酷すぎるオチだが、見ていて流石に不憫に思ったのか、カズマは半べそかいてた少女を連れていく事にした。

 

 

 それが失敗だったと後に後悔するのだが……。

 

 

終わり




補足

とまあ、こんな感じに無駄にスペックがあるせいでこういう事に……。


その2
オマケでチョロっとやりましたが、それがこのイッセーのシリーズ共通の長所である短所でもあります。

駄目人間製造機……及び駄女神製造機。

その3
しかし、めぐみんには――いやほら……ロリっ子やし仕方ないんだよ……うん
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