この破壊の龍帝に祝福を!   作:超人類DX

3 / 19
続き。

ロリっ子の出番は無しです。確か次だった気がします



紆余曲折

 結局アクアの分も無事に登録する事で落ち着いたのだけど、ここに来てまたしても騒ぎを既に起こしていたイッセーに別の意味で注目の集まる事が起きた。

 

 

「名前と身長と体重……と」

 

 

 金を献上して登録にまでこじつけたカズマ、アクア、イッセーは其々受け付け嬢から渡されたカードに自身の簡潔な情報を記す。

 受け付け嬢曰くそれで個人のステータスが測れるとの事らしく、イッセーとカズマは何と無くRPGゲームのステータス画面的なものを思い出す。

 

 

「えっと、サトウカズマさんですね?

ふむふむ、基本ステータスがほぼ平均的で……あら幸運の数値が高いですね」

 

「運が高い? ……死んだのにか?」

 

「そこはもう深く考えない方が良いと思うぞ佐藤君。

良いじゃん、運が良いに越した事はねーだろ」

 

 

 ふむふむと受け付け嬢が割り出されたステータスを軽く評価する横で、カズマとイッセーは自分の背景を思い返し微妙な表情だ。

 死んで異世界に飛ばされたというのに、それで幸運ステータスが高いと言われても、正直実感がまるで沸かないのだ。

 

 

「と言っても運が高いだけで後は平均以下ですので、職業がかなり限られるというか……正直冒険者じゃなくて商人の方が適正かもしれませんね。

サトウカズマさんは基本職の冒険者……ぐらいでしょうか?」

 

「わぁお……じゃあその冒険者でいいっす」

 

 

 スペックが運以外平均以下とハッキリ言われた挙げ句、基本職ぐらいしか無いとまで言われたカズマはちょっと凹みながらも、商人なんてやりたく無かったので仕方なく冒険者職で登録を済ます。

 然り気無くメンタルが戻ってたアクアが失笑していたりするが、カズマは敢えて無視した。

 

 

「良いじゃん冒険者。

殆どの他の職のスキルが覚えられるんだろ? 器用じゃん」

 

「絶対器用の後ろに貧乏が付くだろ。

聞けば他職のスキルを覚えるのにスキルポイントが基本倍使うらしいし……」

 

「ホイホイとポイントを無駄遣いせず厳選すりゃ良いんじゃね?」

 

「まぁな………」

 

 

 イッセーのフォローが返って更に凹む要素になるとカズマは更にテンションが落ちたままギルドカードを受け取る。

 というのも、どうせイッセーのあの化け物じみた力を考えたらステータスも高いし職も選び放題なんだろうと考えていたからだ。

 

 ならばいっそ自分の次にステータス評価を受けてるアクアみたいに軽く笑い飛ばしてくれた方が気が楽だった……と、カズマは少し卑屈になっていた。

 

 

「凄いですよこの数値は!

知力が平均値より低く幸運が最低レベル以外は残り全てのステータスが平均値を軽く超えてます!

特に魔力が尋常じゃないんですが、あなたは何者なんですか!?」

 

 

 そんな気分を隠しつつアクアが評価を受けているのを聞いていた訳だが、どうやら力を失ってしまったとしても女神だけあったのか、受け付け嬢が驚く程の基礎能力を備えていた様だ。

 その証拠に既にイッセーの件で注目を集めていた他の冒険者達が若干アクアに向けてどよめいていた。

 

 

「凄いですよこれは、このステータスなら知力を必須とする魔法使いは無理にしても殆どの職を選べます!」

 

「ふーん? それなら一番私に合ってそうなのはこのアークプリーストかしら?」

 

「はい! 早速登録しましょう!」

 

 

 ふふん……と流し目にカズマを見下すような表情を見せながら、ざわざわしてるギルド内にて堂々と上級職に着くアクア。

 そのあまりにも腹の立つドヤ顔に思わず後ろからドロップキックでも噛ましてやりたくなる衝動に駆られたカズマだが、今はグッと耐えた。

 

 

「アクアさんはアークプリーストとなります!」

 

「ま、当然よねー?」

 

 

 イッセーに精神的に潰された癖に……と僻むカズマ。

 既にアークプリーストが確約された新人冒険者という事でアクアはかなり注目されている訳だが、そんな空気の中をいよいよお待ちかね……イッセーの基本スペック評価の番だった。

 

 

「さて、最後はヒョウドウイッセーさんですが―――――え?」

 

 

 既にアクアの件でちょっと興奮していた受け付け嬢さんだったが、最後であるイッセーのカードに浮かび上がったステータス数値を見て完全に固まった。

 

 

「? どうしたのおねーさん? もしかして俺とデートでも……」

 

「いや、しませんけど……え?」

 

「何よ、何かあったの?」

 

 

 然り気無く口説こうとするイッセーを軽く流し、イッセーの情報が入ってる筈のギルドカードを眺めて固まる受け付け嬢さんに、カズマもアクアも気になって身を乗り出す。

 イッセーの基礎スペックの事は今のところ彼の中に宿る二天龍を抜かせばアクアとカズマしか知らない。

 なのでまさか異常過ぎる数値が計測されて絶句でもしたのか? とやや心配になってしまう。

 

 

「い、いえ……あのヒョウドウイッセーさんはちゃんとご自身の情報を書かれましたよね?」

 

「? そりゃもう……お姉さんに俺の事を知って欲しいですから?」

 

「何なのよ、ハッキリ言いなさいよ、まさかコイツの数値が異常に高いの?」

 

「その……いえ、見て貰えれば分かるのですが……」

 

 

 そう言ってギルドカードを三人に見せる受け付け嬢。

 そこまで困惑するならさぞ変な事でも書かれているのか? とアクアとカズマは興味本意でそのカードを確認するのだが……。

 

 

ヒョウドウ・イッセー

 

 筋力……ライバル

 俊敏性……けつばん

 生命力……オジゾウバッヂ

 魔力……かいがらバッヂ

 器用度……ブルーブルーホホ

 幸運……インドメタシン

 知力……ベアビヲ9

 

 以下全て解析不能文字

 

 

「「……」」

 

「なにこれ?」

 

「さ、さぁ?」

 

 

 アクアもカズマも思わずポカンとしてしまう訳のわからない文字の羅列が、ステータス数値の代わりとして書かれていた。

 

 

「身分を偽装したとしてもこんな結果にはならないし、一体全体何が……」

 

 

 アクアが注目を集めてくれたお陰で他の冒険者達にみられる事は無かったが、受け付け嬢もこれには何て言えば分からない様子であった。

 何せ聞いた事もない文字が殆どで占められてるのだ……これでは適正のジョブを紹介する以前にイッセーの基礎スペックの評価すら下せない。

 

 

「あの……一応もう一度このカードを破棄して登録し直してみましょうか?」

 

「あ、はい」

 

 

 なのでもう一度登録のやり直しをしてみたのだが……。

 

 

「変わりません……ね」

 

「そっすね」

 

「「………」」

 

 

 結果は同じく、数値化不能で訳のわからない文字の羅列のままだった。

 

 

「あの……登録自体は出来るのでそこは大丈夫なのですが、そのヒョウドウさんの場合はジョブを冒険者すら選べないと思います」

 

「えっと、その場合はどうすれば?」

 

「一応、冒険者以下となる『すっぴん』というものがあります。

ですが、すっぴんの場合はスキルは覚えられず、経験値の習得も不可能で、クエストが受注できるだけの一般人と言いますか……。

こうなると冒険者になるのはオススメ出来ないですね……」

 

 

 すっぴんという、ギルド歴史史上『取り敢えず作っとけ』的なノリで作られたクエスト受注権利だけを獲るある意味幻の職業があると紹介され、同時に冒険者になるのはオススメ出来ないと言われた。

 当たり前だ、いくらモンスターを倒しても経験値は入らないしスキルポイントも手に入らない。

 事実上『お前は冒険者としての全ての才能が欠落してる』と言われるのと同じ意味でもあるのだ……受け付け嬢としてもオススメなんて出来る訳が無い。

 

 アクアとカズマもまさか基礎スペックが規格外のイッセーにそんな欠点があるなんて思いも寄らず、また流石に笑えなかった。

 

 

「ふーん……? じゃあすっぴんでお願いしまーす」

 

 

 しかしイッセーはといえば呑気に受け付け嬢さんに向かってすっぴんでの登録を申請した。

 

 

「え!? よ、よろしいのですか? 先程のサトウカズマさんと違って経験値もスキルも無いままずっとですよ?」

 

「全然いいっすよ、俺これでもちょっとは強いんで」

 

「い、いえ確かに先程騎士の方を倒してましたけど……本当に良いんですね?」

 

「はい、登録しないとお姉さんと会えないし、俺にとっちゃそっちのが重要っすわ」

 

 

 にっひっひっひっ! と笑いながら受け付け嬢さんの忠告を突っぱねて登録を申し出るイッセー。

 それを受けて受け付け嬢もこれ以上忠告しても無駄だと悟ったのか、そのまま登録を完了させる。

 

 

「は、はい登録を完了しました。

それではようこそ……」

「はーい! 俺頑張りまーす!」

 

「「………」」

 

 

 だが受け付け嬢は知らないのだ。

 何故イッセーのステータスが解析不能なのか。

 

 そしてその潜在能力を……。

 

 この世界には存在しない、されど一誠をアクア達女神すら修羅の世界と距離を置いてきた世界にて最強最悪の存在にまで押し上げた力があるからこそ……。

 

 

「で、早速なんですけど軽く金が入るクエストとかあります?」

 

「へ!? さ、早速ですか? え、ええっと……」

 

 

「あれ、低いからじゃないよな絶対?」

 

「二天龍ってだけでもヤバイのに、アイツ自身の持つもうひとつの力がああさせたわね……多分」

 

 

 イッセーはすっぴんなのだ。

 

 

 兵藤一誠

 

 ギルド職……冒険者以下のすっぴん

 

 ステータス……解析不能

 

 

 

 

 

 備考…現赤龍帝にて無限進化のスキル保持者。

 

 

 

 

 

 

 解析出来ない、数値化できない。

 まあ、イッセーのあのふざけたスペックを考えれば納得は出来るわね。

 寧ろおかしな数値叩き出して大騒ぎされるよりは、解析不能で誤魔化せただけマシかもしれないわ。

 

 

「で、イッセーはまだ帰って来ないの??」

 

「『外行ってくる』と行ったきりだよ」

 

 

 そんなイッセーだが、ギルドに登録してからは暫く一緒に収入の少ないクエストをやっていた。

 すっぴんと冒険者……そんな理由で金回りの良い仕事にありつけず、やってる事と言えばもっぱら町の住人から与えられる雑用。

 

 お陰で満足の行く宿には泊まれないわ、美味しいご飯も食べられないわで、絶賛貧乏生活を強いられちゃってる。

 それもこれもこのカズマとイッセーが私の足を引っ張ってるに他ならない訳で……。

 

 

「テメーゴラ!! 昼間っからシュワシュワなんて飲んでんじゃねぇ!! 只でさえ金が無いのに!」

 

「うっさいわね!! こちとらアンタ等のせいでこんな惨めな生活させられてんのよ! シュワシュワの5杯くらいでガタガタ抜かすな!」

 

 

 女神である私の生活レベルは底辺にまで落ちていて、たまのシュワシュワですらヒキニートに文句言われる始末。

 ホント……こんな状況で飲まずにやってられるか。

 

 

「というかイッセーは何処なのよ? またナンパなんて無駄な事して働いてないわけ?」

 

「いや、ナンパしてたらすぐ分かるし、多分町の外じゃ――だから無駄に飲んでんじゃねぇ!!」

 

「けっ! こっちは足を引っ張るアンタ等に合わせてるせいで馬小屋生活させられてんのよ? これくらいで文句言うな」

 

「テメーが無駄遣いするから馬小屋なんだろうが!」

 

 

 ケッ、一々煩いわね。

 そもそもコイツが私を道連れにしたせいで―――ん?

 

 

「お! すっぴん君が戻ってきたぞ!」

 

「よぉすっぴん!」

 

 

 ギルド場の入り口が騒がしくなるのが奥に居た私達の耳に入る。

 

 

「すっぴん……イッセーが来たのか!?」

 

「あのナンパ野郎……私達の苦労を他所に……!!!」

 

 

 規格外過ぎてすっぴんなんて事実上冒険者として終わってる評価を下されてるにも関わらず登録したバカなんてイッセー以外存在する訳も無く、騒がれ具合からしてイッセーが何処ぞから帰って来たのだと思った私は、人の波を潜って数日ぶりに姿を見せて穀潰しを思いきり睨む。

 

 

「イッセー!」

 

「あ、カズマにアクアじゃん。何だよ、昼間っから飲んでるのか?」

 

 

 私と居ると文句ばっか抜かすカズマが、イッセーを呼ぶや否や心の底から安堵した顔をする。

 だが私は違う……こんなフラフラと勝手な真似して遊んでるバカが来ても怒りしか沸かない。

 

 

「誰のせいでこんな事になってると思ってるのよ……! 熱湯頭からぶっかけるわよ……!?」

 

「は? 何怒ってんだコレは?」

 

 

 ヘラヘラした態度が癪に触る。いくら睨んでも平然としてるのが尚気に入らない。

 挙げ句の果てには何で怒ってるのかすら解ってない……あームカツクゥ!!

 

 

「いやほら……数日帰らなかったから……」

 

「は? あー……それは悪かったが、別に遊んでた訳じゃねーぞ?」

 

「あ゛? じゃあクエストでもしてたのかしら? 私達とパーティ組まなきゃクエストなんて受注できないお荷物の癖に!!」

 

 

 そう、イッセーはすっぴんであるが故にきちんとしたジョブを持つ他の冒険者と組まないとクエストを受注出来ない。

 身なりが綺麗な時点でコイツがクエストなんてやってる訳も無く、どうせそこら辺で女ナンパしてたんだろうと私は半分になったシュワシュワの入ったジョッキを投げ付けてやろうかとイッセー目掛けて振りかぶった――

 

 

「おう、だから『個人的な散歩』で売れるもんを取ってきたんだよ……ほれ」

 

 

 まま、私は固まる。

 ケタケタとムカつく顔して笑うイッセーが、懐から金銀財宝が詰められた袋を……少なくとも10袋はテーブルの上に置いたからだ。

 

 

「は? な、なにこれ?」

 

「見てわかるだろ? 売れそうな石やら金貨だよ」

 

「いや、それはわかるが、お前こんなのどっから取ってきたんだよ? お、おいまさか金持ちからカツアゲ――」

 

「そんな事するかよ。普通に散歩ついでに良さげな洞窟やら鉱山で掘りまくったんだよ」

 

 

 そう言って私達と同じテーブルに座ったイッセーは、唖然とするカズマや他の冒険者達を無視して呑気に注文をしている。

 

 

「いやおいすっぴん君、宝石は良いがこれ……祖龍の紅玉じゃないか?」

 

「はぁ!? う、嘘だろ!? …………い、いやマジだ……図鑑で見たものとまんま同じだ……」

 

「え? あぁ、これそういう名前なの? 何か無駄にでかいトカゲをぶちのめしたら目から落としたんだよ」

 

 

 そんなイッセーに冒険者が宝石の中に混じる何かを見て大騒ぎする。

 祖龍の紅玉……え、祖龍の紅玉?

 

 

「イッセー? アンタどこ行ってたの?」

 

 

 今更コイツが規格外なのは知っている。

 しかしそんなものを平然ともって帰って来るという事は、コイツが散歩と表して行ってきた土地は――

 

 

「ええっと……何だっけ? 竜王の圏域?」

 

 

 この世界では普通の手段じゃまず……いや寧ろ魔王ですら手出し不可能の幻と呼ばれる土地という事になるわね……。

 

 

「アンタ……どうやって行ったのよ」

 

「どうやって? 確かドライグの奴が急に『ドラゴンの気配を上に感じる』って言うからさ、言われたまんま上に飛んだら変な大陸があって………か?」

 

『な、なにぃぃぃぃっ!?!?』

 

 

 ……。うん、まあコイツを知らない連中からすれば驚くわね。

 何せ竜王の圏域ってこの世界にて誰も到達出来ない異空間みたいな所なんだから。

 

 

「いやいやいや待て待て待て待て! お前それマジか!?」

 

 

 当然聞き耳を立てていた冒険者が大騒ぎしながらシュワシュワをグビグビ飲み始めるイッセーに詰め寄る。

 

 

「多分ね、何か普通に喋る蜥蜴がそう言ってたし」

 

「そ、それって竜王・バハムート……?」

 

「あー……そんな名前だったかな……?

宝石乱獲したくて邪魔だったし直ぐ殴り倒しちまったからあんま覚えてねぇや……ヒック」

 

 

「……。よ、酔ってるだけか? つかすっぴんなのにありえねーだろ」

 

「た、多分アレも俺の見間違いかもしれねぇ……」

 

 

 けどあまりにも荒唐無稽過ぎるのか、すっぴんというのもあってイッセー自身の見間違いであるという結論に至る他の冒険者達は、後ろ髪を引っ張られる様な顔して離れていく。

 

 

「なぁ、ひょっとしてイッセーはゲームで言うところのラスボス後の隠しダンジョンをクリアーしちまったんじゃ……」

 

「多分ね。アンタ風に考えるなら、竜王の圏域は文献でしか出ないお伽噺みたいなものだし」

 

「何でお前が知ってるんだよ?」

 

「一応調べたから」

 

「ヒック、ヒック」

 

 

 怒りが冷めたわ。

 まさかコイツ、何も知らないで幻の土地に踏み込んで普通に生還するなんて……。

 いやまぁコイツのスペック考えたらあり得ない話じゃないけど……。

 

 

「取り敢えずよぉ、そのどうでも良い話は抜きにして、これだけありゃあ暫くは遊んで暮らせるんだな……けけけけ」

 

「!? まさかアンタ、私の為に――」

 

「あ? 何で俺がテメーみてーな雌の為に金稼がなきゃなんねーんだよ。

こりゃお姉さんと楽しいトークする為に持ってきたんだよ……うぃ」

 

 

 と、思ったけどムカつくニヤケ顔をした瞬間また怒りが沸いてきた。

 コイツ、こんだけ稼いで来たのに私に少しも渡さないと言ったのだ。

 そんなの勿論カズマだって納得できる訳――

 

 

「あ、これカズマの分な?」

 

「!?」

 

「え!? い、良いのか!?」

 

 

 と、思ったらこの鬼畜野郎はカズマにパンパンに詰められた宝石袋を二つもカズマに渡した。

 

 

「当たり前だろ、つーか元々そのつもりで散歩したんだし」

 

「お、おぉ……す、スゲェ……ちょっと泣きそうなんだけど俺」

 

「ちょ、ちょっと私には!?」

 

 

 感激するカズマなんてどうでも良いというか、何で私には無いんだとイッセーに詰め寄ってみる。

 コイツが良くて私が良くないとかそんなのあり得ないのだ……逆ならわかるけど。

 

 

「は? 俺は人間じゃねぇ雌相手に施しくれてやるほどの慈悲なんてねーよ。

けっ、昼間っから飲んだくれるだけの余裕があるならそれで良いだろ?」

 

「よ、よくないわよ! 私だってギリギリなんだから寄越せ!!」

 

「嫌だね。『すっぴんの役立たず』なんて言われちゃ、渡したくなくなるわ」

 

「うっ!? そ、それは……わ、わかったわ、すっぴんの足手まといなんて言ったのは訂正するわ。

訂正するから私にも――」

 

「あ、そうだカズマ。折角だし今日はこの町一番の高級宿でも取ってどんちゃん騒ぎしねぇ?」

 

「おう! うぅ……これで馬小屋とおさらばできる……!」

 

 

 私にも寄越せと言ってるにも拘わらず、それを無視してカズマと一緒に高級宿に行こうと席を立つイッセーは、残りの宝石袋を仕舞うと……。

 

 

「女神なんだろ? 女神様なんだろ? じゃあ自分で頑張るんだな……俺は役立たずのすっぴんだからよ?」

 

 

 物凄く根に持ってたと分かる言い方で私に顔を近付かせながらニタァと嗤うと、そのまま肩を震わせて感激に涙するカズマと肩を組ながらギルド場を出ていこうと歩いてしまう。

 

 …………………………。

 

 

 

 

 

『すっぴんなんて、いくら無駄に化け物みたいな力を持っててもこれじゃあ私の足手まといよ!』

 

 

 そうアクアに罵倒されたのがギルド登録してから直ぐの事だった。

 確かにすっぴんという職は一般冒険者よりも融通は効かないし足手纏いと言われても仕方ないボンクラ職ではあった。

 

 しかし稼いだ金を三人分も無駄遣いし、挙げ句自業自得で馬小屋生活を強いられている状況まで八つ当たり気味に罵倒されたとなれば、イッセーとしてもカチンとする訳で……。

 

 

「ドライグ、散歩するぞ」

 

『金目の物を集めるつもりか? なら町を出てから真上に飛べ。

この前から上空にドラゴンの気配を感じる』

 

 

 思いきり見返してやると、ギルドを通さない個人的な収集を開始……ドライグに言われるがままにドラゴンの気配とやらを辿って知らない場所へとたどり着く。

 

 

「うひょう! めっちゃ売れそうなもんがあるじゃねーか!!」

 

『手付かずの土地みたいだな…中々都合が良いぞ』

 

 

 そして着くや否や、金目の宝石を乱獲しまくり……。

 

 

「へぇ、マシそうな蜥蜴じゃねーの」

 

『我の眠りを妨げるのは―――!? 貴様……何者だ?』

 

『ほう、俺を感じるか異世界のドラゴン。

なら腕試しの実験台になってもらおうか……行くぞイッセー』

 

 

 

「禁手化(バランスブレイク)!」

 

『Welsh Dragon balance brake!!』

 

 

 特に用も脅威も感じない幻の竜をぶちのめし……。

 

 

「よーし、これくらいアレばカズマの苦労も少しはフォローできるぜ」

 

『問題は小娘だが……小娘にも渡すのか?』

 

「態度次第だな……嘗めた事ほざいたら捨ててやる」

 

 

 幻の竜の土地から平然と生還。

 これが事の真相だった。

 

 

 

 

「ま、待ちなさい! 待って……ま、待ってください!」

 

「お、おい……アクアが泣きながら追い掛けて来たけど」

 

「あーん? 聞こえんなぁ?」

 

『いきなり地雷を踏んだからなあの小娘は。学習せん奴だ』

 

 

 真相は結局周囲に理解されぬまま、ギルド場をカズマと共に出たイッセーは、この町一番の高級宿目指して換金して暖かい懐を胸にゆったりと歩いていた。

 

 すると案の定というか、アクアが必死こいた形相で追い掛けて来て、登録料の時と同じくイッセーの脚にしがみついた。

 

 

「謝るから! 役立たずと言ったのは謝るから! わ、私にも高級宿に……何卒高級にぃぃぃっ!!」

 

 

 ズルズルと脚にしがみつてるせいで服が物凄い勢いで汚れてしまっても何のその、馬小屋から高級宿暮らしへと変わる事を思えば、今のアクアにはプライドなんぞゴミ以下だった。

 

 

「思うんだけどさ、宿暮らしじゃいくらこんだけ金確保しても無くなっちまうと思うんだ。

だから適当に家でも買わね?」

 

「あ、おう……。(アクアが泥だらけになってる……)」

 

 

 しかしそこはドS

 生前が生前のせいか、人として色々とぶっ壊れてるイッセーはそんなアクアを無視し、カズマに爽やかな笑みを浮かべていた。

 これにはカズマもアクアにちょっとだけ同情を覚えてしまう。

 

 

「お願いよぉぉ!! 馬小屋はやらぁぁぁ!」

 

 

 元女神とはとても思えない情けない姿。

 カズマに道連れにされてからは色々と終わってしまってるアクアは、涙やら鼻水やらで顔がエライ事になってしまってる情況の中、町の人々にドン引きされながらも必死にイッセーにすがりつく。

 

 

「ごめんなしゃぃぃ! もう二度と言わないからたしゅけてよぉぉ!!」

 

「な、なぁイッセー? もう良いんじゃねーか? 俺も流石に心が痛いし……」

 

 

 それを最早見てられなくなったカズマは、もう一度イッセーに許してやればと切り出す。

 

 

「………………。ハァ」

 

 

 それを受けたイッセーも、そろそろ煩いと思ったのか怠そうにため息を吐くと……。

 

 

「鬱陶しい」

 

「あぅ……!」

 

 

 しがみつくアクアを軽く蹴っ飛ばした。

 そして泥だらけのグチャグチャになってるアクアに目線を合わせる様に屈むと……。

 

 

「テメーにはビタ一文やらねぇ」

 

「ふぇぇ……」

 

「が、宿代くらいは出してやる……カズマに感謝するんだな」

 

「ふぇぇぇぇ!!!」

 

 

 と、漸くのお許しの言葉を受けたアクアは、叫び声なのか鳴き声なのかよくわからない声を発しながら、イッセーとカズマに何度も土下座しまくったのだった。

「これで良いか?」

 

「あ、あぁ……それにしても本当お前人外嫌いというか……」

 

「人間じゃねぇ輩に良い想い出が無いだけだよ」

 

『それもあるが、イッセー自身が小娘をなじるのを楽しんでるだけだろ』

 

「まあ、チョーシこいた馬鹿を絶望させるのは楽しいよ確かに」

 

「ありがとぅ……うぅ……」

 

 

 泥だらけのアクアを無理矢理立たせ、それでも尚鬼畜な台詞を吐くイッセーはそのまま歩き出し、カズマも泣きまくりなアクアもそれに続く。

 

 そう、これが本当の意味での始まりである事を知らずに……。

 

 

 

 それから二週間後。

 遊んで暮らせる資金を元手に安い家を購入し、そこに共同で住む事になった凸凹トリオ。

 アクアもイッセーを見下す台詞を口にする事も無く、またカズマも無駄に豊富な資金で特注させた装備でそれなりの異世界生活を送り、イッセーは資金を稼ぎまくる。

 ある意味隙の無い三人組に昇華した訳だが、その代償なる問題が出て来てしまった。

 

「あのさ……」

 

「んー?」

 

 

 家を購入し、すっぴんの癖に稼ぎ頭のイッセーのお陰で馬小屋生活とすっかりおさらば出来たある朝食時。

 すっかり健康的かつイッセーに甘えまくりな生活に浸透してしまったカズマは、ある意味生前の時よもしっかりしてしまったのか、意を決した表情で呑気にフルーツジュースを飲むイッセーに言った。

 

 

「殆どイッセーに世話になってる身分でこんな事言うのも変なんだが……」

 

「?」

 

 

 家の世話までして貰った、金の心配も解決して貰った。食事の心配も無くなった。

 それもこれも全てはすっぴんのイッセーがギルドからの保証無しによる単独行動での資金稼ぎのお陰であり、それに思いきり甘えてる自分が今更イッセーに口出しするのもおこがましいと思っていた。

 しかし……しかしだ、一週間前から変化したとある情況だけはイッセーの為にも言わなければいけない……その想いを胸にカズマは重々しく切り出した。

 

 

「イッセ~ ミルクほしー」

 

 

 

 

「このバカだけは更正させるべきだと思うぜ」

 

『それは俺も同意する、小娘の為にならん』

 

 

 気付けばアクアに対するイッセーの異様な過保護化について……ミルクが欲しいと一々イッセーにせがむ、駄目を通り越した何かになってしまったアクアを横目に、イッセーの腕から勝手に出てきたドライグと共に進言したカズマ。

 

 

「ごくごく……」

 

「これを更生させるのは同意だけど、今更どうしたんだよ二人して?」

 

「いや、ほら……」

 

『お前、自分のやってることがわからんのか?』

 

「おいしー」

 

「だから何が? っておい、コラ、口に付いてるから拭け」

 

「むみゅ……」

 

 

 

 ミルクを口回りに付けるアクアにわざわざクロスを使って拭いてやりながら、イッセーは何を今更と首を傾げる。

 そう……己のやっとる事に対しての自覚が全く無いとばかりに。

 

 

『そんな状況が皆無だったからというのもあるが、やはりこうなったか……』

 

「言われた時は信じられなかったが……これは無いわ。甘やかし過ぎだぜ」

 

 

 本気で解ってない様子のイッセーを見て、ドライグに知らされたイッセーの特性『情を持った相手には打って変わって献身的になってしまう』というのを今のアクアに対する対応を見て何とも言えない気分になってしまう。

 

 

「何言ってんだよ?

何で俺がこんな雌甘やかさなきゃなんねーんだ? 別に何にも変わってねーよ」

 

「……。マジかコイツ?

気付いてないとかどいう事だよドライグ?」

 

『イッセーは他人に頼られる事を知らなかったからな、ましてや悪感情を常に向けられる人生だったんだ。

お前やあの小娘に頼られてる、そして悪感情を向けられてないという状況に無意識に行動してしまうんだろう』

 

「二度目になるけどマジか……。もしかしてイッセーは駄目人間製造機か……アレは人間じゃなくて女神だけど」

 

 

 発覚する駄目人間及び駄女神生成気質、それも無自覚。

 確かにカズマ自身も『魔王? んな事より今の生活が楽でしょうがない』と低レベルで安全なクエストしかしない状況ではあるが、それにしても人外嫌いのイッセーがよもやアクアにここまでするなんて……。

 どんだけ他人に餓えてたんだと改めてドライグ以外信用できる存在が居ない人生を送ってきた背景を感じ取るカズマ。

 

 

「こんな雌を甘やかすなんて無いから安心しろ。さて、今日はちゃんとしたクエストをやるから、二人とも準備しろよな?」

 

「おう……」

 

「ギルド場まで歩くの疲れる~」

 

「あん? ふざけた事言ってねーでさっさと――」

 

「イッセーおんぶしてぇ~?」

 

「あぁっ!? テメェふざけた事ほざいてんじゃ――――あーもう良いや、おぶってやるからちゃんとしたクエスト受注しろよな?」

 

「うん、するー!

わーいわーい、イッセーのおんぶ~」

 

「チッ」

 

 

 

「アレは無いだろいくら何でも」

 

『あぁ、この先が流石に不安すぎる』

 

 

 女神のとしての力を失ってしまったのがあるのか、上位職に着いているのに失敗するアクアやカズマをフォローしまくる内に気付けば二人に対して無自覚に過保護化してしまったイッセーが心配で仕方なかった。

 

 

「マジでおんぶするのかよ?」

 

「じゃないとコイツ動こうとしねーんだよ……ったく」

 

『少し前ならぶっとばしてただろ……』

 

「いやもう、それやるのも、コイツ見てるとバカらしくなってよ……ハァ」

 

「わーい、イッセーあったかぁい……」

 

 

 弱点というか短所というべき一面を。

 

 

「おい、もぞもぞすんなよ、うざいな」

 

「だって落ちそうだっから……」

 

「じゃあもうちょいしがみつけよ。動かれるとかったるいわ」

 

「うん」

 

 

 駄目人間製造機……イッセー君。




補足

然り気無くオリ隠しダンジョン的な所に到達して片手間に終わらせてしまったイッセーくん。

しかし世界はまだまだ広い……(棒)


その2

で、そんなこんなでアクアさんを気付けば甘やかしまくってしまってるイッセー君なのだった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。