この破壊の龍帝に祝福を!   作:超人類DX

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タイトルに意味なんて無い。

強いて言うなら、ボインに好かれようとしても空回りして代わりに……。




IFからの呪い

 何度も述べるが、イッセーは巨乳フェチである。

 誰が何と言おうが巨乳が好きなのだ。

 

 喩えその後ろに『おしとやかで、黒髪の』が付いてて我が儘だとしても、それだけは譲れないのだ。

 

 

「確かに悪いことしまくってきたさ、けどだからといってこんな罰ゲームはあるかよ? だろカズマ?」

 

「俺に振られても困るんだけど、別に良いじゃん害は無いんだから」

 

「やかましいガキって時点で害にしかならないんだけど。師匠とか勘弁して欲しいわ」

 

 

 そう……数多のIF世界によるロリペタ引き付け体質を持ってたとしても、彼はムチムチを求めるのだ。

 

 

 

 カズマとアクアの意見一致に逆らえず、結局なし崩し的にめぐみんを仲間に迎える事になった。

 イッセーはその流れと勝手に弟子を自称するめぐみんを心底嫌がっていたのだが、カズマとアクアに圧される形で仕方なく面倒を見る羽目になってしまった。

 

 

「何処に行くんですか?」

 

「お前が居ない所だよこのクソガキ! ケッ!」

 

 

 只でさえナンパは上手く行かず、めぐみんをなし崩し的に仲間に加えた帰りに知り合った銀髪と金髪の冒険者に対して色々と『失敗』した気分にさせられ、挙げ句その日を境にチョロチョロと付きまとわれる始末。

 

 アクアとカズマの三人で地味な日々を過ごしていた方が、面倒と思うことは多けれど気が楽だったと、イッセーはナンパに出掛けようとする己に付いてこようとしためぐみんに怒鳴り、そのまま大股で商店エリアへと行ってしまう。

 

 

「クソが、バカなアクアはともかく人間じゃねぇ奴なんか信用できるか……!」

 

『あの小娘も基本アホだし、アクアと然程変わらんと思うが?』

 

「それ以上に小うるせぇガキは嫌いなんだよ……ケッ!!」

 

『そうか……。

だがお前が罵倒した時、あの小娘半泣きだったぞ?』

 

「知るか! 泣きたきゃ死ぬまで泣いてろってんだ!!」

 

 

 それが、とある世界の『眼鏡貧乳』やら『黒髪ロングロリ』やら『白髪猫ロリ』につきまとまれるもしもの自分と同じかもしれないとは知らずに……。

 

 

 

 

「うぅ、師匠が冷たい……」

 

 

 すっぴんで魔法なんて使えない男が、不思議な力を持っている噂を聞き、それを間近で見た時の興奮は間違いない。

 そして、空に放った太陽を思わせるパワーも一生涯忘れないし、彼の弟子になれば自分の爆裂魔法はもっと強くなれる確信もあった。

 

 だが、その師匠であるイッセーは知り合ってパーティに加えて貰ってからまだ三日だが、未だに自分を毛嫌いしている態度であった。

 

 

「あら、イッセーはどこ?」

 

「商店のあるエリアに怒りながら行っちゃいました……」

 

「怒りながら? 何かあったの?」

 

「いえその……師匠――じゃなくてイッセーさんがお出掛けするので付いて行くって言ったら怒鳴られて……」

 

「あー……そういう事」

 

「やっぱり無理矢理は駄目だったのでしょうか……?」

 

「別に大丈夫でしょう。本気で嫌なら今頃めぐみんさんの事を(この世から)追い出してるし」

 

 イッセーのマネーで購入したらしい家にトボトボと戻ると、今まで寝ていたのか、アクアが寝癖を付けた状態で欠伸をしながらリビングに相当する部屋でだらけており、イッセーの不在についてめぐみんから話を伺い、微妙に納得した顔をしつつフォローを入れる。

 

 

「イッセーは気性が荒いだけだし、その内落ち着くと思うわ。

寧ろこの山場を乗り越えればある程度マシな態度になる……筈」

 

「ほ、本当でしょうか? この前のクルセイダーさんに対する態度を見てると、とてもそうは思えないというか……」

 

「あぁ、ダクネスさんだっけ? あの露骨な態度は確かに見てて何故かムカッとしたわねぇ」

 

「逆にあのクリスさんって人は私とほぼ同じでしたけど」

 

「イッセーは変態だから、体型でしか相手を判断しないのよ………あと種族」

 

「純粋な人間以外は嫌いって奴ですか?」

 

「選り好みし過ぎというか我が儘なだけね」

 

 

 人外嫌いというこの世界に住む者としてはネック過ぎるイッセーの性質。

 その理由をアクアはある程度把握してるのだが、最近めっきりその人外である筈の自分にだけはカズマとドライグ曰く『最初と正反対の対応』を受けており、アクア自身もそれは自覚していた。

 

 理由はなんでも『確かにそうだけど、それ以上にアホっぽい』なんて理由で殺意を抱くのもアホらしいとの事らしく、正直馬鹿にしかされてない気分だったのだが、最近アクア自身も思うのだ……。

 

 

「アイツ……気性は荒いけど、それを回避すると割りと献身的なのよねー……」

 

「え? 何か言いました?」

 

「いえ、何でもないわ……ほほほほ」

 

 

 生前、数えきれない数の種族を殺し、根絶やし寸前まで追い込む程の危険な人間だった事は間違いない。

 だが本人とドライグの話を聞いてると、どうも『育った環境』がそうさせた様に思えてならない。

 

 何処の誰が送り込んだかわからない転生者に人生を滅茶苦茶にされ、その報復として転生者に与する種族や神々を殺したのが本当だとしたら、無駄に殺意を振り撒くだけのサイコパスという訳では無いと思えなくもない。

 

 

「カズマは?」

 

「えーっと、この前の聖騎士さんと盗賊さんを探しにギルド場にと言ってました。

何でも『スキル』について教えて貰うんだとか……」

 

「へー? 最近妙に張り切ってるわね、何が――」

 

 

 

「チキショー!!! 彼氏居るなら先に言ってくれよぉぉ!!!!」

 

「」

「」

 

 

 まあ、乱暴者で選べる立場じゃない癖に女の好みに一々煩い男という認識は変わらないのだが。

 

 

「随分早いお帰りね」

 

「く、クソォ……この前のダクネスって子と同じくらいの子だったのにぃぃ……!」

 

「だ、大丈夫ですかイッセーさん?」

 

「くだらねぇ慰めなんか要らねぇぜクソッレェェ!!」

 

 

 

 

 

 

 すっぴんだけどチートなイッセー、力を失えど上位職なので一応高い駄女神、そして色々あって仲間にすることにしたアークウィザードのめぐみん。

 

 中身はどうであれ、全員能力の高い三人と違い、俺は平凡でどうしようもないくらいに弱い冒険者だ。

 イッセーが居てくれる時点でこんな事をしても無駄なのかもしれないとは分かってる……分かってるが、それでも俺までアイツにおんぶに抱っこは流石に情けないと思う。

 

 だから俺は今、この前めぐみんを仲間にした帰りに知り合った聖騎士と盗賊の二人に、色々と冒険者について教えて貰っていた。

 

 

「と、まぁこんな感じかな。

冒険者って職は器用貧乏だけど見聞きさえすれば他の職のスキルを覚えられる。ただし、本職に比べて修得する必要ポイントが多くなっちゃうけど」

 

「ふむふむ」

 

「私としては防御系のスキルをおすすめするぞ? 敵に囲まれて百叩きにされてもこれならより気持ちさを楽しめるからな!」

 

「……。それはお前だけだから黙ってろ変態騎士」

 

「はぁんっ!? や、やはりカズマは才能の塊だなぁ……くふふふふ!」

 

 

 ギルド場の裏にある簡素な広場。

 そこに俺は、この前イッセーがナンパして爆死した聖騎士のダクネスと、うって変わって貧乳は消えろと罵倒した盗賊のクリスにスキルのシステムとおすすめについてを教えて貰っていた。

 

 ポイント貯めればポイントを消費して修得できる様々なスキル。イッセーはすっぴんに加えて、今更そんなものを修得せずとも手からビーム出したり、物理法則を完全に無視したプロレス技を使うので必要ないものだが、俺は逆にこういったもので少しでも平均以下のスペックを底上げしないと、この先ますますイッセーの足手まといにしかならない。

 

 なので、勝手に悶えてるダクネスとクリスから、こうして色々と財布の中身を消費しながら厳選をしている訳だ。

 

 

「スキルポイントポーションを飲みまくってポイントを貯めるとかどうかな? 確か彼が裏で稼いでてお金には困って無いんだろ?」

 

「それは真っ先に考えたけど、これ以上イッセーの稼いだ金を浪費するのは申し訳ないというか、そんな手で底上げしても……」

 

「あーなるほど……出来ればこれ以上彼の世話にはなりたくないと……」

 

「弱いくせに何偉そうな事言ってんだって話だけど、大体そんな感じだ」

 

 

 クリスに盗賊スキルについての説明を受けてる最中、ゲームの作業に使いそうな手を提案された俺は、非効率である事を覚悟してその話を却下する。

 

 確かにポイントはそれで貯められるし、覚えられるスキルも多くはなるが、それ以上にレベルとステータスの貧弱さを先に解決しなければ、いくら強力なスキルを覚えても宝の持ち腐れだ。

 

 そこら辺で拾った小枝で鋼鉄の塊を三枚下ろしにしてしまうイッセーを見ているせいか、スキルだけが全てじゃないと俺は思うのだ。

 

 

「中々熱心な心掛けじゃない」

 

「うむ、それなら大量発生したモンスターを討伐するクエストを探して受注し、モンスターに傷つけられて精神と肉体を鍛える修行でも一緒にしようか!」

 

「それはお前の好みだろうが! 1人でやってろ!」

 

「つれないなぁ……しかしその蔑む瞳はゾクゾクするぞ」

 

 

 クリスという盗賊の冒険者は、一つ誰にも言ってない秘密がある。

 その秘密というのは、知られたらまず大騒ぎになる事間違いない大きくて壮大な秘密なのだが、そんな秘密を抱えながらも1冒険者として居るのは、最近先輩が迎えた1人の転生者の『動向』にあった。

 

 

「ところでさ、イッセーさんは今どうしてるの?」

 

「イッセー? アイツなら今家で寝てるんじゃねーか? それか町に出てナンパして玉砕してるとか」

 

「ふーん……?」

 

「何だクリス? 彼が気になるのか? 確かに彼は肉体的にも精神的にも鬼畜という才能はあるが、それを私に向けてくれない辺りが惜しい」

 

「そういう意味で気になってる訳じゃないんだけどね……」

 

 

 ドS通り越して鬼畜な少年が、自分には何もしないという点に不満そうな顔をするダクネスにクリスはカズマと共に何とも言えない表情を浮かべつつ、内心静かにその男とのクリスとして接触した初めてを思い返す。

 

 

『あ? ……………………………………。テメェは『何だ?』』

 

 

 ダクネスとは真逆に、明らかに自分の胸を見てから『どうでも』良い顔になるという失礼過ぎる態度。

 

 

『……。ふん、戦闘(おっぱい)力たったの2……ゴミめ』

 

 

 いっそ温厚のつもりである自分も殴りたくなる態度。

 しかしそれよりもクリスが気になったのは、最初に自分を見た時に僅かに発した明確な『殺意』だった。

 

 

「どうもアタシは彼に嫌われてるみたいだからねぇ……。何で嫌われてるのかちょっと気になる感じ?」

 

「そりゃあ…………いや、何でもねぇ……」

 

「あはははは、何でアタシの胸を見てから目を逸らすのかなカズマくんは?」

 

「ゴミ呼ばわりとは、なんて羨ま―――いや酷い奴だ!」

 

 

 身を斬り刻まれてしまったと錯覚する程の、胃を引きずり出される感覚すら覚える濃厚な殺意。

 クリスはそれが忘れられないでおり、何も知らないカズマとダクネスに対して適当にかわしながら、一つの仮説を立てる。

 

 

(報告によれば、彼は人間以外の知的生命体を嫌悪している……。

そして転生者という言葉にも異常な程の拒絶反応を見せる……それは彼が転生者という存在を知っている事であり、またあの時私を見た際に見せた『嫌悪』の表情はまさに…………『私』という中身を端的に見抜いた……)

 

 

 カズマ達と話す口調とは違う……どこか威厳を感じさせる口調を脳内にて展開させ、ダクネスとふざけあってる姿を見つめつつクリスは、イッセーがあの時点で自分を『自分』であると見抜いていると結論付ける。

 

 この世界に広く浸透している……慈愛の女神としての自分を……。

 

 

「あ、居た居た!」

 

「カズマさーん! ダクネスさーん! クリスさーん!」

 

「ん? お、アクアにめぐみん……それに噂をすればイッセー」

 

「あ? 何だ噂って?」

 

 

 

「………………………。(そのわりには何故女神の先輩には普通の態度なのでしょうか)」

 

 

 アホな理由で堕ちた先輩女神をお決まりの様におんぶしながら姿を見せる破壊の龍帝と呼ばれた男を鋭く見据えがら、クリスは微妙に納得できない気分に浸るのだった。

 

 

「やぁイッセー、そろそろ決意は固まったか?」

 

「っ……ダクネス……」

 

「ちなみに私はとっくに覚悟はできてる! 殴るのか? 蹴るのか? それとも踏むのか!?」

 

「い、いや……くっ、や、やっぱりできねぇ!! こんなボインのおんにゃのこにそんな酷い事なんてできねぇ!!」

 

「意外な弱点だよな」

 

「微妙に納得できないです」

 

「っせぇ!! 小便くせぇクソガキとダクネスを比べる事自体失礼なんだよ!!」

 

「うぅ……」

「違う! そういう罵倒は私に言えよ!? めぐみんじゃなくて私にだ!」

 

「俺には出来ません!!」

 

 

 

 クリスとイッセーは顔を合わせても一切会話をしない…………というのは、既にのほほんとつるむ様になったアクア達の中では周知の事実であった。

 

 

「ねぇねぇ、すっぴんの理由ってステータスの数値がおかしかったからって話は本当なの?」

 

「……………………唐揚げうめぇ」

 

「っ……。アタシの分の唐揚げもあげるから、少しは答えて欲しいかなぁ?」

 

「……………………葉っぱうめぇ」

 

 

 

 

「な、何という放置プレイ。

クリスの奴め、あんな真似までされて……」

 

「イッセーは何がそんなにクリスを気に入らないんだろうな? あれじゃあある意味めぐみんよりエグいぜ」

 

「と、という事はクリスさんには勝ってるんですね私は!?」

 

 

 この様に、食事の席に於いても、クリスから振られる話の全てを視線すら寄越さずにガン無視する様は、ダクネスを震わせ、カズマは疑問に、めぐみんはどんぐりの背比べの勝利に喜び、アクアは――――

 

 

「イッセー、それちょーだい?」

 

「んぁ? あぁ……ほら」

 

 

 マイペースにお世話されていた。

 クリスが無視されてるのはちゃんと知ってるが、甘やかされ過ぎて、このやり取りが無いと嫌に思う所までアクアは堕ちていたのだ。

 

 

「蜥蜴の尻尾って昔焼いて食ってクソ不味かった思い出だったが、ここのは普通に美味いな」

 

「ねー?」

 

「…………。アクアさんは自立心を失ったのかい?」

 

 

 微妙すぎる空気の中でも、平然と世話されてるアクアを見てクリスが引いた顔して問う。

 

 

「自立心? なにそれ美味しいの?」

 

 

 そんなクリスの質問に、いよいよアホの極みに達したアクアは、せっせと食べさせてくれるイッセーに満足そうな顔して笑みを浮かべ、アホ過ぎる回答をする。

 

 合流して日が浅い――いや、それ以前からそんな性格だったのは知っていたが、まさか一番警戒をしなければならない男に此処まで堕落させられるなんて、アホ通り越して愚かにすら思えて仕方ない。

 

 いや、それ以前に正体を知ってるアクアに対してこんね破格な対応してるイッセーに寧ろ驚くべき事なのだが、それ以上にこれは酷かった。

 

 

「あのさ、イッセーもあんまり甘やかすのは――」

 

「カズマも食えよ、ほら」

 

「い、いや俺そこまでガキじゃ――んぐ!? ………もぐもぐ」

 

「あー! い、イッセーさん私には!?」

 

「頭から大皿ごと食わせられてぇなら良いが?」

 

「う……ひとりで食べます……くすん」

 

「はぁはぁ、わ、私には何か無いのか!?」

 

「き、キミは特に無いや……ははは」

 

 

 

「……。(イラッ☆)」

 

 

 そして自分だけ罵倒するも無く、完全に無関心ときた。

 これには慈愛を心掛けたかったクリスもカチンと来てしまった。

 

 

「わかった、わかったよイッセーさん。

そんなにアタシが気にくわないなら、納得できる話をしようじゃないか!」

 

 

 もうこうなったら、いっそイッセーに本来の姿を晒し、その上で色々と話をしてやる。

 ジョッキに残っていたしゅわしゅわ系統のドリンクを一気に飲み干したクリスは、テーブルに勢いよくそれを叩きつけながらおもむろに立ち上がると、ピシッ! と指を差しながらイッセーに勝負を仕掛けた。

 

 

「食べ終えたら二人で腹を割って話そう! アタシの何が気にくわないかとか含めて全部聞いてあげようじゃない!」

 

 

 そもそも、最初から自分の胸をゴミ扱いしたし、アクアには妙に甘いしで、色々と気に入らないのは自分も同じだった。

 だったらいっそ自分から色々と晒し、その上で自分のやってる事を知って、納得して貰う。

 

 

「おお!? 盗賊のねーちゃんがすっぴんを誘ったぞ!?」

 

「最近妙に集まりがいいと思ってたらそういう事かよ! やるじゃねぇかすっぴんの癖に!」

 

 

「なっ!? ち、違っ……!!」

 

 

 その意気込みを慎ましい胸に秘めながら、クリスはデカい声で割りと誤解を受ける台詞を叫んだせいで、周囲で聞いていた他のお客……すっぴんのイッセーを知る連中から盛大な勘違いをされてしまう。

 

 

「え、マジか……アイツもダクネスみたいなタイプだったのか……? 普通だと思ったのに……」

 

「む……」

 

「むむ……」

 

「な、何!? クリスも罵倒されたかったのか!? そ、それならカズマも加えて鬼畜パーティでも開こうか!」

 

「だ、だから違うって! アタシはそういう意味で言った訳じゃ……」

 

 

 お世話して貰うつもりのアクアと、何故かよくわからないままのめぐみんが慌てて否定しようとするクリスに対してムッなる。

 しかし当の本人はといえば……。

 

 

「寝言は死んでから言うんだな…………えぐれ胸」

 

「」

 

 

 ゴミを見るような目でクリスを一瞥し、吐き捨てる様に罵倒の言葉を浴びせると、再びアクアとカズマに過保護な保護者の如くあれ食えこれこれ食えとお世話に戻るのだった。

 

 

「え、えぐれ胸って……え、えぐれてないよアタシは!?」

 

「うっせーうっせー、そもそもツラからして気に食わねぇんだよテメーは。

話すことなんて一言も無いし、『腹に一物抱えたまま』勝手にしろ」

 

「っ!? い、今なんて……!」

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 神なんてものは居なくても世界は成立する。

 

 それをかつての事で学んだからこそ、アホさが勝ってるアクアを除いて全てが嫌いだった。

 

 

「女神エリス、ね……」

 

「こ、この姿をこの世界の人々に見せる訳にはいかなかった……なので、クリスとして活動していて……」

 

 

 神によって人生をねじ曲げられ、神が落とした者によって『壊され』、その憎悪を糧に全てを殺してきた。

 それが例え、関係ない女神であったとしても……。

 

 

「ぺっ! 相変わらず腹の立つ感覚だ。

アホでバカなアクアが可愛く思えるくらいだぜ……神器の回収だぁ? くくく、テメーごときにドライグは死んでも渡さねぇよ……!!」

 

「ま、待ってください! 私が言っている神器とアナタの神器(セイクリッドギア)とは別物です。それにアナタに何かをするつもりもありません!」

 

『? 待てイッセー、この小娘の言ってることはどうやら嘘では無いらしいぞ?』

 

 

 人外嫌いの元凶とも言うべき神の存在を否定したがる男、イッセーの殺意は……慈愛の女神であるエリスも尻込みさせる程のものだった。

 しかしドライグというストッパーが、エリスを本気で消そうとするイッセーを止める。

 

 

「信用できるか。そもそも胸すらくだらねぇ詰め物で盛ってる様な奴だぞ?」

 

「っ!? そ、それは今関係ないでしょうが!!」

 

「うっさいボケ!! えぐれ胸は無駄な抵抗してないで隅で大人しく朽ち果ててろカスが!!」

 

 

 そして始まる女神との熱い口喧嘩。

 レベルは小学生。

 

 

「おやおやぁ? どうしましたぁ? えぐれ胸指摘されて逆ギレですかぁ?」

 

「だ、だからえぐれてません! こ、この女好き! 変態!」

 

「残念でしたぁ、無駄な抵抗してる雌ごときに言われてもちっとも悔しくありませぇん!」

 

「こ、この……! アクア先輩は贔屓する癖に……!」

 

「あ? アレも単なる雌だろ、くだらねぇな」

 

 

 しかしそれでも……多分平和だった。

 

 

 

 後日

 

 

「あ、足がすべっちゃったー? でもアタシと話したくないイッセーだし、許してくれるよねー?」

 

「………………。ぶっ殺すぞボケがぁぁっ!!!」

 

「あっははは! 反応するんだ? 話す事なんて無い(キリッ)とか言った癖に?」

 

「ドライグゥゥ!!! バランスブレイクだぁぁっ!!!」

 

『こんな事で禁手化なんて俺は嫌だぞ』

 

 

 

 

 

「……。何があったし?」

 

「わ、私も混ぜて欲しいぞ!」

 

「……。やっぱり何故かムカつくわ」

 

「……。はい、何故か私もムカムカします」

 

 

 町中を鬼の形相で追い回すすっぴんと、妙に楽しそうに逃げる盗賊が居たそうな。

 

 

「おい、あのえぐれ胸……ぶっ殺して良いっすか?」

 

「お、落ち着けよ……どっちもどっちなんだから……」

 

「そうよ、というか最初はアンタが原因じゃない」

 

「くっ……!」

 

 

 結果、イッセーはクリスが無関心から『嫌い』になった。

 殺してやろうかと思ったけど、アクアとカズマと居たせいか妙な偽善感情に苛まれ、本来ならとっくに捕まえてから首を捻切る事だってできたのに、何がどうなってるのか、どうしても殺す気が起きない。

 

 

「でもアンタも変わったわね。来たばかりなら一々私やカズマに同意なんて求めないで勝手に殺りそうなものなのに……」

 

「!?」

 

 

 その気分が……指摘されて初めて自覚し始めた気分がどうしても許せない。

 

 

「赤龍帝からの贈り物……」

「お、お、おわー! こ、この内から沸き上がる力! これなら何発でも爆裂魔法が撃てますよ!」

 

「あ、そ……まぁ精々頑張ってくれ――あれ?」

 

 

 罵倒しまくってた筈のめぐみんに対しても、気付けば爆裂魔法の練習に付き合ってやってる自分が。

 

 

「…………。元々アナタはそういう方なんですね?」

 

「テメーに俺の何が……!」

 

「わかりませんよそんなの、けど、今の貴方は変わろうとしている」

 

「…………!」

 

 許せない……許してはいけない。

 甘さを持ってはいけない……そう思って生きてきた少年は、今の自分が分からなくなってしまう。

 

 

「………」

 

 

 だから、その日偶々アクセルへと進行してきた魔王軍の幹部に……イッセーは――

 

 

「突然だが死ね……。禁手化(バランスブレイク)」

 

『Welsh Dragon balance brake!!』

 

 

 裏ボスを意図せず潰した時の力を、大衆が見ている前で解放する。

 かつて血に染めた龍帝の鎧を。

 

 その凶悪なまでの威圧は、そんな理由で来たつもりじゃなかった魔王軍の幹部を戦慄させ、一気に戦闘体制に入らせたのだが……。

 

 

「完璧弐式奥義・アロガント・スパーク!!!」

 

「がばぁぁぉっ!?!?」

 

 

 赤き鎧を纏った少年は殺意の固まりと言われた奥義で呆気なく葬った。

 それこそ、周囲の者達をも黙らせるほどの凶悪な力で。

 

 そうだ、これこそが自分。

 相棒と共に築き上げた力。

 今更善人を気取るな……今更殺しをした奴が……。

 

 

「ぐ……がはぁっ!? な、なんだ……と……!?」

 

「「イッセー!?」」

 

「イッセーさん!?」

 

「な、なんだ? 急に吐血して……」

 

「そんな事言ってる場合じゃないよ! あんな量の血を吐くなんて……!」

 

 

 慈悲を持つことは許されない。

 そう思って放った殺意の奥義は、生前世界では完全な成功を収めた筈なのに――失敗した。

 

 

「ぐ、がは……な、なんて奴だ……きょ、今日のところは引き上げだ!」

 

 

 殺意という確かな力を失う事で……。

 

 

「いっでぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 

 その代償は、全治三日の全身筋肉痛だったとさ。

 ちなみに魔王軍は逃げました。

 

 

「さ、最悪だ……あの時は完璧成功してたのに、何で失敗したんだ!?」

 

「よ、よくわからんけど、あんな無理な体勢で落下したらそりゃそうなるんじゃないのか?」

 

「で、でも凄かったですよ! 何と言いますか、肉体のおりなす芸術といいますか! あ、あとあの鎧は何ですか!?」

 

「いだだだだだ!?!? 触るな触れるな近寄るなクソガキィ!!」

 

 

 イッセー君……今更『尊大な火花』を放つ資格を失う。

 

「きょ、今日は付き合えないから、ひ、1人でやってろ……」

 

「いいえ! 今日はイッセーさんの看病をしてあげます! 何だか最近お悩みを抱えてそうですし、いっそこの場でぶちまけてみましょうよ!」

 

「は、はぁ……? ふざけんな、俺は小便臭いガキに世話されるほど落ちぶれちゃいねぇっつーの」

 

 

 そして毛嫌いしていたロリっ子にまで看病されたとか……。

 

 

「くそ、頭に来るぜ……訳がわからねぇ……」

 

 

 




補足

初見で看破してました。そしてその後本来の姿で邂逅したら即殺しの手前まで発展したけど、なんやかんやで小学生レベルの小競り合いに落ち着いたとさ。

その2
アクア様の駄目度はもはやカンスト手前……いや、無限進化突入。

女神? そんな事よりイッセーにお世話されてる方が楽とか言い出したら最早末期。


その3
めぐみんはここからどうなるか? 某白猫っぽいなったらそれはそれで皮肉である。



数々のIFによるロリやらひんぬーやらの呪いは強い。
何せ笑えない数だもの……。
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