この破壊の龍帝に祝福を!   作:超人類DX

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先輩女神と自分の扱いの差に妙な理不尽と思う後輩


苦手な女神

 地獄のフルコースで殺し損ねてしまった以降、エリス――いやクリスとイッセーは顔を突き合わせるだけで独特な空気を放つ様になった。

 

 

「Fuck you」

 

「いきなりのご挨拶だね……まだ根に持ってるの? 小さい男だねー?」

 

「Go to hell」

 

 

 いや、分かりやすいかもしれない。

 何せ姿を見た瞬間、イッセーが中指立てながら罵倒の言葉を発してる辺り、やたらとクリスを嫌ってるのがよく分かる。

 

 

「なぁ、なんでクリスにそんな風当たり強いわけ?」

 

「顔がムカつくから」

 

「ひでぇ……」

 

 

 流石のダクネスも若干気圧されてるのか、何時もの台詞も無く妙な空気全開のテーブルに加わる中、その張本人であるイッセーはカズマの質問に対し淡々と……されど普通に酷い台詞に微妙な空気は更に加速する。

 

 

「顔がムカつくからって理由なんて随分と子供というか、ふふ……頭撫でてよしよしでもしてあげようか? んん?」

 

「お、おいクリス!?」

 

 

 しかしクリスもクリスでニタニタしながら水を飲むイッセーに寄ると、どう聞いても煽ってるとしか思えない態度で撫で撫でとその頭を撫でた。

 

 

「……………死ねやボケがぁぁぁっ!!」

 

 

 当然その瞬間、イッセーはクリスに殴りかかる。

 周囲のギョッとした様子なぞどうでもよく、取り敢えず目の前のムカつく雌を一刻も早くぶちのめしたかった。

 

 

「おっとと危ない危ない」

 

 

 鬼の様な形相で大振りなハイキックを避けながらおどけて見せるクリスにイッセーはそののまま軸足でバランスを取りながら腕を伸ばす。

 

 

「テメェ……俺が何時までも温厚だと思ったら大間違い――」

 

「キャァァァッ! イッセーがアタシの胸触ってるー!!」

 

「な……!?」

 

 

 胸ぐらを掴みそのまま地面に叩きつけてやろうとした瞬間、クリスが一瞬だけニヤリと笑ってから大袈裟な悲鳴をあげた。

 周囲の注目を十二分に集める程の声で……。

 

 

「おいおいすっぴん君、ナンパが成功しないからって無理矢理は駄目だろー?」

 

「同じ男としてわからんでもないがね」

 

「なっ!? ち、違う! このクソアマのデタラメ――」

 

「ひ、酷い……『べつに小さくても良いや』なんて言って鷲掴みにしといて……およよ」

 

「今この場でぶっ殺してやらぁぁぁっ!!」

 

 

 以上の理由があり、あの日殺し損ねてしまった以降、イッセーはエリスが死ぬほど嫌いになったのだった。

 

 

閑話休題

 

 

 

 すっぴんと冒険者とアークプリーストの凸凹トリオも気付けば色んな冒険者が集まっていた。

 それはカズマの運の高さと、イッセーの『悪運』の強さがツープラトンの如く合わさったからなのかもしれないが……。

 

 

「悪かったよ。ちょっとアタシも調子に乗り過ぎた」

 

「黙れ、半径二メートル圏内に入るな」

 

 

 すっぴんは盗賊を死ぬほど毛嫌いしていた。

 

 

「なんで私の後ろに隠れるのよ……」

 

「なるべく視界にもいれたくない。頼む、近くに居てくれ……お前等も」

 

「は、はぁ……」

 

「イッセーさんが苦手に思うなんて相当ですね」

 

 

 それこそ、アクア、めぐみん、ゆんゆんを盾にして視界に入れないよう工夫すらする程に。

 

 

「あっちゃー……少しお返しが過ぎちゃったかな」

 

「クリスはイッセーに何かされたのか?」

「まぁ、色々とね」

 

「あれか!? 本当に身動きが取れないところをあーんなこーんな事されたのか!?」

 

「当たらずも遠からずかな……ふふ、本人の名誉の為にも黙秘するけど」

 

「……。何したんだよイッセーは?」

 

 

 精神成長が著しい冒険者、高位のアークプリースト、ドM鉄壁クルセイダー、超攻撃型とバランス型アークウィザード、最強最悪のすっぴん……そしてそのすっぴんを逃げ腰にさせる盗賊。

 

 

 凸凹に凸凹が増えてよくわからなくなる集まりとなっている彼等は、只今一つのクエストをやっていた。

 

 

「タワーブリッチ!!」

 

「ゲェーーッ!?」

 

「レッグラリアート!!!」

 

「グゲェ!?」

 

「アルティメット・スカー・バスター!!!!」

 

「ゴベェ!?」

 

「マッスル・インフェルノ!!」

 

「ベゲェ!?」

 

「ナパーム・ストレッチ!!!」

 

「ゴバァッ!?」

 

「マッスル・グラヴィティ!!」

 

 

 

 

「わーお、ゴブリン達が憐れな事に……」

 

「お尻を地面に激突させてるけど、アレ自分が痛くないのかしら?」

 

「はぁはぁ……原理はわからんが、アレを私が喰らうと思うと震えが止まらない!!!」

 

「う……と、トラウマが……」

 

 

 ゴブリンモンスターの討伐という火竜やグリフォン&マンティコアに比べたら無難なクエストを、クリスとダクネスを加えた人数で行っていたのだが、始まって数分でゴブリン達の屍の山が発生していた。

 そう、物理法則を完璧に無視したプロレス技のフルコースにより。

 

 

「す、すご……ドラゴン波もそうですが、あんな摩訶不思議な技まで……」

 

「ドラゴン波? なにそれ?」

 

「あらら、ゆんゆんは知らないんですか? 地図すら描き直さなければならないほどの威力を誇るイッセーさんの必殺技を!」

 

「……。なんでそんな偉そうなのよ」

 

「そりゃあ、私はイッセーさんの弟子にて無敵爆裂魔法 を極める者ですから?」

 

 

 若干クリスが顔を青くするのも無視し、めぐみんが目をキラキラさせるのも無視し、とにかく無視しまくりでひたすらにゴブリン相手にストレス発散をしまくるイッセー

 

 

「次は誰じゃあ!!!」

 

 

 余程ストレスを溜めていたのか、屍となってるゴブリン達の肉体の一部が大変な事になってる山を背に、イッセーはとっくに逃げ出したゴブリン達に気づく事無く、まるで現実世界のヤクザが如く、雄叫びをあげる。

 

 

「い、イッセーさんって結構激しいんですね……」

 

「そうですよ? 私なんて怒鳴られるか拳骨ばっかりです――――あれ、知らなかったんですか?」

 

「……。まぁ、うん」

 

 

 『誰か俺を殺せる奴はいねぇのか!? ウィィィッーー!!!』と、マイクパフォーマンスっぽく挑発の雄叫びをあげるイッセーの姿にゆんゆんは逆に此方に新鮮さを感じていたらしく、妙に勝ち誇った顔を向けるめぐみんに頷きながら言った。

 

 

「お買い物に付き合ってくれたり、お話する時のイッセーさんしか知らないから」

 

「なるほど、イッセーさんとお買い物したり――は?」

 

 

 せい、っと杖でゴブリン以外の低級モンスターを叩いて倒していためぐみんが、爆裂魔法以外も習得して効率よく低級モンスターを処理しているゆんゆんに信じられないと云った表情を向ける。

 

 

「何ですかそのお買い物に付き合って貰ってるというのは? 私それ知らないんですけど?」

 

「だってめぐみんに言ってないし」

 

「いやいやいや、何で言わないんですか? というか何然り気無いことしちゃってるんですか? ムッツリですか?」

 

「違うわよ! い、イッセーさんにお願いして付き合って貰ってるだけで……」

 

「いやだから! 何で人の師匠に色目使うんですか? 私に負けまくってた癖に」

 

「それは関係ないでしょう!?」

 

 

 良くも悪くも恩も恨みも忘れない……いや、律儀な性格をしているというべきか。

 ゆんゆんが仲間を欲しがってた理由を知り、流れで仲間に迎えてたからのイッセーは、募集紙に小さく書かれたゆんゆんの望みに毎日付き合っていた。

 

 それも下心一切無しで。

 

 

「いやいやいや待ってくださいよ、ちょ待てよ。私、基本イッセーさんにひっぱたかれるか怒鳴られるんですけど? 何でゆんゆんだけ違うんですか? 意味不明なんですけど?」

 

「そ、そんなの私が知るわけないじゃない……」

 

 

 勿論それを聞いてしまっためぐみんは自分との差に納得できないといった様子だった。

 

 

「よし……イッセーさん!」

 

 

 だからめぐみんは、半分ほどストレス解消を完了させて戻ってきたイッセーに言う。

 

 

「わ、私と町をブラブラしましょう!」

 

 

 ゆんゆんが良いなら自分も体験させろと……。

 しかし……。

 

 

「嫌だ、ダルい」

 

「」

 

 

 呆気なく、そして非情にすら聞こえる一言で断ると、スタスタとアクアとカズマの元へと行ってしまった。

 

 

「な、なんでですかぁ……」

 

「…………ふっ」

 

「んが! い、今笑ったな!? 私に負けっぱなしのゆんゆんの癖に今笑いましたね!?」

 

「だ、だって『怠い』って……ぷぷ……」

 

「あー!! 笑うな! い、今のはタイミングが悪かっただけですから!!」 

 

 

 涙目で騒ぐめぐみん。

 しかし仕方ないのかもしれない、何せめぐみんはゆんゆんと違って見た目すらイッセーにとって『無い』のだから……。

 

 ロリには塩対応……それがイッセーという男なのだ。

 

 

「ゴブリン二十体程度でいくらくらいだろ? まあ、数えんでも暫くセレブ生活できるくらい金はあるけどね」

 

「40万エリスくらいかな。

残りは逃げちまったし……イッセーの暴れっぷりで」

 

「じゃあ晩飯はリッチ確定だな」

 

「ホント!? フルコース蟹オーケー!?」

 

「おう良いぞ。カズマの為に特注武器を作らせてもやりたい」

 

 

 その代わり、カズマとアクアにそれまでの凶暴キャラが嘘の様に甘く、見ていたダクネスやクリス……特にクリスは内に秘めるものを抱えながら、当たり前の様にもたれてきたアクアをおんぶするイッセーに、無視されるかもしれずに聞いてみる。

 

 

「ねぇ、イッセーって何でかアクアさんに甘いよね? 何で?」

 

「テメーには関係ない」

 

「関係ないかもしれないけど気になるよ。だってさ……アタシの言いたい事わかるでしょ?」

 

 

 意味深な視線をイッセー……そして堕落しきってるアクアに向けるクリス。

 

 

「はぁ、楽ちん楽ちん。さぁ行きなさいイッセー号、私を丁重に運びなさい!」

 

「コイツ……最近ますますイッセーに寄生して駄目に拍車がかかってやがる」

 

 

 討伐完了し、街に戻る道中……いや行きも帰りもイッセーを足に使うアクアに普通に従ってるのが不思議で仕方ない。

 だってアクアだって自分と同じ女神な筈なのに……クリスとして今はこの場に居るエリスは、妙な差別感を覚えつつしつこく聞いていく。

 

 

「だって『同じ』じゃない? なのにアクアさんだけは妙に態度が違うから疑問なんだよね?」

 

 

 遠回しの言葉に意図がわからないカズマは首を傾げる中、後ろで何やら言い争ってるゆんゆんとめぐみんのせいで考えることに集中できない中……。

 

 

「テメーより、アクアの方が好きだからだよ」

 

 

 イッセーは平然とした顔で、されどめぐみんの爆裂魔法レベルの発言を噛ました。

 

 

「ふーん……アタシよりアクアさんが好き―――――は?」

 

「え?」

 

「おう?」

 

「な、なんですと?」

 

「What's!?」

 

 

 あんまりにも自然に言われて一瞬納得しかけたクリスだったが、言葉を頭の中で復唱してから固まってしまった。

 

 無論、カズマも流れで聞いていたダクネスも、めぐみんもゆんゆんも同様に、イッセーの発言にびっくらこいていた。

 

 

「いや好き……え?」

 

「お、おいイッセー! お、お前マジか!? これをか!? ていうか普通の人が好みだって言ってたじゃん!」

 

「なるほど、やけに甘やかすと思ったらそんな想いがあったのか……浮気性の気があるが」

 

「あ、アクアさんが……?

うっ!? な、なんですかこの急に私の胸を襲う痛みは!? ま、まさか封印された邪神が解き放たれようと……」

 

「………」

 

 

 それぞれ反応は異なるが、その中でもカズマは特に驚いており、いの一番にイッセーにそれは駄目だと反対する。

 

 

「や、やめとけイッセー! こんな奴の為に人生棒に振るべきじゃないぜお前は!」

 

「は?」

 

「そ、そうそう……アタシも報われない恋なんてやめとくべきだと思う」

 

 

 イッセーが別の意味でダメ男になってる一番の原因がアクアにある事を知ってるカズマは、イッセーの将来を本気で案じた意味でやめとけと忠告し、然り気無くショック気味のクリスも『そんな意味』でやめとけと忠告する。

 

 

「は、恋? 何言ってんだ?」

 

「「は?」」

 

 

 しかしイッセーは珍しくクリスの発言に反応し、『何おかしな事を言ってるの?』といった表情で逆に見返す。

 

 

「え、だ、だって今アクアさんが好きだって」

 

「あぁ、言ったが……それが?」

 

「それがって……好きって意味知らない訳じゃないだろ?」

 

「当たり前だろ、俺そんなアホに見えるの?」

 

 

 あれ、話が食い違ってね? クリスとカズマは思わず互いに顔を見合わせると、イッセーは首を傾げつつもこう言った。

 

 

「そこのこそ泥えぐれ胸盗賊よりアクアの方が付き合い長いんだから、そらどっちと言われたらアクアの方が好きと思うに決まってんだろ? そもそも俺このアマ嫌いだし」

 

「あ、あぁ……そゆこと」

 

「………」

 

 

 つまり、クリスとアクアのどっちに好感を持ってるかに限りという話でアクアの方が好きという話であり、イッセーはアクアにそんな感情はなかった。

 それを漸く本人の口から聞けたカズマは理解しつつホッとし、クリスは無言のままイッセー……じゃなく、その後ろに背負われていつの間にかスヤスヤ寝ていたアクアを見つめる。

 

 

(……。いや、それでも解せないんですけど。私殺されかけてるんですけど。なのにアクア先輩は普通に甘やかされてるんですけど)

 

 

 スヤスヤ寝てるアクアに妙な理不尽さを感じるクリス……いやエリス。

 

 

「な、なーんだ! イッセーさんも人が悪いですね! お陰で封印した邪神が解き放たれそうになっちゃいましたよ!」

 

「…………。何で今ホッとしたんだろ」

 

「うーむ、焦らし方も上手い……なのに私には何もしてこないなんてこれも一種の方向性なのか?」

 

「いや……寧ろ騒ぐお前らの方が意味不明だわ、つーか俺がこんな雌にそんなこと思うわけねーだろ」

 

「だ、だよなぁ! ははは、良かった……俺はてっきりイッセーがダメ女に目覚めて取り返しの付かない場所に沈んでしまったかと……」

 

「ダメ女でも普通の子だったら大歓迎だがな……はは」

 

 

 ヘラヘラ笑うイッセーが女神を憎悪しているのは身をもって知ってる。

 だというのに、同じ女神であるアクアには我が儘も聞くし今みたいにおんぶまでしてやる。

 

 

「ふみゅ? もうついたの?」

 

「まだだよアホ。ちゃんと掴まれ、落ちるぞ」

 

「んー……何か話してたの?」

 

「おう、オメーはバカでアホだけど皆嫌いじゃねーってさ」

 

「んふふー当然じゃない、だって私よ?」

 

「ほら見ろこの傲慢さ。

本当アホだわぁ……またどん底にでも突き落としてやりてぇ」

 

 

 女神なのに。

 

 

「本当お前、そんな対象じゃないけど嫌いじゃねぇわ」

 

「なにその上から目線? その台詞は私がアンタに言うべき台詞じゃない。寧ろアクア様と膝づく気位でも――」

 

「そうか、じゃあ小遣いもいらないよな……お前には?」

 

「えへへへへ、イッセーさん、いやイッセー様素敵! この寄生虫にも施しをして頂けるなんてモテモテ街道まっしぐらです!」

 

「ほらな……コイツのアホさ、マジ好きだわぁ」

 

「……。本当にそういう意味じゃねーよな? ドライグ共々俺は心配なんだけど……」

 

 

 

 

(……。微妙に納得できません)

 

 何が違うから此処まで差別されなきゃいけないのか。

 エリスは自然と笑ってアクアとじゃれてるイッセーを見つめながら考えた。

 

 

(先輩はだらしない……)

 

 

 考えて考えて、そして……。

 

 

(そして彼の力を前にしてもずけずけと物を言う)

 

 

 チクタクチクタク……。

 

 

 

 

 

 

 ぴこーん!!

 

 

(そうですよ! 私も駄目と罵られる様になればいいんですね!?)

 

 

 天啓とばかりに導き出した答えが、残念すぎる物だった。

 生真面目過ぎるせいか、はたまた元々残念なのでアホの子要素があるのか知らないけど……。

 

 

「ねぇねぇイッセー、アタシ疲れちゃったから足揉んでほしーな?」

 

「ペッ! 寝言は死んでから言えゴミ」

 

 

 空回りするのだけは間違いないだろう。

 

 







補足

真面目やから……真面目だから斜め上の結論がでちゃったんだよ……仕方ないね。


その2
精神変化はほぼカズマくんとこのアクア様の影響です。

そして困った事に、アクア様を甘やかし過ぎてダメ男街道を爆走……。
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