辞めたい提督と辞めさせない白露型   作:キ鈴

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激おこ浜風さん
怒りによって目覚めた亜種浜風。他にもマジギレ浜風形態があるがそちらはパワー重視になりすぎる為激おこモードが最もバランスが良い。
ムキンクスではありません。シールダーでもありません。 

白露
真のデュエリスト。デッキを発光させることができるが意味はない。

夏鮫ちゃん
実はサメではなくイルカ。
ずっと前書きに登場しているが本編での登場は1話のみ。今回も登場しない。

村雨、江風、涼風
基本遠征。


提督と白露型とケッコン(狩)

コンコン

 

 昼食のカップ麺にお湯を注ぎ忍耐を試される3分間を待っていたタイミングで執務室の扉をノックする者が現れる。チッ、またカップ麺を食べているところを見られると間宮の食堂に連行されるかもしれない。そう考え俺は机のしたにカップ麺を隠す。

 

「誰だ」

 

『浜風です』

 

「帰れ」

 

 頭を抱えてしまう。一番めんどうくさいやつが来てしまった。

 

「失礼します」

 

「帰れって言ったよな!?」

 

「先輩の指示には基本従いません」

 

 昔はまだ可愛げのある後輩だったと言うのにこんな問題児になってしまって……。

 

「だったら何でこの鎮守府にきたんだよ……」

 

「先輩がそうすれば付き合ってくれると言ったからです」

 

「そんな何年も前に言った言葉は覚えていない」

 

「というか軍にはいって数年した頃には気づいてましたけど、先輩は私との約束をないがしろにする為に私の着任許可を出しませんでしたよね?」

 

「……要件を言え」

 

「そんなあからさまな話題転換ありますか……」

 

 下手なこと言うとまたマジギレしそうだからな。

 

「まあいいです。今日はこれを持ってきました」

 

 そういう浜風の手にはタッパーがある。

 

「スパゲティです。先輩の事だからお昼食べてないだろうなと思って作ってきました」

 

 なるほど。今日『は』善意でここに来たというわけか。正直カップ麺があるので大きなお世話なのだがそんな事を言えば又マジギレさせてしまう。なんで俺こんなビビってんだ。

 

「ありがとう、感謝する。ではそのタッパーを足元に置いて下がりたまえ」

 

「いえ、私が食べさせてあげます」

 

 そう言って浜風は俺の制止を聞かずこちらに歩みを進めようとする。

 

「それ以上こっちにくんじゃねえ!」

 

「何故ですか。折角可愛い後輩が食べさせて上げようというのに」

 

「自分で可愛いとか言う!?いいからそれ以上こっちにくるな」

 

「普通に傷つきました。どうしてそんな事言うんですか」

 

「お前が怖いからに決まってんだろが……」

 

 俺は忘れない。先日、再会して1分で俺の右腕を折ろうとしたこいつの怒りを。大破炎上しながらも春雨ちゃんに立ち向かった狂気を。

 

「怖がらなくてもいいですよ。『今日は』お昼を一緒にしたかっただけなので」

 

「今日はってなんだよ……」

 

「どうしても拒むなら強引にいきますけど……怪我しても知りませんよ?」

 

「……一緒に食うか」

 

「それがいいと思います」

 

  ・・・

 

「どうぞ。口あけてください」

 

「いや、ほんと自分で食えるから」

 

「……」

 

「ごめんなさい、食べさせてください」

 

「はい。分かりました」

 

 もぐもぐ。

 

「どうですか?」

 

「普通においしい」

 

「ならよかったです。まずい何て言われたら怒ってたかもです」

 

「……なあ浜風、お前性格変わりすぎじゃねえか?」

 

 昔はもっとこう……先輩!先輩!って言いながら俺の後ろをついて回るような可愛いやつだったのに。今じゃ俺への攻撃に迷いが全くない。

 

「性格は変わってないですよ。ただ怒っているだけです、先輩に。激おこです」

 

 年単位でこいつの事無視してたもんなあ……怒るのもやむなしか。

 

「許して欲しいですか?」

 

 え?許してくれんの?そりゃ以前の浜風の方が御し易い……ゲフンゲフン!接しやすいからな。

 

「ああ、許して欲しい」

 

「そうですか。では仲直りの印をください」

 

「仲直りの印?」

 

 なんだこいつ可愛いこと言うな。

 

「指輪です」

 

「は?」

 

「は?じゃないです。指輪ですよ指輪」

 

やべえこいつ。求婚の仕方が強引すぎる。いっそ男らしいまである。

 

「悪い浜風。俺にはまだそこまでの覚悟はねえよ……」

 

「そうではなく……いや、意味は似たようなものなんですけど……ケッコンカッコカリ用の指輪ですよ」

 

「ケッコンカッコカリ?」

 

「その雰囲気、本当にご存知ないようですね……」

 

 聞いたこともねえよ。そんなわけわからんシステム。

 

「いいですか?ケッコンカッコカリとはですね」

 

 浜風の話によるとケッコンカッコカリとは

 

 ・擬似的なケッコンを行うことによって艦娘の秘められた力を開放する。

 ・ケッコンをするには最高練度に達している必要がある。

 ・提督と艦娘が指輪をはめることによって成立する。

 ・ケッコンシステムは限られた鎮守府にのみ実装されている。

 

「ちなみに大将さんのところは実装されていましたよ」

 

「ふーん。俺に知らされてないのは少し面白くないがまあいいか」

 

「んで?お前なんで指輪欲しいの?もう十分強いじゃん」

 

「はあ~~~」

 

 そのため息腹立つからやめろ。

 

「先輩とケッコンしたいからですよ。仮でもね。今更そんなこと聞かないでくださいよ」

 

 ……くそっ反応に困ることいいやがって。

 

「まあうちにはまだ実装されてないし……関係ないな」

 

「チキン」

 

 うっせえ。お前が肉食すぎるんだよ。ティラノかよ。

 

「はい。あーん」

 

 もぐもぐ。しかし何故うちの鎮守府に実装されてないんだ?うちは前線でなおかつ誰も攻略できなかった鉄底海峡も開放した、戦果は十分なはずだ。俺に情報が伝達されていないのは明らかに不自然だ。

 

「あーん」

 

 もぐもぐ。ケッコン……!!まさかっ!

 

 部屋を見渡す。何時もなら必ず一人はいるはずの白露型が誰もいない。五月雨くんが気配を消しているだけかと思ったがそうでもない。

 

「やられた!!!」

 

 今ならまだ間に合うはずだ。急いで鎮守府の門にいかなくては!そう思いたった瞬間

 

「……スパゲティ残すんですか?」

 

 めっさ怖かったので急いで食べた。

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 門に向かって走る道すがら電話をかける。

 

『はい、こちら168運送』

 

 伊168。潜水艦である彼女は各鎮守府への郵便物の配達員をしている。この間Line交換した。ふるふるした。

 

「イムヤ!?今日のうちへの配達ってもう終わった!?」

 

『いえーまだですよ。でももうすぐ着きますよー』

 

 あっぶねーーーーーー!浜風の話を聞いてなかったら完全にアウトだった。

 

「そっか。悪いんだけどさ今日の配達鎮守府の裏手から届けてくれない?そこで俺が直接うけとるからさ」

 

『?まあいいですけど』

 

 裏手でイムヤから配達物を受け取る。配達物の宛先は案の定白露型になっていた。その包を遠慮なく開封する。

 

「やはりな」

 

 なかにはケッコン指輪10式と一枚の指令書が入っていた。……10セットてどういうことだよ。指令書にはこう記述されていた。

 

『鉄底提督と夫婦の契を交わせ』

 

 俺の思った通りだ。恐らく大本営は俺にここの艦娘とケッコンさせこの鎮守府に縛りつける要因をより強固にするつもりだったのだろう。kuzuどもが。

 

 そうはいくかってんだ。ケッコンなんかしたらあいつらの俺への対応がどうなるか……春雨ちゃんなら尋常じゃない束縛、時雨なら完全に尻にしかれる、夕立は考えたくもない。

 

 取り敢えずこれは隠しておこう。海に捨ててしまいたいがそれだと夏鮫、秋鮫、冬鮫ちゃん達に見つかり春雨ちゃんに届けられるかもしれない。

 

 

「これでよしっと」

 

 取り敢えず執務室のクローゼットの中に隠しておいた。

 

「そういやあいつらまだ門でイムヤを待ってるのか?」

 

  ◇ ◆ ◇

 

 建物の影から門の様子を伺う。

 

まじでいた。門の入口で白露、時雨、夕立、春雨、海風、山風が体育座りしている。他のやつらは遠征させたんだっけか。

 

「ねえ、イムヤちゃんくるの遅くない?」

 

「遅い……。いつもならもうきてる」

 

「僕が電話してみるよ。この間Line交換したんだ」

 

 

 やっべ。俺はその場を一目散に逃げ出した。

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

「ひどいじゃないか。僕達宛の荷物を勝手にあけるなんてさ」

 

 直ぐ見つかったよね。

 

「はっ!なんの事か分かんねえな」

 

「イムヤちゃんから聞いたよ。それに……」

 

 ポケットをごそごそとする時雨。

 

「提督のクローゼットからこれも見つけたしね」

 

「!?」

 

 はあ!?見つかるのはや過ぎすぎるだろ!!!どうなってんだ!

 

「じゃあこの指輪をはめてもらうよ」

 

「断る」

 

「僕だって君との結婚なんてゴメンなんだ。だけど上からの指示だからね。割り切ってよ」

 

「お前とケッコンしたら尻に敷かれる未来しかみえない」

 

「そんなことないよ。これでも結構旦那様には尽くすほうだよ?」

 

「どうだかな」

 

 尽くす尽くさない以前に今以上に自由はなくなるのは確定だろう。そんなのはごめんだ。

 

「それにここで僕とケッコンしといた方がいいと思うよ」

 

「あ?どう言う意味だ」

 

「海風や山風はともかく春雨や夕立に捕まってもしらないよ?」

 

 ……一理あると思ってしまった。

 

「提督は狩られる側だよ。これはケッコン(狩)だ。どうせ誰かに捕まるんだから諦めて僕とケッコンしなよ」

 

 確かに春雨ちゃん、ましてや駄犬に捕まればどうなるか……だけど

 

「俺は諦めねえ。逃げ切ってみせる」

 

「ふーん。なら僕は力づくで君の薬指に指輪をはめるよ。ちなみにこれ一度つけたら外せないから」

 

「やってみろや。俺を舐め過ぎるとどうなるか教えてやる」

 

 俺と時雨が構える。俺はボクサースタイル。時雨は手刀を作る。

 

「「いくぞ(よ)!!」」

 

 こうして俺と時雨の戦いは始まった。

 

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

 

 艦娘には勝てなかったよ……。

 

 時雨の拳1発でノックダウンした俺は時雨にマウントを取られ両腕を押さえつけられていた。

 

「こんなはずじゃあ……」

 

「じゃあ指輪はめるね」

 

「嫌だっ嫌だっ、20代でバツ1になんてなりたくねえよ」

 

「なんで離婚前提!?絶対離婚なんてしないよ!?」

 

 くそっ、こんな形で俺は妻をとることになるのか。もっと自由気ままに、野良猫の様な何者にも縛られない人生を歩みたかった。

 時雨のもつ指輪が俺の指にはめられる。ああ・・・さらば自由。

 

「あれ?この指輪サイズが大きすぎるよ。君の指じゃぶかぶかだ」

 

……。勝ったな!!ガハハ甘えんだよ大本営!そもそも無理やりケッコンさせて俺を縛ろうなんて考えが頭おかしいんだよ!

 

「そうか。残念だがサイズが合わないんじゃしょうがないな。いやー残念だ」

 

「心にも無いこと言わないでくれるかな。僕は落ち込んでいるんだよ。はーあ、期待して損した。間宮さんのところでも行こっと」

 

「……」

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 果たして本当にただの大本営のミスなのだろうか。そもそも何故俺の指のサイズが時雨の持っていた指輪のサイズだと勘違いしたのか。

 

 答えは簡単だ。あの指輪はミスではなくあくまでも『候補のひとつ』ということだ。

 

 俺は執務室のクローゼットを開ける。そこには元々10セットの指輪があったはずだが現在あるのは4セットだけだった。恐らく今日非番だった白露型が持って行ったのだろう。

 

 俺は残った指輪を調べる。

 

「やはりな」

 

 艦娘用の指輪のサイズは全て同じだが提督用……俺の指輪のサイズは4つ全てばらばらだった。

 

「俺の指のサイズが分からないから色んなサイズを送ってきていたのか」

 

 確か数ヶ月前に指のサイズを教えろとか言われた気がするがガン無視したんだっけか。

 

 4つ全ての指輪に指を通す。しかし全て俺の指には収まらない。

 

「って事はここから持ち出された指輪の中に、俺にあうサイズの指輪があるって事か」

 

 なんか俺シンデレラみたいだな……。ガラスの靴じゃないけど。

 

 俺の勝利条件は指輪の回収。敗北条件は指輪を付けられること。

 

 厳しいな。つい先程時雨に手も足も出なかったばかりだ。

 

「みつけました!」

 

「!?」

 

 反射的に振り返る。執務室の入口にいたのは海風だ。とりあえずほっとする。海風ならなんとかなる。こいつは夕立(駄犬)の逆、忠犬だ。

 

「お兄さん!お兄さん!ケッコンしましょう!」

 

「どうどう。落ち着け。どうしてケッコンしたいんだ?」

 

「ケッコンすれば提督がもっと構ってくれると思いますので!」

 

 こいつほんま構ってちゃんだな。

 

「海風、ケッコンなんてしなくても俺は遊んでやるぞ?」

 

「ほんとですか!?でもケッコンしたいです!」

 

 おっ?今日は少し頑固だな。ちょっときつめに言うか。

 

「ケッコンしません」

 

「ケッコンしてください!」

 

「しません」

 

「ケッコン」

 

「しません」

 

「……」

 

 すこしきつすぎたか?まあ素直なこいつなら諦めるだろう。

 

「お兄さん、海風は知ってますよ」

 

「あ?何をだよ?」

 

 海風の様子がおかしい。いつもの明るい雰囲気が消えてしまっている。この雰囲気は春雨ちゃんに近い。

 

「デキ婚です」

 

 ゾクリと背中を気色の悪い虫が這い回ったような感覚に襲われる。

 

「男の人は子供ができちゃうと責任をとってケッコンしないといけないんですよね……?」

 

「海風?」

 

 一歩、一歩と海風が近づいてくる。それに合わせて俺も一歩ずつ後ずさる。が、直ぐに壁に突き当たる。まずい、このままではパパにされてしまう。

 

「わ、わかった。海風、指輪を受け取ろう」

 

 分の悪い賭けではない。5分の1だ。勝てる可能性は高い。

 

「ほんとですか!?ではどうぞ!」

 

 俺は受け取った指輪を薬指にはめる。一応右腕に。

 

「海風、この指輪はサイズが大きすぎるぞ」

 

「えっ!?そんな」

 

 賭けに勝った。

 

「そう落ち込むな。こんな大本営から送られてきた様なのじゃなくて、何時か俺がちゃんとしたの買ってやるから」

 

「ほんとですか!?絶対ですよ?」

 

「ああ、約束だ」

 

 まあその何時かが来る頃には俺はもう脱走成功させてる(予定)けどな。

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 のこる指輪は4つ。

 

 恐らく白露、春雨ちゃん、駄犬、山風がもっていることだろう。やはり一番の問題は春雨ちゃんだろう。他の白露型なら活路があるかもしれないが春雨ちゃんはエンカウントした時点で詰みだ。春雨ちゃんの持っている指輪がハズレである事を祈るしかない。

 

 作戦を考えているところで勝算のある相手を発見する。

 

「おい白露、魔法のりんごカードやるから指輪返せ」

 

「ざっつ!雑いよ!あたしも乙女だよ!?いくらソシャゲーマーだからってappleカードと指輪交換できないよ!」

 

 ちっ、流石にそこまでちょろくないか。

 

「ならデュエルだ。俺達デュエリストが互いに反する意見を持つとき、優劣を決めるのはデッキだろ?」

 

「ふん、私が勝ったらちゃんとケッコンしてよね」

 

「約束する。お前が勝てばケッコン、負ければ指輪を俺に返せ」

 

 俺と白露はスマホでショウボウバースのアプリを立ち上げる。その瞬間スマホが光り輝く。真のデュエリストのデッキは光輝くのだ。

 

「「デュエル!」」

 

   ・

   ・

   ・

 

「馬鹿が」

 

 食い入る様にスマホ画面を凝視する白露の背後に回り、首筋に手刀を当て気絶させた。起きたらぶん殴られるかもしれない。

 

 気絶している白露のポケットから指輪を取り出しサイズを確認する。・・・ハズレだ。

 

 残り3つ。

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 工廠にて何か状況を打開できるアイテムがないか捜索していた時だった。

 

「見つけましたよ司令官」

 

 はい詰んだーーーー。おーーーしまい!ゲームセットッ!

 

「春雨ちゃん……」

 

「司令官なら言葉にしなくても私が何を望んでいるか分かりますよね?」

 

「……」

 

 俺は左手を春雨ちゃんに差し出す。だって無理だもん。春雨ちゃんに見つかった時点で負け確定だもん。もう春雨ちゃんの指輪がハズレと願うしかない。

 

「ふふっ。流石は司令官ですね。大好きです。はい」

 

 春雨ちゃんの指輪が俺の指にはめられるその時

 

 俺は突き飛ばされた。

 

「……邪魔するなら慈悲はないですよ夕立姉さん!浜風さん!」

 

「先輩と先に恋人となる約束をしたのは私です。勝手はさせません」

 

「春雨には私一人じゃ勝てないから共闘っぽい」

 

 俺を突き飛ばしたのは浜風らしい。浜風と夕立は単騎では春雨ちゃんに勝てないと踏み、手を組んだのか。何はともあれ助かった。今のうちに態勢を立て直さなくては……。

 

 俺は体を引きずりながら工廠を跡にした。後ろではドラム缶爆弾の爆発音が聞こえる。

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 とりあえず水分を補給しようと食堂に向かう。がそこには山風がいた。呑気にストローでジュースすすってやがる。

 

「やっ」

 

 山風が俺に片手を上げ挨拶をする。身体は痛むが山風ならなんとか……。

 

「山風、指輪を渡せ」

 

「んっ。どーぞ」

 

 ぽんっと、事も無げに俺に指輪を渡す山風。指輪のサイズは俺に合うものだった。

 

「……いいのか?」

 

「いいよ」

 

「そうか」

 

 工廠から持ち出したバーナーで指輪を溶かす。これで俺の勝ちだ。

 

「私もケッコンには憧れあったけど。やっぱりちゃんと旦那さんの意思で渡して欲しいから」

 

「山風……」

 

 だからお前はちょろ風なんだよ。でもまあ、ちょっと見直したわ。

 

 今度アイスでも食おうな。

 

 

 

 







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