デビル型軽巡洋艦クマー。
突如として現れた謎の艦。敵か味方か不明。
マジギレ浜風
練度max
春雨ちゃん
元駆逐棲姫。提督と深海妖精さんの手によって解体され春雨にもどる。
闇気味。
※今回のお話には元ネタがあります。
『行きなさい』
うん。準備はできてる。
『行きなさい』
今日の相手はすごいよ。なんたってあのアイアンボトムサウンドを終わらせた提督だからね。
『行きなさい』
鉄底英雄って呼ばれてるらしいよ。
『行きなさい』
そんなに急かさないでよ。ちゃんと行くから。
『行きなさい』
……行くってば。行くから。
『行きなさい』
そんな悲しそうな声ださないでよ。
◇ ◆ ◇
『クーーーーー魔――――☆』
執務室のモニターに噂のデビル型軽巡洋艦とやらの姿が映る。鎮守府近海を哨戒させていた島風が発見したのだ。くそお……俺が提督辞めてから攻めてこんかい……。
現在やつの前方には春雨ちゃんを始めとするうちの第一、第二、第三艦隊を待機させた。
しかし今回はやつも一人ではない、大量の深海棲艦を引き連れている。駆逐級ばっかだが。
「……なんつーかテンション高いな、悪磨さん」
なんか小踊りしながらこっちに向かってきてるし。てかあの羽なに?悪魔のコスプレ?
「で?どーだ時雨。あれは沈んだ先代の球磨か?」
「いや。顔はよく似てるけど違うと思う。髪の色も長さも違う」
ふーむ、なら一体あの艤装はどう言う事だ?球磨のものにそっくりだが。
『さーてはじめるク魔!おめーら全員しずめク魔☆っ』
「始まったか」
◇ ◆ ◇
私が合図を出すと深海棲艦共は艦娘達に向かって突貫する。こいつらを従えるなんて虫唾がはしるけどしょーがない。私の指示に従って沈むんだし良しとしよう。
「おまえらーーーー一!一人一殺だかんな!帰ってくんなよ!」
突っ込んだ駆逐級達は目標の艦娘目がけてただ進む。反撃もしない。砲撃を受けながら目標の眼前に到着した時にはもう満身創痍だ。もう攻撃する力もない状態。だけど
ボーーーーーーン!
水柱が上がる。艦娘の前に到達した駆逐が自爆した。
「霧島!クソっ、こいつら自爆するぞ!絶対に懐に入れるな!」
うんうん。やっぱりこれが一番効率がいいよね。気に入らない艦娘と深海棲艦を同時に沈めれる。スーパーゴーストカミカゼアターーーック☆なんてね。
「貴方が悪磨さんですか」
お?こいつの艤装……春雨?てか駆逐爆弾全部躱してもうここまでたどり着いたの?
「お前……私と同じじゃねーか」
「一緒にしないでください。私は普通の春雨です。はい」
どう見ても普通じゃないんですが……なんか黒いし
「司令官の敵のようなのでここで沈んでもらいます」
そう言うや巨大なドラム缶を取り出す。でっかいな、1000ℓくらい入りそう。中身は水じゃなくて爆薬だろうけど。
「ざけんな☆お前が沈むんク魔☆」
合図をだして駆逐級をつっこませる。ドラム缶爆弾には駆逐艦爆弾で対抗だ。
◇ ◆ ◇
「提督!大破艦が多すぎて入渠が間に合わない!」
「高速修復剤は温存せず使えっつったろ!」
「使ってるよ!それでも間に合わないの!」
「はあ!?チッ!なら練度30以上の艦全員ローテーション出撃だ!敵の自爆食らったら練度関係なく大破なんだ、多少練度が低くても関係ねえ!」
「了解!」
「全員に応急女神持たせるの忘れんなよ!」
◇ ◆ ◇
「手こずらせんなク魔!めんどくせぇ!!」
大破状態の春雨に砲口を向け罵声を浴びせる。なんでこいつこんな強いの!?私が大破よりの中破まで追い詰められるなんて!
「どう……して」
「ん?どうしてお前が負けたかって?そりゃお前、爆弾の性能の差ク魔。お前のドラム缶は手動操作、私の駆逐爆弾は全自動ク魔」
『行きなさい』
またあの声が聞こえる。はいはい、お喋りせず早くやれってことね。
「あーごめんお姉ちゃんすぐ殺るよ」
砲口を春雨に向け直す。もはや観念したようだ。
ドンドンドン
「おっと、あぶねえク魔ね」
「春雨さん大丈夫ですか」
ちっ、仲間かうっとおしい。この艤装は多分浜風ね。
あーしかもこいつ強い。立ち姿見れば分かる。春雨みたいな邪道な力じゃなくて艦娘としての力を最大限まで極めてるって感じ。正直こっちのが厄介。
「今度は私が相手をします。春雨さんはさがっていてください」
ちょっときついかも。春雨戦で消耗しすぎた。駆逐級も他の艦娘の所に向かわせちゃったし……。
『行きなさい』
ですよねー。ま、こう言われちゃしょうがない。腹くくりましょ。
「さっさとかかって来いク魔。おめーも沈めてやっから☆」
「いきます」
はあっ!?早すぎ!浜風艤装でだせるスピードじゃないでしょそれ!
ドンドン! 痛ったいなあ!!バカスカ撃つな!!
ボロボロと艤装が損傷して欠け落ちていく。
……お前はいっぱいいっぱい頑張ってそんだけ強くなったんでしょうね。少なくとも浜風としての強さを極められるくらいには。私は艦娘としては中の下がいいところだった。
だけど私は欲しくもなかった深海棲艦の力を手に入れた。その力を捨てようにも私の一番大切なものと混ざり合っていたから受け入れるしかなくて、色んなものを捨てて受け入れていくうちに強くなっていた。だから・・・頑張っただけのお前なんかに負けてあげられねぇク魔!!
「深海アンカぁぁぁぁ!!!!」
「!?」
海中に忍ばせておいたアンカーを浜風の足に巻きつけた。これでちょこまか動けない。あとは火力の勝負。
「沈めク魔」
「ちょっとこっち見てください。はい」
「!?」
春雨!?まだ逃げてなかった!?急いで声のする方に振り返る。
「超特大ドラム缶爆弾です」
……なによそれ1万キロは容量あるでしょ……アンタそれもうドラム缶じゃなくてタンクだからね?知ってる?1000キロ以上のタンクは特定危険物タンク扱いなのよ?ちゃんと保安検査受けてる?
「そんなの使ったらお前も他の艦娘も吹っ飛ぶク魔よ?」
「でしょうね。でもうちの艦娘は全員応急女神を常設していますので。はい」
……そんなのあったわね。支給された試しがなかったから完全に忘れてた。
「でどうしますか?できれば捕縛されて欲しいです。はい」
『行きなさい』
分かってる分かってるク魔よお姉ちゃん。
「沈むク魔☆」
「なら慈悲はないです」
春雨はなんの躊躇いもなく導火線に火をつけようとする。あーこりゃもうどうしようもないや。
『ちょーーーと待った』
今度は何……声の聞こえた上を見ると一機の艦載機が飛んでいる。声を遠隔で届けてるのか。
「だれク魔」
『ここの提督』
ってことは鉄底英雄か。
『俺さーお前の正体分かったわ』
『なあ、軽巡洋艦多摩さんよお』
『にゃー』
私の真似すんな。
◇ ◆ ◇
「球磨が時間を稼ぐから逃げるクマ」
深海棲艦の大艦隊に追われ、命からがら逃げ込んだ島で球磨姉ぇはそう言った。
多摩は他の4人の顔を見たニャ。
この島はきっと深海棲艦に囲まれている。時間が経過すればするほど包囲は厳しくなる。だけど、それでもきっと、この4人は球磨姉えを囮に自分達だけ逃げたりはしない。ずっと一緒に戦ってきた仲間なんだから。
「球磨……ごめん」
耳を疑った。そんなあっさりと。えっえっ嘘ニャ?
「かまわんクマ。こういうシチュエーション憧れてたクマ。10分後に球磨はこの島の北から飛び出すクマ。あとは上手くやれクマ」
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球磨姉ぇと別れ島の南側を5人で進む。他の4人は唇をかんで悔しそうな顔をしているけど今の多摩にはどれも嘘っぽく見える。
島の南の海岸に着いたときそこには深海棲艦は1隻もいなかった。
「やった……!やった!助かる!」「はやく、はやく逃げよう!」
……あ?お前ら何喜んでるニャ?何笑ってるニャ?ぶっころすぞ。
激しい怒りを覚えたニャ。抑えきれない、自分の体を引き裂いてしまいそうな怒り。
こいつら全員沈めたい。だけどその時間はない。
多摩は4人を放って島の北に走ったニャ。
◇ ◆ ◇
「なんできちゃうクマかなー」
「多摩もこういうシチュエーション憧れてたニャ」
「来ちゃったものは仕方ない。敵に一泡吹かせて一緒に沈むクマ」
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海の中は冷たいニャ。
ごめんね球磨姉ぇ。多摩は球磨姉ぇが沈む所は見たくなかったから……最後わざと魚雷をくらったニャ。本当はもうちょい踏ん張れたニャ。
先に深海で待ってるニャ。
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「ニャ?」
ぷかぷかぷか。海に浮いてるニャ。太陽眩しい。どうして?多摩は深海にいるはずニャ。
生きてるニャ?てことは球磨姉ぇも?
立って球磨姉ぇを探して見る。
「球磨姉えーーーーーーーーー!!!」
どんなに大声で呼んでも返事はない。だけどその時
『行きなさい』
そんな声が聞こえた。どこから?辺りを見渡しても誰もいない。
『行きなさい』
……多摩自身から聞こえてるニャ?
自分の胸の当たりを見て気がついた。
多摩の着けている艤装・・・多摩艤装に球磨艤装が混じってるニャ。球磨姉ぇが助けてくれたんだ。
『行きなさい』
声が艤装から聞こえる。……そっか、やっぱり球磨姉ぇも悔しかったニャ。
先程4人に覚えた激しい怒りを思い出す。同時に私達を沈めた深海棲艦への怒りが上乗せされる。
『行きなさい』
分かったニャ。球磨姉ぇの無念は多摩がはらすニャ。
これは球磨姉ぇの艤装で行われる球磨姉ぇの復讐。
多摩は悪魔になる。
「デビル型!軽巡洋艦!悪磨さんク魔―――――!!」
悪魔の産声をあげてみた。
◇ ◆ ◇
「どうして私が多摩だと分かったク魔」
『さっきお前【お姉えちゃん、すぐやるよ】って言ったろ?球磨は長女だ。それにお前と球磨以外の球磨型は全員まだ現役だ』
ずっと私を見ていたのか。まあ正体がバレても関係ない。
「流石英雄ク魔。まぁ多摩はここで沈められるし正体ばれても関係ないク魔」
『いいのか?お前のその艤装……球磨艤装は悲しそうな声を出してるが』
「な!?お前聞こえるク魔!?」
『ああ聞こえる聞こえる。通信機越しでもうるさいくらいにな』
こいつ一体なんなの……。
「聞こえるなら分かるはずク魔。ずっと『行きなさい』と言ってる球磨姉ぇの思いが。悔しくて悔しくてどうしようもなくて多摩にお前らを殺すようお願いする思いが」
『行きなさい』
ほら今だって催促してる。
『あ?お前馬鹿か?お前の姉ちゃんはそんな事一言も言ってないだろ』
『【生きなさい】お前に自分の分まで生きてくれって言ってんだろ』
『生きなさい』
提督のその言葉を聞いた途端に艤装は何も言わなくなってしまった。まるで伝えたかった言葉がようやく伝わったと言わんばかりに。
嘘……ほんとうにあいつの言う通りなの?
球磨姉ぇはあんな仕打ちを受けても……全く恨んでなかった?。それどころか一度は置いていった多摩の心配を艤装になってまでしてくれていたの?。
「ちがう!ちがう!ちがう!」
嘘だ!嘘だ!嘘だ!私は信じない!もし本当にあいつの言う通りならもう一度言って見ろク魔!
『生きなさい』
……そういえばいつもそうだった。面倒くさがりで喋るのも億劫て言ってたのにいつも多摩の事を気にかけていた。思い返せばいつも多摩の近くにいてくれた気がする。今だって艤装になってまで多摩と一緒にいてくれる。
大粒の涙が止まらない。なんで……そんなのってないよ……分かるわけないよ……もっと分かるように言ってよ。多摩とちゃんとお話してよ……。
『生きなさい』
ごめんね球磨姉ぇずっとずっと心配かけて悪さばっかりして。もうこれからは私もちゃんとするから。無茶はしないから。心配かけないから。
―――――球磨姉ぇも逝ってください。私もゆっくりそっちに行くから―――――
それまでどうか待っていてください。
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・
・
『本当にうちにこなくていいのか?お前は沈めた事にするから大本営は動かないぞ?』
「いいク魔。流石に今そっちに行けるほど顔の皮は厚くないク魔」
『そうか、来たくなったらいつでもこいよ。手伝ってもらいたいこともあるしな』
「手伝い?」
『あー、内容は言えないけどな』
「ふーん。まっ気が向いたら行ってやるク魔。それじゃもう行くク魔」
踵を返して場を後にする。艤装からもう声は聞こえない、だけどそれでいい。もう一人でも大丈夫だから。
『おい』
まだ何かあるのか。正直今は一人にして欲しい。声のした方に振り返る。
『生きなさい』
ちょっと照れくさそうにさっきまで敵だった私にそんな事を言う。この提督はもしかするとツンデレないいやつなのかもしれない。
「生きるニャ」
笑顔でそう返してやった。