辞めたい提督と辞めさせない白露型   作:キ鈴

22 / 42
白露
歴代白露の中でも苦労人。だいたい妹達のせい。

春雨ちゃん
提督絡みでなければ割と普通の春雨。

夕立
サッポ○ポテト美味しいっぽい。

裏陽炎型
十三組の十三人(サーティーン・パーティー) 裏の六人(プラスシックス)



辞めさせない白露型の円卓会議 カゲロウ編

「第21回!白露円卓会議を始めたいと思います!」

 

 私、白露はホワイトボードの前に立ち円卓に座る騎士達に視線を合わせる。

 

 円卓(中華テーブル)に座っているのは時雨、春雨、夕立、山風の4人。山風はいつもの様に中華テーブルを回して遊ぼうとしているが何故か回転しないテーブルに一人困惑している。ガハハハ、その中華テーブルは回転しないよう私がボルトで固定しておいたのよ!大人しくアンタも会議に参加しなさい!

 

 しかし今日は特に集まりが悪いわね。5つも空席があるじゃない。というかこの会議全員が集まった試しがないわね・・・。

 

「他の皆は?」

 

「五月雨、涼風、海風、村雨は遠征に出てるっぽい」

 

「それなら仕方ないか。・・・ところで夕立、何食べてるの?」

 

 夕立は会議中だと言うのにボリボリとスナック菓子を食べていた。

 

「これ?サッポロポテ○っぽい。時雨がくれたの、白露も食べる?」

 

「食べんわ!!そうじゃなくて会議中にお菓子を食べない!」

 

 夕立を叱っていると急に山風が立ち上がった。

 

「白露ねえ、この中華テーブル壊れた」

 

「中華テーブル言うな!円卓よ円卓!あと壊れてもない!」

 

 何でこの緑は頑なに円卓だと認めようとしないのよ。お姉ちゃんに合わせてくれたっていいでしょうに。

 

「白露、江風の姿も見えないけど」

 

「あっ、江風は提督とデートに行ったっぽいよ」

 

「はい?どういうことですか?私聞いてないんですが」

 

「夕立!平気で嘘をつくのやめなさい!提督と江風はお客さんのお出迎えに行ってるだけでしょ!春雨もそのドラム缶爆弾を仕舞って!」

 

 はあ、はあ、はあ。何で始める前からこんなに疲れないといけないの・・・皆自由気まますぎる。

 

 落ち着くのよ私、この妹達がちょっと変なのは今に始まったことじゃないでしょ。それでも手綱を握ってこそ長女ってものよ。よし、一回深呼吸しましょう。すーはーすーはー。うん、もう大丈夫。

 

「では改まして第21回!白露円卓会議を始めます!」

 

 私はホワイトボードにペンを走らせる。いつもなら五月雨が書記をやってくれるが今回は欠席なので私が司会兼書記だ。

 

「今回の議題はこの3つです!」

 

①悪磨さんについて

②これからの白露型

③鹿島さん襲来

 

 ③を書いた瞬間にヒッと小さな悲鳴が部屋に響く。数秒後、声の主である夕立が声を震わせながら私に尋ねてきた。

 

「鹿島先生が・・・くるの?」

 

「その件は最後に話すね。・・・とても重要な話だから」

 

「いやだ・・・鹿島先生・・・怖い」

 

 自分の両肩を抱きしめブルブルと震えだす夕立。いや、どんだけびびってるのよ。

 

「はい、じゃあまずは①の悪磨さんについてだね」

 

 私は指示棒でペシペシと悪磨さんの文字を叩く。

 

「先日この鎮守府にせめてきた悪磨さんを名乗る謎の敵対勢力。彼女は春雨と浜風の二人が協力して沈めた・・・そう言う事になってたはずだよね?」

 

 私はジトっと春雨を睨む。

 

「年末の母なる深海棲艦発見騒動。あれは何だったのかな~?ねえ?春雨さん?」

 

「何のことでしょう」

 

 しれっと嘘をつく春雨。こやつ姉に平気で嘘をつくか。

 

「しらばっくれない。母なる深海棲艦に化けてたのは悪磨さんだったじゃないの。何でピンピンしてるのよ、しかも提督の脱走に加担してるなんて」

 

「・・・沈めてませんので」

 

「だから何でよ」

 

「私が大型ドラム缶爆弾を取り出したところで司令官に止められました。その後、艦載機越しに司令官と通信した彼女は憑き物が落ちた様に艤装を解除したんです。何を話していたのかは分かりませんが」

 

「何それ。提督の説得が通じたってこと?ますます分からないわね。時雨は何か知ってる?」

 

「僕も知らないよ。提督に聞いてみたけどはぐらかされちゃった。ただ、悪磨さんはもう敵ではないって言ってたね」

 

 うーん皆詳しくは知らないってことね。これは後で提督を問い詰める必要があるわね、敵ではなくなったと言っても春雨を追い詰めた不確定因子を放置しておくことはできないし。

 

「りょーかい、悪磨さんについてはあたしと五月雨で少し調べてみる。何かわかったら連絡するね。じゃー次の議題」

 

 次にわたしは②の項目を指示棒で叩く。夕立は未だに鹿島さん怖いと震え、山風はどこからともなく取り出したラチェットでテーブルを固定するボルトを外そうとしていた。あんたら会議に参加する気なさすぎでしょ。

 

「白露、これからの僕達ってどういう事ことだい?」

 

「時雨、お姉ちゃんは気づいたのよ。とんでもないことに」

 

「とんでもないこと?」

 

「提督の女の子の趣味よ」

 

「詳しく教えてください」

 

 急に春雨が立ち上がりこちらに詰め寄ってきた。落ち着きなさい。

 

「春雨、座りなさい。ちゃんと話してあげるから」

 

「座りました」

 

 私の言葉を聞くやいなや一瞬で自分の席に戻る春雨。どんだけ聞きたいのよ。

 

「こほん。私達白露型以外の艦娘には優秀で堅実な提督としての仮面を被り一定の距離を保っている彼だけど一部例外があります。それはどの艦か、時雨わかる?」

 

「・・・駆逐艦と潜水艦、あとは海防艦かな」

 

「正解。じゃあその中でも特に提督に気に入られてる艦は?」

 

「僕だね」「私ですね。はい」

 

「あんた達のその自信はどこからくるのよ・・・正解は卯月、それと山風ね」

 

「むっ、確かに司令官は卯月さんと山風によく構っていますね。海風が悔しがっていました」

 

 件の山風を見るとようやくボルトを取り外し終わったようで中華テーブルを回転させて遊んでいた。もう好きにしなさいな。

 

「そうね、では彼女達とあたし達で何が違うのか・・・それは」

 

「「それは?」」

 

「保護欲を掻き立てられるかどうかよ」

 

「「???」」

 

「なんでそんな解せぬ見たいな顔してるのよ・・・」

 

「私、保護欲を掻き起てることには自信がありますよ?恐らく守ってあげたい艦娘NO.1かと。はい。」

 

「僕も提督には大天使時雨って呼ばせ…呼ばれてるよ」

 

「あんたら正気か?」

 

 なに言ってんだこいつとでも言いたげな表情であたしを見る時雨と春雨。こいつら本気で言ってるのか。

 

「あんた達はガツガツ行き過ぎ。そういうのが提督の脱走の要因になっているとお姉ちゃんは考えてるわ。私達が提督のストレスの原因になってちゃ本末転倒よ?」

 

「私は草食系のはずなのですが・・・」

 

 いや春雨、あんたは草食系じゃなくてゴジラ系よ。しかもシンゴジの方。

 

「つまり何が言いたいかというと、私達も卯月達みたいな小動物系艦娘になりましょうって事。彼に好かれて私達とずっと一緒に居たい!って思わせることが出来ればwinwinでしょ?」

 

「まあ試してみる価値はあるかもね」

 

「私も司令官に好いて貰えるのなら文句はありません」

 

「決定ね。本日より本作戦をオペレーション:卯月と名付けます。まあ、モノは試しくらいの作戦だと思って気楽にやりましょ。あっ、あと海風と涼風を巻き込むと面倒なことになりそうなので私達3人のみで実行します。何か異議は?」

 

「ありません」「ないよ」

 

「よし、では次の議題に移ろうと思います。次は③鹿島さん襲来です」

 

「Σ! 鹿島さん・・・こわい!」

 

 夕立あんたまだ震えてたの…どんだけ鹿島さん怖いのよ。

 

「白露、別に鹿島さんが来るのに問題なんてないと思うけど。むしろ僕は久しぶりに会えて嬉しいくらいだよ」

 

「時雨、鹿島さんは遊びに来るわけじゃないのよ。私達白露型が捕獲班として相応しいか、それをテストしにくるの…裏陽炎型をつれて」

 

ザワっ

 

 裏陽炎型…その名を出した途端に時雨にあの春雨さえも息を呑むのが分かった。

 

「白露!どういうことだい!?何故鹿島さんが裏陽炎と一緒にここへくるの!?いや、そもそも実在していたなんて!」

 

 裏陽炎型。その名は私達艦娘達の間では恐怖の象徴として語り継がれている。

 

 曰く命令に背いた艦娘を消す為の組織、軍の機密情報を知ってしまった人間の記憶を末梢する為の組織、人体実験の結果作り出された改造艦娘である、等など彼女達には黒い噂が絶えない。

 

 だがそれは全て眉唾物の都市伝説、実際にはそんな組織は実在しない。昨日まであたしもそう思っていた。

 

「あたしも信じられない。けど昨日鹿島さんから直接連絡があったのよ。裏陽炎をつれて貴方達をテストしに行きますって」

 

「そんな・・・どうして・・・」

 

「思い当たる節はあるわ。そうよね、春雨」

 

「・・・先月の『ホストクラブ脱走事件』ですね、はい」

 

「正解。あの時の私達は1ヶ月も提督の逃亡を許してしまったわ。恐らくそれが原因でしょうね」

 

 あの時は捜索にメディアを使ったりとかなり大事にしてしまった。その責任もあるのだろう。

 

バタン

 

 突然扉が開かれ赤い髪の艦娘が入室してきた。私達姉妹の9女である江風だ。特に怪我をしている風には見えないが何故か左腕を抑え右足を引きずっている。訳がわからない。

 

ドサッ

 

 あっ倒れた。

 

「江風ぇーーーー」

 

 急に仰向けに倒れた江風に駆け寄る夕立と山風。美しきかな姉妹愛。意味わかんないけど。

 

「ポロポロ、江風・・・誰にやられたっぽい・・・こんなに胸が小さくなって」

 

 胸?あっ確かに小さくなってる。たしかあの子改二になったら辺りからパッド入れるようになってたのよね。分かる、お姉ちゃん気持ちわかるよ。夕立とか村雨とか無駄におっきいもんね。コンプレックスを持つ気持ちすっごいわかる。

 

「江風っ!何があったの!どうして胸が小さくなったの!」

 

「ぺしぺし」 

 

 江風の右胸を掴み泣き叫ぶ夕立、ぺしぺしと左胸を叩く山風。あんたら止めてあげなさい。江風ぷるぷる震えてるでしょ。

 

「カゲロウが・・・カゲロウがでた・・・」

 

 カゲロウ!?まさかもう鹿島さんが来てるってこと!?

 

「提督が・・・攫われ・・・たガクッ」

 

 あっ死んだ。

 

「江風ぇーーー」

 

 半笑いの状態で泣き叫ぶ夕立。あんたほんと鬼ね。

 

 しかし、提督が攫われたってどういうこと?まさかもう私達を試す試験は始まっている?

 

「春雨?どこへ行くんだい?」

 

 時雨の声に反応して顔をあげると春雨が部屋から出ようとドアノブに手をかけている。

 

「決まっています」

 

 こちらに背を向けたまま話す春雨。その体からは暗黒のオーラが溢れ始めていた。

 

「司令官を取り戻しに」

 

 あっこれスイッチ入ってるやつだ。

 

「戦争です。はい」





次回は決戦!白露型VS裏陽炎型!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。