やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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その男を呼び表すならば、怪獣殿下だろうか。(B)

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 突然何者かから脅迫メールを送られた八幡は、即座に雪乃とともに指定された場所に向かって走り出した。何せ時間の指定は「今すぐに」としかないのだ。ちょっとでももたもたしていたら、結衣の安全の保障がない。

 

[正面の工場が目的地です]

 

 レムのナビゲートの元、二人とついてくるサブレは指定された廃工場へとたどりつく。息を整える暇もなく、八幡たちは入り口の錆びついた扉を開け放って中に踏み込んだ。

 

「おい、どこにいやがる! 来たぞッ!」

 

 ぜいぜい息を荒げながらも、廃工場中に響くように怒鳴る八幡。すると大型のコンテナの陰から、二人の宇宙人を連れた男が八幡たちの前に現れる。

 

「遅かったじゃあないか。お前の女の命が惜しくはなかったのかぁ?」

「時間の指定もねぇのに遅かったも何もねぇだろ……! あと別に俺のじゃねぇ……」

 

 少しずつ呼吸を落ち着かせながら、八幡はニヤニヤと嗤っている男に対して言い返した。雪乃は、男が連れている宇宙人――バド星人とゴドラ星人が羽交い絞めにしている結衣に目を向ける。

 

「由比ヶ浜さん……無事だったのね」

「ゆ、ゆきのん……ヒッキー……」

 

 ひとまず外傷はなさそうだが、安心などは出来ない。雪乃にとっては一週間ぶりに見る結衣の顔だが、こんな場所で、こんな形での再会なんて全く望んでいなかった。

 

「ウゥ~……ワンワンワンッ!」

 

 サブレは主人を捕らえている男たちに牙を剥き出しにして威嚇するが、男はそれに構わずに八幡――の影に向かって言い放った。

 

「そこの影の中にいる奴も出てこい。妙なことをしようとするんじゃないぞ?」

『くッ……』

 

 ダークゾーンに姿を隠しながら結衣を助けに行こうとしていたペガだが、その存在は既に敵に知られていた。やむなく表に姿を出す。

 

『言われた通りに来たんだ! 結衣を返せッ!』

 

 ジードは男たちに向かって恫喝したが、男とバド星人オガレス、ゴドラ星人ルドレイは思い切り笑い飛ばした。

 

「ハッハハハハッ! 何を馬鹿言ってるんだぁ? あっさり返すくらいなら、最初から捕まえたりするものか! 前情報通り、思考が浅はかな奴のようだなぁウルトラマンジード!?」

『何だってぇ……!?』

「……そもそもテメェ誰だよ」

 

 見下されて憤るジードの一方で、八幡は全力で相手の出方に警戒しながら問いかけた。すると男は、

 

「俺が何者かは、これを見ればよく分かるだろう」

 

 言いながら右手に握り締めたものを持ち上げた。紫色という点以外は、ジードライザーそっくりの造形である。

 

「ライザーだッ!」

 

 息を呑むペガたちに、男は自慢するように告げた。

 

「ブラッドライザー。俺のお手製の品でなぁ。性能はオリジナルと遜色ない出来だと、お前らもよく知ってるだろう」

 

 やはり、今までの融合獣は目の前の男が変身していたものだったのだ。八幡たちは理解する。

 しかし、あの時ツルク星人から自分たちを助けた男がその正体だったとは……。あの時は偶然居合わせたのではなく、自分たちの様子を確かめるために近づいたのだろう。

 

『融合獣にフュージョンライズできるということは、お前は……』

「如何にも。ある意味じゃお前の血族だよ、ウルトラマンジード。だがベリアルの血脈ではない」

 

 ジードに答えながら一歩前に出る男の姿が歪み――人間のものから、異形の怪人のものに変化していく。

 

「申し遅れたな。俺の名はレイデュエス。かつて全宇宙を支配したレイブラッド星人の血を受け継ぎしレイオニクスにして、宇宙の王の座を継承する新たな支配者だ。そろそろ面と向かって挨拶しておこうと思って、この席を用意したのさ』

 

 温かみのない鈍色の肌の肉体の各箇所を、紫色の尖った突起が鎧のように覆っている。頭頂部には反り返った角のようなトサカが生え、胸元には融合獣と同じ、紫色の発光体が七つ、緩いV字に並んでいた。その姿は、惑星ヨミの怪人レイバトスに酷似している。

 ブラッドライザーを用いて融合獣に変身し地球を恐怖に陥れる、ウルトラマンジードの新たなる敵、魔導師暴君レイデュエスがベールを脱いだのである。

 

「……宇宙の支配とか、んな中二病発言はどうだっていい。それより今重要なのは……」

 

 八幡は冷や汗を垂らしつつも、魔人態となったレイデュエスに気圧されないように内心で己を奮い立たせながら、捕まっている結衣を一瞥する。

 

「テメェは由比ヶ浜をどうするつもりなんだよ。俺たちは身代金とか用意できねぇんだけど?」

 

 と言うと、レイデュエスは思い切り侮蔑の色を押し出して失笑した。

 

『流石、地球人の考えることは低俗だな』

「あぁ?」

『地球の金になど興味があるものか。俺たちにとっては何の価値もない。俺が求めるのは……』

 

 レイデュエスはどこからともなく長杖、ブラッドスタッフを取り出して結衣に向ける。

 その先端から反った光刃が伸びて大鎌ブラッドサイズとなり、切っ先が結衣の喉元に突きつけられた。

 

「ひっ!?」

『ちょっとしたゲームさ』

「なッ……!?」

 

 色めき立つ八幡たち。喉に死を突きつけられた結衣は、今にも泣きそうに顔を引きつらせている。

 

「ゲームだと……!?」

『ああそうだ。見ての通り、この女の命は俺が握っている。助けたいんだったら、ジード、お前たちの命と交換だ。さぁどうする?』

 

 分かりやすい脅迫と死刑宣告に、雪乃が静かな激昂を見せた。

 

「ジードに勝てないからと、こんな卑怯な手段に訴え出たという訳? 悪党とは現実でも恥を知らないものなのね……!」

 

 雪乃の発言をレイデュエスは鼻で笑った。

 

『おいおい勘違いするな。これはゲームだと言ったろう、これまでの戦いと同じでな。俺はお前らの抵抗を止めない。この女を助け出せる手段があるのなら、存分にやってみるがいい』

「!?」

『ほらほらどうした。正義の味方というのはこういう時、鮮やかな手段で人質を救出してみせるものなんだろう? 早くやってみろよ。それとも出来ないのかぁ? それじゃあこの女がかわいそうだぞ?』

 

 猫撫で声を出して促してくるレイデュエスに、八幡たちはこの行為の意味を感じ取った。

 レイデュエスは本気でこちらの相手をしていない……弄んでいるのだ! こちらが悩み、苦しむ様を見て面白がっている……レイデュエスにとってこれは、ただの遊びに過ぎないのだ!

 

「ちッ、馬鹿にしやがって……!」

 

 敵の舐め切った態度に憤る八幡であったが、その場から一歩たりとも動くことが出来なかった。悔しいが、結衣を無事に救出する手段が彼にはないのだ。だからと言って、言われた通りに自分の首を差し出すことも出来ない。どうしたらいいのか見当がつかず、結果立ち尽くすことしか出来ないでいるのだ。予想外の窮地に立たされてしまった。

 

「比企谷くん……」

「八幡……」

 

 雪乃とペガは戸惑いながら、八幡に目を向けた。八幡は必死に思考を巡らせる。

 この場にはライハに来てもらい、レイデュエスたちの不意を突いて倒してもらうか? いや、いくら彼女の剣の腕でも一瞬の内に三人は難しいだろう。それにペガのことを知っていた以上、ライハの対策もしているはず。上手く行くはずがない。だが、それ以外に取れる手段は……。

 

『おいどうした。さっさと答えを出せ。さもないと、本当にこの女の首を切り落とすぞ?』

 

 冷や汗が滝のような八幡に、レイデュエスは構うことなく返答の要求をしてくる。もうあまり考えている時間はない。だが、やはりいい手など一つも……。

 その時、レイデュエスの額に不意に赤い点が浮かび上がった。

 

『ん?』

 

 ターンッ!

 と、レイデュエスの額が弾丸に撃ち抜かれ、その身体が背後に吹っ飛ぶ。

 

『殿下!?』

 

 段ボールの山に突っ込んで倒れたレイデュエスに衝撃を受けるオガレスとルドレイ。だが衝撃を受けたのは八幡たちも同じであった。

 

「え!?」

「撃たれた!? でも、どこから……!?」

 

 反射的に顔を上げる雪乃。見れば、窓ガラスの一枚に穴が開いている。どうやら誰かが外からレイデュエスを狙撃したようだ。しかし、一体誰が……?

 次の瞬間、工場の物陰からスーツ姿の見慣れぬ屈強な男が宇宙人たちに飛び掛かり、一撃ずつ加えて結衣から手を離させた。

 

『ぐわぁッ!』

『君、大丈夫か! すぐに離れろ!』

「えっ!? は、はい……!」

 

 結衣を助けた男は口を全く動かさずにしゃべりながら、八幡たちの元まで下がらせた。突然の事態の変化に仰天している結衣だが、無事に助け出されて八幡たちに保護される。

 

「由比ヶ浜!」

「由比ヶ浜さん! 怪我はない?」

「う、うん……。でも、あの人は?」

 

 いきなり現れたスーツの男について、ジードとペガが叫んだ。

 

『ゼナさん!!』

「だ、誰?」

『詳しい話は後だ。こいつらを捕まえてからな』

 

 ゼナと呼ばれた男は無表情のまま答え、宇宙人たちに拳銃を突きつけた。

 

『大人しく投降しろ。ここは包囲されている』

『ぐッ……!』

 

 オガレスとルドレイは立ちすくむが、その時……撃たれたレイデュエスが哄笑を上げた。

 

「ハッハッハッハッハッ! いやぁいかんな。死なないと分かっていると……防御が疎かになる」

 

 額を……脳天を撃ち抜かれたにも関わらず、星人態に戻ったレイデュエスはむくりと身体を起こした。しかも額に開いた風穴が……一瞬にしてふさがった。

 

「再生した……!?」

 

 ギョッと息を呑んだ雪乃たちに、レイデュエスは得意げに語る。

 

「惑星ヨミで習得した暗黒魔術だ。撃たれた程度で死んでいられないんでね」

 

 埃を払いながら、背後にオガレスとルドレイを控えたレイデュエスが、ゼナを見やってほくそ笑んだ。

 

「AIB……ベリアル被害者の会か。こっちに来ていたとはな。仕方ない、こうなったからにはゲームの趣向を変えようか」

 

 言いながら取り出したのは、サイケデリックな色彩の口吻を持った宇宙人のカプセル。

 

「怪獣カプセルだ!」

 

 ペガが叫び、ゼナが発砲するが、光弾はレイデュエスの前に張られた闇のベールによって弾かれた。

 

「宇宙指令U26!」

 

 レイデュエスはそのまま怪獣カプセルのスイッチを入れて起動する。

 

「イッツ!」『キョオオオオオオオオ!』

 

 カプセルを腰の装填ナックルにねじ込み、続いてトーテムポールに手足が生えたような怪物のカプセルを起動した。

 

「マイ!」『ポオオオォォォ――――……!』

 

 二つのカプセルを収めると、ブラッドライザーを取り出す。

 

「ショウタイム!!」

 

 ブラッドライザーでカプセルをスキャンし、読み込んだデータを己の肉体に取り込む。

 

フュージョンライズ!

「ハハハハハハハハッ!」

 

 暗黒の異空間の中、哄笑するレイデュエスが魔人態に変化し、カプセルから現れた星人たちのビジョンを口の中に吸い込んで更に変身していく。

 

ヒッポリト星人! ジャシュライン!

レイデュエス! ゴルドヒッポリト!!

 

 フランス人形とレコードプレイヤーを踏み潰して、レイデュエス融合獣へと変身して廃工場を突き破る!

 

『危ない!』

 

 ゼナは八幡たちを連れて工場から脱出。そしてレイデュエス融合獣を忌々しそうに見上げる。

 

「キョオオオオオオオオ!」

 

 毒々しい色取りのボディにヒッポリト星人の顔が縦に三つ並んだ魔像、レイデュエス融合獣ゴルドヒッポリトは、八幡たちを狙わずに周囲に向けて羽型のパーツから金色の光線を照射し出す。

 

「うッ、うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

「きゃああああああああ――――――――!!」

 

 光線を浴びせられた町の住人たちが、誰彼構わず黄金像に変えられていく!

 

[町の人々が、ジャシュラインの能力によって黄金にされていっています]

「大変だ! 早く止めないと!」

 

 ゴルドヒッポリトの凶行に慌てるペガ。ゼナは八幡に向き直って告げた。

 

『少年、今は君がウルトラマンジードか。悔しいが、今の我々に融合獣と戦う力はない。我々に代わりに奴を討ち取ってくれ』

『もちろんです! 行こう、八幡!』

 

 ジードが呼びかけるも、八幡はすぐには返答せず、結衣に顔を向けた。

 

「由比ヶ浜……」

「な、何……?」

 

 結衣と目が合うと、八幡はややためらいつつも、時間がないということを意識し、意を決して口を開いた。

 

「初めはただのなりゆきだったし、何の関係もなかったお前に協力させるのは本当はとんだ筋違い、迷惑も甚だしいことなんだろう。現に俺たちに巻き込んじまったせいで、お前死ぬかもしれなかったしな。だけど……俺が情けないせいで、今の状況じゃジードを満足に戦わせてやれねぇんだ。だから、本当に申し訳ないんだが……」

 

 後ろめたさを感じつつも、結衣の目を正面から見据えて頼み込む。

 

「お前の力、貸してくれねぇか」

 

 改めて、今度はなりゆきではなく、確かな意志の元に申し込んだ。

 先ほどまで死を目前としていたことで未だ顔の青ざめていた結衣だったが、八幡の言葉に血色が戻っていった。

 

「……うん! あたしだって、あいつぶっ飛ばしてやりたい気持ちだし! 喜んで協力するよ!」

 

 結衣の答えに、雪乃が嬉しそうに口元を綻ばせた。

 

「私も、この手であの悪党を叩きのめしてやりたいわ。そういう訳だから、始めましょう」

「おう……!」

 

 再び、いや本当のスタートを切ったジード部の三人が、フュージョンライズを敢行する!

 

『ユーゴー!』『シェアッ!』

 

 雪乃がウルトラマンカプセルを起動し、装填ナックルに収める。

 

『アイゴー!』『フエアッ!』

 

 続いて結衣がベリアルカプセルを起動して、ナックルに装填。

 

『ヒアウィーゴー!!』

 

 そして八幡がジードライザーでカプセルをスキャン。ライザーの二重螺旋に光が灯る。

 

[フュージョンライズ!]

『ジィィィ―――――――ドッ!』

 

 ジードの掛け声とともに、ウルトラマンとベリアルのビジョンが八幡たち三人と重なり合った。

 

[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]

[ウルトラマンジード! プリミティブ!!]

「シュアッ!」

 

 フュージョンライズしたジードが巨大化し、町を荒らしていくゴルドヒッポリトの前に着地した。

 

「キャンキャンキャンッ!」

『頼んだぞ、ウルトラマンジード……!』

 

 サブレはジードを見上げて嬉しそうに飛び跳ね、ゼナはジードに対して強く願った。

 一方でジードの内部の超空間で、雪乃と結衣がはたと顔を上げた。

 

『「あら……心なしか、少し広くなってないかしら、ここ」』

『「ホントだ。まだ狭苦しいけど……前ほどじゃないよ」』

 

 三人はまだ密着している姿勢だが、以前ほど窮屈ではなく、少し余裕が出来ていた。

 しかしそれを気にしている間もなく、ゴルドヒッポリトからの攻撃が来る。

 

(♪大超獣の猛威)

 

「キョオオオオオオオオ!」

「ハッ!」

 

 黄金化光線を止め、猛然と突進してくるゴルドヒッポリト。ジードがそれを迎え撃って格闘戦にもつれ込むも、

 

「キョオオオオオオオオ!」

 

 ジードの平手打ちやキックはことごとく防がれ、パンチの猛打によってあっさりと押し返される。その衝撃で八幡たちにも伝わって三人は顔を歪めた。

 

『「うッ……! 結構強ぇぞ……!」』

「キョオオオオオオオオ!」

 

 一旦距離を取るジードだが、ゴルドヒッポリトはブーメランミサイルを飛ばして追撃してくる。縦横無尽に飛ぶブーメランミサイルがヒットする度にジードは爆撃を食らい、更に苦しめられる。

 

「ウワアアアアッ!」

『「「きゃあああああっ!」」』

 

 このままではまずいと反撃に転ずるジード。

 

『レッキングリッパー!』

 

 両腕を振って光刃を繰り出した……が、光刃はゴルドヒッポリトの念力によって反射され、ジードに返された!

 

「ウワアアアア――――――ッ!」

 

 己の攻撃を食らって倒れ込むジード。それをゴルドヒッポリトが見下ろし……その中のレイデュエスが挑発してくる。

 

『「どうしたぁ! その程度かぁ? お前らがそんなザマじゃ、この星の人間は全員黄金像になってしまうぞ!」』

 

 必死に立ち上がるジード。結衣はレイデュエスに対して問いかける。

 

『「な、何で他の人たちを巻き込むの? みんな、あたしたちとは関係ないじゃん! 何のためにそんなひどいことを……!」』

 

 するとレイデュエスは――顔にまざまざと嘲笑を張りつけながら答えた。

 

『「決まってるだろう? 愉しいからさ!」』

 

 今のひと言に、結衣と雪乃は絶句する。

 

『「圧倒的な力で弱者をねじ伏せ、蹂躙する! これこそが力を持つ者の特権! 弱者どもは逆らうことも出来ずに震えるばかり! その姿こそが、俺が絶対的王者だと実感させるのさ! 弱い奴らにあるのは死の絶望だけで十分ッ! 希望なんか、全てブチ壊してくれる!!」』

『「……何て奴……!」』

 

 レイデュエスのあまりに傲然たる言動に、雪乃と結衣は言葉もなく怒りに打ち震える。

 一方で、八幡は、

 

『「くっだらねぇ」』

 

 ひと言、吐き捨てた。

 

『「ああ?」』

 

 レイデュエスはピクリと片眉を吊り上げるが、八幡はキッと相手をにらみつけながら言い放った。

 

『「子供のアニメに出てくる悪役まんまの台詞だな。んな底のメチャクチャ浅い奴が世の中にいるとは思わなかったぜ。テメェみてぇなくそつまんねぇ奴が無駄にでかい顔してる、その事実だけで……腹の底からむかついてくる」』

 

 それまでの人生で抱いたことのないほどの怒りを覚えている八幡が語り、そして言い切った。

 

『「テメェの愉しみなんざ……こっちがブチ壊してやるよッ!」』

『みんな!』

 

 ジードはレイデュエスのたくらみをくじくために、八幡たちにウルトラカプセルを指示する。

 

『その二つのカプセルでフュージョンライズだ!』

 

 ジードが指定したのは、頭部に二つのスラッガーを持ったウルトラ戦士と大きな二本角のウルトラ戦士のカプセル。三人は即座にそのカプセルでフュージョンライズを開始する!

 

『ユーゴー!』『セェアッ!』

 

 雪乃が一本目のカプセルを起動し、その横にウルトラマンゼロのビジョンが現れて腕を振り上げた。

 

『アイゴー!』『ドゥアッ!』

 

 結衣が二本目のカプセルを起動。ウルトラの父のビジョンが腕を振り上げた。

 

『ヒアウィーゴー!!』

 

 八幡がジードライザーでカプセルをスキャンし、その力をジードの身に宿す。

 

[フュージョンライズ!]

『ジィィィ―――――――ドッ!』

 

 ゼロとウルトラの父のビジョンが、八幡たちと重なり合う!

 

[ウルトラマンゼロ! ウルトラの父!]

[ウルトラマンジード! マグニフィセント!!]

「ハァァッ!」

 

 無数の光の軌道と回転する二つの光点と、緑色の光を抜けて、青と黄の光の螺旋の中からウルトラマンジードが顔を上げて飛び出していく!

 

「ドゥアァッ!」

 

 再変身直後のジードの拳がゴルドヒッポリトの顔面を捉え、殴り飛ばした!

 

『「ぐッ!?」』

 

 よろめいたゴルドヒッポリトの正面に、雄大な姿となったジードが仁王立ちする。

 

(♪ウルトラマンジードマグニフィセント)

 

 青と赤のボディに、上半身は銀色の鎧めいたプロテクターで覆われている。肩部には翼のような赤いプレートが伸び、頭部にはふた振りのスラッガーが角となって備わっていた。

 数あるフュージョンライズ形態の中でも特別なものの一つ。強大な力を秘めた崇高な戦士の形態、マグニフィセントである! その力は現状、八幡、雪乃、結衣の誰が欠けていても扱い切ることが出来ない。

 

『「テメェが希望を壊すって言うのなら……」』

 

 八幡が全身を巡る莫大なパワーと沸騰するような感情を滾らせながら、宣言する。

 

『「守るぜ……希望!」』

『「ほざけぇッ!」』

 

 ゴルドヒッポリトが三つの顔面からビームを発射するが、ジードは回転するバリア、アレイジングジードバリアで弾き、シャットアウトした。

 

「キョオオオオオオオオ!」

「デアァッ!」

 

 ゴルドヒッポリトはビームからブーメランミサイルに切り替える。対するジードは十字の光刃、メガスライサークロスを放ってブーメランミサイルを撃ち、粉砕した。

 

『「何ッ!」』

「オォォォッ!」

 

 ゴルドヒッポリトが一瞬ひるんだ隙にジードが跳び、肩のプレートから生じる振動を纏わせた肘のブレードで斬りかかった。

 

「ドアァッ!」

『「ぐうぅぅッ! やってくれる……!」』

 

 念力による防御も通じず、ダメージが蓄積されていくゴルドヒッポリトは肉弾で応戦するも、パンチはマグニフィセントの強固なボディに受け止められて通じない。逆にエネルギーを乗せた拳で弾き飛ばされる。

 

『「ぐっはぁ……! ならば貴様も黄金像にしてやるッ!」』

 

 ゴルドヒッポリトは最後にして最大の武器、黄金化光線を放とうと構えた。だがそれをわざわざ許すはずもなく、ジードは角からの電撃光線、メガエレクトリックホーンを浴びせた。

 

「ウアァッ!」

『「がぁぁぁッ!?」』

 

 電撃によって溜めていたエネルギーが暴発し、黒焦げになって立ち尽くすゴルドヒッポリト。そしてジードは最大の攻撃の準備を行う。

 

「オォォォォ……!」

 

 両の拳を打ちつけてエネルギーを両腕に充填し、L字に組んで発射する!

 

「『ビッグバスタウェイ!!」』

 

 緑色に輝く光線がゴルドヒッポリトに突き刺さり、その肉体を崩壊させていく。

 

「キョオオオオオオオオ!!」

 

 ゴルドヒッポリトは臨界点を超え、大爆発を起こして消滅した! それとともに魔力も消え、黄金像にされた人たちは皆元に戻っていく。

 

「あ、あれ……身体が動く……」

「あッ! ウルトラマンジードだ!」

「助けてくれたのか……!」

 

 ジードの雄姿を感謝の念とともに見上げる人々。彼らの視線を浴びながら、ジードは大空に飛び立って去っていった。

 

「シュウワッチ!」

 

 

 ――ゼナは小さくなっていくジードの後ろ姿を見送ると、通信機を取り出して誰かにつなぐと、一番に叱りつけた。

 

『確かに武力行使を用いても阻止しろとは言った。だがヘッドショットしろとまでは言わなかっただろう』

『えー? いけなかったんですか?』

 

 通信相手が、場違いなほどに明るい声音で聞き返した。

 

『本人から情報を吐かせると言っただろう。それなのに撃ち殺そうとするとはどういうことだ。そんなつまらんミスをするようなお前ではないだろうに』

『いいじゃないですかぁ。あれで死んでたのなら、どうせ大した奴じゃないですよ。そんなのがやれることなんて、たかが知れてるものでしょ?』

 

 糾弾しても通信相手は全く意に介さず。ゼナの方が呆れて肩を落とす始末であった。

 

『……まぁいい。次からは早まった行動は控えるように。あまり度が過ぎるならば、いくら優秀だろうと解任もあり得るのだからな』

『はーい。以後気をつけまーす』

 

 本当に注意が分かっているのか、通信相手は気の抜けた声で応じて通話を切った。

 その相手――雪ノ下陽乃が通信機を仕舞い、レイデュエスの額を撃ち抜いたライフルをテキパキと片づけた。

 

 

 × × ×

 

 

 ゴルドヒッポリトに勝利したその翌日、結衣の誕生日。八幡と雪乃が用意したプレゼントは無事に彼女に渡せ、また八幡との間にあったすれ違いもどうにか解消。二人は愛犬を助け、助けられた恩人という関係に区切りをつけ、改めて仲間としての関係を開始したのであった。

 ちなみに八幡の用意したプレゼントは、犬の首輪であった。サブレの首輪が壊れていたので、代わりのものを渡したのだったが……結衣は自分へのチョーカーだと勘違い。恥ずかしさのあまり八幡に逆ギレするという、今一つ締まらない展開に。

 でも結衣は八幡にお礼のひと言を告げて、今回の問題はひとまず解決を見たのであった。

 

「ふぅ。色々あったけど、これでひと安心だね。結衣が戻ってくれてよかったぁ!」

 

 部室でペガが安堵の息を吐く。雪乃と結衣は退室し、残っているのはもう彼と八幡の二人だけだ。

 

「ま、確かに安心だな。これで元鞘で、ウルトラカプセルの問題もクリアだ」

「も~、またそんな冷たいこと言っちゃって。八幡も、結衣が戻ってきて嬉しくないの?」

「いや……それはまぁ、別に嫌って訳じゃねぇけどさ」

 

 素直に喜びを表せない八幡。一方で、ジードがふとつぶやく。

 

『結衣が戻ってくれたのはいいけど……僕たちの敵の正体も遂に明らかになったね』

「ああ……とうとう顔を拝んだな」

 

 八幡は融合獣に変身している人物、レイデュエスの憎らしい顔を思い返して、思い切り表情をしかめた。

 

「全く腹の立つ奴だったな……。好き勝手なことぶちまけやがってよ。あんなのがその辺をのうのうとしてるなんて、全くたまらねぇぜ」

『ああ……野放しにしてるのは危険すぎる。どうにかして捕まえたいところだけど……難しそうだね』

 

 ジードはレイデュエスの見せた能力を思い出す。頭を撃ち抜かれても何ともない脅威の再生力に、闇の力。本人は暗黒魔術と言っていたが……ならばあれで終わりではないだろう。他にも厄介な能力をいくつも保有している恐れは高い。

 

「でも、また融合獣となって出てきてもリクたちがやっつければいいんだよ! AIBもこっちに来てるってことが分かったし、いつかは捕まえるチャンスが来るはずさ!」

「そういえば、AIBってのは何なんだ?」

「それはゼナさんたちから直接聞くのが一番だと思うよ」

 

 ペガに質問しながら、八幡はレイデュエスに関してあることを気に掛けた。

 

(けど……あの野郎のやってることは、本当に遊び半分の凶行だけなんだろうか? もう何度も俺たちに倒されてるってのに、そのことについて気分を害してる様子はなさそうだったし……何か、まだ隠してることがあるんじゃないのか? 俺の考えすぎかな……)

 

 ひねくれ者故に案じる八幡だったが、その疑問に対する答えを持ち合わせてはいなかった。

 

 

 × × ×

 

 

 レイデュエスは隠れ家の円盤内で、フュージョンライズ時にジードに殴られた首筋をさすっていた。

 

「ふん……いくら遊びとはいえ、負けるというのはやはり気分のいいもんじゃないな」

『おっしゃる通りです。全く、あのジードめは忌まわしい奴で……』

 

 相槌を打つオガレス。だがレイデュエスは表情を一転させて、一個のカプセルを掴んで持ち上げた。

 

「だが、目的の半分は今回で達成した。見ろ……!」

 

 つまんだカプセルに、黄金像に変えた人間たちから発生した恐怖の感情のエネルギー――マイナスエネルギーが注入され、そのエネルギーによって白紙だったカプセルに絵柄が浮かび上がる。

 

『ピポポポポポ……!』

『おお! EXゼットンカプセルが再起動した……!』

 

 カプセルの起動にルドレイとオガレスは興奮。レイデュエスもニヤリと笑いながら、もう片方の手で別のカプセルを掲げる。そのカプセルはまだ白紙だ。

 

「これでこちらも再起動すれば、最強の力が俺に戻る。そうすれば今回みたいな茶番もおしまいさ……! 俺は殿下から、帝王として全宇宙に君臨するッ!」

 

 二つのカプセルを見上げながら、レイデュエスは邪悪な笑みを浮かべ続けていた。

 

「その時にはウルトラマンジード、お前の首をその記念品にしてやろう。フフフフ……クッハハハハハハ……!!」

 

 

 

『ウルトラストーリーナビ!』

 

結衣「今回は『ウルトラマン』第二十六話と二十七話「怪獣殿下」だよ!」

結衣「科特隊がジョンスン島で、大阪万博に展示する予定のゴモラザウルスの化石を探す探検隊の警護を担当してたんだけど、出てきたのは何と生きてるゴモラザウルス! 探検隊は大発見だとゴモラを生きたままの展示を主張して、科特隊が生け捕りにしたんだけど、ゴモラは脱走! 大阪の街で大暴れを始めちゃったの! ウルトラマンもてこずる強さのゴモラを止めるために、科特隊は走り回る……っていうお話しだよ」

結衣「放送当時は大阪万博が開催されることが決まって話題になってたから、それを物語に取り込んだ、時事ネタだったんだよ! シリーズで最初の前後編なのも特徴かな。話が連続してるってのは『ウルトラQ』にもあったけど、二話連続なのはこれが初めてだったの!」

結衣「ゴモラはお話しの中でも触れられてるけど、そっとしてれば平和に生きられたのに、人間の都合で連れ出されて殺されるっていう仕打ちを受けた、可哀想な怪獣なんだよね……。そのこともあってか、後の作品だと完全な敵の怪獣じゃない扱いが多いんだよね」

ジード『サブタイトルの「怪獣殿下」というのは、シナリオ上のもう一人の主役といえる少年、鈴木治のあだ名だ。最後にハヤタ隊員から流星バッジをもらったのは、当時の子供たちは羨ましがったことだろうね』

結衣「それじゃ次回もよろしくー!」

 




「この人はシャドー星人のゼナさん。AIBのエージェントよ」
『Alien Investigation Bureau。宇宙人による調査局という意味だ』
「こっちでもAIBの助けが得られるなんて、嬉しいニュースだ!」
「別の世界、か……」
『みんな、気をつけて! 普通の人間じゃないよ!』
「今言ってたことって、ほんとのことなのかな?」
『……何だか不思議な感じだ……』
「その力、そうか貴様が……」
『どうして僕のことを……!? あなたは……!?』



次回、『だから、その人たちはTOPに立っている。』
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