やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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※今回は拙作『THE ULTRAM@STER ORB』を読まれていないと話が理解できない部分が多くあります。どうぞご了承下さい。



だから、その人たちはTOPに立っている。(A)

 

 天文台地下の星雲荘で、八幡たちは珍客を迎えていた。

 

「みんな、改めて紹介するわ。この人はシャドー星人のゼナさん。AIBのエージェントよ」

『よろしく』

 

 ライハが八幡、雪乃、結衣に、廃工場で助けに入ったスーツの男を紹介した。ゼナは無表情のままペコリと頭を下げる。

 口も動かさずに発言したゼナに、結衣は微妙な顔になっている。

 

「えっと……失礼ですけど、何で腹話術してるんですか?」

『シャドー星人は表情筋がほとんどなく、顔が動かない。そのため地球人のように口を開けなくとも会話が出来るのだ』

 

 そう回答するゼナ。ずっと真顔なのもそういう理由みたいだ。

 続いて八幡が質問する。

 

「AIBって聞き慣れない名前ですけど、一体何なんすか?」

『Alien Investigation Bureau。宇宙人による調査局という意味だ』

 

 名称の意味から答えたゼナが、自分たちがどういう組織なのかを詳細に語った。

 

『かつて悪のウルトラ戦士、ベリアルの脅威によって宇宙のあらゆる星に多大な被害が発生し、宇宙の文明が極度の混乱に陥った。それを解決すべく様々な種族の有志が集まって結成されたのがAIBなのだ。我々は宇宙に秩序と平穏を取り戻すことを理念に掲げ、宇宙に起こる犯罪や怪事件を調査し、取り締まっている。ウルトラマンジードとも、リトルスターを巡る一連の事件を通して協力関係を結んだのだ』

「前にリトルスターの宿主を保護する団体があるって話があったでしょう? それがAIBなの」

 

 ライハが補足説明を挟んだ。

 

『本来なら秩序の回復が目的とはいえ、宇宙進出していない惑星にみだりに干渉するのは望ましいことではない。だが、この地球に潜伏している犯罪者がライザーと怪獣カプセルを使用しているとなったら話は別だ。ベリアルと何らかの関係があるかもしれない上に、それを抜いても怪獣カプセルは危険だ。放っておく訳にはいかないと、私を含めたAIBのエージェントの一団がこの宇宙に派遣されたという訳だ』

 

 経緯を説明したゼナが、八幡たちに向き直って告げる。

 

『これからは微力ながら、我々が君たちに協力する。君たちのほとんどは高校生、行動にあまり自由はないだろう。その分は我々が補うことを約束する』

「助かります。わざわざ別の世界、別の宇宙の私たちのために力をお貸し下さること、真にありがとうございます」

 

 雪乃が、八幡に対する態度とは正反対の口調で礼を述べた。意外と礼儀作法には慣れているようだ。

 

「こっちでもAIBの助けが得られるなんて、嬉しいニュースだ!」

「うん! 今までペガっち以外の宇宙人って敵ばっかだけど、味方になってくれるって心強いね!」

 

 味方が増えたことにペガや結衣が喜んでいる一方で、八幡はふとひと言つぶやいた。

 

「別の世界、か……」

『八幡、どうしたんだい? ぼんやりして』

 

 ジードが問いかけると、八幡は次のように答える。

 

「いや、こうして新しい人と出会って、異世界なんてファンタジーが本当にあるんだなって改めて思っただけだよ。まぁジードたちと出会ってから、ファンタジーの連続みたいなもんだけどな」

 

 八幡の語ることに同意を表すジード。

 

『あー、まぁ、最初は実感が乏しいよね。僕もこれでも最初は、自分がウルトラマンってことも知らずに、普通の地球人として生きてたんだ』

「へぇ、そうだったのか」

『怪獣とか宇宙人とか、ウルトラマンとか別の宇宙とか、僕も当初は驚きの連続だったよ』

 

 ウルトラマン、別の宇宙、と聞いて、八幡が再びポツリとつぶやいた。

 

「そういや、ウルトラマンってジード以外にも何人もいるんだよな」

 

 今更ながらにそのことを意識する八幡。種々のウルトラカプセルの元は絵柄のウルトラ戦士なので当たり前のことだが、当人たちと直接会った訳ではないので、その実感が薄かったのだ。

 

『そうだよ。まぁ僕もそう何人も他のウルトラマンと会ってる訳じゃないんだけど』

 

 と返事したジードも、意識を遠くに馳せた。

 

『僕以外のウルトラマンも、今こうしてる間にも、どこか遠くの星や宇宙で活躍をしてるはずさ……』

 

 

 

『だから、その人たちはTOPに立っている。』

 

 

 

 ――宇宙の片隅に浮かぶ平和な惑星、ウサミン星。この星のウサギに似た知的生命体ウサミン星人は、争いを好まない友好的な気質。文明もそれに見合った形に進歩しており、ウサミン星の大地にはメルヘンチックな建物が街を成しており、夢の世界のようだと他の宇宙人たちからは囁かれている。

 だが、そんな夢と平和のウサミン星に今、重大な危機が訪れていた。

 

「ウサー!」

「ウサー!!」

 

 星の首都、ウサミンシティが燃え盛る火の手に呑まれ、大勢のウサミン星人たちが必死に街を襲う『災害』から逃げ惑っている。

 彼らを追い立て、街を焼いて破壊し、夢の世界を冷徹な暴力で灰燼に帰そうとしている『災害』が、金切り声のような咆哮を発した。

 

「グアアァァァ! キィィィヤアアアァァァッ!」

 

 その名はマガオロチ。――爆発的に星が誕生するモンスター銀河から生まれた、宇宙を股に掛けて星を食い尽くす恐るべき生態を持つ「魔王獣」と呼ばれる怪獣、その中でも支配階級に位置する「大魔王獣」である。それが今、全ての命を蹂躙してウサミン星を宇宙から消し去ってしまおうと活動を開始したのである。

 

「グアアァァァ! キィィィヤアアアァァァッ!」

 

 マガオロチの吐き出す迅雷がウサミンシティのシンボル、キャロットタワーを穿ち、タワーが真っ二つにへし折れて倒れていく。その影が、たくさんのウサミン星人に覆い被さる。

 

「ウ、ウサァ―――!!」

 

 逃げるのは到底間に合わない。悲鳴を発するウサミン星人たちは下敷きになる――。

 かと思われたが、折れたタワーは横から飛び込んできた「何か」によって彼らの頭上からどかされ、ウサミン星人たちは間一髪命を救われた。

 

「ウサ……?」

「もう大丈夫ですよ!」

 

 恐る恐る顔を上げたウサミン星人たちの元に、十人あまりの少女たちが駆けつける。その集団の先頭に立つ少女が、頭の左右に結ったリボンを揺らしながら、大声で呼びかけた。

 

「あの人が、街を壊す怪獣を退治してくれます! 皆さんも応援して下さい! ――ウルトラマンオーブを!!」

 

 折れたタワーを無人の場所に下ろした、銀と赤と黒の配色のウルトラ戦士が、取り出した大剣で円を描きながら堂々と名乗りを上げた。

 

『俺の名はオーブ! 銀河の光が、我を呼ぶ!!』

 

(♪オーブオリジン)

 

「グアアァァァ! キィィィヤアアアァァァッ!」

 

 マガオロチは自分と同等の体躯のウルトラマンオーブに目をつけ、迅雷を吐いて攻撃を仕掛ける。だがオーブは大剣オーブカリバーで迅雷を切り裂きながら前進。

 

「テェアッ!」

「グアアァァァ!」

 

 オーブのひと太刀がマガオロチの肩を裂いた。マガオロチは腕や尻尾を振り回して反撃するも、オーブはカリバーによって相手の攻撃を叩き落とす。

 

「頑張れー! オーブー!」

「ウサー!!」

 

 少女たちは声を張って奮闘するオーブを応援。ウサミン星人たちもそれに合わせるように銘々オーブの応援をする。

 ウルトラ戦士は、彼らの応援の声によって背中を押されるのだ!

 

「オォォォリャアッ!」

「キィィィヤアアアァァァッ!」

 

 オーブ渾身の袈裟斬りが入った。マガオロチは深手を負ってよろよろと後ずさる。

 この絶好のチャンスに、オーブはカリバーの柄の四つの象形文字を全て輝かせて、円を描きながら刀身に全エネルギーを集中させた。

 

『オーブスプリームカリバー!』

 

 そして前に振り下ろしたカリバーから、必殺光線を発射!

 

「グアアァァァ!! キィィィヤアアアァァァッ!!」

 

 オーブスプリームカリバーがマガオロチの胴体を貫き――この瞬間、エネルギーが外部より抜かれながら――大爆発させたのだった。

 

「ウサー!」

「ウサー!」

 

 マガオロチが撃破され、星の危機が取り払われたことに、ウサミン星人たちは一斉に歓声を上げた。それを一身に浴びながら、オーブが大空に向かって飛び上がった。

 

「シュワッ!」

 

 

 ウルトラマンオーブから戻った紅ガイは、己を待つ仲間の少女たちの元へと戻ってきた。

 

「お疲れさまです、プロデューサーさん!」

「ああ」

 

 皆を代表して労った少女――天海春香にひと言答えたガイは、少女たちに尋ね返す。

 

「そっちはどうだ? 他の魔王獣の駆除は完了したか?」

「バッチリですよ!」

 

 真がぐっと親指を立ててウィンクした。

 

「六属性の魔王獣全て、退治に成功致しました」

「うふふ、これでウサミン星に平和が戻りますね」

「っていうかウサミン星ってほんとにあったんだ……」

 

 貴音、あずさ、響のひと言にガイは満足げにうなずく。

 

「みんな、よくやってくれた。それじゃあ後のことはこの星の住人に任せて、俺たちは本来のミッションの続きを……」

 

 と言いかけたガイだが――不意に妙な気配を感じ取り、弾かれたように空の一角を見やった。少女たちも釣られて顔を上げる。

 ガイたちの視線の先で、流星のようなものが一瞬走った。しかし普通流星は、地表から宇宙へは走らない。

 

「あれは、確か……!」

 

 何かに気がついた雪歩がつぶやくと、ガイがその先を察してうなずいた。

 

「どうやらこの事件、まだ終わりじゃなさそうだ。追いかけなきゃいけないみたいだな」

 

 そうと決めたガイたちは、グループを二つに分けた。

 

「それじゃあ行ってくる。俺たちが戻るまで、ミッションの方は頼んだぜ」

「うっうー! 分かりましたぁ!」

 

 六人の少女とともに、ウサミン星から飛んでいった『もの』を追いかけるチームに入ったガイに、彼らのミッションを進行するチームから代表してやよいが応じた。

 ガイとともに旅立つ組の律子は、伊織にあるものを渡す。

 

「ライトリングとカードよ。みんな、プロデューサーがいなくても頑張ってね」

「もちろんよ。そっちこそ油断したりしないでよね」

 

 律子がウルトラマンヒカリの協力の下に開発したオーブライトリングと複製したウルトラフュージョンカードを受け取りながら、伊織が不敵に微笑んだ。

 

「善は急げだ。みんな、俺の周りに集まれ。出発するぞ!」

 

 天に向けてオーブカリバーを掲げたガイが同じチームの少女たちに呼びかけた。亜美や真美、千早と美希がガイの元に集まっていく。

 

「それでは行ってくるであります!」

「後のことはよろよろー♪」

「私たちもしっかりと頑張るから」

「行ってきまーす! なの」

「「「「「「「行ってらっしゃーい!」」」」」」」

 

 すぐに旅立とうとしている美希たちを、残留する雪歩たちは笑顔で手を振りながら見送る。

 そして春香がガイに呼びかけた。

 

「準備完了です! 出発しましょう、プロデューサーさん!」

「よしッ! 行くぞッ!」

 

 春香たち六人がガイの背に手の平を置くと、ガイの掲げるオーブカリバーから光がほとばしり、その光に包まれてガイたちは一直線に宇宙へと飛び立っていった。

 向かう先は、宇宙の果ての更に遠くにある、異なる宇宙であった。

 

 

 × × ×

 

 

 総武高校の奉仕部の部室で、結衣が雪乃や八幡に質問を投げかけた。

 

「もうすぐ夏休みだけど、ゆきのんとヒッキーは夏休み何か予定とかある? どっか遊び行くとかさ」

 

 聞かれた二人は、さして面白くなさそうな顔で答える。

 

「私は、遊びに出かけるということはあまり……」

「俺は家でゴロゴロしてる予定だ。クソ暑い中外出ようっていう精神の方が理解できん」

「そんなの予定って言わないよっ!」

 

 ズビシッ! と八幡に突っ込む結衣。

 

「も~。せっかくの夏休みだってのにもったいないなぁ。来年は受験だし、高校の内に遊べるのは今年が最後なんだよ?」

「別にどう過ごそうが勝手だろ勝手。遊びに正解なんてもんはない」

 

 呆れる結衣に八幡は相変わらずのひねくれた言動で応酬。そんな取り留めのない会話をしていると、結衣がふと息を吐いた。

 

「……こうしてるとさ、何だか平和って感じがするよね。ちょっと前だったら、こんなこと思いもしなかったのに」

「まぁ、この一、二か月は激動の日々だったものね……」

 

 結衣のひと言に同意する雪乃。彼女たちは怪獣という存在が現実のものとなり、ウルトラマンジードに協力して戦いに身を投じることになったこれまでのことを振り返っている。

 

「でも最近は怪獣……いいえ、あのレイデュエスという男の蛮行がめっきりと減って、大分落ち着いているわよね」

 

 と雪乃がつぶやいた。

 融合獣に変身して街を襲う男、レイデュエス。その正体が明らかとなってのはもう一か月近く前のことだが、それから融合獣が出現した回数が激減したのだ。お陰で彼らは期末テストや、柔道部から持ち込まれた依頼などに集中できて助かっているのだが。

 その理由について結衣が語る。

 

「やっぱり、ゼナさんたちが見張ってくれてるお陰かな? それであの悪い奴も動きづらくなったんだと思うよ!」

「どんな理由にせよ、このままあの野郎がフェードアウトしてくれたら、俺たちだって危ない目をしなくて済んで、大助かりなんだがな……」

 

 そう八幡がため息を吐いた、その時、

 

「――生憎だが、世の中ってのはそう都合良く出来てないものなんだよ、君たち」

 

 突然、全く聞き慣れない男の声が部室に響いた。

 

「!!?」

 

 反射的に立ち上がる八幡たち。見れば、部室の隅にいつの間にか、黒いスーツの胸元に赤い薔薇を一輪挿した謎の男が立っていた。

 

「だ、誰……!?」

 

 雪乃と結衣は身の危険を感じ、咄嗟に八幡の元へと寄り集まる。三人に対してジードが警戒を促した。

 

『みんな、気をつけて! 普通の人間じゃないよ!』

「んなの見りゃ分かるぜ……!」

「はわわ……!」

 

 ペガもただならぬものを感じたのか、ダークゾーンから出てきて悲鳴をこぼした。

 

「失礼、勝手に上がらせてもらったよ」

「あなたは、誰……? レイデュエスの仲間?」

 

 雪乃が敵意を露わにしながら男をにらみつけると、男は妙に澄ました態度のままに名乗った。

 

「俺の名はジャグラスジャグラー。ちょっとしたさすらい者さ」

「ジャグラー……?」

「俺のことはどうでもいい。今重要なのは、この星に厄介事が持ち込まれてるということだ」

 

 ジャグラスジャグラーなる男の発言に、八幡たちは軽く驚きを見せる。

 

「厄介事……?」

「それってどういう……」

「下手をしたら、この星の存亡に関わるほどの内容だ」

 

 八幡の問い返しにジャグラーは言外に詳細を教えないことを示し、八幡たちにひと言告げる。

 

「このことは、この星を護るウルトラマン、ジードの君たちに伝えておくべきだと思ってな」

「……!」

 

 ジードのことを見抜かれている事態に、八幡は思わず装填ナックルに手を伸ばした。しかしジャグラーはなだめるように手の平を向ける。

 

「まぁ落ち着け。俺に君たちと事を構える意思はない。それより、この星に紛れ込んだあの女をすぐにでも捜し出すべきだぞ」

「女だって……?」

「話はそれだけだ。じゃあな」

 

 ジャグラーは一方的に話を打ち切り、闇に包まれながらその姿を消していった。空間移動でもしたのだろうか。

 八幡は今の男について、レムに質問をする。

 

「ジャグラスジャグラーって奴について、何か知らねぇか?」

[ジャグラスジャグラー。様々な宇宙で大事件を引き起こし、各公的機関から指名手配されている要注意人物です。危険度は高レベルと言えるでしょう]

 

 レムの回答に焦燥を見せる結衣たち。

 

「そんなのが、どうしてあたしたちの前に……。今言ってたことって、ほんとのことなのかな?」

 

 雪乃は顎に指を掛けて思案する。

 

「少なくとも、単なる悪戯で片づけるのはいけないわね……。でも、鵜呑みにするのもまた危険だと思うわ。私たちは、あの男の人となりを何も知らないのだから」

 

 警戒している三人に対して、ジードが指示を飛ばす。

 

『ジーッとしてても、ドーにもならねぇ! とにかく外に出て、怪しい人物が周辺にいないか捜してみよう。もちろん、さっきの男も』

「でも、どこを捜せばいいのか……」

 

 戸惑う結衣に雪乃が言い聞かせる。

 

「捜索すべき地点があるのなら、さっき口にしてるはずよ。それがなかったということは、多分この周辺……。ともかく、まずは行動してみましょう」

「う、うん! 分かった!」

「言ってる端から面倒事が飛び込んできやがったな……。けどやるしかねぇか……!」

 

 八幡はうんざりしながらも、行動しない訳にはいかずに、雪乃たちとともに部室を飛び出していった。

 

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