やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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だから、その人たちはTOPに立っている。(D)

 

 律子や千早らは怪獣カードを使用していたレイデュエスの行方を調べるために、ゼナと話し合っていた。

 

「レイデュエスという男がどこに逃げたか、特定は出来ないでしょうか」

『我々AIBも今も奴らの足取りを追っているが、レイデュエスは特殊な魔術を使っている。追跡も闇の力で妨害されていて、てこずっていてな……』

 

 一方でガイ、春香、美希は主にジードに、彼の話を伺っていた。

 

「へぇ~……基本形態にベリアルさんの力を使ってるんですか。驚き……」

 

 春香たち三人がまじまじとベリアルカプセルを見つめていることに、雪乃が聞き返す。

 

「そんなに驚くようなことなんですか?」

「それはもう! ミキたちもベリアルのカード持ってるけど、最初に使った時は大変だったの」

 

 美希が答える傍らで春香が頻りにうなずいた。

 

「闇の力は扱いがかなり難しい。特に俺たちのような存在にとってはな……。ジード、お前さんはベリアルさんの血を引いてるから、最初から普通に扱えるんだろうな」

『はい……』

 

 ガイの言葉に、八幡たちは内心驚きを覚えていた。彼らは今日まで実際の『ウルトラマン』をジードしか知らなかったから、彼の特異性に実感を持っていなかったのだ。

 結衣はふと雪乃に囁きかける。

 

「そういえばあたしたちって、ジードんのことあんまり知らないよね。生まれのこととか……」

「確かにそうね……」

 

 同意する雪乃。彼女たちは、ジード個人のことの話をあまり聞いたことがない。最初は自分のことを知らず、普通の地球人と思って生活していたということは聞いたが……どうしてそんな生活を送っていたのか。父親のベリアルはウルトラマンたちの国の反逆者らしいが、今はどうしているのか。デリケートな話題であることが容易に窺えるので、詮索するような真似は控えているのだが……。

 そういう話を、いつかジードから進んで教えてもらえる日が来るのか……と八幡たちが思ったその時に、レムが報告の声を発した。

 

[レイデュエス融合獣が出現しました]

「!!」

 

 その途端に全員が反射的に席を立った。ガイがすかさず指示する。

 

「モニターに出してくれ」

[分かりました]

 

 空中に表示された映像、その中の融合獣の容姿に、全員が驚愕させられることとなる。

 

「あ、あれは……!?」

 

 

 × × ×

 

 

 八幡たちがガイたち765プロと話をしている頃、レイデュエス一味は突如自分たちの元に現れた男……ジャグラスジャグラーと対峙をしていた。

 

『何者だ貴様! どうしてここが分かった!』

『無礼な奴め……このお方がどなたか知っているのか!』

「下がれ、お前ら。お前らの手に負える相手じゃない」

 

 オガレスとルドレイがジャグラーにそれぞれの得物を向けたが、レイデュエスは二人を下がらせて自らジャグラーと向かい合った。

 

「お前……ジャグラスジャグラーだな」

「へぇ、俺のことを知ってるのか」

「もちろんだ。有名だからな」

 

 レイデュエスはジャグラーを見据えながら冷笑を浮かべる。

 

「ウルトラマンオーブに執着して何度も勝負を仕掛けているが、その都度返り討ち。元々は光の勢力だったが闇に堕ちて、かと思えば光に未練タラタラ。挙句に当のオーブとは慣れ合いばっかりだとか? そんな情けない半端者だと聞いているとも」

 

 あからさまに挑発してくるレイデュエスだが、ジャグラーは不敵に微笑んだまま動じなかった。

 

「そんな奴がこのレイブラッドの後継者、宇宙の帝王の皇子に何の用だ?」

 

 とレイデュエスが問いかけると、ジャグラーは腰に提げた刀を抜いて、切っ先を彼に向けた。

 

「ダークリング、お前が持ってるんだってな。そいつを分捕りに来た、と言ったら?」

 

 それを聞いて、レイデュエスは弾けたように哄笑を上げた。

 

「ハハハハハハハハ! お前はダークリングに見限られたんだろう? それなのに、リングにも執着してるというのか! 何とまぁ未練がましい奴だ!」

 

 罵倒しながら、レイデュエスはブラッドスタッフを召喚して大鎌に変える。

 

「この俺に対する無礼な態度、それだけで……極刑だッ!」

 

 言い終えるなり飛び出し、ジャグラーにブラッドサイズを振り下ろすレイデュエス! だが同時にジャグラーも駆け出し、互いの刃が刃を弾き返した。

 

『ぬッ!?』

『殿下の闇の一撃を弾くとは……!』

 

 レイデュエスの攻撃を難なく防いだジャグラーに驚嘆するオガレスたち。そのジャグラーは飛びすさるとともに肉体を変容させる。

 

「極刑ねぇ。果たして出来るのかな? お前みたいな小僧に』

 

 ジャグラーの姿が、胸に三日月型の古傷を持った魔人のものに変化した。対するレイデュエスも星人態から魔人態に化けていく。

 

「口の減らない奴だ。地獄に行ってから悔いても遅いんだぞ』

 

 レイデュエス魔人態の容姿をひと目見て、ジャグラーがほうと息を漏らした。

 

『惑星ヨミの怪魔人……じゃないな。姿だけ借りてると言ったところか』

 

 ジャグラーのひと言により、レイデュエスの眉がピクリと吊り上がった。

 

『わざわざ姿を真似るお前は、どこの星の生まれだろうな――』

『貴様が知る必要があるか!?』

 

 ジャグラーの台詞をさえぎるように猛然と斬りかかるレイデュエス。不意打ち気味の一撃をジャグラーは弾き返した。

 

『それもそうだ』

 

 そして飛び出しながら刀を振り抜き、レイデュエスを袈裟にバッサリと斬り捨てた!

 

『クク……!』

 

 だがレイデュエスには再生能力がある。切り口は即座につながり、油断しているであろうジャグラーの背面にブラッドサイズを叩き込もうとする――。

 が、振り返ったレイデュエスの肩口にめり込んだのは、ジャグラーの白刃であった。

 

『がッ!?』

『生憎と俺はひねくれててね。お前の思う通りの反応はしてやらないのさ』

 

 斬られてもすぐ再生するレイデュエスであるが、姿勢は崩れる。ジャグラーはその間にレイデュエスの至るところを音速で切り刻んでいく!

 

『がッ!? ぐッ! ぎあッ!!』

『己の能力に慢心したな。だからお前は小僧なんだよ』

 

 どれほど再生しても滅多切りにされていくレイデュエスのありさまにルドレイたちは焦りを見せた。

 

『まずいッ! 再生の限度を超えるぞ!』

『で、殿下!!』

 

 なます切りにされるレイデュエスからポロリとダークリングが転落。ジャグラーは攻撃の手を止めてそれを拾い上げた。

 

『ふッ、頂いたぜ。さて、お前はどうしようか……。こういうのは俺の仕事じゃあないんだが……』

 

 バランスを崩して片膝を突いたレイデュエスだが、顔を上げると血走った眼でジャグラーを射抜いた。

 

『テッ、テメェぇぇぇ! この俺に、舐めた真似しやがってぇぇぇぇッ!』

 

 語気が荒み、なりふり構わず大鎌を振り上げてくるレイデュエスにジャグラーが嘲笑を浮かべた。

 

『それが本性って訳だ。余裕ぶった態度はメッキ、中身は年端のいかないガキそのもの……年齢相応の、どこにでもいる普通のクソガキだよお前はッ!』

 

 ジャグラーは襲ってくるレイデュエスを一刀の下に斬り伏せた。

 

『がふぅッ!』

『殿下、お気を確かにッ!』

『分が悪すぎます! 一旦退きましょう!』

 

 吹っ飛ばされてきたレイデュエスをオガレスたちが受け止め、レイデュエスは激昂しながらも鎌をスタッフに戻した。

 

『テメェ……このままじゃ済まさねぇからなッ!!』

 

 レイデュエスが足元に光弾を撃つと、閃光と煙幕が生じてその姿をジャグラーから覆い隠した。そして煙幕が晴れると、レイデュエスたちは忽然と姿を消していた。

 

 

「ぐッ……はぁ、はぁ……!」

 

 外に脱出したレイデュエス星人態は、胸を抑えながらも左手で装填ナックルを握り締めた。

 

「あ、あの野郎……ただじゃ置かねぇ……! 町ごと叩き潰してやる……!」

『殿下、そのお身体では流石に無理があるのでは……』

「黙れッ!」

 

 案ずるルドレイを振り払い、レイデュエスは怪獣カプセルを取り出して邪悪な笑みを顔に貼りつけた。

 

「ダークリングが何だ……俺にはコレがあるッ! 宇宙指令UMO!!」

 

 絶叫してマガオロチカプセルと、漆黒の怪獣のカプセルを起動していくレイデュエス。

 

「イッツ!」『グアアァァァ! キィィィヤアアアァァァッ!』

「マイ!」『ウオオアアアッ!』

「ショウタイム!!」

 

 ナックルに収めた二つのカプセルを、ブラッドライザーでスキャン。

 

フュージョンライズ!

「ハハハハハハハハッ!」

 

 暗黒の異空間の中、レイデュエス魔人態が邪悪なる怪獣たちのビジョンを吸収して変身していく。

 

マガオロチ! アークベリアル!

レイデュエス! 禍々アークベリアル!!

 

 フランス人形とレコードプレイヤーを踏み潰して、融合獣となって巨大化したレイデュエスが町中に降臨。漆黒の肉体をマガオロチの装甲で覆った、クリスタルを角のように額と背面から生やしたその威容は、通常の融合獣よりもふた回りほども巨大。胸部の七つの発光体は、中央が特別に真っ赤なカラータイマーとなっている。

 星を食らう恐怖の大魔王獣マガオロチと、ベリアルが怪獣化し更に強大な邪悪となったアークベリアル、二つの力を合体させた禁断の破壊の権化、禍々アークベリアルである!

 

 

 × × ×

 

 

「グオオオオオォォォォォッ!!」

 

 エレベーターで地上に上がった八幡たちとガイたちは、巨躯を用いて町を思うままに蹂躙する禍々アークベリアルを見上げて言葉を失った。

 

「何て恐ろしい姿……!」

「い、いつもよりでっかい……!」

 

 雪乃たちは離れていても肌にビリビリと感じる、禍々アークベリアルの凄まじい威圧感に震え上がっていた。

 しかしガイたちの方は一歩も退かず、強い眼差しで禍々アークベリアルを見据えている。

 

「あれは一筋縄じゃ行かなそうだな……。律子、亜美真美、とっておきので行くぜ!」

「分かりました!」

「「ラジャー!!」」

「千早さん、ミキたちも行くの!」

「ええ!」

 

 ガイの呼びかけに律子たち三人が応じ、千早と美希はスケルトン状のオーブリング、オーブライトリングを取り出した。

 まずは亜美がギンガのカードをガイのオーブリングに通す。

 

「ギンガ兄ちゃんっ!」

[ウルトラマンギンガ!]『ショオラッ!』

 

 続いて真美がビクトリーのカードをリングに通す。

 

「ビクトリー兄ちゃんっ!」

[ウルトラマンビクトリー!]『テヤッ!』

 

 更に、律子がエックスのカードをリングに通した。

 

「エックスさんっ!」

[ウルトラマンエックス!]『イィィィーッ! サ―――ッ!』

 

 三つのカードをリードしたオーブリングをガイが掲げてトリガーを引く。

 

[トリニティフュージョン!!!]

 

 リングに集った光が渦巻き、出来上がったオーブスラッシャーをガイが手に取って側面のウルトラ文字を指でなぞる。

 

「三つの光の力、お借りしますッ!! オーブトリニティ!!!」

 

 三人のアイドルと三人のウルトラマンのビジョンが、オーブオリジンと融合! その姿を、新たなものへと変化させる!

 千早と美希は、セブンとゼロのカードをオーブライトリングに通していく。

 

「セブンさんっ!」

[ウルトラセブン!]『デュワッ!』

「ゼロっ!」

[ウルトラマンゼロ!]『セェェェアッ!』

「「親子の力、お借りしますっ!!」」

[フュージョンアップ!]

 

 千早と美希がセブンとゼロのビジョンとともに、オーブの分身と融合して実体を与えた!

 

『ジュワッ!』『テヤッ!』

[ウルトラマンオーブ! エメリウムスラッガー!!]

 

 ガイたちと千早、美希の変身した二人のウルトラマンオーブが飛び出していき、禍々アークベリアルの面前に着地する。

 

『俺たちはオーブトリニティ!! 三つの光と絆を結び、今、立ち上がる!!!』

『「「私たちはオーブ! 智勇双全、光となりて!!」」』

 

(♪魔王獣)

 

『「あ? 何でお前二人いるんだ!? まぁいい!!」』

 

 ガイたちの変身したオーブトリニティとエメリウムスラッガーを見下ろし、禍々アークベリアルが怒号を上げる。

 

『「俺は今ムカついてんだ! 宇宙根無し草風情なんか、この力で粉砕してやるッ!!」』

 

 オーブが子供に見えるほどの巨体で迫り来る禍々アークベリアルを、オーブトリニティとエメリウムスラッガーは光線技で迎え撃つ。

 

「「「『トリニティウムシュート!!!!」」」』

『「「ワイドスラッガーショット!!」」』

 

 律子がオーブスラッシャーを二回なぞるとオーブトリニティが空中にV字と円を描いて光線を飛ばし、エメリウムスラッガーも腕をL字に組んで光線を発射。

 だが禍々アークベリアルは同時光線をあっさりと受け止め、全く動じなかった!

 

『何ッ!?』

『「効かねぇなぁぁぁぁッ!!」』

 

 禍々アークベリアルが両眼を光らせると念動力が生じ、オーブたちを軽々と弾き飛ばした。

 

「ウワァァァァッ!」

「グオオオオオォォォォォッ!!」

 

 更に禍々アークベリアルは全身のクリスタルをスパークさせて、口から膨大な暗黒光線を吐き出す! 禍々アークベリアル最大の攻撃、マガマガアークデスシウム!

 

『! まずいッ!』

 

 計り知れない危険を感じ取ったオーブたちはバリアを重ね合わせてマガマガアークデスシウムを受け止めるが、防ぎ切れないと判断してどうにか海の方へとそらした。

 軌道をそらされたマガマガアークデスシウムだが、海面を水平線まで真っ二つに割った上に海底をも切り裂いた! 東京湾に、新たな海溝が出来上がってしまう。

 

「……!!?」

 

 最早常識外の威力に、全員が絶句。当の攻撃を放ったレイデュエスは勝ち誇る。

 

『「ハッハハハハハハ!! 軽く吼えただけでこれ! 素晴らしい威力だッ! ウルトラマンめ、たとえ貴様らでもこいつには勝てないッ!!」』

 

 禍々アークベリアルの脅威を目の当たりにした結衣は、八幡へと振り向く。

 

「ヒッキー、ジードん! あたしたちも戦おうよ! あいつほっといたら、千葉壊されちゃうよ!!」

「あ、ああ……!」

 

 ジードライザーに手を伸ばしかけた八幡だったが、そこに雪乃が声を発した。

 

「待って! さっきフュージョンライズしてから、まだほんの数時間程度しか経ってないわ!」

「あッ、そうだった!!」

 

 ハッと目を見開く八幡たち。ウルトラマンジードは、最低でも二十時間経過しないと再度変身することが出来ないのだ!

 

『くッ……こんな時に、見てるだけしか出来ないのか……!』

 

 強く悔しがるジード。オーブたちは、二人でも禍々アークベリアルに押されているのに、その助けになることが出来ない……。

 しかし無力さに歯噛みしているところに、春香が申し出た。

 

「大丈夫! あなたたちの光が足りないのなら、私の光で補ってあげるから!」

『え?』

 

 突然の発言に意味が分からなかったジードたちだが、春香は構わずにオーブライトリングと二枚のカードを取り出した。

 

「ゾフィーさんっ!」

[ゾフィー!]『ヘアァッ!』

「ベリアルさんっ!」

[ウルトラマンベリアル!]『ヘェアッ!』

 

 手慣れた様子で二枚のカードをリングに通すと、ライトリングに宿った光がジードライザーへと移っていく。

 

「えッ!?」

「今度はこっち!」

 

 吃驚している八幡から春香はウルトラマンカプセルとベリアルカプセルを引き抜く。

 

「あッ、ちょっと!?」

「ウルトラマンさんっ!」『シェアッ!』

「ベリアルさんっ!」『フエアッ!』

 

 春香はそのままカプセルを起動し、四つのビジョンが八幡たちの周囲に現れることとなった。

 

『ええええ!?』

 

 カプセルを装填したナックルを、八幡へと渡す春香。

 

「さぁ、変身して!」

『ひ……ヒアウィーゴー!!』

 

 ジードは戸惑いながらも叫び、それに釣られて八幡がジードライザーでカプセルをスキャン。すると動かないはずのライザーが音声を発した。

 

[フュージョンライズアップ!!]

「フュージョンライズアップ!?」

 

 いつもと違う音声にライハたちは仰天。

 四つのビジョンは重なり合って八幡と春香をジードへと融合させる!

 

『ジィィィ―――――――ドッ!』

[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]

[ゾフィー! ウルトラマンベリアル!]

[ウルトラマンジード! サンダープリミティブ!!]

 

 ――禍々アークベリアルに追いつめられているオーブトリニティとエメリウムスラッガーの前に、天を割るようにウルトラマンジードが猛スピードで着地。その衝撃で禍々アークベリアルの足を止めた。

 

『「ウルトラマンジード……!? 馬鹿な、変身できないはずじゃ……!」』

 

 驚くレイデュエスだが、今のジードの姿に更に驚愕させられた。

 

『「な、何だその姿は!? ビルドアップしてねぇか!?」』

 

 今のジードはプリミティブの形態だが……筋肉が膨張して体格が倍ほどになっており、胸や肩に勲章が並んでいた。身体の黒い模様の面積も増え、威圧感が禍々アークベリアルにも負けないほどになっている。

 そしてジードの超空間に、八幡とともに入っている春香が――マントを翻して叫んだ。

 

『「私たちはジード! 闇を抱いて、覚悟を決めるわ!!」』

『「何かキャラ変わってないっすか!?」』

 

 雰囲気がガラリと変わった春香に仰天する八幡。

 

『「これはベリアルさんの趣味よ」』

『えッそうなの!?』

 

 春香の回答にジードが仰天。

 地上では、雪乃たちが唖然とジード・サンダープリミティブを見上げていた。

 

「ど、どうなっているのかしら、一体……」

[解析不能です。想定外の事態が起きています]

 

 レムですら、そう答える他はなかった。ライハはユートムに振り返る。

 

「つまり、奇跡ってこと……?」

『当たり前のように奇跡を起こすな、あの人たちは……』

 

 ゼナも声を失っていた。

 サンダープリミティブの降臨にしばし固まっていたレイデュエスだが、我に返ると大きく鼻を鳴らした。

 

『「ふんッ! 所詮貴様らが使ってるのはただのベリアルの力! アークベリアルカプセルを使ったこの肉体に敵うはずがねぇッ!!」』

 

 ジードに念力を浴びせる禍々アークベリアル。だが――。

 

(♪サンダーブレスター)

 

「ハァァッ!」

 

 ジードは力ずくで念力を振り払った!

 

『「はぁッ!?」』

 

 ジードは猛然と禍々アークベリアルの懐に飛び込んで首を捉え、そして――。

 

「オォォォォォッ!」

 

 禍々アークベリアルの巨体を、ひっくり返して投げ飛ばした!

 

「グオオオオオォォォォォッ!!」

「すごっ!?」

 

 サンダープリミティブの超怪力に、結衣たちはもう何度目になるのか分からない驚嘆を発した。

 

『「なッ、なッ……こんな馬鹿なッ!」』

『「そこにひざまずきなさいっ!」』

 

 混乱する禍々アークベリアルにジードはアッパーを決め、禍々アークベリアルは宙を待って地面に叩きつけられた。

 

『「ど、どぉなってんだこれはぁ!? 何で俺の方がパワー負けしてんだ!?」』

 

 現実を受け入れられていないレイデュエスに、春香が毅然と告げた。

 

『「力はどこまで行っても力。それを扱う者の力量こそが肝心なのよ。借り物の力を自慢するようじゃあまだまだね!」』

 

 ジードの両隣にオーブトリニティとエメリウムスラッガーが並ぶ。これで状況は逆転したかに見えたが――。

 

『「舐めるなちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」』

 

 逆上した禍々アークベリアルがマガマガアークデスシウムを繰り出し、ジードたちは三人がかりで防御する。

 

「グッ……!」

 

 流石にこの攻撃は三人でも苦しい。しかしその時――。

 

「ゼットンさんッ!」

[ゼットン!]『ピポポポポポ……』

「パンドンさんッ!」

[パンドン!]『ガガァッ! ガガァッ!』

「闇の力、お借りしますッ! 超合体、ゼッパンドン!!」

 

 ジードたちとは別の場所から融合獣とは異なる合体怪獣が出現し、禍々アークベリアルに火炎弾を撃ち込んだ。

 

『「何ぃッ!」』

『ジャグラー!』

 

 オーブトリニティが合体魔王獣ゼッパンドンへと呼びかけ、ゼッパンドンことジャグラーがオーブたちを叱咤した。

 

『「あんな小僧相手に何てこずってるんだ。お前たちの光はそんなもんか?」』

『「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」』

 

 禍々アークベリアルがゼッパンドンに尻尾を振り下ろしたが、ゼッパンドンはテレポートで回避。

 この間にジードたちは態勢を立て直した!

 

(♪エメリウムスラッガー)

 

『「ジャグラーに後れを取ってはいられないわ!」』

『「ミキたちはまだまだこれからなのー!」』

 

 エメリウムスラッガーが頭部から三つのスラッガーを放ち、縦横無尽の軌道で禍々アークベリアルの全身を切りつける。

 

「グオオオオオォォォォォッ!!」

『俺たちも行くぜッ!』

『「オッケー!」』

『「これでも食らえーっ!」』

 

 禍々アークベリアルがスラッガーを受けている間に律子がオーブスラッシャーを三回なぞり、オーブトリニティが禍々アークベリアルへと突貫。

 

「「「『トリニティウムブレイク!!!!」」」』

 

 三回連続の斬撃が禍々アークベリアルに叩き込まれた!

 

『「ぐがぁぁぁッ!?」』

 

 更に宙に浮き上がったジードが、大きく腕を振るってノコギリ状の光刃を繰り出した。

 

「『レッキングZリッパー!!」』

『「ぐぎいぃぃッ! くそがぁぁぁぁぁッ!!」』

 

 散々に斬りつけられる禍々アークベリアルだが、流石に耐久力は凄まじく、有効打になっていない。再びマガマガアークデスシウムで反撃しようとする。

 

『「ゼッパンドンシールド!」』

 

 しかし四方からバリアを押しつけられて、動きを封じられる。

 

『「何ぃぃぃぃぃッ!」』

 

(♪ウルトラマンオーブのテーマ)

 

 禍々アークベリアルを抑えながら、ゼッパンドンがオーブたちに告げる。

 

『今だ。全力でとどめを刺してやりな』

『「ええ!」』

 

 エメリウムスラッガーが前に出て、L字に組んだ腕を右に伸ばして、持てるエネルギーの全てを集中させる。

 

『「「ES(エメリウムスラッガー)スペシウム!!」」』

 

 両腕を十字に組んで、最大威力の光線を発射! その瞬間にバリアを解かれた禍々アークベリアルに突き刺さる!

 

『「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」』

 

 だがこれでも禍々アークベリアルは倒れない。そこで律子がオーブスラッシャーを三回なぞった後にスイッチを叩き、オーブスラッシャーを展開。

 オーブトリニティの握るスラッシャーに、巨大な光輪が作り出された!

 

「「「『トリニティウム光ぉぉぉ輪!!!!」」」』

 

 放たれた光輪は、禍々アークベリアルを通り抜けて上下に両断した!

 

『「がぁぁぁぁぁぁッ!! う、うおおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!」』

 

 しかし禍々アークベリアルは自らの念力で肉体を押さえつけて維持している! 何という執念か!

 だが、最後にジードが必殺の攻撃を繰り出す!

 

「オオオオォォォォォォッ!」

 

 両腕を内回りに回しながら赤黒いスパークを起こし、右肩の上に持ち上げてリング状の閃光を発生させて十字を組んだ!

 

「「『レッキングZバースト!!!」」』

 

 ほとばしる絶大な光と闇の破壊光線が、禍々アークベリアルの切り口に命中!

 

「グオオオオオォォォォォ――――――――――――ッ!!!」

 

 禍々アークベリアルは遂に耐え切れなくなって、天まで届くほどの爆炎の中に消えていったのだった。

 

 

 × × ×

 

 

 禍々アークベリアルが散った様を、ビランキが見届けて大きく舌打ちした。

 

「もう、やられちゃってるじゃない! 偉ぶってた割には役に立たないわね!」

「――こんなところにいたか」

 

 そこに後方から、変身を解いたジャグラーが近づいていく。

 

「ジャグラー様……!」

「ビランキ、お前どうしてこんな真似したんだ。オーブを倒すのは俺だって、いつも言ってるだろう」

 

 ジャグラーが問いかけると、ビランキは途端に目を怒らせた。

 

「何よ、ジャグラー様がいけないのよ! あの女三人は何よ! 私に内緒で侍らせて!! だから紅ガイを奪ってやろうと思ったのよ!」

 

 ビランキの言い分に、ジャグラーは思い切り呆れ果てた。

 

「お前……そんな理由だったのか。あいつらはそういうのじゃないって言っただろう?」

「うるさーい! 言い訳なんか聞きたくないわ! もう知らないんだから……!」

 

 きゃんきゃんと駄々をこねるビランキの顎にそっとジャグラーが指をかけて――素早く、唇を重ねた。

 

「ほら、こいつで満足か?」

「……ああ、ジャグラー様ぁ……」

 

 ビランキの表情は一瞬でとろけた。ジャグラーは彼女に言い聞かす。

 

「満足したのなら、今回のことに後始末をつけな。流石に今回は度が過ぎてるぜ」

「はぁーい♪」

 

 ビランキは言われるがままに、強力な念動力を飛ばした――。

 

 

 レイデュエスはオガレスとルドレイに肩を貸されながら敗走をしていた。

 

「はぁッ……はぁッ……流石にきつい……!」

『だからおっしゃったではありませんか……』

「うるさい……! だ、だがカプセルは無事だ……!」

 

 レイデュエスは狂気に彩られた笑みを浮かべながら、マガオロチカプセルとアークベリアルカプセルを取り出す。

 

「ウルトラマンオーブだっていつまでもここにはいないだろう……。ほとぼりが冷めた頃にまた使って、次こそこの星を恐怖のどん底に……!」

 

 と目論むレイデュエスであったが――。

 その瞬間に、二つのカプセルが念力によってパリン、と粉々に割れた。

 

 

「何だか一つ余計に壊したみたいだけど、まぁいいわよね」

 

 

「――」

 

 白目を剥くレイデュエス。オガレスとルドレイはひどく狼狽えた。

 

『く、苦労して手に入れたアークベリアルカプセルが……!』

「――おおおおあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 途端に癇癪のままに暴れ出すレイデュエス。すぐ側のオガレスとルドレイはそれに巻き込まれる。

 

『で、殿下! お気を確かに! げぶッ!』

 

 八つ当たりで二人を殴り飛ばしながら、レイデュエスは力の限りに絶叫した。

 

「今日は厄日だッッ!!」

 

 

 × × ×

 

 

 戦いの終結後、八幡たちは天文台の外でガイたちの見送りを行う。

 

「もう行ってしまうんですね」

「もうちょっとゆっくりしてけばいいのにぃ。まだ色々お話し聞きたいです」

 

 惜しむ結衣に、千早と律子も名残惜しそうに告げた。

 

「出来ればそうしたいところだけど、私たちも今忙しくてね」

「最近、色んな宇宙で不審な人工惑星が目撃されてるの。その追跡のミッションをしなくちゃいけないから」

 

 ガイと春香の方には、ペガがこう言葉を掛けた。

 

「皆さん、ほんとすごかったなぁ~。ペガたち驚きっぱなしだったよ。ねぇリク」

『うん……。ウルトラマンとして、正直羨ましいくらいだった。あんなにすごいことが出来るなんて……』

 

 正直な感想を口にしたジードに、ガイが言う。

 

「だが、俺たちだって最初からこんだけのことが出来た訳じゃない」

『え……?』

「俺だってウルトラマンになりたての頃は、相当な不出来だった。色んなことにつまずいて、失敗して……。俺たちみんなそうさ。順調だった奴は一人もいない」

「はい。私たちも、たくさんの壁にぶつかりました」

 

 てへへ、と愛想笑いする春香たち。

 

「だけど、どんなことがあってもあきらめずに頑張り続けたからこそ、今のこの時間があるの。私たちだったから、特別な訳じゃない。みんなに、私たちのように輝ける可能性はあるよ!」

 

 春香の力強い呼びかけに、八幡が戸惑ったように目をそらす。

 

「い、いや……俺なんかは、あなたたちみたいな目的意識とかある訳じゃないし……。明確になりたいものだって……」

 

 しかし春香は首を振った。

 

「今はなくても、未来はどうなるか分からない。そして輝く自分は、どんな形でもいいの。どんな形でも、どんな場所でも、人は一番輝ける可能性を持ってるよ!」

 

 春香の言葉に、八幡は呆けたような表情となった。その時に、スペーストータス号から律子が呼びかける。

 

「みんなー、そろそろ出発しましょう! 伊織たちも待ってるわ!」

「それじゃあお別れなの。みんな元気でねっ!」

「兄ちゃん姉ちゃん、また会おうねー!」

「約束だかんねー!」

 

 律子に呼ばれて順々にトータス号に乗り込んでいくアイドルたち。最後に、ガイがジードと言葉を交わす。

 

「それじゃあな。次に会う時は、立派なウルトラマンになってることを期待してるぜ!」

『はい! 頑張って、宇宙の平和を守っていきます!』

 

 ジードの約束の言葉にガイは微笑みを浮かべた。

 

「その意気だぜ。それじゃあ、こいつは餞別だ」

 

 と言ってガイの出したオーブリングから二つの光が飛び、八幡の手の中に収まった。

 

「これは……」

 

 八幡が手を広げると、光は二つのウルトラカプセルに変わっていた。それぞれスペシウムゼペリオンと、エメリウムスラッガーが描かれている。

 

「ヒカリさんから託された新型のカプセルだ。使ってくれ」

『あ、ありがとうございます!』

「しっかり頑張れよ。じゃあ――あばよ!」

 

 爽やかな微笑みを残して、ガイがハーモニカを奏でながらトータス号に乗り込んでいく。

 全員を乗せたトータス号のタイヤが横向きになって浮上し、ハーモニカの音色を残して宇宙へ向かって飛び立っていった。

 

「さよーならー!!」

「お元気でー!!」

 

 大きく手を振って見送る結衣やペガたち。そんな中で、八幡がジード相手にボソリと言った。

 

「……俺も、何だか羨ましいかもな」

『ん?』

「あの人たち、口を開けばリア充的な綺麗事ばっか。だけど、どれもその辺の連中が無責任に言い放つような薄っぺらい言葉じゃない。何つぅか……説得力に溢れてた」

 

 八幡は内心、ガイたちに羨望と嫉妬の念を抱いていた。どんな時も希望に満ちている、生きているのがとても楽しそうな彼らと自分の人生を見比べて。だから突っかかるような態度を取ったし、直視できない時もあった。

 

「多分……ああいうのが、本物なんだろうな。俺も、いつか……」

「本物が……何かしら?」

 

 熱に浮かされたようにつぶやいていたら、雪乃に聞き返されて心臓が跳ねあがりそうになった。

 

「んなななッ!? な、何でもねぇ! 何でもねぇから!」

「え、何なに? ヒッキー、今何て言ってたの?」

『これがまた結構いいこと言ってたんだよ。それがね……』

「おぉぉいやめろぉぉぉッ! 言うなッ! 言うなってぇのぉぉ――――ッ!!」

 

 結衣やライハたちが興味を示してきて、八幡は羞恥に駆られて必死にジードの言葉をさえぎったのであった。

 

 

 

『ウルトラストーリーナビ!』

 

八幡「今回は特別に、『ウルトラマンオーブ』という作品について紹介だ」

八幡「『オーブ』の始まりはロシア、ルサールカから。ここで起きたある事件のせいで、自分本来の姿になれなくなったウルトラマン、オーブがSSPっていうグループと出会ってテレビシリーズの物語は開始した。クレナイガイことオーブはSSPとともに地球を脅かす魔王獣や暗躍するジャグラスジャグラーを始めとした敵と戦い、成長していったんだ」

八幡「オーブは歴代ウルトラマンの力を使って変身するフュージョンアップを目玉にしたウルトラマンだが、この要素を上手いことストーリーに反映させて独自色を形成することに成功した。ガイやジャグラーのキャラクターも支持を集めて、未だに根強い人気を博してるんだ」

八幡「テレビ放送以外にも映画やAmazonでのWebドラマなども作成された。後に十章仕立てのストーリーも発表されて、シリーズの一作品の枠を超えるほどの深みのある世界観が形作られたんだぜ。今は再編集ものの『オーブ THE CHRONICLE』も放送されてるし、これからも何らかの形で『オーブ』を目に掛かる機会がやってくるかもな」

ジード『3月には劇場版『ジード』でジードとの共演も果たすよ! みんな、映画館に行こうね!』

八幡「それじゃ、次回もよろしくな」

 




『せっかくの夏休みなんだから、思い出作りしないと損だよ』
「そんな如何にもめんどそうなこと、絶対やらんからな」
「みんなでキャンプ場なんて楽しそうじゃん!」
「では、早速行こうか。本館に荷物を置き次第仕事だ」
「小学生でもああいうの、あるんだな」
『レクリエーションなのに、ちっとも楽しそうじゃないや……』
『「けど、今は雪ノ下も由比ヶ浜もいねぇよ……!」』
[その二つのカプセルと交換して下さい]
『「飛ばすぜ……光刃!」』



次回、『陽炎の中、彼らはボランティア活動をやらされる。』

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