やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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汚された二人山伝説に挑戦せよ。(B)

 

 小学生たちの肝試しはつつがなく進行し、最後のグループの出発の番がやってきた。そのグループとは留美たちの組。――そうなるように八幡たちは事前に打ち合わせていた。

 その一つ手前の集団が肝試しのルート上の分かれ道を越えると、八幡が封鎖箇所を変えて留美たちの組だけ山に向かうコースを進むように細工する。そのコースの先には、お化けの仮装から普段着に着替えた葉山と三浦、戸部が待機している。

 留美たちが来るのを待つ中で、戸部がポツリとつぶやいた。

 

「いやー、にしてもヒキタニくんやべーわ。やべーこと思いつくわ」

「ホントに。ヒキオがあんなおっかないこと考えるような奴だったなんてねー。ま、ある意味らしいけどさ」

 

 戸部の言葉に同意する三浦。葉山もうなずいて口を開いた。

 

「確かに、普通なら考えつかないよな。――醜い本性を露呈させて、人間関係をリセットさせるなんてやり方」

 

 それが八幡の考え至った、留美を助ける手段であった。留美が無視され続ける環境が出来上がってしまっていて、外部からではどうにも変えることが出来ないのならば、その環境を壊してしまえばいい。そのためには、留美をいじめるグループを危機的状況に追いやって、自分だけが助かろうと醜くもがく様を互いに見せつけ合わせて人間関係にひびを入れ、グループを解体させるのだ。無視を主導する者たちがいなくなれば、留美が新しい人間関係を築く可能性も出来るはずだ。

 いじめっ子たちを恐怖させる役を任されたのが葉山たちである。小学生ならば、高校生から恫喝されればまず間違いなく平気ではいられない。そして他人をいじめる人間性の者たちならば、ピンチの状況で他人を助けようという美徳など持ち合わせてはいない。そこまでが八幡の計算であり、葉山たちも頭ではこれ以外の方法はないと理解はしていたが、心では今になっても子供たちを脅すことに対する後ろめたさがあった。

 

「ヒキタニくん考えがこえーわー。今後のつき合い方考えちゃうわー」

「ろくなつき合いないのによく言うね」

 

 適当なことを言う戸部に肩をすくめる三浦。そんな二人に時刻を確認した葉山が呼び掛ける。

 

「そろそろここに来る頃だと思う。準備しよう」

「はーい」

「うーすッ」

 

 三人は登山コースの中央に待機して、ここにやってくるはずの留美たちを待つ態勢を取った。するとガサガサと、茂みが揺れる音がする。

 

「お、来たんじゃね?」

 

 戸部がそう言うと、葉山が怪訝な顔になる。

 

「え? 今の、後ろからしたぞ?」

「後ろ?」

 

 三人がそろって背後に振り返ると――懐中電灯の灯りに、肌色の怪人の顔面が浮かび上がった。

 

「オォォォ―――――!!」

 

 怪人が奇声を発して腕を振り上げると、葉山は驚愕。戸部と三浦は一瞬で顔が青ざめ絶叫した。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!! 化け物ぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――!?」

「あッ、おいッ!」

 

 恐怖に駆られた戸部と三浦は脱兎の如く逃げ出した。比較的冷静だった葉山も捨て置けず、慌てて二人を追いかけていく。

 その後に残された怪人――オガレスは機嫌を害して吐き捨てた。

 

『……人払いが目的とはいえ、化け物呼ばわりとは失礼な! これだから地球人は……こんなナイスガイを捕まえて!』

『よく言うよ、尻頭のくせに』

 

 後ろのルドレイがボソッとつぶやくと、聞き咎めたオガレスがムッと目くじらを立てた。

 

『何だと!? 人のこと言えたクチか、怪奇エビ男!』

『何ぃ!? ――と、争ってる場合ではないぞ。殿下から申しつけられた人払い、ちゃんとやらなくては』

『そうだった……。すっぽかしたら、また杖でボコスカ殴られてしまう』

 

 口喧嘩に発展しそうだったが、我に返った二人はその場から離れて周辺に他の人間がいないか捜しに行った。

 

 

 × × ×

 

 

 八幡は留美たちのグループが本来のコースから外れて、誘導通りに登山コースの方に入ったのを確認すると、念のために気づかれないようにこっそりと彼女たちの後を追跡する。そこにお化け役を終えた雪乃と結衣も合流した。

 留美たちの後を追う道すがら、結衣がジードにふと問いかけた。

 

「でも、ちょっと意外かも。ジードんとペガっちがヒッキーのやり方に反対しないなんて」

 

 ジードは正義の味方として活動しているし、本人もそのような人間であることを志していることを結衣たちは知っていた。星雲荘には『爆裂戦記ドンシャイン』なる特撮ヒーローのグッズがコレクションされていて、時々八幡をつき合わせてまでDVD鑑賞をしているらしいから。

 結衣の言葉に、ジードとペガは次のように返した。

 

『確かに趣味のいいやり方とは思わないけれど、誰かを貶めて維持される関係なんて、それをやってる子たちの方にも良くないよ。怖い目を見てもらってでも、今の内に自分たちのことを反省する機会を与えた方がいいと思う』

『うん……。そういうのは、子供の内に経験するべきだ』

「そうね。歳を重ねるにつれて、人間ってこじらせてしまうものだもの……」

「おいこっち見んじゃねぇよ。俺がその実例ってことかよ」

 

 ジーッと見つめてきながらそう唱えた雪乃に八幡が突っ込んだ。

 その時、戸部たちの悲鳴が彼らの耳を揺さぶった。八幡たちは仰天して正面に向き直る。

 

「今の、優美子たちの声だ……!」

「化け物って……まさか……!」

『八幡! 何か異常が起きたみたいだ!』

「らしいな……!」

 

 八幡たちは咄嗟に駆け出す。戸部たちの悲鳴は当然留美たちの耳にも入り、何事かと立ち止まっている少女たちに三人は近づく。

 

「あっ、お姉さんたち……!」

「あなたたちはここで待ってて。動いちゃ駄目よ……!」

 

 すれ違いざまに雪乃が言いつけ、八幡たちはずんずん登山コースを進んでいった。そしてその先で懐中電灯が照らし出したのは、

 

「あれって……平塚先生が言ってた奴じゃ!?」

 

 登山道の片端に鎮座している石碑。結衣たちは日中に平塚が話していた、想い石を思い出した。近くに無数の靴が散らばっているから、恐らく同じものだろう。

 しかし想い石に供えられていただろう靴は無残に蹴散らされており、石碑の正面には一人の男が立ってカプセルを石碑に向けていた。

 

「レイデュエス!」

「ん?」

 

 八幡たちが名前を言うと、レイデュエスが首をこちらに向けてチッと舌打ちした。

 

「……全くあいつら、人払いもまともに出来ないのか。まぁいい……すぐ完了だ」

「見て! 想い石から、何か光が……!」

 

 石碑からは淡く光るもやのようなものが生じている。祀られた侍の霊魂だ。

 レイデュエスはその魂をカプセルの中に吸引。カプセルの表面に、紅い甲冑の武者が描かれる。

 

「フッフッ……ちょうどいい。このカプセルの威力、確かめさせてもらおうじゃないか。宇宙指令C18!」

 

 レイデュエスはニヤリと笑って八幡たちに向き直り、単眼の鬼のカプセルのスイッチを入れた。

 

「イッツ!」『グオオオオ!』

「マイ!」『ウオオオオオ……!』

「ショウタイム!!」

 

 鬼のカプセルと今作成したカプセルを装填ナックルに押し込め、ブラッドライザーを起動するレイデュエス。

 

フュージョンライズ!

「ハハハハハハハハハッ!」

 

 暗黒の異空間の中、レイデュエスは魔人態となって鬼と鎧武者のビジョンを吸収する。

 

宿那鬼! 戀鬼・紅蓮騎!

レイデュエス! 怨恨凶剣鬼!!

 

 フランス人形とレコードプレイヤーを踏み潰して、レイデュエス融合獣が八幡たちの前にそそり立った。

 

「……!」

「グオオオオオオ――――……!」

 

 紅い甲冑と兜を纏った巨大な鬼が、ギラギラと光る単眼でこちらを見下ろしている。その腰に提げられた鞘から、スラリと太刀が抜かれた。

 一つ目の鬼と武者の亡霊、単なる怪獣の類ではない本物の化生の力によって作り出された大妖怪、怨恨凶剣鬼!

 

『雪乃、留美ちゃんたちを避難させて!』

「え、ええ!」

 

 ジードが即座に判断して、登山道に残してきた留美たちを雪乃に託した。

 

『結衣は八幡と!』

「う、うんっ!」

 

 結衣の方は、八幡とともにフュージョンライズさせる。

 

『ユーゴー!』『テヤッ!』

『アイゴー!』『タァッ!』

『ヒアウィーゴー!!』

[フュージョンライズ! ウルトラマンヒカリ! ウルトラマンコスモス!]

[ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!!]

「ハァッ!」

 

 八幡と結衣とでフュージョンライズし、ウルトラマンジード・アクロスマッシャーが着地して怨恨凶剣鬼と対峙した。

 

『スマッシュビームブレード!』

 

 相手は刀を持っている。ジードはこちらも光剣で武装し、怨恨凶剣鬼へとまっすぐに駆けていって剣を振るう。

 

「ハァァッ!」

 

 ビームブレードの乱撃を叩き込むジード!

 ――だが、怨恨凶剣鬼は残像が残るほどの速さで身体を揺り動かし、斬撃を全て回避した!

 

(♪大怪獣の咆哮)

 

『「えぇっ!? な、何今の動き!?」』

 

 怨恨凶剣鬼の物理法則を無視した身のこなしに驚愕する結衣たち。ジードも思わず後ずさる。

 

「オオオオ――――!」

 

 今度は怨恨凶剣鬼が刀を横一文字に振るってきた。ジードは高々と跳躍して怨恨凶剣鬼の背後を取る。

 

「ウオオオオ――――!」

 

 だが怨恨凶剣鬼の後ろ髪がバサリとかき上がると、その下からもう一つの顔面が現れ、その口から鬼火を吐き出す。

 

「ウワアァァッ!?」

 

 着地したところを狙われてまともに鬼火を食らうジード。倒れる彼だが、怨恨凶剣鬼は容赦なく追撃してくる。

 

「オオオオオオ!」

「ウッ……!」

 

 相手の縦横無尽な剣さばきを懸命に逃れるジード。しかし逃げてばかりでは時間制限の短いこちらが不利になるばかり。

 

『ジードクロー!』

 

 逆転するべくジードクローを召喚して、八幡がジードライザーでリード。

 

[シフトイントゥマキシマム!]

 

 エネルギーをマックスにして、クローから光線を天に向けて放った。

 

「『ディフュージョンシャワー!!」』

 

 光線を雨あられとして怨恨凶剣鬼に降り注がせる!

 ――だが、怨恨凶剣鬼はこの攻撃を悠々とすり抜けてきた。

 

『「嘘でしょ!?」』

『「何でもありかよあいつ……!?」』

 

 流石に愕然とする八幡たち。そこにレムが告げる。

 

[あの融合獣は科学の力を超えた、不条理的存在の力を有しています。神秘の力を利用した肉体には、通常攻撃は通用しないでしょう]

『「反則だろそんなん……!」』

 

 毒づく八幡だが当然敵には通じない。怨恨凶剣鬼は妖気を刀に纏わせて、強化した斬撃を繰り出してきた!

 

「オオオオオオッ!」

「ウワアアアァァァァァ―――――!」

 

 避けきれずに吹っ飛ばされるジード。地面に叩きつけられ、カラータイマーが赤く点滅し出す。

 怨恨凶剣鬼はクルリとジードに背を向けると、雪乃にかばわれている小学生たち――リトルスターを宿した留美を狙い始めた。

 

『「や、やばいよ! 留美ちゃんが……!」』

『「分かってっけど、身体が……!」』

 

 ジードはダメージが大きく、しばしまともに動けそうにない。その間に怨恨凶剣鬼は刀を振り上げる。

 

「危ないわ! 逃げて……!」

 

 必死に留美たちを逃がそうとする雪乃だが、そのために自分が剣戟の風圧によって吹き飛ばされてしまう。

 

「ああああああっ!」

「お、お姉さんっ!!」

 

 雪乃を払いのけて、怨恨凶剣鬼は小学生たちを纏めて斬り伏せようと刀を振り上げなおした。

 

「オオオオオオ――……!」

 

 小学生たちは目前に迫る死に打ち震え、ガチガチと歯を鳴らす。

 

「い、いやあぁぁぁ! 死にたくなぁいっ!」

「助けて!! 助けてよぉぉぉぉ!!」

「だれかぁぁぁぁ―――――――!!」

 

 泣き叫んで命乞いする子供たちだが、怨恨凶剣鬼には当然通じない。遂に彼女たちの命を刈り取る凶刃が振り下ろされる――!

 

「――!」

 

 その瞬間、留美が皆をかばうように前に飛び出した!

 

「えっ――」

 

 一瞬唖然とする子供たち。その前で、留美が胸元から強烈な閃光を、怨恨凶剣鬼の眼に向けて焚いた。

 

「オオッ!?」

 

 油断していた怨恨凶剣鬼は目つぶしを食らって後ずさった。その間に、留美が胸の前で手を握り締めてジードに向け祈る。

 

「お願い……助けて……!」

 

 その祈りによって留美からリトルスターが切り離され、ジードのカラータイマーを通して八幡のカプセルホルダーへと飛んできた。

 八幡がカプセルを引き抜くと、新たなカプセルに赤と紫と銀のウルトラ戦士の絵柄が浮かび上がった。

 

『タァーッ!』

[ティガカプセル、起動しました。カプセルを交換して下さい]

 

 レムが告げ、更にカプセルの交換を促した。

 八幡たちは言われた通りに、新しく入手したカプセルを用いてフュージョンライズする!

 

『ユーゴー!』

『タァーッ!』

 

 八幡がカプセルのスイッチを入れ、ウルトラマンティガのビジョンが腕を振り上げた。

 

『アイゴー!』

『セェアッ!』

 

 結衣はルナミラクルゼロカプセルを起動し、青いウルトラマンゼロが腕を振り上げる。

 

『ヒアウィーゴー!!』

 

 二つのカプセルを収めた装填ナックルを、八幡がジードライザーでリード。

 

[フュージョンライズ!]

『ジィィィ―――――――ドッ!』

 

 ティガとルナミラクルゼロのビジョンが八幡たちと重なり、フュージョンライズ!

 

[ウルトラマンティガ! ルナミラクルゼロ!]

[ウルトラマンジード! ムゲンクロッサー!!]

「ハァッ!」

 

 青い輝きと光の軌道を超え、青と紫の螺旋からジードが新たな姿となって飛び出していく!

 

「トォッ!」

 

 怨恨凶剣鬼の頭上を跳び越え、留美たちの盾となるように着地したジード。その姿は青と紫と銀の体色に、左腕から胸に掛けて金色の装甲に覆われている。そして右手の中にふた又の剣が現れ、それを固く握り締めた。

 超古代のウルトラ戦士ティガと、超能力戦士ルナミラクルゼロの力によってフュージョンライズした超戦士ムゲンクロッサー! その力の程は、まだ何もしていなくとも結衣が肌で感じ取った。

 

『「これならイケそう! やろうよヒッキー! お侍さんたちの幽霊を自分勝手に利用するなんてこと、許しておけないよ!」』

『「よぅし……!」』

 

 八幡が怨恨凶剣鬼を見据え、ジードがふた又の剣、ゼロツインソード・ネオを高々と構えた。

 

『「挑むぜ……神秘!」』

 

(♪蘇る巨人2)

 

「オオオオオ――!」

 

 仕切り直しとなった対決。怨恨凶剣鬼が機先を制してジードに斬りかかるが、ジードは『左右』に分かれて回避した。

 そう、『左右』に。ジードは一瞬の内に三人に分身して、怨恨凶剣鬼を包囲した!

 

「ウオオ!?」

 

 突然のことに怨恨凶剣鬼は首を振り回して動揺。ムゲンクロッサーは超能力に特化した形態であり、分身などは最も得意とする能力なのである。

 

「ハァァッ!」

 

 そして攻撃にはゼロツインソード・ネオがある。分身したジードは一斉に、三方向から怨恨凶剣鬼に斬りかかる。

 

「オオオオオオッ!!」

 

 たとえ物理法則を無視した挙動が出来ても、流石に取り囲まれて三方向から繰り出される斬撃をかわし切ることは出来ない。怨恨凶剣鬼は瞬く間に切り刻まれていく。

 

「セアッ!」

 

 最後に本体のジードが突撃を掛け、とどめの一撃を叩き込む。

 

「『マジカルトライデントスラッシュ!!」』

 

 最後の斬撃が怨恨凶剣鬼の胴体を真っ二つに切断し、その身体は霧散して消滅していった。と同時に、カプセルに囚われた戀鬼――侍と姫の魂が、天へと昇っていく。

 それをしっかりと見届けて、ジードは夜空に向かって飛び立って地上を去っていったのであった。

 

 

 × × ×

 

 

 本来の計画とは大分異なる形にはなってしまったが、肝要の留美の問題に関しては、改善の兆しが見られた。同じグループの子たちを留美が身体を張って助けたことで、それまで無視をしていた子たちが彼女を意識するようになったのだ。そこからは、留美本人の努力次第だろう。

 平塚も八幡たちが無事だったことに心から安堵し、また結果的に留美を助けたことを称賛してくれた。それを口にしていた時の平塚はとても上機嫌であった。

 

「それにしても、私の結婚相手はいつ現れるんだろうな。明日かな、明後日かな? 楽しみだなぁ、ふふふ」

 

 彼女は想い石の効果が出るのを待ち望んでいた。しかし、レムがこのように言ったのを八幡たちは知っている。

 

[想い石の力は、戀鬼の霊力が引き起こしていたものです。故に本物だったのですが、その霊魂は融合獣を倒したことで石碑から去りました。想い石はもう何の力もない、ただの墓標です]

 

 すいません、あれもう効果ないんですよ……とは、あまりにも嬉しそうな平塚を見ていたらとても伝えられない八幡たちであった。

 

 

 何だかんだとあった奉仕部合宿が終わり、八幡たちのワンボックスカーは総部高校の前で停車。そこからは各人で解散ということになる。

 

「お兄ちゃん。どうやって帰ろっか?」

「京葉線でバスがいいかな。帰りに買い物して帰ろうぜ」

「あいあいさー。京葉線ですし、雪乃さんも一緒に帰りません?」

「そうね。……では、途中まで」

「んじゃ、あたしとさいちゃんはバスかな」

「うん、そうだね。じゃあ……」

 

 それぞれが帰路につく相談をしていたところに、不意に黒塗りのハイヤーが静かに近づいてきて、八幡たちの前に横づけされた。

 目を丸くしている八幡たちの見ている中、初老の運転手が後部座席のドアを開けた。中から降りてきたのは、

 

「はーい、雪乃ちゃん」

「姉さん……」

「え、ゆきのんの……お、お姉さん?」

 

 陽乃である。初対面の結衣らは雪乃と陽乃を頻りに見比べた。

 

「雪乃ちゃんてば夏休みはおうちに戻ってくるようにって言われてたのに全然帰ってこないから、迎えに来ちゃった! でもお邪魔だったかな? 比企谷くんとデートだったみたいだから!」

「またそのパターンかよ……。違うっつってんじゃないですか」

 

 肘で八幡を突っつく陽乃。すると結衣が八幡の腕を引っ張って陽乃から離した。

 

「あ、あの! ヒッキー嫌がってますから!」

 

 陽乃がピタリと動きを止め、結衣に一見では分からないが、含みのある眼差しを向けた。

 

「あなたとは『はじめまして』だね。わたしは雪ノ下陽乃。雪乃ちゃんのお姉ちゃんです」

「あ、ご丁寧にどうも……。ゆきのんの友達の由比ヶ浜結衣です」

「友達、ね……。雪乃ちゃんにも友達がいるんだ、安心したよ。でも、比企谷くんに手を出しちゃ駄目だよ。それは雪乃ちゃんのだから」

「違うわ」

「違うっつーの」

「ほら! 息ぴったり!」

 

 八幡と雪乃の声がそろったのを面白がる陽乃。そこに平塚が呼び掛ける。

 

「陽乃、その辺にしておけ」

 

 陽乃は平塚の方を向くと、親しげに呼び返した。

 

「久しぶり、静ちゃん」

「その呼び方はやめろ」

 

 二人の様子に八幡が素朴な疑問を投げかける。

 

「先生、知り合いなんですか?」

「昔の教え子だ」

「まぁ積もる話はまた改めて、ね。じゃあ、雪乃ちゃん。そろそろ行こっか」

 

 陽乃が促しても雪乃は動こうとしなかったのだが、

 

「お母さん、待ってるよ」

 

 そのひと言でピクリと反応し、あきらめたようなため息を吐くと小町に向き直った。

 

「小町さん。せっかく誘ってもらったのにごめんなさい。あなたたちと一緒に行くことは出来ないわ」

「え。は、はい……それはまぁ、お家のことなら……」

 

 小町が戸惑ったように答えると、雪乃は消え入りそうな声で別れを告げた。

 

「……さようなら」

「じゃ、比企谷くん。ばいばーい!」

 

 雪乃と陽乃を乗せて、ハイヤーが滑らかに発進した。それを呆然と見送る八幡の袖を、結衣がそっと引く。

 

「ねぇ……あの車、さ……」

 

 言いかける結衣に、八幡は肩をすくめてみせた。

 

「まぁ、ハイヤーなんてどれも似たようなもんだしな。いちいち車なんて覚えてねぇよ」

 

 ――嘘であった。八幡は今のハイヤーが、自分と衝突したものであることに確信を持っていた。そしてあの時……戦いに必死だったのであの時は気づかなかったが、今ならはっきりと言える……クラッシャーゴンに捕まり、自分が助けたハイヤーもまた同じものであった。あの時、後部座席に乗っていた雪乃らしき人影は、きっと陽乃だったのだろう。自分は、六月以前に陽乃と出会っていたのだ。

 

 

 その語の夏休み中に、八幡と雪乃が再び会うことは、なかった。

 

 

 

『ウルトラストーリーナビ!』

 

結衣「今回は『ウルトラマンコスモス』第十八話「二人山伝説」だよ!」

結衣「チームEYESのシノブリーダーが休暇中にやってきた二人山では、リーダーの防衛軍時代の上官の竹越さんが待ってたの。リーダーはその人のことが好きなんだけど、竹越さんは娘さんがいて、その娘さんはお父さんの再婚に反対してるの。一方で二人山ではダム建設の話が持ち上がってたんだけど、業者が建設に邪魔な石碑を壊しちゃって、そのせいで封印されてた怨霊・戀鬼が蘇っちゃった! リーダーみたいに報われない恋のために怨霊化した戀鬼に、コスモスが立ち向かうんだけど……っていうお話しだよ」

結衣「シノブリーダーの恋愛にスポットが当てられた回だけど、それはほろ苦い大人の恋。そこに悲恋で終わった幽霊が敵として登場して、恋とは素敵なだけのものじゃないってことが描かれるストーリーなの」

結衣「恋愛って障害も多くて、報われる訳じゃないんだよね……。あたしの場合もやっぱり難しいんだろうなぁ。相手が相手だしね……」

ジード『戀鬼は『ウルトラマンオーブ』でまさかの復活を遂げたんだよ! でもそのままって訳じゃなくて、メカザムの着ぐるみを改造した紅蓮騎というアレンジキャラとしてだけどね』

結衣「それじゃ、次回もよろしくねっ!」

 




「二か月足りなぁ~い……」
「雪乃、元気にしてるかなぁ……」
「ね、ね、何から食べる? りんご飴? りんご飴かな?」
『えー? 女の子と二人でデートが楽しくないの?』
「あ、そうなんだー! 一緒に来てるんだねー」
「……雪乃ちゃんは、また選ばれないんだね」
レイデュエス! マグマゴメス!!
『このままじゃやばい……! カプセルを交換するんだ!』
『「けど、今は雪ノ下がいねぇ!」』



次回、『融合獣マグマゴメスを倒せ。』

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