やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。 作:焼き鮭
――一介の高校生、比企谷八幡が宇宙からやってきた巨大超人に変身し、大怪獣と激戦を展開するという、とても現実とは思えない、しかし確かな現実を体験した、その翌日。
八幡は登校前に、再び星雲荘を訪れてライハやレムたちとあることを話し合っていた。
「融合獣?」
八幡がレムから聞かされた名前を復唱した。話し合いの内容とは、昨日八幡が変身したウルトラマンジードが倒した怪獣についてである。
[はい。あの怪獣は90%以上の確率で、自然に生まれた個体ではありません。二種類の怪獣の生体情報を組み合わせて作り出された融合獣と思われます]
『融合獣は、僕のと形は違えども、フュージョンライズによって作り出されるんだ』
レムとジード、そしてライハが融合獣について説明する。
「私たちの宇宙では、ある男がウルトラマンベリアルという悪のウルトラマンの力を用いて融合獣に変身してたの。……それが、まさかこっちの世界にも現れるなんて……」
『レム、まさかまたベリアルの陰謀なのか?』
危惧するジードだが、レムはその可能性を否定した。
[いえ。昨日の怪獣は融合獣ではありますが、ベリアルが関与しているものではないようです。ベリアルの力の波長が観測されませんでしたから]
「確かに……ちょっと特徴が違うわね」
ユートムが撮影した融合獣サンダーキングの写真から、胸部の七つの発光体の列に目を留めたライハがうなずいた。
「ベリアル融合獣の胸にあったのは、カラータイマーだったわ」
『でも、ベリアルじゃないとしたら一体誰が? ベリアル以外に怪獣のフュージョンライズが出来る奴がいるなんて……』
[現時点では回答不能です。情報が不足しています]
熱心に相談し合うジードたちの一方で、今一つ話についていけない八幡は、暇を持て余すように尋ねかけた。
「あー……ちょっといいですか」
『昨日も言ったけど、もう敬語なんていいよ。君も僕たちの仲間になったんだ。ずっと敬語口調なんて他人行儀だよ』
「じゃあ……一つ聞きたいんだけど」
口調を変えた八幡が、改めて問いかける。
「ペガの奴、さっきから何やってんの?」
ペガは話に混じらず、一人ノートパソコンのキーをカタカタと叩いていた。
『ああ。ペガにはこの地球の人たちに向けた、僕からのメッセージを書いてもらってるんだ』
「メッセージ?」
『うん。この世界の人たちみんなにも、自己紹介しないとね』
「リクー、終わったよ」
エンターキーを押したペガがジードに報告した。
『ありがとう。じゃあ早速送信して』
「うん!」
ジードの言うメッセージなるものに、八幡は無意識に首をひねっていた。
昨晩その正体が明らかとなった怪獣、そして地球に降り立ったウルトラマンジードの存在は、瞬く間に全世界を騒然とさせた。報道機関はこぞってジードのことを取り上げ、種々多様な仮説を飛び交わせていた。
そんな中で、ワイドショーに出演している学者が全国の視聴者に向けて、あることを報じた。
『先ほど、各国の政府機関宛てに例の巨人に関しての匿名の声明が送られてきたことが発表されました。「彼の名はウルトラマンジード。地球の皆さんの敵ではありません。この度より怪獣退治を行うことになります。ご迷惑をお掛けしますが、何卒よろしくお願い致します」。……えー、この内容に如何ほどの信憑性があるかは定かではありませんが、政府はこの声明に倣い、巨人をウルトラマンジード、巨大生物を怪獣と呼称することを暫定的に決定しました』
授業の合間の休み時間中、八幡のクラスの2年F組で生徒たちがネットに配信されたワイドショーを視聴していた。
その内の一人、戸部翔が興奮したように鼻息を荒くした。
「ジードかぁー! あれマジすごかったよなー! マジ現実のこととは思えなかった! やっべ! マジやっべ!」
などとまくし立てる戸部が、友人たちに問いかける。
「ジードってやっぱ、正義の味方って奴なんかな! 隼人くんはどう思う?」
聞かれたのはF組一の好青年、葉山隼人。彼を中心とした友人グループがこのクラスの最上位カーストに位置している。結衣もクラスにいる時は、このグループに属している。ちなみに八幡は、どこのグループにも属していない。
「まだ何とも言えないかな。何せ突然現れて、あっという間に去っていったからね。人となりなんかは全然分からないよ」
葉山が爽快感に溢れながらそう答えると、金髪縦ロールの女子生徒、三浦優美子が胡乱な目でつぶやく。
「いや、あれが正義の味方とかないでしょ。あの目つきだよ? どっちかってーと悪者の顔つきじゃん」
彼女たちは当然ながら、ジードが同じ教室にいるなどとは露ほどにも思っていない。
「優美子、それはちょっと失礼じゃない? あれが普通の種族なのかもしれないよ」
眼鏡を掛けた女子、海老名姫菜がフォローした後に、結衣が不意につぶやいた。
「でもあの目の感じ、ちょっとヒッキーに似てたかもね」
すると葉山たちは一瞬静かになり――直後に爆笑した。
「いやいや~! それこそジードに失礼ってもんっしょ! よりによってヒキタニくんと一緒にするなんて!」
「少なくとも、ジードの目はヒキオみたいに腐ってないじゃん!」
「そ、それもそっかー」
愛想笑いを浮かべる結衣だが、その口元は若干引きつっている。
……あの好き勝手言ってる奴ら、俺がそのジードだったんだって知ったらどんな顔するんだろうな、と八幡はそう思っていた。
× × ×
放課後、八幡が奉仕部の部室に一番に来ると、その足元の影からニョキッと出てくる者がいた。
「ふぅ、ずっとダークゾーンにこもりっぱなしなのも久しぶりだなぁ」
ペガである。宇宙人である彼は当然ながら他の人間の目があるところでダークゾーンから出てこられないので、人があまり来ない場所を探してここに行き着いたのだ。
八幡は自身の影から頭を出している彼を見下ろしながら聞く。
「なぁ……何で俺の影になってついてきちゃってるの?」
「外に出る時は大体いつも、リクの影を借りてたんだ。この姿で人前に出たら大変だからね。だからここでは、八幡、君の影を借りさせてもらうよ。いいかな?」
「はぁ……」
気のない返事をする八幡。それだったらずっと星雲荘にいろよとか、別の誰かの影を借りてくれよ、などとは言わないところが、八幡の根の純朴さを物語っていた。
そんな彼に、今度はペガが質問した。
「ところで八幡。さっきの休み時間、君だけずっと一人で誰とも話してなかったね。……友達いないの?」
ストレートな物言いがグサッと八幡に刺さった。心の痛みをこらえて、八幡は言い返す。
「い、いや、作れないんじゃねぇよ? 俺は平等がモットーだから、特別親しい相手を作ろうとしないだけだから! ホントだからな!」
しかしペガから返ってきたのは、同情の目だった。
「……大丈夫! これからはペガがいるからね! もう一人じゃないよ!」
『僕だって君の友達だよ、八幡!』
ジードまでそう言ってきた。
「やめろ! やめてくれ! これ優しさが逆に辛いパターンだ!」
「珍しく私より先に来てると思ったら、何を一人で騒いでるのかしら」
声を荒げていたら部室の扉が開かれ、雪乃が入ってきたので、ペガは「はわわ!」と八幡の影に引っ込んでいった。
「いつも一人なのをこじらせて、イマジナリーフレンドでも見え始めたのかしら?」
「そ、そんな幼少の子供が罹る心の病気は発症してねぇ! その……思い出し笑いみたいなもんだよ!」
無理矢理にごまかす八幡であった。
「どちらにせよ気持ち悪いわ。独り言が癖になる前に、やっぱり友達の一人でも作るよう努力してみたら? あぁそのためには腐った目を眼科で治してもらわないとどうしようもないわね、ごめんなさい」
「謝るのか貶すのか、どっちかにしろよ」
相変わらず毒を吐きまくりの雪乃に突っ込む八幡。ペガも「雪ノ下さん、口悪いなぁ……」と影の中からつぶやいていた。
しかしふと振り返れば、雪乃が何やらその場に立ち尽くしたまま、自分の両手の平をじっと見つめていた。
「あ? 何やってんだ雪ノ下?」
「な、何でもないわ。比企谷くんが気にすることじゃないわよ」
妙に歯切れが悪くなる雪乃に八幡は軽く首をひねったが、雪乃はそのまま自分の定位置まで行って椅子に腰を落とす。
だが彼女が長テーブルに手を置いた瞬間、テーブルがバギッ! と真っ二つにへし折れた!
「うおぉッ!?」
お陰で机に肘をもたれていた八幡はずっこけ、椅子から転げ落ちた。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫!?」
雪乃は慌てて立ち上がって謝罪した。八幡は頭をさすりながら身を起こす。
「いっててて……まぁ大丈夫だけどさ、何で謝んの? 今、お前が机折ったの?」
聞かれて、雪乃はハッと強張らせた顔を八幡から逸らした。
「そ、そんな訳ないじゃない。私にそんな異常な腕力があるように見える?」
「まぁ、そうだよな。老朽化でもしてたのか? 危ねぇな」
と八幡は判断した。それに雪乃が少しホッとしていたことには、折れたテーブルに注目していたので気がつかなかった。
「やっはろー! って、うわっ!? 何かすごいことになってる! 何があったの!?」
直後に部室にやってきた結衣も、机の残骸を目の当たりにして驚愕していた。
× × ×
本日の部活が終了し、下校時間。八幡が帰路に着くと、彼一人になったことでペガがまた影の中から顔を出して八幡に話しかけてきた。
「最初に机が折れたこと以外、特に何もなかったね。奉仕部ってあんな感じなの?」
「まぁ、大体はな。誰かの悩みを解決、って言ったって、あんなところに駆け込まなきゃいけないような問題を抱えたような奴なんてそうはいないだろうしなぁ。現に俺が入部させられてから、来た依頼者はたった三人……」
そう答えていた八幡だが、ふとペガの顔を見つめ返して口を閉ざした。
「どうしたの? 急に黙っちゃって」
「いや……昨日は色々ありすぎたから流したけどさ、宇宙人なんて実在したんだなーって改めて思って」
しげしげとペガを観察していると、ジードが話に加わる。
『多分、これからこの地球に来訪する宇宙人はどんどん出てくると思うよ』
「えッ、マジで?」
『僕たちがこの地球にたどり着いたということは、他の宇宙人もここを見つけたということだ、ってレムが言ってたから』
宇宙人が地球にやってくる。その場面を想像して、八幡は眉間に皺を寄せた。
「……能天気な奴ならファーストコンタクトだーって喜ぶかもしれねぇけど、俺はあんまいいことだとは思えないな。外見も価値観も全然違う奴との接触なんて、問題が起きる気しかしねぇし」
八幡の言うことに同意するペガ。
「鋭いね。実際、宇宙人は誰しも礼儀正しい訳じゃない。中には悪い考えを持ってやってくる人だっている。ペガたちが追ってた円盤みたいにね」
『僕も元の地球で、そういうのと戦ったことがある。こっちでも何か問題にならないといいんだけど……』
ジードが案じたその時、八幡の後方から絹を裂くような悲鳴が起こる。
「きゃあああああああっ!?」
八幡は途端に立ち止まって振り返った。今のは聞き慣れた声色だった。
「今の、由比ヶ浜さんの声だよ!」
何か起きたに違いない。八幡はすぐさま駆け出していた。
結衣の元にたどり着いた八幡の目に飛び込んできたのは、結衣が雪乃に抱きつきながら二人で腰を抜かしている光景と――その二人ににじり寄る、両腕が刀状になっている奇怪な人間型の生物の姿だった。
「あいつは!?」
咄嗟に腰の装填ナックルを握る八幡。これに触れていると、星雲荘のレムと通信が出来るのだ。
[ツルク星人です。非常に残虐性が高く、宇宙各地で殺傷事件を起こしている危険な宇宙人です]
『嫌な予感が、こんなに早く的中するなんて……!』
苦悶するジード。その危険なツルク星人は、腕の刀を振り上げて雪乃と結衣に斬りかかろうとしている!
「キュキュウーイ!」
「いやああぁぁぁぁぁっ!」
再び悲鳴を上げる結衣。八幡は咄嗟に、地を蹴ってツルク星人に飛び掛かろうとする。
「うおおぉぉぉぉッ!」
「比企谷くん!?」「ヒッキー!?」
――だが勢いがつきすぎて、ツルク星人を跳び越えて塀に顔から激突してしまった。
「へぶッ!? いでえぇぇぇッ!」
ゴロゴロとのた打ち回る八幡。一瞬呆気にとられたツルク星人だったが、自爆した彼を無視して雪乃と結衣に刃を振り下ろす!
「きゃあああああっ!」
「――はぁっ!」
しかし凶刃は、別の刃によって弾かれた。
星雲荘からここまで駆けつけたライハが雪乃たちを救ったのである!
「えっ!?」「だ、誰!?」
「ライハさん!」
雪乃と結衣は驚き、八幡はライハの名前を叫んだ。ツルク星人は邪魔をしたライハに怒り、彼女から斬り殺そうと襲い掛かる。
「キュキュウーイ!」
「はぁぁぁっ!」
風を切るような速度の凶刃がライハを襲うが、ライハも剣術と体術を組み合わせた剣戟で応戦。人外のツルク星人にも負けない速さの、踊るような剣さばきには、八幡も雪乃たちも思わず目を奪われた。
「はぁっ!」
「キュキュウーイ!」
ライハの回し蹴りがツルク星人の横面を捉えた。のけ反ったツルク星人だが、すぐに両腕の剣による二段攻撃で反撃する。
「はっ!?」
一段目の斬撃は防げても、二段目は避けられない。今度はライハが危ない!
――そこを救ったのは、突然どこからともなく戦いに割り込んできた若い男の拳だった。
「キュキュウーイ!」
パンチが腹にめり込んだツルク星人は大きく殴り飛ばされる。受け身を取って身体を支えるが、流石に状況を不利と見たかすぐに踵を返して逃げていった。
「逃げたか……」
「助けてくれて、ありがとうございます」
「いえいえ。ご無事で何よりでした」
ライハは自分を助けた男に礼を言い、男は爽やかな笑顔で返した。葉山みたいな感じのイケメンだな、と八幡はその顔つきを内心で評した。
「あなたたちも、大丈夫だった?」
「は、はい……。あなたは……?」
ライハが雪乃たちに声を掛けている一方で、男は八幡に近寄ってきて、彼を見下ろした。
「君も大丈夫だったかい? 女の子を助けようと我先に飛び出すなんて、勇敢だね」
「い、いえ……。俺、結局何もしませんでしたし……」
「そんなことはない。格好よかったよ」
男は満面の笑みで八幡をねぎらった。――しかし、その途端に八幡の背筋に何かうすら寒いものが走った。
「そ、そうだよ! ヒッキーも、助けてくれようとしてありがと!」
「ええ……その……ありがとう……」
結衣と雪乃が取り成すように礼を言った。結衣は男の方にも振り返る。
「あなたも、ありがとうござ……あれ?」
しかし、いつの間にか男の姿は影も形もなくなっていた。
「いない……。もう行っちゃったのかな?」
「私も、さっきの宇宙人を追いかけるわ。あなたたちは気をつけて帰ってね!」
「あっ、ちょっと!?」
ライハがツルク星人を追って、瞬く間に走り去っていった。後に残されるのは、ポカンとしている結衣たち。
「何だったんだろう、あの人たち……」
「……そう言えば比企谷くん。あなた女の人の名前を呼んでなかった? お知り合いなの?」
「えッ!? そ、それはだな……」
目敏い雪乃が問いかけると、結衣が妙に焦りながらズイッ! と八幡に詰め寄ってきた。
「そ、それホントなのヒッキー!? あの人誰!? どういう関係なのぉ!?」
「そ、それはえーっと、知り合いって言うか何て言うか……」
説明に窮した八幡が目を泳がせながら、話題をすり替える。
「さ、さっきの男の方、何か変じゃなかったか?」
「あーっ! ごまかすなぁ!」
「変って何が? あんな異常な状況で助けてくれた、いい人だったじゃない」
騒ぐ結衣を置いて雪乃が問い返すと、八幡はこの瞬間だけ険しい表情となった。
「いや……さっき俺に笑顔向けたんだが……明らかに、嘘っぽかったんだよな……」
× × ×
逃亡したツルク星人は、総武高校周辺から離れた場所の廃工場に身を隠していた。ほとぼりが冷めたら、次の得物を探しに出向こうというつもりだ。
だがその場に――先ほどの男が踏み込んできたので、ツルク星人は思わず立ち上がった。
「騒動を聞きつけて、興味本位でこの星にやってきたか……。だがその好奇心が身を滅ぼす」
男からは、八幡たちに見せていた爽快さが跡形もなく消え失せていた。――ツルク星人にも負けない悪辣な嗜虐心を表情いっぱいに湛えている。
「ここは俺のテリトリーだ。勝手な真似はやめてもらおうか、下郎風情が」
「キュキュウーイ!」
ツルク星人は問答無用で男に飛び掛かり、刀を縦一文字に振り抜く。
男は簡単に、左右に真っ二つに切り裂かれた。
「キュキュウーイ!」
着地したツルク星人が、馬鹿め、とせせら笑いながら振り返るが――。
後ろから蹴り飛ばされ、仰向けに押し倒された。
「馬鹿はお前だよ……!」
男が、手に先端が楕円形に膨らんだ長杖を握りながら、ツルク星人を足で押さえていた。――真っ二つになったままで。
いや、その身体が映像の巻き戻しでもするかのようにくっついていく。
「!?!?!?」
ツルク星人は押さえつけられたまま完全に混乱していた。完全に元通りに再生した男はその顔を見下しながら悪しき笑みを浮かべる。
「この俺を手に掛けようという身の程知らずめ。判決を言い渡す……!」
男の握る杖の先端から――紫色の光刃が伸びて、大鎌のようになった。
「死刑ッ!!」
それが振るわれ――ツルク星人の首がゴロゴロと転がっていった。
首を切り離された肉体が粉微塵に爆ぜ散ると――男の後方から、全身肌色の怪人と白いエビが直立したような怪人が現れる。
『お見事な手際です、レイデュエス殿下』
『かのツルク星人をこうも容易く屠るとは』
持ち上げながら男をレイデュエスと呼んだ宇宙人――バド星人とゴドラ星人に、レイデュエスは振り返る。
「今の奴なんぞどうでもいい。それよりオガレス、ルドレイ、見てたか? さっきの間抜けな男を」
『ええ。しかと』
「あれが、ウルトラマンジードの一体化した奴だぞ……」
『そのようですなぁ……』
レイデュエスがそう言うと、三人は一瞬静かになり――。
「――ア―――――――ハハハハハハハハハハハッ!!」
そろって大爆笑した。
「よりによってあんなシーリザーみたいな目をした奴と! ウルトラマンジードめ、大気圏から落下した時に頭打ったんじゃないのか!?」
『いやはやおっしゃる通りですなぁ殿下!』
『実に傑作です! ウワハハハハハ!』
八幡を散々笑い飛ばしたレイデュエスは、にやつきながらバド星人オガレスとゴドラ星人ルドレイの間を通り抜ける。
「確認ついでに、ちょっと奴らをからかってやろうじゃないか。昨日は上手いこと切り抜けられたが、今度はどうなるかなぁ?」
その手は杖から持ち替えられて、シオマネキのように右腕が肥大化したハサミのようになっているロボットが描かれたカプセルが握られている。
「宇宙指令S38!」
レイデュエスは叫びながらカプセルのスイッチをスライドした。
「イッツ!」『ウオォンウオォン……!』
起動したカプセルを装填ナックルに押し込むと、次いで卵に手足が生えたようなロボットのカプセルを取り出す。
「マイ!」『ギィィィィ……!』
ナックルに収めた二つのカプセルを、レイデュエスは紫色のライザーでスキャンする。
「ショウタイム!!」
ライザーのトリガーを握り込んで、その機能を起動させる。
[フュージョンライズ!]
「ハハハハハハハハハッ!」
暗黒の異空間の中、レイデュエスの姿が黒い異形の影に変わるとともにカプセルから二体のロボット怪獣のビジョンが現れ、それらが影の口の中に吸い込まれていく。
[クレージーゴン! ガメロット!]
[レイデュエス! クラッシャーゴン!!]
黒い影が形を変えていき、フランス人形とレコードプレイヤーを踏み潰して、融合獣が完成した!
千葉市内の、自動車の往来が多い大通りの真ん中に、怪しい光の柱とともに、巨大なロボット怪獣が出現。街中の人々は一気にパニックに突き落とされた!
ウオォンウオォンウオォン……!
「ギィィィィ……!」
顔面が、右半分がスケルトンとなって歯車が見えているガメロットのものであり、右腕がクレージーゴンの巨大なハサミ、左腕がナックル、腹部はシャッターとなっていて、そして胸部に紫に光る七つの発光体を備えたロボット。クレージーゴンとガメロットの機構を合体させたレイデュエス融合獣、クラッシャーゴン!
「ギィィィィ……!」
クラッシャーゴンは足元の自動車にハサミを伸ばすと摘み上げ、腹部のシャッターを開いてその中に放り込んだ。入れられた車はたちまちスクラップにされてしまう。
クラッシャーゴンはまだ人が残っている車も構わずに狙い、ハサミで捕らえ始めた!
× × ×
自動車を狙って活動を開始したクラッシャーゴンの巨体は、遠くの雪乃たちの目にも映り込んだ。
「あ、あれ! また怪獣だよ! や、あれはロボット!?」
「ロボットって……昨日から一体世の中はどうなってしまったというのよ……!」
それまでの日常からでは考えられなかった世界の変化に、雪乃は思わず吐き捨てた。
「ゆきのん、遠くだけど早く逃げよう! ヒッキーも……あれ?」
八幡の方へ振り向く結衣だったが、その時には八幡の姿までもが忽然と消えていた。
「もぉー! どこ行ったのー!? ヒッキーまでぇぇ―――!!」
八幡はクラッシャーゴンの姿を確認してすぐに、無人の街角に飛び込んでいた。
「ジード……これってもしかしなくても、俺が変身しなきゃいけない場合……?」
一応八幡が確認を取ると、ジードは即答した。
『察しが良くて助かるよ! 八幡、一緒に頑張ろう!』
「やっぱりかー……」
はぁ~……と大きなため息を吐いた八幡だが、ここで問答していても仕方がない。腰のケースからその手にウルトラマンカプセルを取った。
『ユーゴー!』『シェアッ!』
『アイゴー!』『フエアッ!』
昨日と同じ手順でカプセルを起動していくと、ウルトラマンとベリアルのビジョンが八幡の左右に現れた。
『ヒアウィーゴー!』
そして装填ナックルに収めたジードライザーでスキャン。
[フュージョンライズ!]
『ジィィィ―――――――ドッ!』
八幡は二人のビジョンと合体し、ウルトラマンジードへ変身していく!
[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]
[ウルトラマンジード! プリミティブ!!]
「シュアッ!」
飛び出したジードが空を駆け、クラッシャーゴンに襲われる街の中に降り立った!