やはり俺がウルトラマンジードなのはまちがっている。   作:焼き鮭

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体育祭に死神山のスピードランナーがやってきた。(B)

 

 体育祭の最中に突然校庭に入り込んできた、珍妙な格好の少年に生徒たちはにわかに騒然となった。そんな中で、少年の正体――マラソン小僧を知る結衣に、雪乃がこっそりと尋ねかける。

 

「由比ヶ浜さん、あれが例のマラソン小僧なのね?」

「う、うん、間違いないよ」

「悪い予測ばかり的中するわね……。きっと、見物するだけでは飽き足らなくなってしまったのね」

 

 と推測する雪乃。その視線の先では、トラックの真ん中で足踏みするマラソン小僧に平塚ら教師が近寄っていく。

 

「こら君、どこの子だ? この体育祭は校内のみの行事で、部外者は招いていないんだ。悪いけれど、出ていってくれないかな」

 

 平塚がたしなめるものの、マラソン小僧はその言葉を全く聞いておらず、自分の目の前にいる者たち全員に向けて呼び掛けた。

 

「なぁ、俺とマラソン勝負しようぜ!」

「は?」

 

 目が点になる平塚たちだが、マラソン小僧は委細構わずにまくし立てる。

 

「みんなで誰が一番速いか勝負してるんだろ? 俺も混ぜてくれよ! 俺、足には自信あるんだ。俺に勝てる奴はいないか?」

「……君、馬鹿なこと言ってないでこっちに……」

 

 教師の一人が呆れながらマラソン小僧の腕を掴もうと手を伸ばしたが、マラソン小僧はひらりとかわして手は空を切る。

 

「ハハハハハ! 遅い遅い!」

「なっ……こら、悪戯はよしなさい!」

 

 平塚たちは総出でマラソン小僧を捕まえようとするも、マラソン小僧は相変わらずの風のようなスピードで駆け回り、難なく教師たちの包囲をすり抜けた。

 

「遅いって! もっと速く走ろうよ! もっと速くさぁ~!」

「こ、このぉ……!」

 

 からかわれた男性教師陣はカチンと来て、腕まくりをして全速力でマラソン小僧を追い回すものの、マラソン小僧は人外。その速度には到底追いつけず、もてあそばれるように振り回される。

 

「は、はひぃ~……!?」

「もう終わり? みんなだらしないな~。先生とか言って威張ってばっかで、運動不足だからだなぁ! ハハハハハハ!」

 

 すぐにヘトヘトになって崩れ落ちていく教師たちを、余裕しゃくしゃくのマラソン小僧が笑い飛ばす。そんなありさまに生徒たちの間から野次が飛ぶ。

 

「おーい、情けねぇぞ先生ー!」

「そんな子供にからかわれてよぉー!」

「これじゃ次の競技できないじゃーん!」

「あのガキむかつくなぁおい!」

「よーし、俺が代わりにあいつを捕まえてやるわー! サッカー部に任せとけってー!」

 

 お調子者の戸部を始めとして、生徒たちからチラホラと俺も、よし俺もとトラック内に駆け込む者たちが現れ、マラソン小僧を追いかけ出す。

 しかしマラソン小僧は自分を追う人数が増える毎にスピードを増していき、彼らからヒョイヒョイと逃れる。

 

「えいほ、えいほ、えいほ、えいほ、えいほ!」

「うっわマジで速えぇ……!?」

「何だあいつ……!?」

 

 戸部たちは複数人がかりでもまるで追いつけず、目を丸くしている。そんな彼らに挑発するように呼び掛けるマラソン小僧。

 

「おーいどうしたどうした。これだけいて、俺を抜ける奴はいないのかよ~」

 

 そう言われても、戸部たちはマラソン小僧の異常なスピードにすっかりと怖気づいて及び腰になっている。

 

「何だ何だ、どいつもこいつもだらしないな~」

「いい加減にするんだッ!」

 

 嘲笑するマラソン小僧に葉山が飛びかかった。しかし惜しいところで逃げられる。

 

「おっと危ない危ない!」

「みんなの迷惑だ。すぐに出ていくんだ」

 

 葉山が説き伏せようとしても、やはりマラソン小僧は聞く耳を持たない。

 

「お前は速いなー。じゃあ俺と勝負だ! 俺に追いつけるかなー!」

「こらッ、待て!」

 

 クルリと背を向けて逃走するマラソン小僧を追いかける葉山。他の生徒、特に女子の間から次々と葉山を応援する声が上がる。

 

「きゃー! 葉山くん、がんばってー!」

「かっこいいー!」

「隼人ー! 負けんなー!」

「あんなに必死になって人の背中を追いかける隼人くん……。その相手がヒキタニくんだったらすごく美味しかったのに、惜しい……」

 

 しかしいくら葉山とて人間の限界がある。足の神様であるマラソン小僧に敵うべくもない。

 

「くッ……!」

「ほらほらー! ピッチを上げろー! えいほ、えいほ、えいほ!」

 

 校庭はマラソン小僧によってすっかりと混沌とした状態。これにめぐりがオロオロと右往左往する。

 

「あわわ、どうしよう。警察呼んだ方がいいのかな。でも体育祭が……」

 

 めぐりが弱り果てる後ろで、雪乃たちはヒソヒソと声を潜めながら相談し合う。

 

「このままではまずいわね。これで万が一、あの子が本当に巨大な怪獣になったとしたら……」

「大惨事だよ……!」

 

 身震いする結衣。マラソン小僧は温厚な性格と聞いているが、それもどこまで本当のことか分からない。今は機嫌が良さそうだが、何かのきっかけで変身するようなことがあったら……校庭のど真ん中など最悪である。

 

「ライハさんやAIBを呼ぶべきかな……」

「でも、今からだと時間が掛かりすぎるわ。それまでマラソン小僧をどうにかしないと……」

「けど、どうにかって言ったって……」

 

 いつ怪獣になるものかと気が気でなく、すっかり弱り果てる結衣。すると、

 

「……ジーッとしてても、ドーにもならねぇ……!」

「あっ、ヒッキー!?」

「比企谷くんっ!」

 

 八幡がそう唱えながら飛び出していき、校門前まで走っていくと声を張ってマラソン小僧に挑発を向けた。

 

「おーいマラソン小僧! 勝負してやろうじゃんか! ついてこいッ!」

 

 そう言い残して、ダッと校門から外へと駆け出していく八幡。マラソン小僧はすぐに食いついた。

 

「そう来なくっちゃ! よーし見てろぉ~!」

 

 マラソン小僧の興味が葉山から八幡に向き、彼の背中を追いかけて総武高校の敷地から飛び出していく。

 

「えいほ、えいほ、えいほ、えいほ、えいほ!」

「ああっこら比企谷! 勝手なことは……!」

 

 平塚が慌てて止めようとしたが、八幡はすぐにマラソン小僧を引き連れて見えなくなってしまった。

 

「……あいつ、あんなに足速かったっけ?」

 

 唖然とする平塚の後方では、葉山がぜいぜい息を切らしながら八幡の消えた跡を見つめていた。

 

「……比企谷……」

 

 

 × × ×

 

 

「えいほ、えいほ、えいほ、えいほ、えいほ!」

 

 八幡の背中を追いかけて駆けるマラソン小僧。八幡はそれに追いつかれないように、ジードの能力を発揮して人間を超えたスピードを出して走る。このような目立つ真似は望ましくないが、時間を稼ぐにはこうする他はない。

 更に八幡は走りながらレムと連絡を取った。

 

「レム、すぐに俺の進行先に、ライハさんとAIBを回してくれ。マラソン小僧を捕まえてもらう!」

[了解しました]

 

 八幡は総武高校から離れて、人気のない町外れにマラソン小僧を引きつけて捕獲してもらう作戦を考えついていた。その成功のためには、自分がマラソン小僧の囮にならなければならない。ゴールまでどうにかマラソン小僧を誘導しなければ。

 

「お前ホント速いな~! こんなに面白い勝負は初めてだ! よーし、俺も本気だぁ~!」

 

 しかしマラソン小僧は更にスピードを上げ、八幡と並んだ。まだまだ本気ではなかったようだ。

 

「えいほ、えいほ、えいほ、えいほ、えいほ!」

「くッ……! おおおおッ!」

 

 八幡は必死にマラソン小僧に食いつき、彼がどこかへ行かないようにする。この頑張りに、町の人たちの安全が懸かっているのだ。

 しかし不運なことに、川沿いの土手を走っているところで、二人の進行先に近所で評判の意地悪じいさん(唐突)の姿が!

 

「むッ! あの小僧は昨日わしを転ばせた……。クククッ、復讐の機会が飛び込んできたわい!」

 

 マラソン小僧の姿を認めた意地悪じいさんはあだ名の通りに意地悪にほくそ笑みながら、土手の陰に身を潜めてマラソン小僧の接近を待ち構えた。

 そして彼が近づいてくると、マラソン小僧に復讐するために連れて歩いていた『秘密兵器』をけしかける!

 

「行け、わしの忠実なペット! 猛犬タイガーよッ! 奴に食らいついてやれぃ!」

「バウバウバウッ!」

 

 柴犬なのにタイガーが意地悪じいさんの手元から解き放たれ、マラソン小僧に襲い掛かる!

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 マラソン小僧は猛犬に驚き、恐怖のあまりに土手から転げ落ちた!

 

「マラソン小僧!?」

 

 八幡も仰天して足を止める。

 

「ワッハッハッ! 作戦大成功! ざまぁみろ!!」

 

 一方で思い通りに事を運べた意地悪じいさんは堂々と高笑いするが……。

 

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 マラソン小僧が落ちていった場所から、狛犬のような顔つきの巨大な怪物が立ち上がったのですぐさま腰を抜かすこととなった。

 

「あひゃあああぁぁぁぁぁぁ―――――――――!?」

 

 犬に襲われたマラソン小僧は遂に怒ってしまい、暴風の化身の怪獣イダテンランに変身してしまったのだ!

 

「何てこった! あと少しだったってのに……!」

 

 最も避けたかった事態が現実になってしまったことに歯噛みする八幡。イダテンランは自分に犬をけしかけた意地悪じいさんに目をつける。

 

「ギャアオオオオオオウ!」

「た、助けてくれぇぇぇぇ―――――!」

 

 慌ててほうほうの体で逃げ出す意地悪じいさんであったが、イダテンランが頬を膨らませると、口から猛烈な突風を吹き出して意地悪じいさんを吹き飛ばしてしまう。

 

「ひやあああぁぁぁぁぁぁ――――――――――!!」

 

 突風によって浮き上がった意地悪じいさんは街路樹に引っ掛かってしまった。

 

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 それでもイダテンランの怒りは収まらず、総武高校の方角に向かって走り出してしまう! 猛烈なスピードを生み出す脚力はすさまじく、走るだけで大地震のような震動を引き起こす。

 

「き、きゃあぁぁ―――――! 怪獣っ!」

「すっげぇ勢いでこっち来るぞぉ!?」

 

 当然総武高校の生徒たちは大パニック。このままでは学校が危ない!

 

『八幡、行こう!』

 

 この事態はもう人間の力では止められない。ジードは八幡に呼びかけ、いつものようにフュージョンライズの合図を唱えようとしたが、

 

「待ってくれジード」

 

 八幡は毅然とした目つきでイダテンランを見据えながらジードを制止し――彼に促されたからではなく、自身の意志の下にジードライザーを手に取った。

 

「ここからは、ネクストステージだ!」

 

 そう宣言しながら、ウルトラマンカプセルをホルダーから取り出す。

 

「ユーゴーッ!」

『シェアッ!』

 

 そして変身の台詞を、自らの口で唱えながらカプセルを起動。現れたウルトラマンのビジョンが腕を振り上げ、カプセルを装填ナックルに収める。

 

「アイゴーッ!」

『フエアッ!』

 

 続けざまにベリアルカプセルを起動。ウルトラマンベリアルのビジョンが腕を振り上げる。

 

「ヒアウィーゴーッ!!」

 

 二つのカプセルをナックルに装填し、ジードライザーでスキャンする。

 

[フュージョンライズ!]

「おおおおお……!」

 

 液晶画面に二重螺旋が輝いたライザーを、八幡は気勢とともに掲げながら胸の前に持っていく。

 

「はッ!」

 

 己の胸の高さに合わせたライザーのトリガーを握り込み、カプセルの情報を肉体に取り込む!

 

「ジィィィ―――――――ドッ!」

 

 二人のウルトラマンのビジョンが重なると、八幡の肉体がジードのそれに変容していく。

 

[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]

[ウルトラマンジード! プリミティブ!!]

「シュアッ!」

 

 初期変身を遂げてウルトラマンジード・プリミティブに変身し、一瞬輝く獰猛な双眸をバックに光と闇の螺旋を超えて飛び出していく!

 

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 今にも総武高校に突っ込みそうだったイダテンランの頭上を跳び越えて、その面前に着地してイダテンランの進行を制止する。生徒たちはジードの背中を見上げると、途端に安堵の色に染まった。

 

「ウルトラマンジードだ!」

「ジードぉー! 助けてくれぇー!」

 

 ジードは助けを求める声に応じて、イダテンランへと大きく飛びかかっていった!

 

『「決めるぜ! 覚悟!!」』

 

(♪ウルトラマンジードプリミティブ)

 

「ハァッ!」

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 ジードの飛び膝蹴りがイダテンランの胴体と一体化している横面を捉えた。先制攻撃を食らったイダテンランは腕を振って反撃するも、ジードはそれをかいくぐって相手の背面に飛びつく。

 

『「傍迷惑野郎め! 大人しく、しろッ!」』

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 ジードは相手の重心の高さを利用して、自ら倒れ込みながらイダテンランを投げ飛ばした。バランスを崩されたイダテンランはそのままゴロゴロと転がっていく。

 

「セアッ!」

 

 ジードは更に平手打ちの連発でイダテンランをじりじりと追いつめていく。イダテンランは戦闘に向いた傾向の能力ではないようで、肉弾戦ではジードに敵わず押される。

 

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 しかし足の神様イダテンランの武器は圧倒的な走力である。一度駆け出すと、ジードをはるかに超えるスピードを出して彼の攻撃を易々とかわす。

 

『「ちッ、やっぱり怪獣になっても速いのか!」』

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 更にイダテンランはジードの周りを高速でグルグル回ることで竜巻を作り出し、彼をその中に閉じ込めた!

 

「ウッ!?」

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 ジードは竜巻の風圧によって苦しめられる!

 

「あぁッ、ジードが危ない!」

 

 ジードの窮地に色めく生徒たち。だがしかし、今のジードはこの程度で倒れたりはしないのだ。

 八幡は迷いなくカプセルホルダーに手を伸ばして、一本のカプセルを取り出す。

 

『「ユーゴーッ!」』

『テヤッ!』

 

 ヒカリカプセルのスイッチをスライドすると――ウルトラマンヒカリのビジョンが現れて腕を振り上げた。

 

『「アイゴーッ!」』

『タァッ!』

 

 ヒカリカプセルをナックルに収め、続いてコスモスカプセルを起動。

 

『「ヒアウィーゴーッ!!」』

 

 交換した二つのカプセルを、ジードライザーでスキャンする。

 

[フュージョンライズ!]

『「おおおおお……! はッ!」』

 

 新しいカプセルから引き出した情報をその身に宿して、八幡は再びフュージョンライズ!

 

『「ジィィィ―――――――ドッ!」』

 

 ヒカリとコスモスのビジョンが重なり合い、ジードは青い姿へと変化を遂げていく。

 

[ウルトラマンヒカリ! ウルトラマンコスモス!]

[ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!!]

「ハァッ!」

 

(♪ウルトラマンジードアクロスマッシャー)

 

『「見せるぜ! 衝撃!!」』

 

 アクロスマッシャーとなったジードは高々と跳躍して竜巻の中から脱出。ふわりと着地する様に、イダテンランが衝撃を受けて足を止めた。

 

「ギャアオオオオオオウ!?」

「おおおッ!」

「かっこいい~!」

 

 ジードの華麗なる身のこなしにほれぼれとする生徒たち。そんな中で、結衣と雪乃は別のことに意識を引き込まれていた。

 

「ヒッキー……一人でウルトラカプセルを使いこなせるようになったんだ……!」

「そうね……」

 

 それまでは満足にウルトラカプセルを扱えず、プリミティブとトライスラッガー以外の形態には雪乃たちの手を借りなければ変身できなかった八幡。しかし、光の意志に目覚めてカプセルとのシンクロ率が段違いに高まったことにより、単独での全形態への変身が出来るようになったのであった。

 それはもちろん喜ばしいことであるのだが、結衣は少しだけ物憂げな表情となった。

 

「でも、ちょっと寂しいかな……。もうあたしたちの手助けは必要じゃないってことだもんね……」

「……」

 

 結衣の言葉に、雪乃は無言であった。

 

「フッ……」

 

 竜巻から抜け出したジードはクイクイッとイダテンランに手招きして挑発してみせる。

 

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 それにまんまと乗っかったイダテンランは猛然とジードに突進していくが、ジードはその勢いを華麗に受け流してイダテンランをすくい投げた。

 

「ハッ!」

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 綺麗にひっくり返ったイダテンランは、起き上がるとともに自慢のスピードでジードを翻弄しようとするが――その前方に、ジードが疾風の如き速さで回り込む。

 

「ハァッ!」

「ギャアオオオオオオウ!?」

 

 アクロスマッシャーの速度はイダテンランにも負けないほどであった。一番の武器で負けたイダテンランは自棄になってジードにぶつかっていくが、そんな攻撃ではアクロスマッシャーを捉えることは出来ない。

 

「ハッ!」

「ギャアオオオオオオウ!」

 

 流水のような動きでイダテンランの攻撃を受け流すジード。イダテンランはいたずらに体力を消耗してふらふらになる。

 そこを狙って、ジードは戦いの幕を下ろす。

 

「『スマッシュムーンヒーリング!!」』

 

 手の平から浄化光線を放ち、イダテンランの荒立った感情を癒して落ち着かせた。

 

「ギャアオオオオオオウ……」

 

 大人しくなったイダテンランは縮んでいき、マラソン小僧の姿に戻っていく。それを確認したジードは顔を空に向け、天の彼方へと飛び去っていったのだった。

 

「ハァッ!」

 

 

 八幡は土手の上に寝転んだままでいるマラソン小僧の元まで駆け寄っていくと、立ち上がった彼に呼びかけた。

 

「マラソン小僧。もう死神山に帰れ」

 

 マラソン小僧はスマッシュムーンヒーリングの効果で気分が落ち着いたためか、その言葉に素直に従った。

 

「うん。俺、もう帰るよ」

 

 クルリと背を向けて走り出すマラソン小僧だが、去り際に八幡の方に振り返ってひと言告げた。

 

「楽しかったぜ! 来年また来るからなー! えいほ、えいほ、えいほ……!」

 

 小さくなっていくマラソン小僧の背中に、八幡は――ボソリと、小さくつぶやいた。

 

「いや、もう来んなよ……」

 

 

 × × ×

 

 

 ウルトラマンジードの活躍によって被害は最小限に抑えられ、マラソン小僧は大人しく帰っていった。そのお陰で体育祭もどうにか最後まで進行することが出来たのであった。

 しかし、八幡はマラソン小僧を学校から引き離す際に名前を呼んだことを誤解され、八幡の手引きで学校に侵入してきたという噂になってしまった。そのせいで、八幡は余計に周りから白眼視されるようになってしまったのであった。

 

「……納得いかないなぁ。学校直したのだって、今回だって全部ヒッキーがやったのに、こんな扱いなんて」

 

 奉仕部の部室で結衣が憮然そうに頬を膨らませていた。それに対して当の八幡は手をヒラヒラさせながら述べる。

 

「別に構わねぇよ。他人から悪く思われるなんてのは慣れっこだしな」

「でも……」

 

 不満げな結衣に対し、雪乃は冷静に口を開く。

 

「確かに理不尽な部分はあるけれど、比企谷くんも比企谷くんで、時間がなかったとはいえ独断で学校から飛び出していったり、反則で勝とうとしたりと問題があると言わざるを得ないわ。特に後者がひどいわね」

「うぐ……悪かったよ。誰も見てないと思ってたんだよ……」

 

 雪乃の指摘に言葉を詰まらせる八幡。マラソン小僧を追い返した後の肝心の体育祭は、最後の棒倒しで得点では赤組が上回ったのだが、競技中に八幡が包帯で組を偽装し奇襲するという反則行為が露見して反則負けになるという何とも締まらない結末となったのであった。

 

「でも、めぐり先輩が喜んでくれたのは何よりだったね。一時はどうなるかと思ったもんね~」

「ええ。盛り上がったという意味では、恐らく過去最高だったでしょうから」

 

 めぐりの依頼である、体育祭を盛り上げることには成功したことに結衣たちは安堵した。一方で、ペガは八幡に呼びかける。

 

「でもちょっと意外だったな。八幡が、あの場面で飛び出していったの! お陰でみんな助かったし、あれはファインプレイと言えるんじゃないかな」

「確かに。今までを考えると、意外なほどの行動の早さだったわね」

 

 雪乃もうなずくと、結衣が目をキラキラ輝かせながら八幡に顔を向けた。

 

「やっぱヒッキー、変わったっていうか成長したんじゃないかな! 本物のヒーローになったんだよ!」

 

 八幡は一瞬苦虫を噛みしめたような顔になると、そっぽを向きつつこう吐き捨てた。

 

「だから、簡単に人が変わるようなら誰も苦労なんかしねぇよ。俺は今まで通り……ただ、痛い目に遭うのが前より嫌になったってだけだよ」

 

 そう語る比企谷八幡。千葉の進学校総武高校に通う高校生二年生。

 座右の銘は、『ジーッとしてても、ドーにもならねぇ』。

 

 

 

『ウルトラストーリーナビ!』

 

結衣「今回は『ウルトラマン80』第四十八話「死神山のスピードランナー」だよ!」

結衣「矢的隊員は病気で入院してるお母さんを励ますために中学対抗マラソンに出場するマサオくんのコーチをしてるんだけど、そこに現れたのがマラソン小僧っていうすごいスピードで走る不思議な少年。その子の正体は何と死神山の足の神様だったの! それが悪い中学校の校長に利用されてマラソンに出場する上に、マラソン小僧は怒ると怪獣イダテンランに変身するっていうから二重に大変! マサオくんはマラソンで優勝できるのか、そして矢的隊員はマラソン小僧ことイダテンランを止められるのかな? っていうお話しだよ」

結衣「イダテンランはスポーツをモチーフに取り入れたかなり珍しい怪獣だよ。普段は人間の姿で、しかも昔死んだ人の霊が変化したものだっていうんだから、怪獣っていうよりは妖怪みたいな設定だよね」

結衣「この人間の霊が変化したスポーツ関係の怪獣が悪い人に利用されて、その存在についてオオヤマキャップとイトウチーフが妙に詳しいっていう筋書きは、第四十話にもあるの。どうして同じプロットを二回やったのかな?」

ジード『ちなみに四十八話が、80が単独で怪獣と戦った最後のエピソードなんだ。次の回はユリアンとのタッグ、最終回は戦闘してないからね』

結衣「それじゃ、次回もよろしくね!」

 




「ぱ、パンさんが消えちゃった~!!」
『今起きている人類史上類を見ない大犯罪を知らないなんて言わないでしょうね』
「……雪ノ下……」
「AIBの立場でこうして会うのは初めてだったっけ」
『宇宙広しといえども、こんな珍事を起こすのはこのスチール星人くらいのものだろう』
「要はこのスチール星人というのを捕まえればいいんですね?」
「陽乃さんってどうしてAIBに入ったんですか?」
「パンさんは私が守るわ!」
『「燃やすわ! 勇気!!」』



次回、『パンさんを返して!と雪ノ下雪乃は叫んだ。』




『「それ俺の台詞……」』
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